各社の事例でわかるオウンドメディア運営の「企画」「構築」「成果」ノウハウ

オウンドメディアのSEOは「想定質問」に答える「プル型」がカギ

オウンドメディアで検索エンジンから集客するには、従来のメディアとは違う「プル型」のアプローチが必要です

検索エンジンからの流入を増やすにはどうしたらいいの?

クオリティの高い記事なのに、継続的にアクセス数を稼げないのはなぜ?

他社と同じような記事を書いているのに、アクセス数に差がある

オウンドメディアを立ち上げた際に担当者を悩ませることの1つとして、「アクセス数が増えない」という問題があります。流行やトレンドに乗った記事だけでは頭打ちになることも多く、継続的に検索エンジンから記事へ流入するように、SEOの観点からも考えていくことが重要です。

オウンドメディアにおけるコンテンツとSEOの関係というと、2つの観点が考えられます。

  • コンテンツの追加によりサイトの評価が上がり、もともと上位表示をしたいと考えていたキーワードの順位が上がる
  • 追加したコンテンツ自体が検索エンジンに評価され検索流入が増える

今回は、オウンドメディアへの直接の流入である後者の観点に絞って解説します。

本来、コンテンツの内容とSEOは切り離して考えるのではなく、一緒に考慮していくべき問題です。オウンドメディアの立ち上げ支援や、メディアサイトをコンサルティングしてきた筆者の視点から、これらの問題を解説していきたいと思います。

「プル型」「プッシュ型」を意識する

オウンドメディアの流入経路については、「検索エンジンとソーシャルメディアのどちらから流入させるか?」という議論になることが多いですが、効率よくオウンドメディアにコンテンツを追加していくには、もう少し本質的な議論が必要です。そのために必要になるのが「プル型」と「プッシュ型」という考え方です。

  • プル型: 情報を取りにくる能動的な人に情報を届ける
  • プッシュ型: 情報取得を意識していない受動的な人に情報を届ける

ユーザーが目的をもって探しにくる「プル型」コンテンツ

「検索」「調べる」といった能動的な行動を取る人がターゲットの場合、オウンドメディアへの流入は「プル型」で設計するべきです

既存メディアでいうなら、辞書や辞典がプル型の代表的なメディアです。辞書や辞典を使うユーザーは何か知りたいことがあり、明確な目的(ニーズ)を持って項目を探します。Web上では検索エンジンが辞書における索引の役割を果たし、ユーザーは膨大な数のWebサイトから自分に合った情報を見つけ出します

プル型コンテンツの図

このようにユーザーにもともとニーズがあって、検索行動などがきっかけでコミュニケーションが始まり、企業側が回答を用意して網を張るという情報の伝わり方を「プル型」と呼びます

ニーズがあいまいな人に情報を届ける「プッシュ型」コンテンツ

逆に、メディア側がきっかけを作り、受動的なユーザーに情報を届ける情報の伝わり方を「プッシュ型」と呼びます

既存メディアでは、新聞や雑誌がプッシュ型の代表的なメディアです。届けられる新聞を読む人は、「明確に調べものがある」というよりは、「世の中で起こっていることを知りたい」というマインドをもっています。購読行動は一見能動的な行動に見えますが、「特定の情報を目当てにしていない」という意味では、受動的だといえます。

プッシュ型コンテンツの図

オウンドメディアでは「回答」になるプル型記事を作る

オウンドメディアで検索エンジンからの流入を増やしたいなら、プル型のコンテンツが適しています。

プル型のコンテンツの情報伝達の方法は、検索エンジン対策=SEOにほぼ集約されます。いくら文章のクオリティが高くても、検索しているユーザーの気持ちに対してピントが外れた内容では意味がありません。「コンテンツを追加しているがアクセスが増えない」というときは、この点がうまくいっていない可能性があります。

インターネットで検索する行動は、ずばり「質問」であるといえます。ユーザーには明確に知りたいことがあるのですから、「質問に答える」ことを明確に意識してコンテンツを作成することが、検索流入を増やす重要なポイントになります。

質問に回答する例
  • ユーザーの質問: ○○という新車はいくら?
  • 回答: ○○という新車の価格は○○円です

ユーザーの質問はどこを見ればわかるのかというと、ユーザーが検索するキーワードが質問そのものだといえます。たとえば、検索キーワードが「洗濯機 サイズ 一人暮らし」であれば、「一人暮らしにはどのくらいのサイズの洗濯機が適切か?」といった質問が隠れていると想像できます。

キーワードから質問を読み取る例
  • キーワード: 洗濯機 サイズ 一人暮らし
  • 隠れている質問: 一人暮らしにはどのくらいのサイズの洗濯機が適切?

この質問に対して答えるような記事を書けば、ユーザーの質問に答えるコンテンツが作成できるわけです。

私たちが自分でコンテンツを作成する際やクライアント、ライターの方に作成してもらう際には、必ず各記事に「想定質問」を設定します。多くの場合は1つの記事に複数設定します。たとえば、次のような具合です。

キーワードの例
  • 化粧品 消費期限
キーワードから考えられる想定質問の例
  • 化粧品に消費期限はあるの?
  • 一般的な消費期限はどのくらい?
  • 消費期限を過ぎた化粧品を使用したらどうなるの?
  • すべての化粧品の消費期限はあるの?

これらの想定質問に答えるように記事を作成したあとに、質問に答えているかどうかを必ずチェックすることにより、プル型の記事として役割を果たせるようになります。想定質問を設定せずに記事を作成すると、ユーザーの質問に対してはいまひとつ物足りない記事になってしまうでしょう。

新聞や雑誌をはじめとした従来型のメディアは、プッシュ型が主流でした。ライターにお願いして記事を書いてもらう場合は、プッシュ型に慣れているライターが多いので、プル型の記事を書いてもらうように事前に確認しておくといいでしょう。

キーワード探しはツールを使う

ユーザーが検索するキーワードは無数にありますが、頭で考えるには限界があります。そんなときは、キーワードを探す際に便利なツールを使いましょう。ここではそれぞれのツールの使い方に詳しくは触れませんが、ユーザーのニーズや想定質問を考える際に参考にしてください。

グーグルは非公式APIの利用制限を発表しているため、一部のツールは今後利用できなくなる可能性があることに注意。

検索順位をもとに定期的に振り返りを行う

コンテンツは「書いたら終わり」ではありません。記事掲載後に振り返りを行い、継続的にメンテナンスしていくことが重要です。

従来のプッシュ型の考え方だと、コンテンツを新しく作成して追加していくことばかりに注意が行きがちです。しかしプル型記事は、もとになるユーザーの「質問=検索行動」が継続的に存在するため、一度出して終わりではなく、継続的にメンテナンスをします。

メンテナンスは、「狙った検索キーワードで検索順位の上位を取れているかどうか」をチェックします。キーワードに答えるために作成した記事なので、そのキーワードで上位表示されていなければ、オウンドメディアも認知されません。目安は、検索結果の1ページ目、できれば検索順位1~10位くらいを目指します。

検索順位のチェックもツールを使う

振り返りを行うには、ツールの力を借りて行うのがおすすめです。ここでは、検索順位を調べるのに役立つツールを有料・無料含めていくつか紹介します。

◇◇◇

今回は、オウンドメディアとSEOの関係について、プル型とプッシュ型の観点からお話ししました。SEOの観点からオウンドメディアを考えると、従来型のメディアとは異なるやり方が必要だということがおわかりいただけましたでしょうか?

ライティングにいくらコストをかけたとしても、読者が求めている情報にそぐわないとオウンドメディアのアクセスは増えず、成果も生まれない状態となってしまいます。検索流入を重視するのであればコンテンツはプル型で作成し、継続的に振り返りを行わなければ期待している結果にはつながりません。「1つの記事を出したら終わり」ではないのがオウンドメディアの奥深いところです。

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