ぐるなび伊東氏が明かすオウンドメディア立ち上げの極意――新米担当者に贈る“タスクリスト”付き
わが社でもオウンドメディアを始めたい。
ぜひ君に、担当者として立ち上げを任せたい。
よろしくたのむよ!
こんな風に、いきなりオウンドメディアの担当者に抜擢されたら、何から始めればよいかわからず困ってしまうのではないだろうか。
コンテンツマーケティングの有用性が広く理解され、さまざまな企業がオウンドメディアを立ち上げるようになった。それにともない、メディア運営やコンテンツ制作の経験がない人が担当者になるというケースも増えている。
メディア運営って、何が必要なの?
自分で書く? それともライターに依頼する?
どうやって探せばいいの?
必要な人員や予算の見当がつかない……。
もし、「もともとオウンドメディアをやってみたかった」という方なら、目標や参考にしているメディアがあるだろうし、作ってみたいコンテンツのイメージを持っているかもしれない。それでも、何もないところからの立ち上げでやるべきことをすべて把握してはいないだろう。
今回は、そんな悩みを抱える新米オウンドメディア担当者に向けて、立ち上げ前後にやるべきことを「タスクリスト」としてまとめたものを以下に示す(※それぞれの項目について記事後半で詳しく解説)。
- 起案
- 戦略
- コンテンツ流通方針
- 社内のカニバリ(共食い)を防ぐ
- 承認
- 上司に理解・納得してもらう
- コミットメント
- ゴールを設定する
- 立ち上げ準備
- 体制づくり(おもに人員)
- パートナーを探す
- CMSを選定する
- コンテンツフォーマットを決める
- 検証用ツールを導入する
- リピート読者向けの戦略を立てる
- 法務関係
- 公開と運用(PDCA)
- 公開前にある程度の記事本数を用意する
- 公開サイクルに一貫性を持たせる
- 効果検証をする
- 成果証明をする
- 予算・体制・チャネルを拡大する
「みんなのごはん」の中の人、伊東周晃氏に聞く
オウンドメディアの立ち上げ~運営のコツ
タスクリストを作るにあたり、株式会社ぐるなびの上席執行役員 企画開発本部 企画部門 副部門長の伊東周晃氏にオウンドメディア立ち上げのポイントについて伺った。
伊東氏は、ぐるなびのオウンドメディア「みんなのごはん」を指揮してきた人物で、オウンドメディアの立ち上げや運営、コンテンツ制作について豊富な経験を持つ。
これからオウンドメディアを立ち上げる予定のWeb担当者は、ぜひ参考にしてほしい。
「みんなのごはん」をとおして接点のないユーザーへリーチ
―― オウンドメディアの担当者として、立ち上げ時にもっとも重要なことはなんでしょうか?
伊東氏 やはり、オウンドメディアを事業の中にどう位置づけて、何を目指すのか、目的とするのか、ということですよね。
当社の場合、まずサービスの柱である「ぐるなび」があります。
飲食店検索サイトとしての「ぐるなび」は、外食意図が発生して訪問してくる人と、その人たちに向けて新メニューや自店の魅力を届けたい飲食店をマッチングし、予約や来店につなげていただく場です。
ウェブマーケティング的には、外食ニーズが顕在化したターゲットをコンバージョンに導くサイトといえます。
それに対して「みんなのごはん」は、食にまつわるより幅広い話題をコンテンツとして取り扱うことを通じて、コンバージョン手前の人たちに対しても「ぐるなび」を意識してもらう機会をさらに増やしていただくことを意識しています。
読者がおもしろいと感じてくれるコンテンツを継続的に発信することで、「みんなのごはん(ぐるなび)はおもしろいな、私たちのことを考えて作っているな」ということを感じていただく、共感型のメディアといえます。
―― 具体的な目的やビジネス的な価値は、どのようなものでしょうか?
伊東氏 まず、消費者との新たな接点づくりの武器として、新しいコンテンツフォーマットを持つことの価値があると考えます。
今となっては、日常的なことですが、「みんなのごはん」を開始した2013年初めごろは、消費者のグルメに関してのメディア接触に変化が起き始めている時期でした。
FacebookやTwitterなどのSNSプラットフォームはもちろんのこと、まとめサイトやキュレーションメディアなどグルメの非専門メディアが増加傾向にありましたし、スマートニュースやグノシーといったアプリをベースとしたニュースキュレーションプラットフォームも人気になってきました。
当社は国内で最大級のレストラン情報をカバーしているわけですが、だからといって、当時のぐるなびがスマートニュースに掲載されるということはあり得ませんでした。
それは単純に、記事というフォーマットを持っていなかったからです。
このフォーマットを獲得することにより、これまで主軸の外食ニーズ顕在時“以外”での人々の生活シーンにおける接点を持つことができるようになったわけです。
朝の通勤電車でレストランを検索することはないけれど、記事コンテンツであれば、スマートニュースなどを通じて“ニュース”として読んでいただける機会が生まれます。
「みんなのごはん」というメディアが好きで「みんなのごはん」のソーシャルアカウントをフォローしシェアしてくれている人が常にいていただけることで、その経路を通じて、本サイトでリーチできていない新しいユーザー層との出会いを創出することができます。
「ぐるなび」にとっては、このようなフォロワーや読者は、コンバージョン対象のユーザーではなくても、レコメンダーとして重要な役割をしてもらっているととらえています。
読者との関係性ができていれば、記事広告の初期拡散経路として、ソーシャルアカウントが武器になることもあります。
ぐるなびとの接点がなかった層へ、最終的にリーチするきっかけとして、「みんなのごはん」というメディア(ソーシャルアカウント含む)を作ること。それが目的といえます。
おすすめコンテンツは人を軸にした「インタビュー」もの
仮説と振り返りでウケるコンテンツを法則化
―― 特に立ち上げ当初のコンテンツ制作に関して、コツやアドバイスのようなものはありますか?
伊東氏 検索以外の集客ですと、インタビューのような人を軸にしたコンテンツは、ソーシャルメディアとの相性がよく、成功しやすいです。
「みんなのごはん」でも、立ち上げ時期は自分たちに拡散力がなかったので、拡散力のある人にインタビューをして拡散してもらうという戦略をとりました。
最初は、チームメンバーの持っている名刺を集めて「ソーシャルアカウントを持っているか」「フォロワー数はどれくらいか」を調べて取材先を選び、「あなたの好きなレストランを教えてください」というインタビューをひたすらやっていました。
有名人にインタビューしたり、執筆してもらったりするコンテンツも話題になりやすいです。注目を集めやすいのはもちろんですが、個性的な方やクリエイターとコンテンツを作ると、「こういう形にすると、コンテンツをより読者に読んでもらえる」といったことも学べるなど、集客以外のメリットがあります。
―― 効果検証では、具体的にどのようなことをしているのでしょうか。
伊東氏 これから公開予定の記事の目論見や仮説を社内ブログに投稿しています。そして、公開後の振り返りで反省点を洗い出し、チーム内で法則化するようにしています。
たとえば、福岡のうどん店を紹介した記事では、「世間のうどん=讃岐のイメージを何とかしたいと思っている福岡民にとって、良質な福岡うどんアピール記事を作れば、彼らがシェアしてくれるのでは?」という仮説を立てて、良好な結果を得ることができました。
もちろん、うまくいかないケースもありますが、それも含めてしっかりと理由を分析して、蓄積していくことが大切です。
オウンドメディアを効率的&スムーズに運用するためのしくみ
―― 運用の段階になると、日々のコンテンツづくりがタスクの大きな割合を占めるようになります。スムーズにこなしていくためのポイントはなんでしょうか。
伊東氏 いったん始まれば、あとはコンテンツの企画や制作に集中するだけですが、やはり細かいタスクがいろいろ出てきます。たとえば、各チャネルに最適な形でコンテンツを流通させたくなったり、いろんなライターさんなどに協力してもらったりといったことです。そういったタスクにうまく対処するには、対応できるCMSが必要でした。
―― CMSとして「はてなブログMedia」を採用されていますが、特にメリットだと感じるのはどのような点でしょうか。
伊東氏 私は、「はてなブログMedia」を単なるCMSではなく、日本の有数のコミュニティを抱えるはてなのCMSであるという点を評価しています。
ソーシャルメディアとの相性を意識したメディアを運営したことをとおしてユーザーと向き合ってきて、「あ、このサービスの向こうに人がいる、読者がいる」と強く実感するようになりました。そして、その人たちが言及してくれる内容に対するリアクションとなるようなコンテンツを発信していきたいと思うようになりました。
はてなブログやはてなブックマークを取り巻くコミュニティと、それに向き合う会社としてのはてなの姿勢というのは、まさに私がめざしていたものです。そういう背景もあって、「はてなブログMedia」を選択しました。
実際、記事の拡散ルートとして重要視してきた「はてなブックマーク」との親和性は高いと感じています。以前使っていたシステムから「はてなブログMedia」に移行したのですが、かかる費用はそれほど変わりませんが、スタッフは使いやすくなったといっています。
また、はてなIDを持っていれば、権限付与の設定だけで編集メンバーとして利用できることも便利です。社外のライターさんなどでも、こちらではてなIDにロールをひも付けるだけで、管理画面にアクセスして入稿してもらえます。
たとえば、記事の画面スクロールと挿入した画像表示のタイミングにこだわって、テキストの行間を調整するライターであれば、原稿をもらってこちらで代わりに入力するより、自分で直接やってもらうほうが、より正確に作り手の意図を反映できます。
そういう細かい部分も、コンテンツのおもしろさの一部として読者に届けたいので、おろそかにはできません。
そのほか、ぐるなび直下のドメインでの運用、AMP(Accelerated Mobile Pages)への対応、もちろんSEOなど、基本事項は対応しているので気にする必要がありません。
SEO的な観点で重宝しているのが、HTMLヘッダー内のtitle要素とOGPと大見出し(h1要素)を個別に設定できることです。
CMSの多くは、タイトルと大見出しが共通です。しかし、ソーシャルメディアで拡散したあと、さらに検索経由で継続的に集客したい場合、検索結果に表示されるtitle要素の内容を書き直したいということがあります。でも大見出しは、ライターさんの意図なども汲んでそのままにしたいし、そのほうがソーシャルメディアでも効果的です。
今後はオウンドメディアの貢献価値の可視化に取り組む
―― オウンドメディアについて今後の展望を聞かせてください。
伊東氏 オウンドメディアの読者は、「今はコンバージョンしないけれど、将来のお客さまになっていただける可能性がある人たち」だと思います。そういう人たちと近い距離感でコミュニケーションが取れるようになったことが現時点での価値です。
今後は、読者の方々の一層の理解をテクノロジーの力も活用しながら深めていき、直接的/間接的ビジネス貢献の可視化を進化させていくことを実行していきます。
これだけはやろう! オウンドメディア立ち上げタスクリスト
ここからは、記事冒頭で示したタスクリストを詳細に解説していく。
伊東氏へのインタビューを参考に、なるべく汎用性のある形で必要なタスクとポイントを編集部が整理したものだ。
オウンドメディアを始めるにあたって必要なタスクは、時系列で考えると「起案」「承認」「立ち上げ準備」「運用と検証」の4つのフェーズに分けられる。
それぞれのフェーズでのタスクについて、詳しく解説していこう。
フェーズ1[起案]
メディアの目的とコンテンツのイメージを描く
何もないゼロからのスタートとなる場合、まず必要となるのが「起案」だ。会社の事業としてやるうえで、「なぜ取り組むのか?」「何をめざすのか?」など、オウンドメディアの必要性とその具体的なイメージを整理してまとめる。
その際には、以下の3点について考えておこう。
- 戦略
- コンテンツ流通方針
- 社内のカニバリ(共食い)を防ぐ
1. 戦略
「戦略」とは、問題意識つまり「なぜ取り組むのか」を言語化すること。これから作るオウンドメディアが、会社の事業に何をもたらすのか、どんな課題を解決するのかを明確にする。
さらに、メディアとして欠かせないのが、誰に向けたメディアなのか、「ターゲット(読者)」の設定だ。
この2つが不明瞭だと、コンテンツの企画が出しづらくなるので、まさにメディア運営の要ともいえる項目だ。
「みんなのごはん」では、ターゲットや目的を以下のように定めました。
- ターゲット: ぐるなびとの直接の接点が(まだ)ないユーザー
(飲食店を具体的に探しているわけではない)- 目的: ぐるなびに対する共感や安心感を持ってもらい、実際に飲食店を探す段階になったときに、その手段としてぐるなびを想起してくれる人を増やす
2. コンテンツ流通方針
「コンテンツ流通方針」とは、どこにどのように流通させるかということ。具体的には、メディア本体であるウェブサイトに加えて、SNSの公式アカウントを設置して新着記事のリンクを流したり、キュレーションサービスに配信したりすることだ。
Twitter、Facebook、Instagram、LINEなど、マーケティング活用の定番といえるSNSはいくつかあるが、いきなり全部のアカウントを立ち上げるのはおすすめしない。
SNSの場合、それぞれのサービスごとに特徴があり、そこに集まるユーザーの傾向や受け入れられるコンテンツが異なる。それに対して、一律のコミュニケーションで対応するのは、単に手間が増えるだけで効果がなかったり、時には逆効果になったりするおそれもある。
オウンドメディアへのアクセスを集めるために、「とにかく間口を広げてすべてのSNSに手を出す」というのは避けたほうがよい。メディア運営に慣れるという点でも、最初は絞り込み、そのアカウントをしっかり育てるほうがうまくいく。
SNS活用で重要なのは、各SNSユーザーの特徴を理解し、それにあわせてコンテンツの拡散イメージを企画段階から立てておくということ。さらに、公式アカウントに限らず、SNSでの拡散を意識しながら、ネイティブ広告などの施策も検討してみるとよいだろう。
「みんなのごはん」のソーシャルメディア活用は、立ち上げ当初はTwitterに集中することにして、公式アカウントを育てました。
現在では、Instagram、Google+、Tumblrなど、複数のソーシャルメディアを利用しています。
3. 社内のカニバリ
「社内のカニバリ」とは、たとえば社内の別のチームが企画しているウェブサイトなどとユーザーを取り合ってしまうことだ。いざ始めてみると、社内の別事業で集客のためのSEOキーワードがかぶっていたということも少なくない。気づいたら、お互い邪魔し合っていたとならないように注意しよう。
フェーズ2[承認]
具体性とポイント絞りで上司を納得させる
起案がまとまったら、次は事業として会社に「承認」してもらう。
ここでのおもなタスクは次の3つだ。
- 上司に理解・納得してもらう
- コミットメント
- ゴールを設定する
1. 上司に理解・納得してもらう
上司に理解・納得してもらう場合、抽象的な話ではなく、なるべく具体的にメリットを説明する。たとえば、オウンドメディアによって「これまで接点のなかった新しいユーザー層へリーチできる」「○○というニーズを持ったユーザーとの接点を拡大する」などだ。
「上司はメディア運営自体に興味はない」という前提で、あくまでも会社にとってどのような価値をもたらすかを示さなければならない。その際、上司にメディアやコンテンツといってもピンとこない場合は、タイトルや概要だけでよいので、具体的なコンテンツ案を見せるのも効果的だ。
2. コミットメント(公約)
3. ゴールを設定する
コミットメント(公約)とゴール設定も、事業として評価・判断するために必要だ。ただし、あまり壮大なものではなく、自分ががんばってやれば届きそうな、現実的なレベルに設定する。その意味でも、スモールスタートをおすすめする。
これは言い換えると、社内で自分が責任を取れるサイズで始めるということだ。上司や会社の承認をとり、立ち上げや運用でコストをあまりかけず進め、実際にやってみた結果を計測して、うまくいったら広げる……というように、段階的に取り組むとよい。
成果を示さず、事業としての価値があいまいなままだと、会社の方針変更などがあった場合に、まっさきに目を付けられてしまう可能性がある。特にオウンドメディアは、ECなどと比べると具体的なビジネス成果が目に見えにくいので、その可能性が高い。それを回避するためにも、着実に成果を積み重ねて、日ごろから価値を理解してもらう必要がある。
また、メディアの運営は、想像だけするのと実際にやるのとでは大きく違うものだ。まずは小さく始めてみて、理解・体感することが重要だ。
フェーズ3[立ち上げ準備]
コンテンツ制作とメディア運営体制を確立する
社内での承認がとおったら、いよいよ「立ち上げ準備」だ。このフェーズでは、一気にタスクの数が増えてくる。
ここでは、次のようなタスクが必要になる。
- 体制づくり(おもに人員)
- パートナーを探す
- CMSを選定する
- コンテンツフォーマットを決める
- 検証用ツールを導入する
- リピート読者向けの戦略を立てる
- 法務関係
1. 体制づくり(おもに人員)
立ち上げ段階から、社内に編集経験のある編集長や編集者を配置できると理想的だ。しかし、人材確保や予算の面から無理なケースも多いだろう。
スモールスタートで始める場合の運営体制としては、リスクヘッジも含めて社内の担当者が最低2人はいることが望ましい。それに加えて、外部のライターやカメラマン、イラストレーター、デザイナー、編集者といった社内外のパートナー(後述)とともに運営チーム(編集部)を組織する。
編集プロダクションは、窓口が1つで済み、担当者の負担が軽減されるというメリットがある反面、ライターに直接依頼することに比べるとコストがかかる。しかし、質の高いコンテンツを作るためのスキルやノウハウを知ることもできるので、編集についての知識がまったくない場合の勉強料としてとらえても、決して割高というわけではない。
また、昨今のニーズの高まりから、単なるコンテンツ制作だけにとどまらない、オウンドメディア支援サービスも登場している。
たとえば、「はてな MediaSuite」では、多くのウェブサービスやコミュニティ運営をとおして培ってきたノウハウを活かして、オウンドメディアの立ち上げと運営を総合的にサポートしている。
「フェーズ1 起案」や「フェーズ2 承認」の段階から不安を抱いていて、経験者のアドバイスがほしいという場合は、利用するとよいだろう。
社内メンバーは、専任で担当できるのが理想だが、立ち上げ時期は難しいことも少なくない(自ら提案した場合などは特に)。その場合は、兼任という形で既存のメンバー(マーケティングチームなど)に業務リソースを何割か割いてもらえるように調整する。
「みんなのごはん」では、社外のライター、編集者、編集プロダクションに多くのコンテンツの企画・制作を依頼していますが、社内の運営チームにも編集者を配置しています。
社内の編集者には、コスト以外にも「迅速に対応できる」「他部署のスタッフと連携しやすい」といったメリットがあります。
2. パートナーを探す
パートナー探しは、継続的にコンテンツを作り、メディアを運営していくうえで非常に重要なタスクだ。やろうとしている企画にマッチしているライターや編集者、クリエイターを探さなければならない。
「編集プロダクションに相談する」「ソーシャルメディアでクリエイターに直接交渉する」「オウンドメディア運営支援サービスを利用する」「社員のツテを頼る」など、選択肢はいくつかある。
また、クリエイターとの人脈づくりとして、コミュニティのミートアップイベントなどに顔を出すのもおすすめだ。いい取材ネタやインタビュー相手が見つかることもある。
3. CMSを選定する
ウェブメディアとして継続的にコンテンツを発信・蓄積していくには、CMSは欠かせない。問題はどの製品にするか。
ブログ的なメディアサイトの構築では、WordPressやMovable Typeなどが定番となっているが、それが適しているかどうかは運用体制による。
また、SaaS型とサーバーインストール型のどちらがよいかも、社内に技術的なサポート体制やウェブサイト運用のノウハウがあるかどうかによって異なる。
もし、オウンドメディア担当チームが、マーケティングなどの非技術系の人材のみで構成されているなら、SaaS型のほうが管理の手間がかからずコンテンツの企画面だけに注力できるのでおすすめだ(「みんなのごはん」では「はてなブログMedia」を採用している)。
その他の判断基準としては、運用体制や社内外の人間がどのようにかかわるか、制作・確認・承認フローをどうするかでも変わってくる。
ほとんどのCMSは、テキスト、画像、動画埋め込みといった基本機能に対応していて差はない。ドメイン名を希望する形で運用できるか、SEOやモバイル対応、想定する負荷に耐えられるか、ダウンタイムの保証、ランニングコストなどを比較して決める。
「みんなのごはん」では、「はてなブログMedia」というSaaS型のサービスを使っています。
4. コンテンツフォーマットを決める
「コンテンツフォーマット」とは、たとえばテキスト主体にするか、画像や動画を含めるかということだ。ソーシャルメディアで露出する場合、画像があることは重要なので、「テキスト+画像」のコンテンツを基本とするのがよい。
5. 検証用ツールを導入する
来訪ユーザーを理解したり、SEOの実態を把握したり、ユーザーの反応を把握したり、デザイン上の問題がないかを知るために、次のようなツールを導入する。
- アクセス解析ツール
- Googleサーチコンソール
- ソーシャルリスニング(専用ツールやTweetDeckなど)
- ヒートマップ
6.リピート読者向けの戦略を立てる
一度、接点を持った読者と継続的につながるための方法も考えておく必要がある。たとえば、次のようなものを活用する。新しいコンテンツを公開したときに知ってもらったり、過去のおすすめコンテンツを知ってもらうための通知やコミュニケーション手段といえる。
「たまたまバズった記事」をきっかけにメディアの存在を知ってもらい、定期購読者やファンになってもらうために重要なタスクだ。
- ニュースレター/メルマガ配信
- ソーシャルメディアでフォローしてもらう
- フィード(RSS)
- プラットフォームが持っている「読者」機能
7. 法務関係
コンテンツを制作する際に、著作権などの権利侵害がないか、適切に引用や参照がされているか、それを守るためのガイドラインなどを策定する。医療関係のコンテンツであれば、薬機法に抵触する表現がないかどうかなどの確認も必要だ。
また、メディアの名前がすでに使われていないか、紛らわしくないか、商標登録されていないかなども、公開前に調査しておく。
フェーズ4[運用と検証]
しっかりとPDCAを回して次につなげる
「運用と検証」のフェーズは、しっかりとPDCAを回し続けるということに尽きる。
ここでは、次のようなタスクが必要になる。
- 公開前にある程度の記事本数を用意する
- 公開サイクルに一貫性を持たせる
- 効果検証をする
- 成果証明をする
- 予算・体制・チャネルを拡大する
1. ある程度の記事本数を用意する
開始してすぐに自転車操業となってしまわないように、公開前に1~2か月分の記事ストックを持った状態にしておく。
2. 公開サイクルに一貫性を持たせる
1記事ごとの効果検証をしっかり行うためにも、コンテンツの公開サイクルは決めた間隔を維持する。初期は、週に1~2回程度が適切だ。
3. 効果検証をする
想定していたターゲット層にリーチできたかを、トラフィックやGoogleサーチコンソールの検索クエリ、ソーシャルメディアでのシェアなどで確認する。また、ソーシャルメディア上でのコメントもしっかりと目をとおして、引用されている内容や理由を把握しておこう。
効果検証の一環として、他部署のメンバーと相互に記事レビューを行うなどして事前にユーザーの反応を想定しておくこともおすすめだ。
「みんなのごはん」では、記事を公開する前に社内のブログに投稿して、他の社員から感想やコメントをもらっています。さまざまな視点からのコメントや反応を知ることで、企画に磨きがかかったり、炎上リスク回避になったります。
4. 成果証明をする
5. 予算・体制・チャネルを拡大する
「起案」や「承認」の際に掲げたコミットメントやゴールが達成できたかどうかを成果として示す。達成できたなら拡大だが、未達であっても要因分析とともに報告することで再チャレンジの機会を得られるようにする。
成果証明の例としては、ソーシャルメディアを活用して認知や評判を可視化するという方法もある。また、記事が他のメディアやネットユーザーに引用されたことを挙げるのもよいだろう。
目標が達成できて、運用が軌道に乗り出したら、既存のユーザー層や記事の反応の確認しつつ、コンテンツの量や種類を増やしたり、リーチするユーザー層を広げたり、メディアのチャネルを増やしたりしていく。
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