LINEも行っている“第三者検証”で大手サイトを検証した事例8連発!/アルゴスサービスジャパン
エンドユーザーの環境で行うWebサイトの性能測定・分析
アルゴスサービスジャパンの代表取締役、佐藤茂之氏は、「人気サイト実録性能データ比較:コンバージョンに直結するWebサイト性能データの活用方法」と題し、第三者検証の事例を交えて講演を行った。
講演前半では、同社のWebサイト性能測定・分析ツール「ARGOS(アルゴス)」およびWebサイトの性能測定のポイントについて解説。後半は、実際に行った大手サイトの計測事例を紹介した。
「ARGOS(アルゴス)」は、アクセス解析ツールやリソース監視ツールではなく、エンドユーザー視点の第三者検証を行う“Webサイト性能測定・分析ツール”だ。ARGOSは、パソコンやスマートフォンなど実際に動作している端末にツールをインストールして、Webサイトの性能測定やデータ収集、分析を行う。つまり、“ラストワンマイルの向こうにいるエンドユーザーの環境”からサービスにアクセスしてデータを集めるというスキームを取っている。
従来の、リソース監視や死活監視といったツールでは、企業内部の端末から見えるデータを分析に利用する。しかしそれでは、エンドユーザーが実際に企業のWebサイトにアクセスした際に生じているであろう回線負荷や接続不良、サーバーの遅延応答、DBのレスポンス低下、Webサイトのコード不良、外部リソース遅延などの多岐にわたるボトルネックを一括して把握することができない。
実機から計測しているARGOSであれば、実エンドユーザーと同環境から測定するため、ボトルネックが把握できるほか、競合や類似サイトとの性能比較も可能になるのだ。
同ツールは、あの無料通話・メールアプリ「LINE」の性能管理ツールとしても使われているほか、日本最大級のゴルフポータルサイト「ゴルフダイジェスト・オンライン」や、音楽・エンタメ事業大手のオンラインサイト「TOWER RECORDS ONLINE」などにも採用されている。
Webサイトの性能測定が重要な4つの理由
では、なぜこうした性能測定が重要なのか。佐藤氏は、4つの観点から性能測定の重要性を語った。
1. SEO
すでに、Google検索へのSEO対策においては、コンテンツ、リンクと並んで、性能が指標の1つになっている。SEO対策を行う際に、コンテンツやバックリンクについて注力していても、ページの表示速度については後回しにしてしまうという企業は多いが、自社サイトの性能を把握しておくことは重要である。
2. コンバージョン
コンバージョン成果には、ページの表示速度が大きく影響する。
たとえば、Amazonは、反応が0.1秒遅くなると売上が1%ダウンすると発表している。
また、グーグルでは、ページ反応が0.5秒遅くなるとアクセス数が20%ダウンすると発表している。
さらに、米シンクタンクのアバディーングループによると、一般的に表示スピードが1秒遅くなると、PVは11%、コンバージョンは7%、顧客満足度は16%ダウンするという。これが真実だとすると、1秒の速度改善はそのまま7%の売り上げに直結することになるのだ。
3. 直帰率・離脱率
「重いサイトから離脱して、軽いサイトに満足したエンドユーザーは、80%の確率で重いサイトには二度と帰ってこない」と佐藤氏は言う。つまり、Webサイトの性能が、直帰率・離脱率の最大要因になっているのだ。
4. モバイルユーザー
スマートフォンやタブレットといったモバイル端末からのWebアクセスは増え続けている。モバイル端末はPCに比べ、回線速度やCPU、メモリなどにおいて劣っているケースが多く、Webサイトがモバイルに最適化されていない場合、表示に時間がかかることで、ユーザーが離脱してしまう可能性が高い。モバイルユーザーは、PCユーザーより表示速度に敏感であると言っていい。モバイルユーザー視点の性能調査は特に重要となる。
楽天、ANA、東京都……大手サイトを実際に測定した8つの事例
では、実際にARGOSを利用し、代表的な大手サイトにアクセスして測定した第三者検証の事例を順番に見ていこう。なお、下記の事例は第三者検証でわかった客観的事実とそこからの推測に過ぎず、特定のサイトに対して何らかの含みがあるわけではない。「誤解があればご指摘いただきたい
」(佐藤氏)という。
ARGOSは、Webサイトの表示までにかかる時間を5つに、サイト性能については6つに切り分けて比較している。
Webサイトの表示までにかかる時間の切り分け
- DNS Time(DNSタイム)
- Socket Time(ソケットタイム)
- Request Time(リクエストタイム)
- First Byte Time(ファーストバイトタイム)
- Download Time(ダウンロードタイム)
Webサイトの性能比較項目
- Response Time(レスポンスタイム)
- Variation Rate(変動係数)
- Page Size(ページサイズ)
- Comp Count(パーツ数)
- Comp Size(パーツサイズ)
- Throughput(スループット)
事例1:「楽天」は遅いのか?
佐藤氏は、「業界のオピニオンリーダーが、“楽天のWebサイトは遅い”と言っているが、実際にそうなのだろうか」として、ECサイトの楽天市場、Amazon.co.jp、Yahoo!ショッピングの3サイトを比較した形でサイト表示の検証を行った結果を示した。2014年4月2日から4月30日まで、東京、岡山、新潟県長岡の3拠点から毎日216回測定を行い、すべてNTT光回線、ブラウザはIE9など条件を揃えている。その結果、「楽天のサイトはやはり速くはない
」(佐藤氏)ことがわかったという。
表示時間の切り分けとサイトの性能比較を見ると、楽天の場合は、「First Byte Time」(ブラウザからWebサーバーへHTTPリクエストの最後のパケットが送信されてから、ブラウザがWebサーバーから最初のパケットを受信するまでの時間)が非常に長いことがわかった。その原因として、「Comp Count」(パーツ数)の多さが遅延理由になっていると判断できる。これらのデータから、「トップスピードを上げる」「変動係数を下げる」といった、適切な最適化対策を導き出すことができるのだ。
事例2:ANAとJALの表示速度が倍近く違う理由
同様に同じ業態のサイトとして、ANAとJALの国際線予約サイトを比較したところ、ANAの表示速度は約8秒、JALは16秒近くと倍近くの差があった。JALのサイトでは特に「Download Time」(コンテンツのダウンロードにかかる時間)が6秒以上と長く、ボトルネックとなっている。これは、「Page Size」(ページサイズ)はANAが1,891キロバイト、JALが3,389キロバイトと2倍近くの差があることが原因と見ることができる。同じ国際線の予約サイトでれば、必要なコンテンツにさほど差はないと考えられるため、改善するならばページサイズということになるだろう。
事例3:東京都のサイトから見てとれる“リソース共有”
官公庁の事例としては、東京都のWebサイトがあげられた。東京都のWebサイトを2か月にわたって調査した結果、トップページが表示されるまでに速ければ1秒、遅ければ3秒と表示時間のばらつきがあった。さらに、平日は遅く、休日は速いという特徴があり、平日の場合は、朝8時頃から重くなり、ランチタイムには軽くなり、午後からまた重くなり、夕方6時過ぎには軽くなるといった傾向が見られる。
つまり、“職員が仕事を始めるとWebサイトの性能が低下する”と考えることができ、このことから、職員が使うシステムとWebサイトの中に何らかのリソース共有があるのではないかと推測できる。そのリソース共有部分を改善すれば、安定的に速いスピードでサイトを表示させることができるだろう。
事例4:東京23区の速いサイト、遅いサイト
自治体のサイトは、公共性の高い情報提供の場として、非常時など通信環境が良くないときでも重要な情報を安定的に入手できることが重要な目的の1つだと考えられる。こうした観点で、東京の23区すべてのWebサイトを調査したところ、文京区、品川区、目黒区などのサイトでは1秒程度で情報が入手できたが、千代田区では7秒、墨田区に至っては10秒台となってしまっている。平時で10秒台ということは、残念ながら、非常時に情報をすばやく入手することは難しいと考えられる。
事例5:大手新聞4紙のサイトから見えるWeb戦略
大手新聞社4紙のトップページを検証したところ、“速い三紙と、遅い一紙”が明らかになった。表示が速いのは日本経済新聞、朝日新聞、読売新聞で、遅いのは毎日新聞だった。
日経、朝日、読売の3社は有料サービスを念頭に置いたWeb戦略であり、毎日は、記事を無償提供し、広告を収入源とする戦略である。広告展開をメインとする場合、さまざまなWebパーツや解析ツールをサイトに装備する必要があり、それがサイトを重くしているのではないかと考えられる。
日経と毎日のサイトに使用されているサイトパーツのドメインを比較してもその傾向は見てとれる。測定中に日経新聞のサイトが使用していたドメイン数は24(そのうち3分の1がnikkeiドメイン)である一方で、毎日新聞のドメイン数は186と日経の8倍近くとなり、多くのインターネット広告やアクセス解析系のドメインが検出された。日経新聞は、自社サイトは自社でコントロールしようという姿勢が見て取れる一方で、毎日新聞は、広告戦略に対応するためにサイト性能に影響が出てきているのだ。このように、Webサイトの測定結果から各社の経営戦略も見てとることができる。
事例6:大手ゼネコン4社のサイトから見えるWeb戦略
大手ゼネコン4社、大林組、竹中工務店、鹿島建設、大成建設の比較も各社のWeb戦略が顕著に見てとれる事例だ。
4社の中で一番サイト表示が遅いのは大林組である。分析を見ると、大林組のサイトはデータサイズが小さく、パーツ数も少ない。しかしサイト表示は遅い。そこからは、サービス基盤にあまり投資をしていないこと、つまりはWebサイトにあまり注力していない、まだWebを信じていないということが推測できる。
対照的なのが竹中工務店だ。ゼネコンのサイトを訪れるユーザーは、投資活動をしている人間か、就職活動中の学生がほとんどだが、竹中工務店は、そうしたユーザーに向け、ビジュアルを多用した多くのデータを配信している。ページサイズは大林組の10倍でありながら、サイト表示までは2秒台と速く、Web戦略を重視し、かなりの投資をしていることが見てとれる。
事例7:弱点がわかれば投資ができる、チケットサイト3社の事例
大手チケット販売サイトである、チケットぴあ、ローソンチケット、楽天チケットの3社はいずれも普段は、サイト表示まで3秒付近の快適な数値で動作している。しかし、2014年5月15日17時から、チケットぴあのみ大幅に性能が落ち、表示速度が最大で6秒台まで低下した。ローソンチケット、楽天チケットは性能を維持していたため、そこには、事故あるいはメディア露出からの大量流入など、何らかのチケットぴあ固有の事情があったと考えられる。この結果を、アクセス解析やイベントスケジュールなどと照らし合わせることで、事前に予見することができ、今後の防止や、投資計画に役立てることができるだろう。
事例8:首都圏民放テレビ局5社のサイトで1社だけ遅いサイトは?
最後に、首都圏の民放テレビ5社(日本テレビ、TBSテレビ、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)のサイトを測定した結果、明らかに表示時間の遅い1社があった。それはテレビ東京である。テレビ東京以外の4社は、2~4秒程度のサイト表示を維持し続けている一方で、テレビ東京は残念ながら10秒超となっている。グラフィカルなコンテンツ、多くの情報、FacebookやTwitterといったSNSとの連携など、さまざまな内容を盛りだくさんに詰め込んだ結果がこうしたサイトの重さにつながっていると考えられる。
こうした事実を客観的に把握し、サイトが重くなってもいいという考えで管理をしていらっしゃるのであればまったく問題ないが、もしかしたらテレビ東京の方はこの事実をご存じでないのかもしれない(佐藤氏)
コンバージョンに直結するWebサイト性能データの活用
前述した通り、同業種のサイトであるにもかかわらずサイトの性能に大きなばらつきが見られる理由として、これまで日本ではさほど第三者検証は重要視されてこなかったということがある。その理由として、業界構造の問題が考えられる。
日本では欧米に比べ自社エンジニアが少ない。Webサイトを作成する際に、米国では70%がインサイト(自社)のエンジニアが作成するが、日本では70%がアウトソース(外注)のエンジニアに依頼すると佐藤氏は言う。そうすると、第三者検証を行うにあたり、利害が絡んできてしまうのだ。
たとえば、“低予算で短納期”という条件で、外注者がWebサイト制作を請けざるを得ないことも多いと思います。その場合、請けた条件で利益を出そうとすれば、最適な性能のWebサイトを制作できないこともあるでしょう。このような状況下では、外注者であるWeb制作担当が、第三者検証の調査データに基づいて、クライアントと問題を共有するという体制は作りづらい(佐藤氏)
しかしこれからは、ユーザーの環境から見た、客観的なWebサイトの性能測定を行い、問題を共有し、解決していくという姿勢が必要なのではないだろうか。
- 競合他社に負けないWebサイトの性能にしたい
- 多岐にわたるデバイスやコンテンツデリバリーに対応したい
- ページの表示速度を上げ、直帰や離脱を防ぎたい
- Googleの検索上位にランクされるようにしたい
こうした項目に取り組み、コンバージョンレートを上げていきたいと考えるなら、第三者検証を使って、Webサイト性能データを正確に把握することが必須だと言える。そうして、目標や改善点をはっきりさせれば、投資根拠も明確にできるだろう。
佐藤氏は最後に、「第三者検証は年間数千万円のコストがかかるというケースもあるが、ARGOSであれば年間70万円からのスモールスタートが可能です
」とARGOSをアピールして講演を終えた。
アルゴスサービスジャパン株式会社
http://www.argos-service.com/
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