一人で苦しまず長続きする、オウンドメディアの運営体制6つの心得
コンテンツのネタが思いつかない、記事が書けない、外注する予算もない、続けるのがつらい……
オウンドメディアを続ける上で課題になるのが、日々の運用です。スタートしたはいいものの、長く続けるうちに担当者の負荷が高くなり、記事のネタも思いつかない、外注するにも予算がない……といった状態に陥ってしまうことも多々あります。
それを解決するのがしっかりとした運営体制です。今回は、オウンドメディアをスムーズかつストレスなく、長く運営し続けられる運営体制を6つのポイントで解説します。
- チーム作り
- 情報共有体制
- 記事のカテゴリ決め
- 連載のアイデア出し
- コンテンツの外注
- スケジュールの管理
運営体制がしっかりしていれば、誰か1人だけに負荷が集中してしまうといった事態も防げます。
1. チーム作り
オウンドメディア運営の第一歩は人集め
オウンドメディアは、企画がスタートしたからといってすぐに効果の出るものではありません。オウンドメディアの運営はとにかく体力勝負です。コンテンツの作成はもちろん、配信スケジュールの管理や配信作業、さらには記事の拡散、そして効果測定を行い、記事を修正する……と、やるべきことは多岐にわたります。そして、メディアというものは一度始めたら簡単に止められません。
しかも、オウンドメディアの担当者は、大企業でもない限り通常1~2人ほどです。しかし、そんな状況でもオウンドメディアを長く続けるコツがあります。それは、数名の担当者だけですべての業務をこなそうとせずに、それぞれの業務で強みを持った人を適材適所に配置することです。そうすることで負担を分担し、チームで運営していくのです。
では、実際にオウンドメディアを運営するには、どんなポジション(役割)の人が必要でしょうか。たとえば、紙媒体のメディア運営では次のような人たちがチームに必要です。
- 編集長
- 副編集長
- デスク
- 編集者
- 進行管理
- デザイナー
- イラストレーター
- カメラマン
- 校閲者
- など
オウンドメディアにもこれらに相当するだけの業務があります。1人でこれを全部こなすの無謀でしょう。とはいえ、限られた人員でこなさなくてはなりません。そこで、それぞれの役割を社内の他の人に少しずつ分担する「チーム作り」がとても重要です。
オウンドメディア運営に向くのはどんな人? 社内で探してみる
では、どんな人に協力してもらえばいいのでしょうか? そのカギは社内にあります。社内でだれが適任なのか、よく見渡して探してみましょう。
一番重要なのは、自社の製品に愛情を持ち、オウンドメディアを通してその製品を世界に認知してもらいたいという強い思いを持っていることです。とはいえ、まずは記事を作成したり、または発注管理したりできる担当者が必要不可欠です。おすすめの候補として、次の例を参考に社内を見渡してみましょう。
ブログ・ソーシャルメディアの経験者
弊社がこの例です。筆者も入社前に、フリーランスのウェブデザイナーさんとブログ運営を行っていた経験から、そのままこのポジションに収まりました。ブログやソーシャルメディア運営の経験者であれば、コンテンツ作成やネット上のコミュニケーションの勘所など、ある程度の要領を把握できているはずです。ただし、自由気ままな趣味ブログとは違うため、明確なKGI設定のもと、KPIを達成できるか定期的にチェックすることが必要不可欠です。
カスタマーサポート担当者
常にエンドユーザーの声を吸い上げている人なら、ユーザー(読者)がどんな情報を欲しているのか、通常の業務から感じ取っているはずです。こうした人の経験は、コンテンツのネタ作りにもとても有効です。
商品開発や営業の担当者
自社の商品を熟知している人なら、商品のアピールポイント、売り文句になる部分などを知っているはずです。対面でお客さんとコミュニケーションしている営業部門からも、多くのヒントを得られるでしょう。
連載の他の記事「オウンドメディア企画を社内で通すためにすべき6つのこと+上司説得の想定問答9パターン」も参考にしてみてください。
広報担当者
プレスリリースなど、普段から文章を書いている広報担当者がいれば、コンテンツの構成などで任せられる部分が大いにあります。オンラインでの広報活動の場は決まってメディアであることから、自社メディア運営=広報活動の一環ととらえることもできます。
まずは上記を参考に社内を見渡し、主に記事の作成とオウンドメディア運営を行う編集長(いわゆる中の人)を1~2人選出しましょう。オウンドメディアの柱となる人がいないと、各人が「本当にこの内容のコンテンツでいいの?」と、疑問を抱きながらコンテンツ作成を続けてしまいます。
ただし、編集長がすべてを担うことは避けましょう。オウンドメディアは複数人で運営することで、コンテンツ制作や文章の校正、ネタの生成など、よりバラエティーに富んだ高品質のコンテンツを生み出せるようになるからです。
そのうえで、編集長をサポートするポジションとして、次のような強みがある人を選出しましょう。
- 企画に強い
- 他部署との交渉に強い
- 広報に通じる
- 画像・動画・編集などの制作ができる
- Webの効果測定の知識がある
2. 情報共有体制
チームを1つの出版社のように扱い距離を縮める
前述の通り、オウンドメディア運営は複数人で役割分担できるといいですし、そうあるべきです。そして、できるだけ運営チームを1つの「出版社」のように運用することが大切です。
オウンドメディアをつかさどるメンバーは、他部署と兼任しているケースが多いでしょう。そのため、メンバー同士が常にオフィスで近くにいるとは限りません。そこで重要になるのが、情報の共有体制です。
筆者の場合、寄稿者との連絡は「チャットワーク」、社内メンバーとの連絡には「Slack」というツールを使っています。そして寄稿文の共有には「Googleドキュメント」をコンテンツスケジュール管理・効果測定管理には「Googleスプレッドシート」を活用するなど、用途に合わせてツールをうまく使い分けています。
- チャットワーク
http://www.chatwork.com/ja/ - Slack
https://slack.com/ - Googleドキュメント
https://www.google.com/intl/ja_jp/docs/about/
こうやってすべての業務を可視化させ・シェアすることで、今誰が何の仕事を持っているのか、編集長だけでなく、全員が把握できるようになります。
また、運営において最も大切なことは、「スケジュールを守る」ことです。編集長は、社内外のさまざまなスケジュール管理を行わなくてはなりません。もちろん、ライター兼任の編集長であってもそれは変わりません。
理想的なのは、同時にいくつもの記事を進行して、常に原稿をプール(蓄積)できる状態にしておくことです。月に一度、執筆スケジュールを作成し、そのスケジュールを制作担当者と共有しておくといいでしょう。半月以上の余裕を持って次の月のコンテンツや締め切り日を決めておくことがおすすめです。
また、コンテンツ作成者へのフィードバックも忘れてはいけません。公開日から数日後(1週間以内が目安)に、記事へのPV数やいいね!数、リツイート数、記事へのコメントなどを伝えましょう。定期的に最も反響の良かった記事を書いた人にMVP賞を授与するなど、「やる気」につながるきっかけを用意するのも編集長の仕事です。
3. 記事のカテゴリ決め
どんな記事を扱う? オウンドメディアの方向性を決める
さて、チームを作れたら、次は「どんな記事を作っていくか?」というオウンドメディアの方向性を決める必要があります。また、どんなカテゴリの記事を扱っていくかも決めましょう。
オウンドメディアで公開するコンテンツは、企業やブランドを代表するもので、いわばそのブランドの「色」を形成するものです。そのため、公開するコンテンツのカテゴリはしっかり考える必要があります。
代表的な記事のカテゴリ5パターン
どんな情報ならオウンドメディアを訪れた人に有益だと思ってもらえるか、自社が持っている数ある情報を整理してみましょう。ここでは参考に代表的な例を5つ紹介します。
専門知識を提供するコンテンツ
企業がオウンドメディアで専門知識を公開することは「ノウハウの流出」だと思われがちです。しかし、価値ある情報を出し惜しみするのはかえってもったいないことです。ノウハウやデータなどユーザーに役立つ有益な情報をコツコツ提供しましょう。商材によっては、運用方法なども記事になります。
読者に「そんな情報まで載せているんだ!」「今後も困ったらここに来れば疑問が解決できるかも」と思ってもらえるチャンスでもあるのです。
何らかの目的や課題を持って検索をした人が、記事を読んで疑問を解決できてこそ、オウンドメディアの価値があります。「ここへ来れば、他の疑問も解決できるかもしれない」と思ってもらうために、時間と労力をかけても取り組む価値があります。
導入事例を紹介するコンテンツ
事例紹介は、PR素材としても使える便利な企画です。ただし、オウンドメディアで紹介してもいいかどうかは、事前に必ず顧客の許諾を得ておきましょう。また、紹介の手法にもいくつかのパターンがあります。たとえば、インタビュー記事や動画コンテンツにしたり、テンプレートの質問項目に答えてもらったりなどが考えられます。
ここで注意すべきなのは、自社の商品やサービスのPRに寄りすぎないことです。あくまでも顧客の立場に立って、導入事例をわかりやすく示しましょう。例として、弊社のオウンドメディアで掲載した事例紹介の記事を以下に示します。
ユーザーの活用事例を紹介するコンテンツ
これは弊社でも行っている企画ですが、扱っている商品を実際のユーザーがどのように活用しているかを紹介するコンテンツです。導入事例と似たように感じるかもしれませんが、活用事例の紹介は次のようなメリットがあります。
- ユーザーが実際の活用シーンをイメージできる
- 商品を活用することで得られるメリットを示せる
これはどんな商品にも言えることですが、その商品の購入を考えている潜在層にアプローチできるほか、既存顧客にも活用方法の新提案として提供できるはずです。
ツールなど、ユーザーの使い方によって「やり込み度合い」が異なる商品を提供している企業にとっては、実際に利用する上での具体的なアイデアを記事にでき、有力な連載になります。
社員インタビューや自社ニュースなどブランディングに役立つコンテンツ
社員へのインタビューや、自社イベントのレポートなどをコンテンツとして公開することで会社のブランド形成にも役立ちます。そうした記事を読んでくれた人が「こんな人がいる会社で私も一緒に働いてみたい」と共感してくれるなど、リクルートの面でもPRとして役立ちます。
バズを狙う雑学ネタのコンテンツ
バズったときの効果はてきめんです。普段は自社のメディアコンテンツに触れないような人にもリーチできるなど、爆発的に認知度を高めることができます。
ときどき、このようなコンテンツを狙って入れるものいいでしょう。ソーシャルメディアでの拡散方法については、別の記事で解説する予定です。
4. 連載のアイデア出し
長期的なコンテンツ制作を楽にする「連載」の考え方
多くの時間と労力を要するオウンドメディアの運営は、可能な範囲で簡素化した方が長期的に見てかなり楽になります。その意味でも、連載やシリーズ企画を立ち上げるのはとても有効です。では、どのような企画を立ち上げればいいのでしょうか?
まず、通常のコンテンツ作りと同様、エンドユーザーの「ペルソナ設定」を行い、そのターゲットにアプローチできる最良の企画を考えます。次のような要素を想定したうえで企画を始めましょう。せっかく企画をスタートしても、的を射ていなければ意味がありません。
- その連載を読んだ方にどうなってほしいのか
- どんなことを感じ取ってほしいのか
- 読者にとって有益であるか
前述のカテゴリ案をヒントに、連載にできそうなものを選んでもいいでしょう。
その他にも、他企業とのコラボ企画といったアイデアもあります。自社ではできない企画に着手したり、新しい発想を吸収したりできるほか、協力企業でも拡散してもらえるなど、自社だけでできないメリットが多いのが特徴です。
5. コンテンツの外注
社外の人とは「コンセプトと意思の共有」を心がける
オウンドメディアのコンテンツは、社内の人が作るのが好ましいとされています。会社の意向や顧客を熟知していて、仕事に対する熱量も違いますし、社内にノウハウや知見をためることもできるからです。
しかし、内部の人間だけで作成していると、どうしても視点が一点に集中してしまい、コンテンツの幅が狭まってしまうことがあります。そんなときには、外部ライターの出番です。外部の人だからこそ作れるコンテンツもあるはずです。
- 文章作成やデザインなどコンテンツの品質向上
- 自社のコンテンツ作成に十分な時間を費やせる
- コンテンツのバリエーションが増える
- 自社とは違った目線の記事を載せられる
- PRなど拡散力の促進
一方、外部の人間を迎えるということはリスクもあります。注意すべき点を共有したり、事前に取り決めを交わしたりするなどのコミュニケーションが必要だということを忘れてはいけません。
外部に発注するときの注意点3つ
ここでは、外部ライターにコンテンツ制作を発注する際に気を付けておきたいことを押さえておきましょう。
コンセプトと意思のすり合わせ
一番重要なのは、コンセプトの共有です。自社のオウンドメディアは、何を目的・目標にして運営しているのかを理解してもらったうえで外注を進めましょう。この部分を共有できていない状態では、コンテンツを作っても効果は生まれません。たとえ記事が良くても、ターゲット層にアプローチできないといった事態に陥ってしまいます。
どのようなコンテンツが欲しいのかをはっきり伝える
上記のコンセプトを踏まえたうえで、「バズらせること」を目的としたものを依頼するのか、「ロングテールを意識した」記事を作成してもらうのかを決めます。これは自社のコンテンツの方向性を理解してもらうこと、あるいは定めることにもつながります。
また、寄稿者だからこそ企業の意向に縛られないものを制作できることもあります。たとえば、その人が得意とするもの、第三者目線での商品評価、インタビューなどです。もちろん、コントロールすべき部分は残しつつ、自社だけでは作れないものを依頼してみるのもいいでしょう。
コンテンツに求められる品質のチェック
「プロのライターに執筆してもらうんだから品質は大丈夫だろう」と安心してはいけません。自社のコンテンツの質や色に見合うものを納品してもらえるのか、発注者が必ずチェックしなくてはいけません。
最初は、お互いのトライアルとして1本記事を書いてもらってから、その後の契約に進めるのがいいでしょう。そのとき、トライアルで発生した作業に対してきちんと対価を支払うこともお忘れなく。
外注先の探し方3パターン
コンテンツ制作をどこに依頼すればいいのか、外注先の探し方はオウンドメディア担当者を悩ませる課題です。
業者や専門家を当たる
コンテンツマーケティングを得意とする企業にアウトソーシングの依頼をする場合、上記のようなメリットを十分期待でき、リスクも回避することができます。
また、その業界の専門家にゲストとしてメディアの1コーナーを任せてしまうという方法もあります。専門性の高い内容をアップするのはもちろん、専門家の意見ということでそのコンテンツの信頼性をいっそう高めることができます。一方で、どちらも費用面での負担が大きくなってしまいがちです。
ファンのユーザーから見つける
どんな企業や商品にもファンは存在します。その中でコンテンツ作成に長けている人、依頼を受けてくれそうな人がいれば文句はありません。FacebookやTwitter、個人ブログなどを検索して、自社製品に関するコンテンツを作成している人を見つけてアプローチしてみましょう。彼らからすれば、好きなブランド・企業へ寄稿・連載を持つことができるというメリットがあるので、依頼のプロセスもスムーズに進められます。
クラウドソーシング
ランサーズやクラウドワークスといった、クラウドソーシングを活用するのもいいでしょう。こちらは、専門家のものとはひと味違ったコンテンツを得られる可能性があります。ただし、外注の注意点はよくよくチェックする必要があります。運が良ければ、長期的に依頼できる人材を確保できるかもしれません。
- ランサーズ
http://www.lancers.jp/ - クラウドワークス
http://crowdworks.jp/
6. スケジュールの管理
読者を飽きさせず、長く続けられるスケジュール作り
最後は、スケジュール管理についてです。オウンドメディア運営にスケジュール作りは欠かせません。「毎日欠かさずコンテンツを配信する」のは、運営未経験者にはとても高いハードルです。最初は、少人数かつ別の業務と兼任で運営していくことが多いでしょうから、「記事作成も別の業務の合間に……」ということが日常茶飯事になってきます。
毎日更新しないとファンがついてくれないのでは?
そう心配になるかもしれませんが、大丈夫です。実際、多くのオウンドメディアが毎日更新ではありません。オウンドメディアの目的は次のようなところにあります。
- 良いコンテンツを公開し、それをきっかけに企業やサービスのファンになってもらう
- 存在に気づいてもらう(覚えていてもらう)
- 必要なときに思い出してもらえるようになる
毎日更新することを一番の目的にしていると、締め切りに追われるばかりで記事の品質がおざなりになっていくこともあります。少ない人数で無理なくこなしていける、週に数回の更新でも構いません。コンテンツの質を落とすことなく運用できるスケジュール感が大事です。
運用するにあたり、スケジュール表を作りましょう。バレンタイン時期にはそれに合ったコンテンツを入れるなど時事ネタも取り入れると、読者を飽きさせない工夫になります。そのうえで、自社でのリリースやセミナーなどのイベントも発信できるようにするといいでしょう。
初めてスケジュール表を作るときには、次のようなWebの素材を活用するもの手です。
- 月間エディトリアルカレンダー無料ダウンロード(イノーバ)
http://innova-jp.com/library/editorial-calendar-monthly - 販促カレンダー(ヤフー)
http://promotionalads.yahoo.co.jp/online/doc/pdf_calendar.html
また、コンテンツの制作フローを「テーマ」「構成案」「作成」「校正」「公開」と細かく段階分けすることで、「だれが」「いつ」「どの部分」を担当しているのかを把握しやすくなります。
今回は、オウンドメディアの運営体制について解説してきました。「無理なく良いコンテンツを作り続けられる体制作り」が一番大切です。社内と社外も含めて、より良い体制を構築してください。
ソーシャルもやってます!