Webサイト配信に求められる3つの要件は「高速化」「セキュリティ」「ROI」/アカマイ・テクノロジーズ
Webサイトの表示が遅ければ、意思決定前に去っていく
まず岡本氏は、ガートナーが行った年商500億円以上の米国企業250社のマーケティング担当者の調査を紹介する。さまざまな企業のマーケティング活動のなかで、重要なものを1位から3位まで選択するという調査から、一番大切なのは「Webサイト」、次いで「ソーシャル連携」だと考えていることがわかったという。
一方、日本ではどうだろうか。平成22年度の経済産業省「消費者購買動向調査」によると、製品やサービスを選択するときに信頼できる情報源は何か、という意識調査における1位は「テレビ」となったものの、2位には「企業公式サイト」、3位には「価格比較サイト」、4位には「クチコミサイト」とWebサイトが続いた。日本においても、エンドユーザーにとってWebサイトは意志決定の重要なファクターであるのは間違いないと言えるだろう。今後、デジタルネイティブが成長するにつれ、さらなるWeb化の流れは加速する。
Webサイトを構成する要素は複数あるが、そのなかで鍵となる要素はなんだろうか。デザインやナビゲーション、情報、カスタマーサービス、ブランディング、顧客との関係構築、オンライン取引、コミュニティ機能などの要素があるなかで、岡本氏はコンテンツ作成の観点ではなく、コンテンツ配信の観点から下記の3点を挙げる。
- 高速
- 安全
- ROI(投資対効果)
デザインを重視し、良いコンテンツを制作することも大切です。しかし、どんなにすばらしいコンテンツであったとしても、サイトの表示が遅かったり安全ではなかったりしたら、消費者は意志決定の前にサイトを離れてしまうでしょう。売上拡大のため、どのようなWebサイトを作るべきかは他社様におまかせします。アカマイは、売上拡大のため、どのようにWebサイトを配信するべきかの部分をお引き受けします(岡本氏)
モバイルの伸長とますます複雑化するチューニング
一昔前までなら、Webサイトを高速化するためのチューニングは簡単だった。なぜなら、Webサイトは静的コンテンツが中心のシンプルで軽いものが多く、ユーザーの閲覧デバイスはほぼデスクトップであり、ネットワークは安定した固定回線で、ブラウザはIEが多数を占めていた。そうした王道の組み合わせを前提としてチューニングを行えばよかったのだ。
しかし現在、Webサイトにおける動的コンテンツの割合は急上昇しつつあり、リッチ化/双方向性の本格化も進んでいる。エンドユーザーの利用環境においても、モバイルデバイス/モバイル回線が爆発的に増え、OSやブラウザも多様化している。
調査会社のBI Intelligenceによると、2013年に世界でインターネットに接続されているデバイスは約37億台。うち、デスクトップPCとノートPCは約12億台、スマートフォンとタブレット端末は約20億台だという。今後もモバイル端末の著しい成長が見込まれるが、さらにデジタルカメラ、ウェアラブル端末など新しいカテゴリのインターネット接続端末が増えてくるだろう。ネットワークも、有線やWi-Fi、4G(LTE)、3Gなど回線によってパフォーマンスは異なる。ユーザーがさまざまな環境で、常時インターネットに接続する状況は当たり前になってくる。
しかし、これらに対応する“高速化チューニング”は、Web担当者が行うべきタスクなのでしょうか(岡本氏)
岡本氏は、Web担当者はデザインやコンテンツなどのコアの部分に注力し、煩雑性を増し、専門性を求められる“配信”に関しては外部ベンダーに任せるのが効率の良いやり方だと力説する。
グローバルサイト統合に関する4つの課題と地理的な問題
続けて岡本氏は、「サイトのグローバル対応についての問い合わせが増えている」と、グローバルサイトならではのコンテンツ配信の主な課題4つを挙げる。
課題1:グローバルコンテンツのガバナンス
海外市場に向けて進出する場合、現地にすでにWeb資産がある場合はそれを日本のサイトと統合する必要がある。これから海外に出ていくという場合は、現地に新たにヒトとモノを置いて情報を配信していく必要があるだろう。どちらにしろ、日本で一括してコンテンツのガバナンス(統一化)を図っていかなくてはならないのだ。実際に海外に進出してみると、現地でのWebサイトの構成がめちゃくちゃで、ロゴの色が日本と異なるといった例も珍しくないという。
課題2:Webシステムの統合による総保有コストの削減
複数の地域でWebサイトを展開している場合は、膨大な運用コストがかかる。それらを統合してTCO(Total Cost of Ownership:システムの総保有コスト)を削減せよ、と迫られる場合もある。TCOの削減という意味でも、Webシステムの統合は大切になってくる。
課題3:Webシステムの高信頼性による災害復旧対策
2011年の震災時には、企業の事業継続に対する問題がクローズアップされた。Webシステムを1拠点で集中管理していると、万一被災した場合に、事業継続が不可能あるいは大幅に遅れてしまい、ビジネス上の大打撃を受ける。Webシステムの高信頼性(2拠点化)によるディザスタリカバリ(災害復旧)対策も課題の1つである。
課題4:マーケティングナレッジの共有
商品によって状況は異なるが、グローバルに事業展開を行う際には、各国の消費者のレスポンスなどのナレッジを全社で共有したいというニーズは大きい。
高速化
世界に広がる“アカマイ網”で高速配信を実現
岡本氏はグローバルサイトの課題を挙げたが、この4つ以上に根本的な問題があると指摘する。物理的に離れた地域に、日本からコンテンツを配信することで生じる遅延だ。どんな優れたコンテンツであっても、遠く離れた国の現地ユーザーが閲覧した際に、Webサイトの表示速度が遅ければ不満を感じてしまうことになる。そうなると、離脱や直帰などが起こりやすい状態になってしまう。
アカマイは、こうしたWebサイトの表示高速化の課題に対して、基本的には3つのアプローチで対処していく。
- Webページのキャッシュ
- ルート(経路選択)の最適化
- 通信プロトコルの最適化(TCPコネクション終端、ウィンドウズサイズ変更)
そもそもインターネットは、回線の帯域や速度が保証されるものではない。遅延やパケットロスというインターネット自体が抱えている問題がある。そこでアカマイが提案するのが、92カ国900都市に、15万台近くのエッジサーバーを置くことで世界を結ぶ“アカマイ網”だ。
通常、ユーザーがWebサイトを表示する際には、運営する企業のWebサーバーのデータにアクセスしに行くが、アカマイ網では、各国に設置されたアカマイのエッジサーバーが代理でコンテンツを配信する。アカマイ網が自動的に最適な経路を選び、快適な閲覧環境をユーザーに提供するのだ。こうしてアカマイが配信するコンテンツは、世界中のWebトラフィックの15~30%に当たるという。
もちろん、配信したいすべての情報を各サーバーに置いておくことはできません。その場合、たとえば中国のエンドユーザーが福岡にある企業のサイトを見るためには、福岡のサーバーにある情報を取りに行くことになりますが、一番混雑が少なく品質の良いアカマイ網のルート(経路)を自動的に選ぶようにするのです。その際に適宜通信プロトコルのチューニングを行って、快適なスピードで閲覧できるように調整します。そうすればエンドユーザーのストレスはかなり防げます(岡本氏)
実際に、このアカマイ網を利用してサイバーエージェントが「Ameba 芸能人・有名人ブログ」の高速化に取り組んだところ、読み込み時間は約3分の1に、リクエスト数は約3分の2にまで改善されたという。
また、パナソニックは世界61地域でバラバラだった70の商品サイトを、アカマイ網を利用して「panasonic.com」ドメインに一極集中化した。これにより、従来はグローバルで平均13秒かかっていたサイト配信時間が、平均1秒にまで短縮できたという。
同様にNECもアカマイ網を利用して世界31カ国のWebサイトを統合した。従来であれば、ブラジルなどの物理的に離れた国に配信する際には、20~30秒の時間がかかっていたのだが、その問題を解決できたのだという。
セキュリティ
パフォーマンス劣化を起こさないセキュリティソリューション
ここまでは“高速化”を主眼に置いた話が続いたが、理想的なWebサイトを作ったとしても、そこにはまだセキュリティという大きな問題がある。サイトが攻撃によってダウンしたり、情報漏えいやサイト改ざんによる被害が発生しては台無しだ。
たとえば、Webサーバーに向けて大量のリクエストを投げつけるDDoS(分散型サービス停止)攻撃の規模は、世界中のボットネットを利用して年々拡大化し、頻度も増加傾向にある。
また、こうしたDDoS攻撃を囮に、Webサイト・アプリケーションの脆弱性を標的として、データや金融資産の盗難を企てる攻撃も増加し続けている。セキュリティ診断会社の米Veracodeによると、ハッキングによるデータ盗難の原因の54%をWebアプリケーションに対する攻撃が占めており、4つの攻撃のうち3つはWebアプリケーションの脆弱性を利用しているのだという。
さらに調査会社のPonemonによると、こうした攻撃は2011年に比べ2012年は43%増加している。加えて攻撃の「検知」「修復」「原因調査」といった被害最小化のコストは、平均11億5,600万円ほどかかり、前年度の8.9億円から30%もアップしているという。また、実際に企業が攻撃に気付くまでのタイムラグという問題もある。データ盗難にかかる時間は数時間ほどだが、盗難されたユーザーが気づくまでに数日かかることは珍しくなく、被害の拡大にもつながる。
Webセキュリティが難しい理由の1つ目は「時間」だ。たとえば、Webサイトに対する攻撃手法「SQLインジェクション」に対してしっかりとした対策を専門家に依頼して取ろうとすると、サイト構築には数か月の時間がかかる。また、「人」の問題もある。企業内にアプリケーションのセキュリティに特化したスタッフを抱えている例は少なく、特に日本では大企業でも1名いればよい方だ。こうした状況がセキュリティ対策を難しくしている。
では、アカマイはどのようにこうしたセキュリティ問題に対応するのか。先ほど述べたように、アカマイは900都市にエッジサーバーを置いており、すべてのサーバーにWAF(ウェブアプリケーションファイアウォール)を搭載している。攻撃者から一番近いサーバーで攻撃のトラフィックを感知し、攻撃を水際で遮断し、企業のWebサイトを安全に保つのである。
アカマイは、正しいユーザーを見分ける精度も高く保っています。たとえば、2014年2月にリリースしたWAFは、「False Negatives」(攻撃を正しいアクセスと判定する)の可能性は4.89%、「False Positives」(正しいアクセスを攻撃と判定する)の可能性はわずか0.09%となっており、これは他ベンダーの製品と比べても3倍以上の高い精度を誇っています。さらにアカマイは、SQLインジェクション、XSS、PHPインジェクション、RFI、LFIなど幅広い脅威をカバーしています(岡本氏)
世界中にネットワークを持つアカマイ網は、1日あたり平均100億件もの攻撃を受けているという。それらのビッグデータを解析エンジンで常に分析し続け、チューニングに活かすことで、高い精度を保っているのだ。セキュリティに配慮した結果、Webサイトが重くなるのではないかという懸念もあるが、もともと提供している高速化ソリューションにセキュリティ機能を搭載しているアカマイでは、サイトパフォーマンスの劣化がないという。
セキュリティ製品を採用して、Webサイトのパフォーマンスが上がるというベンダーはアカマイ以外にはない(岡本氏)
ROI
健全なROIを実現するアカマイ
この他、アカマイは、最適なROIを実現するために、無駄なインフラコストをかけないための「ピークトラフィック対応」についても引き受けるほか、レスポンシブWebデザインに欠かせない画像の最適化を行う「Image Converter」といった、運営コスト削減のためのさまざまな機能も提供している。
岡本氏は最後に改めて、Webサイトの配信に求められる3つの要件は「高速化」「セキュリティ」「ROI」だと強調し、「アカマイのミッションは、安定性、安全性、高速性の視点で、インターネットをビジネスクラスへと変革することだ
」とアピールして講演を終えた。
アカマイ・テクノロジーズ合同会社
http://www.akamai.co.jp/
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