なるほど!アクセス解析ケーススタディ

自動最適化ツールで広告費を5%削減。CVRは109%になり問い合わせも増加/株式会社GABA

自動最適化ツールといっても、使いこなせなければ猫に小判。GABAは人の手とツールを使い分けて成果を上げている

Gabaマンツーマン英会話/株式会社GABA

効率的なCVを得るために多数のツールを導入
人の手と自動化ツールを組み合わせてコスト削減と高効率化を実現

GABAは英会話スクールを運営する会社で、「Gabaマンツーマン英会話」という名前が示すように、グループレッスンではなくマンツーマンで確実な成果を得られることが大きな特長だ。英会話スクールの新規入会者が減少しつつある中、同社は2005年から受講生を確実に増やし、市場シェアを伸ばしている。そのGABAを支えるWebマーケティングでは、数種類の自動最適化ツールを使い分けて広告費を抑えつつ、効率的にコンバージョンを伸ばす手法が用いられている。

野本 幹彦(フリーライター)

株式会社GABAの運営サイトの概要や導入しているツールの概要は記事の末尾を参照。

実践を意識したマンツーマンのスクールで英会話の上達を目指す

株式会社GABA
マーケティング部門 オンライン課
シニア・マネージャー
山根 豪太氏

2000年から英会話スクール事業を本格化させ、常時2万人前後の受講生に英会話レッスンを提供しているGABAの特長をマーケティング部門のシニア・マネージャーの山根豪太氏は次のように話す。

これまでの一般的な英会話スクールは、駅前にあって、グループレッスンが受けられるということをTVCMで広告するといったものでした。20年ほど前は“英語の上達”を売りにしていたのではなく、どちらかというと“英会話スクールに通うというステータス”を売っていた時代だったと言えます。そのため、グループレッスンという形で誰でも安価に利用できるという手法が取られていたのですが、ステータスではなく“英語の上達”が求められてきている現在では、個人のレベルやニーズに合わせられるマンツーマン形式で確実な英会話力を身につけることが重要だと我々は考えています

5~6人のグループレッスンなら1人あたり40分間で1,000円くらいの価格で提供できるが、マンツーマンとなると単純に考えて40分間で5,000円~7,000円の費用がかかることになる。そのため、GABAに興味を持つユーザーも限られてくると山根氏は言う。

“上達の費用対効果”ということを考えれば、決して高い費用ではないのですが、単純な金額比較では高く感じられてしまうので、我々のお客様は英会話に意欲的な人が多いと思います。そこからさらに掘り下げて、ビジネス寄りのF1層/M1層、自己啓発意欲の強い人などをターゲットにしていきたいと考えています。可処分所得などが削られている現在の市況の中で、それでもお金を払って英会話を習いたいと考えているのは、やはりビジネスで英語を必要とされている方が多いと思います。そのため、我々のスクールは朝7時から夜10時40分まで開講して、忙しいビジネスパーソンが出社前や仕事帰りに通えるようにしています。出社前に英語を勉強できるのは好評で、脳を活性化させてから仕事ができると言う人もいます

マンツーマンであるため、スキルにあわせた個別のカリキュラムを、自由に好きな時間を使って受講できることもGABAの大きな特長だ。Webサイトでは、受講生ごとのマイページ「myGaba」がPCまたはモバイル向けに提供され、レッスンの復習や新出単語の単語帳などを利用できるという。

競合大手と対抗するためにSEMを徹底的に強化する

従来の英会話スクールとは一線を画した特長を持つGABAだが、大手に比べれば一般の認知度がまだまだ低い時代が続いた。そのような中でマーケティングを行っていくコツを山根氏に伺った。

英会話スクールは安い、というイメージが根付いてしまっているので、お客様の意識を改革することが我々マーケティングのチャレンジになります。今までの広告はTVCMなどを使って、安価で、キャンペーンも実施していることを訴えるものでしたが、我々はあくまで“上達する”ということを訴える必要があります。しかし、競合他社は広告費をかけて認知度も高いため、我々のやることは限られていて、興味のある人にきちんと訴求して、きちんと引き込んでいくようなコミュニケーションフローが求められます。広告にはオンラインとオフラインがありますが、オフラインでしっかりと認知させて、オンラインでしっかりとお客様を獲得していかなければなりません。特にオンラインに関しては、GABAに注目してくださるお客様をしっかりと獲得する仕組みを作り上げて、費用対効果を追求しなければならないと考えています。また、競合他社に興味を持っているお客様の目をGABAに向けさせることも考えると、必然的にSEM関連の強化がオンラインの最重要項目となってきます

オンラインのための効果的な施策は、山根氏が5年前にGABAに入社した頃は行われていなかったという。

その当時は特にSEMなどはほとんどやっておらず、一般的なバナー広告の展開や情報系サイトとのタイアップをやっているくらいでした。そこで、入社して最初に行ったのが、先ほどお話したオンラインとオフラインの役割を明確にして、検索エンジン回りを強化するということです。認知度が圧倒的に低く、競合他社が大規模なTVCMを展開している中で、Webでブランディング展開しても効果はあまり出てきません。まず、SEMをやっていかなければという状態でした。我々がマス広告を打てなくても、競合他社がマス広告を打ってくれれば、英会話に興味を持っている人がインターネットで検索をする機会が増えます。英会話に関する検索結果は、我々のターゲットとなるお客様が必ず通る場所なので、その中で我々がどのようにお客様を獲得していくのかが課題となっていきます。最初の1年間は即効性のある検索連動型広告を求めて、試行錯誤していく毎日でした

目視するべきところと自動化できるところを明確にする

代理店に検索連動型広告のレポートを依頼し、レポートを基に分析を繰り返していたマーケティング部門では、インプレッション(IMP)、クリック数(CT)、クリック率(CTR)、コンバージョン数(CV)、コンバージョン率(CVR)の5つのKPIを検証の軸にして検索連動型広告を運用している。しかし、1年ほどで目視だけで分析を行うことに限界を感じてきたと山根氏は話す。

最初は管理するキーワード数が少なかったのですが、キーワード数が5000を超えていくと5つのKPIを軸に目視できるところとできないところが出てきました。これらの作業を1年間やっていく中で、人が見て分析するところと、そうすべきではないところが経験としてわかってきました。たとえば、CTRやCVRなどのパーセンテージを目視で分析をしても、それほど最適化ができないことがわかりました。このような作業は、自動でパーセンテージをウォッチして改善していけばいいと考えたため、自動化できるようなツールを探していました。その分、IMPやCTの最適化は目視で、たとえば競合がどのような原稿で検索連動型広告を出しているのか、自社の広告の上下にどのような広告が出ているのかなどをチェックしていこうと考えました

山根氏が指摘するように、検索連動型広告では同じ検索キーワードに競合が出稿してくる可能性もあるため、自動化ツールの数値をチェックするだけですべて最適化することは難しい。仮に広告のパフォーマンスが落ちたとすると、その原因には自社だけでなく、競合の広告原稿や競合サイトのランディングページのクリエイティブなども影響するためだ。こうした、外部要素に関しては、目視でのチェックが欠かせない。

現在、GABAではサイト全体のアクセス解析を「Visionalist」などで行い、各KPIの検証で自動化を行うためのツールを役割ごとに数種類用意している。ツールを増やして効率化することは、最終的にはCVの上昇と広告コストの削減を見込むことができるが、導入コストの面で経営層を説得する必要があるのはないか、と話を向けると「検索連動型広告全体の中から自由に広告費を動かせるので、効率が上がるならツールのコストが上がっても問題はなかった」と山根氏は答えてくれた。しかし、もちろん経営層への説明は必要であり、相応の結果を出さなければツールを多用する意味はない。GABAでは、ツールの効果についての数値を設定し、効果のないものは別のツールに入れ替えるなどして現在の運用体制を築き上げてきたようだ。

株式会社GABA
マーケティング部門 オンライン課
シニアWebプロデューサー
奥 康隆氏

その一方で「Web担当者は全体を見渡すことが必要」と山根氏は話す。自動化できる部分を自動化できても、目視して分析を行い正しい判断を行わなければならないというのだ。同様に、マーケティング部門のシニアWebプロデューサーである奥康隆氏も次のように話してくれた。

代理店の方や自動化ツールに分析を任したとしても、最終的な決断は自分達で行わなければならないし、責任も自分達で負わなければなりません。そのために、担当者は専門分野の方と同じぐらいの知識が必要だと思います

複数のツールを組み合わせてコスト削減とコンバージョン向上を実現

※1 編注

GABAでは、2007年12月にオムニチュアが開発元の米オファーマティカ社を買収する前から利用している。

GABAで分析の自動化のために使われているツールの1つは、2年前に導入された「Omniture Test&Target」※1だ。

実はLPO(ランディングページ最適化)は昔から人の手でずっとやっていたので、この部分を自動化できたらいいと思い、LPOを自動化するツールをかなり前から探していました。2年ほど前に、適したツールが見つかったという話を代理店の方から聞いて導入したのが最初です。ツールを導入してからCVRを1~2ポイント上昇させることができ、非常に効果の高いツールだと思っています」(山根氏)

導入後はA/Bテストなどで比較しながらよりよいランディングページのクリエイティブを選択するようにしたGABAでは、約3か月に1回の検証を行い、奥氏によれば「検証するたびに良い結果が残っていった」という。しかし、CVRの上昇に関しては、単純にその高さを目指すのではなくバランスが必要であると、山根氏は話す。

いくらCVR(率)を高めるツールを使って頑張っても、CV(絶対数)自体が増えなければ意味がありませんし、効果が出ているとは言えません。CT(クリック)が少なければ、CVRはすぐに上がるので、CTとCVのバランスを見ていくのが毎回のチャレンジになっています

また、2008年4月には、新たに検索連動型広告の自動入札ツールとして「SearchIgnite」を導入している。

CPC(クリック単価)をどのように調整していくかを課題としてとらえていたのですが、この最もセンシティブで肝となるべきKPIの部分を自動化しています。現在、1万を超えるキーワードを扱っていますが、その1つひとつの単価を毎日調整するのは事実上不可能なので、クリック単価は特に自動化したい部分でした。ツールを導入することによって、1年足らずでCPCを79%まで抑えることができ、CVRを109%にすることができました。広告費は5%削減でき、申し込み数も5%向上しています」(山根氏)

これらのツールの効果は、実質的な数値の改善だけでなく、業務自体の改善にも役立っていると山根氏は続ける。

ツールの導入によって、何が起きているかということがわかりやすくなったと思います。自動化する部分と、目視する部分を明確にすることで、どの数字を見れば何がわかるのかが明確になり、課題が見つけやすくなったと思います。たとえば、あるキーワードのクリック単価が跳ね上がったり、コンバージョンが低下してきた場合は、競合が参入してきたり、競合のランディングページが変わったなどの何かのアクションが起きているはずです

GABAでは検索連動型広告やランディングページの最適化ツールの他、行動ターゲティング分析、広告効果測定ツールなど、PDCAサイクルのフェイズに応じた各種ツールを利用している

現場での試行錯誤が学習の近道、オンラインの数値は説得力を生む

前職はプログラマで、5年前に入社してきたという奥氏はアクセス解析についてはGABAに入ってから憶えていったという。

最初はデータを見ても何もわからないという状態でした。徐々にやっていって、押さえなければいけないポイントを憶えつつ、現場で勉強していったと思います。ただし、ツールを増やしていったことで自分達がやらなければならなかったことが明確になってきたという思いはあります。今まで気づかなかったことや、機会損失につながっていたことに気づけるようになったのは、ツールのおかげだと思います

また、今までにオンラインとオフラインの両方のマーケティングを行ってきた山根氏は、その違いや共通点を次のように話してくれた。

基本的には、オンラインは数学的なマーケティングで、オフラインは感性的なマーケティングだと思っています。ただ、最近はオンラインとオフラインの違いがあまりなくなってきていますが、一連の流れの中のチャネルであっても、購買プロセスに関しても、オンラインとオフラインを分けて考えないようにはしています。違いがあるとすれば、オフラインは感覚でしか捉えられませんが、オンラインは数字で結果がすぐに目に見えるということでしょう。数字でどう操っていくかということがオンラインのマーケティングの特徴です。また、数字で結果を表せるので、自分のような若い人間でも上司や周りの人を説得できる力強い材料が出せるのもオンラインの特徴ですね。オフラインで“この広告をやりましょう”と若い人が提案しても根拠が見えないのでなかなか相手にされませんが、オンラインでは数字で説得できますから

フェイズに応じた最適化ツールを利用しているGABAのWebマーケティング。今後はどのようなツールや機能が出てきてほしいか、と尋ねると、奥氏から次のような答えが返ってきた。

SEOを管理する優れたツールが出てくると助かりますね。たとえば、新しい施策のために外部リンクを増やした場合の結果をシミュレートしたり、キーワードごとの現在の順位と新しい施策を導入したことによる予想順位を比較できたりするツールがあると、新たな施策も立てやすくなります

山根氏は、今後のマーケティング展開について「Webは、まだまだ多くのことが行えると思っています」と話す。

我々のスクールはマンツーマンなので、どうしても会員様同士の横のつながりが希薄になりがちです。今後は、Web上のコミュニケーションツールなどを利用して横のつながりをどのように補っていくかが課題だと思っています

2009年4月1日には大手町ラーニングスクールを開校し、36校で英会話スクールを展開することになるGABAでは、今後もさまざまなツールを試しつつ、効率的なアクセス解析ができるような試みが繰り返されていく。「この不況下にあっても、ビジネス層の方々はよりビジネスに直結したスキルを身に付けたいと考える方は多いようです。今後もこれらのビジネス層への訴求を高めていくとともに、法人のお客様への訴求も強化して行きたいと考えています」と山根氏は話すが、ツールの力を借りつつ、ビジネスの状況の変化に合わせた判断や施策が今後も重要となっていくのだろう。

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Gabaマンツーマン英会話 サイト概要

インストラクターとのマンツーマンによるレッスンが特長の英会話スクール。カウンセリングによって個人の目的やレベルに合わせたより良い学習プランを立てることが可能。首都圏、名古屋、関西圏に36校のラーニングスクールを開校し、オンラインで予約やレッスン記録の確認などができる受講生ごとの専用サイト「myGaba」も用意されている。


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株式会社GABAの選んだ自動最適化ツール

ランディングページの最適化を自動化
高度なLPOを実現してコンバージョンを向上

Omniture Test&Target(オムニチュア株式会社)
http://www.omniture.com/jp/products/conversion/testandtarget

Omniture Test&Targetは、A/Bテストと多変量解析(MVT)によって、最も効果的なクリエイティブを自動的にテストして特定できるツールだ。訪問者セグメントとルールに基づいて、最適なコンテンツを提供する1to1マーケティングなどの実施も可能。思いついたらすぐに新しいコンテンツやプロモーションをテストでき、シンプルなインターフェイスで何度もテストを繰り返すことで最適なウェブサイト構築を目指せる。



ポートフォリオ管理で検索連動型広告の
広告費用対効果を最適化する

SearchIgnite(サーチイグナイト ジャパン)
http://about.searchignite.com/jp/

SearchIgniteは、検索連動型広告の自動入札ツールだ。入札キーワードの情報を自動集計して広告費を最適化する。大量のキーワードに対しては金融理論に基づく入札ロジックSPOT(SearchIgnite Portfolio Optimization Technology)を、重要キーワードに対しては柔軟で多機能な入札管理方法を用いて最適な入札管理の実現を可能にする。数十万を超えるキーワードの運用ができる。また、入札最適値を分析するための豊富なレポート、自動的に最適な予算配分での広告配信を行う機能を備えているため、幅広い業種の広告主へサービスの提供が可能で、豊富な広告レポートを用意している。

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※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材時点または記事初出時点のものです。

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