なるほど!アクセス解析ケーススタディ

ブランディング目的でもアクセス解析から“やるべきこと”を見つけてPDCAにつなげる/ソニーのアクセス解析事例

明確なコンバージョンを設定しづらいブランディング目的のサイトでもアクセス解析の結果をヒントにPDCAは実践できる
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今回のアクセス解析導入事例

コンバージョンが明確ではないブランドサイトや企業サイトでは、アクセス解析によるPDCAはやりにくい。

こういった話をよく耳にするが、それは大きな間違いだ。

たとえ明確なコンバージョンポイントや売り上げ目標やCPAといった指標がなくても、Webサイトに目的があり、ユーザーが訪れているなら、アクセス解析によって「何をすべきか」のヒントは得られる。

ソニー株式会社の「α CLOCK」(アルファクロック)は、同社のレンズ交換式デジタル一眼カメラ「αシリーズ」のブランディングサイトだ。「撮影した世界遺産の写真を広めること」を目的に、アクセス解析でユーザーのニーズをとらえてPDCAを実践している。また、2012年の「第6回企業ウェブ・グランプリ」ではベストグランプリを受賞するなど、業界内での評価も高い。

その「α CLOCK」を担当する同社デジタルイメージング事業本部の高江遊氏に、KPIのとらえ方やアクセス解析ツールの活用について話を聞いた。

目的はαシリーズで撮影した世界遺産の魅力を伝えること
閲覧数とダウンロード数で人気度を把握

高江遊氏
高江 遊 氏
ソニー株式会社
デジタルイメージング事業本部
商品企画部門 商品企画2部2課
プロダクトプランナー

「α CLOCK」は、ソニーのαシリーズで撮影した世界遺産の写真が公開されている。1つの遺産に対して異なる時間帯で定点撮影を行うことによって、被写体のさまざまな表情をとらえている。「クロック」という名前は、この「時間帯」の要素に由来している。

サイトにアクセスするユーザーの行動としては、次のようなものが考えられる。

  • 遺産ごとや時間帯ごとの写真鑑賞
  • 写真の壁紙としてのダウンロード
  • LIVE TOUR(スライドショー)の利用

アクセスするユーザーの傾向やコンバージョンポイントは、どのようになっているのだろうか。

αシリーズのブランディングですから、カメラやレンズに興味のある方は当然ですが、世界遺産や美しい景観に興味のある方もターゲットです。撮影に使用した製品の情報やリンクも載せていますが、あくまでも目的はブランディングです。

α CLOCKにアクセスしてαで撮影された写真を楽しんでいただくことがコンバージョンで、その先にある製品販売への貢献を期待した作りにはしていません。プロモーションが目的なら、別の作り方や見せ方が必要になります。

ただ、写真ごとの閲覧数やダウンロード数、滞在時間などは把握しており、人気度の参考にしています。IFAやCESといったエレクトロニクス関連の展示会イベントで、α CLOCKの写真をディスプレイ素材として使う際に、人気の高いものから選ぶといったことをしています。また、国や地域ごとにどのような写真が人気があるのかといったデータも分析して活用しています。」(高江氏)

ブランディング目的のサイトですが、横展開の際に「どの写真が人気か」などをデータで調べるようなこともしています。

Webサイトのアクセス解析で得られるデータは
関連企画の展開にとっても重要

高江遊氏

「α CLOCK」が立ち上がったのは2008年9月で、企画したのは高江氏だった。当時、高江氏は本社の広報センターに所属しており、ソニーのグループポータルサイトのウェブマスターとしてサイト全般を担当する立場だった。ブランディングを目的として、デジタルイメージング事業本部に企画を提案して実現した。

そのような背景もあり、「α CLOCK」にはαを通じてソニーという企業のブランディングにつなげるとの意味合いも含まれていた。

コンセプトは、人類共通の遺産である『世界遺産』の写真を、ソニーらしいと感じていただける手法で見せるというものです。世界遺産の写真というだけなら、世界中にたくさんあります。そこで、同じ場所に何日もとどまって行う『定点撮影』という手法で取り組むことにしました。

ソニーがスポンサーを務めるTBSの『THE世界遺産』がありますが、あの番組はソニーがハイビジョンカメラを開発したことを機に、『世界遺産をハイビジョンで残そう』というコンセプトで始まりました。そして、今度はαシリーズで残そうというわけです。

目的は製品サイトへの誘導ではなく『いかに世界遺産の写真を広めるか』ですから、運営するうえでの指標は、

  • 閲覧数
  • ダウンロード数
  • 滞在時間

などになります。とにかく『知っていただく』『見ていただく』ということですね」(高江氏)

ソニーでは、この企画を1つの製品のプロモーションとしてではなく、社会的な意義のある取り組みとして、社内の他の製品へも展開している。たとえば、テレビやPC、スマートフォンといった「ディスプレイを持つ製品」のビジュアル素材として「α CLOCK」の写真がプリインストールされているのだ。

当初から、「この企画はWebだけで完結させるものではない」と考えていました。

当初から、この企画はWebだけで完結させるものではないと考えていました。Webはあくまでも『α CLOCKというプロジェクトの一部分』という位置づけです。そのほかの展開として、これらの写真を活用しようとソニーグループのさまざまな部門に呼びかけました。

その結果、いまでは『α CLOCK』の写真をモバイルアプリでも楽しめます。また、ソニーの公式カレンダーのテーマとしても採用されており、液晶テレビのブラビア、Xperia、ウォークマンといった『ディスプレイを搭載しているソニーのほぼすべてのハードウェア』にプリインストールされています。

これらの製品がプロジェクトの目的を達成するための媒体となり、年間で数億という潜在的なインプレッションを達成しているのです

ただ、効果測定の視点でいえば、製品にプリインストールしたものは『製品をご利用される多くの方がご覧になっているだろう』という程度で、Webとは違って具体的な数字としては把握できてはいません

そういった意味でも、計測可能なWebサイトの存在は重要です。アクセス解析で得られたデータを参考にして、さまざまなアクションを展開することになりますから」(高江氏)

「予想どおり」であってもデータによる裏付けがあることで
次のアクションが明確に

リニューアル後はページをスクロールにあわせて時間帯と写真が切り替わるようになった
リニューアル後はページをスクロールにあわせて時間帯と写真が切り替わるようになった

ソニーでは、アクセス解析ツールとして「SiteCatalyst」を全社的に導入している。「α CLOCK」も同様で、高江氏自身がツールを使ってサイトの企画に活かしているという。

高江氏は前述のように、以前は広報センターのウェブマスターとして、現在はカメラ部門の企画担当者として「α CLOCK」を担当しているが、決してアクセス解析が専門というわけではない。

高江氏自身も「高度な分析などはしておらず、基本的な数字を把握しているだけ」と説明するが、それでも新たな施策にアクセス解析が活かされる場面は少なくない。

アクセス解析という視点で見ると、指標の種類は少ないですが、参考にしていることは多いです。

2012年9月に、それまでのFlashバージョンから現在のJavaScriptバージョンにリニューアルしました。その結果、顕著に変化したのが滞在時間で、大幅に増やすことができました。その理由はダウンロードの仕組みを変えたからで、それは壁紙のダウンロード数が増加したことからも明らかです。

Flashバージョンでは、ユーザーがアクセスする時間帯に応じて、同じ時間帯に撮影された写真のみをダウンロードする仕組みでした。現バージョンでは、時間帯に関係なく、その場所で撮影された美しい写真をすべてダウンロードできるようにしました。

時間帯に連動したダウンロード制限は、Flashバージョンのコンセプトに沿ったもので、必ずしも欠点ではありませんでした。むしろ、その制限も含めて『α CLOCK』というコンテンツのおもしろさであり、異なる時間帯に再度訪れていただくための仕掛けでした。しかし、『より多くの写真を見てもらう、ダウンロードしてもらう』という目的を達成しつつ、ソニーらしいと感じていただける新たな表現手法を思いつき、現在の形に変更したのです

アクセス解析の結果が予想どおりだとしも、データで裏付けられることに意味がある。

アクセス解析の結果は、まさに『予想どおり』でしたが、データとして改めて裏付けを得られることで、次のアクションが明確になります」(高江氏)

リニューアルに際しては、対応する言語の選択にもアクセス解析の結果が活かされた。現在、「α CLOCK」では12言語の自動切り替えに対応しているが、これは旧バージョンでのアクセス上位国をピックアップしたものだという。

12言語以外の国のスタッフからも「対応してほしい」とのリクエストはあるものの、アクセス解析の客観的なデータをもとに優先度を判断した

「Web」「アプリ」「ソーシャルメディア」「定量」「定性」など
目的にあわせてツールを使い分ける

導入しているアクセス解析関連ツール
  • SiteCatalyst: PCとモバイルサイトのアクセス解析

  • Googleアナリティクスなど: スマホアプリの利用分析

SiteCatalystでチェックしているWebサイト自体の指標の種類は多くないものの、「α CLOCK」という企画全体で把握すべきデータは他にもある。たとえば、Android向けに「α CLOCK for Mobile」アプリを提供しているし、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアでの反応もある。

PCサイトとモバイルサイトについてはSiteCatalystですが、すべてを網羅できるわけではないので、ソーシャルメディア上の情報分析には別の分析ツールを、スマートフォンアプリのデータ分析にはGoogleアナリティクスなどを、それぞれ使っています。複雑なことはしていませんが、必要なデータに合わせてツールを使い分けています

Webサイトのアクセス解析、スマホアプリの利用分析、ソーシャルリスニング……ほしいデータに合わせてツールを使い分けています。

データをみていると、ユーザー行動の例としておもしろいものも見えてきます。

たとえばバックで流れるオリジナル楽曲を作曲された浜渦正志さんのツイート経由でアクセスした方は、滞在時間が圧倒的に長いのです。数時間どころか一日中滞在していて、どうもBGMとしてずっと流しているんじゃないかと想像しています。

一方、撮影をされている貫井勇志さんのツイート経由だと、閲覧はツイートで紹介された遺産にとどまり、そのまま離脱する傾向があるといった具合です。

また、TwitterやFacebookで『αでこういう写真が撮れるんだ』といった類いのコメントを収集して『見た人によい印象を与えている』という評価をしています。ソーシャルメディアのような定性データの分析は難しいのですが、毎日見続けることで自分の中にノウハウが蓄積されていくので、それを踏まえて企画を考えています」(高江氏)

ビッグデータやデータサイエンティストといった高度な分析や専門家が注目されているが、簡単な指標を把握するだけでも、サイト運営や企画のヒントを得ることができる。「α CLOCK」や高江氏の例は、その好例だといえるだろう。もちろん、そのためにはよいツールやサポートの存在も重要だ。

広報センターの時代からSiteCatalystをずっと愛用してきましたが、Adobe Analyticsへのバージョンアップでレスポンスが良くなりました。クロス集計が少しやりづらいと感じますが、1回ダッシュボードにセットしてしまえば次から手間はかかりません。

また、私自身は積極的に参加しているわけではありませんが、eVar7というSiteCatalystのユーザーコミュニティもあります。社内にSiteCatalystに詳しくてeVar7にも出入りしている人間がいて、わからないことはそのコミュニティのメンバーに聞いています。私も間接的に、コミュニティの恩恵を受けているといえますね」(高江氏)

アクセス解析のデータを参考にさまざまな見せ方や楽しみ方を提案

撮影した世界遺産はもうすぐ50か所に
撮影した世界遺産はもうすぐ50か所に

企画の立ち上げから5年以上も関わってきた高江氏にとって、「α CLOCK」に対する思い入れは強く、今後もさらに企画を広げていくつもりだ。撮影した世界遺産はもうすぐ50か所目となるが、写真の数が増えるにつれて、さらに多くの人々に世界遺産を楽しんでもらうためのアイデアを考えているという。

2番目にアクセスの多いコンテンツがLIVE TOURなのですが、このコンテンツを起点とした新たな展開を考えています。いまは世界遺産の軸で写真を選べますが、たとえばレンズを軸にして撮影した写真が選べるLENS TOURを考えています。さまざまなレンズで撮影された美しい作例の鑑賞を通じて、ビジターが次の旅のプランを考え、そのプランの中にレンズの買い足しも入れたくなるような見せ方を考えています。

カメラの商品企画部門に異動したことで、商品企画に関わった製品を「α CLOCK」でPRし、そのフィードバックを商品企画に反映するというより大きな輪のPDCAサイクルも回せるようになりました。これからも皆さんが驚くような仕掛けを実現していきたいと思っています」(高江氏)

高江遊氏
ソニー株式会社
ソニー株式会社Webサイト
  • 本社所在地 ● 〒108-0075 東京都港区港南1-7-1
  • 事業内容 ● 家庭用のAV機器、ゲーム、コンピュータや業務用の放送機器、医療機器、半導体の製造販売。
  • URL ● http://www.sony.co.jp/
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