経営トップのソーシャルメディア影響力を最大化、ライフネット生命保険の広報戦略/ユーザーローカル
経営トップがソーシャルメディアを積極的に利用
始めに登壇した渡邊氏は、「ライフネット生命がソーシャルメディアを実際にどのように運用しているかについて、分析を中心に川端さんに話していただきたいと思っている
」と話し、ソーシャルメディアの現状について話し始める。
企業がソーシャルメディアをモニタリングする際には、自社ブランドの言及について分析することが主な目的の1つだ。また、ソーシャルメディアは、他メディアとの接続が進んでおり、リアル店舗やECなどとも連動してきている。マスメディアとソーシャルメディアも連動しており、ニュースで取り上げられた情報がソーシャルメディアでも話題になることが多いと渡邊氏は説明する。
また、ユーザー環境も変化し、数年前と比較して現在はPCよりもスマートフォンからの書き込みが多くなっている。ITビジネスから離れた、多くの若いユーザーがソーシャルメディアを使っていることも、ここ数年の動きだ。「これらの状況に対して企業がどのようにマーケティングを考えるのかを考えてほしい
」と話す渡邉氏は、ソーシャルメディアマーケティングに取り組むライフネット生命保険の川端氏にマイクを譲った。
続いて登壇した川端氏は、ライフネット生命保険のソーシャルメディア活動の実態を紹介する。ライフネット生命保険では、企業のTwitter公式アカウント運用前から、代表取締役会長兼CEOの出口治明氏と、代表取締役社長兼COOの岩瀬大輔氏がTwitterを積極的に活用しており、現在(2014年6月時点)、2人合わせて7万7,000ほどのフォロワーがいるという。そのため、ライフネット生命保険の公式アカウントは、強い影響力を持つ経営陣トップの2人がソーシャルメディアを積極的に利用していることを前提に作られたという。そのなかで、公式アカウントで行っている活動は、次の5つだ。
- 経営陣トップ2人のサポート
- 告知の急先鋒となる(告知を率先して行う)
- アクティブサポート
- 顧客との対話
- ソーシャルのモニタリングと社内への報告
「トップ2人のサポート」は、たとえば、出口会長が新商品の告知を行った場合に、公式アカウントがわかりやすい画像を付けてリツイートし、さらにそれを出口会長がリツイートするといったようなことだ。これにより、フォロワー数の少ない公式アカウントが何度もツイートをするよりも、一度の工夫でより多くの人にリーチできる。トップ2人のツイートの影響力を利用した効率の良い告知手法である。
「告知の急先鋒」は、ライフネット生命保険がモットーとする「全員マーケティング」にかかわってくる。新商品などの拡散したい情報がある場合は、広報から全社員に向けて、公式のツイートやFacebook投稿を社員一人ひとりがリツイートしたり、シェアするように依頼があるという。公式アカウントの投稿を拡散すればいいだけの仕組みにすることで、社員が告知文を考えなければならない手間を省いている。また、「公式の告知文」を広めてもらうことで、「情報の正確さ」においてリスクヘッジにもなっている。
「アクティブサポート」と「顧客との対話」について川端氏は、「告知ばかりしていると宣伝したいだけと思われて、せっかくついてくれたファンも離れていってしまう
」と話し、積極的に対話するようにしていると説明する。フォロワーと気軽なやり取りを行ったり、保険を検討しているユーザーには語りかけるようにしていると川端氏は話す。公式アカウントは他の業務との兼任で担当しており、隙間時間にしか書き込めないため、それほど多くの対話はできていないが、真摯に対応していることも明かした。
モニタリングでは発言内容までチェック
「モニタリング」は、ユーザーローカルのソーシャルメディア分析ツール「Social Insight」で効率的に行っていると説明する川端氏は、公式アカウントを作成した当初からモニタリングはしっかり行う必要があると考えていたと話す。ライフネット生命保険では、「レピュテーションチェック(評判確認)」「施策の反映チェック」「リスクの防止」の3つをモニタリングの目的としている。なお、ライフネット生命保険では、3~4か月に一度、コンプライアンス研修の一環で「ソーシャル勉強会」を開催し、ソーシャルメディアを使ううえで注意しなければならないことを社員にも勉強してもらい、テストも実施しているという。
ニュースリリースなどを出した場合は、そのリリース内容について公式アカウントでツイートし、キーワード検索画面でどれくらい話題になっているかをチェックする。必要であれば、さらにツイートするようにして、メンションやリツイートへの個別対応やトップ2人に拡散を依頼するなどの作業を行っている。翌日以降は、前日のソーシャルメディア上での発言をSocial Insightでダウンロードし、Excelで整理して関係者にメールで報告するというのが、ライフネット生命保険のモニタリングの流れだ。
複数の気になるキーワードで検索している場合に便利なのが、Social Insightの「風評監視メール」だと川端氏は説明する。この機能は、前日比でキーワードの検索数が急増したときにメール通知するサービスで、チェックしておきたいキーワードがある場合は、わざわざ個別にチェックしなくてもメール通知をアラートとして利用することで動きを把握できるという。
細かな分析を行うというよりも、動向把握のための情報取得をスムーズに行うためにSocial Insightを使い、モニタリングなどの運用業務を効率化している(川端氏)
このように話す川端氏は、「ソーシャルメディア傾聴」機能も活用していると説明する。この機能では、たとえば、広告の担当者が「今回のCMについてのツイートは前回のCMと比べてどんな感じだろう」と考えた場合に、期間を区切ってツイート数を比較して示せるという。
分析結果にはキーワードランキングも示されるため、ネガティブな内容が含まれていないか確認することもできる。名詞、動詞、形容詞ごとにキーワードが示されることを説明する。実際に、現在(2014年6月時点)放映中のライフネット生命保険のテレビCMでは、CMの内容と合致するキーワードがランキングに登場しており、こちらの期待通りにメッセージを届けられているのではないか、と川端氏は話す。
新しいCMに対しては、気がつく、おりる、押す、現れる、という動詞が含まれている。CMのストーリーはファミリーレストランで店員を呼ぶボタンを押すと、商品を説明する女性がパッと現われるという内容であり、キーワードがストーリーと合致することから、CMの内容がしっかりと伝わっていることがわかった(川端氏)
また、社内においてもレピュテーションを気にしているので、施策に対してネガティブな意見が出ていないかどうかについては、毎日社名入りツイートの一覧を添付したメールで異常の有無などを報告。苦情などのネガティブ発言がないことを示し、社内の不安を解消しているという。
ライフネット生命保険の公式アカウントのオペレーションの流れを説明した川端氏は、「企業の公式アカウントをただ運用するだけでなく、社内にどれだけ還元するかに迷っている人の参考にしてほしい
」と話し、最後は聴講者の質疑応答に応じながら講演を終えた。
株式会社ユーザーローカル
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