エンジニアのためのSEO入門

SEOはエンジニアとWeb担当者のチームプレー

スキルセットや共通言語が異なる
エンジニアとWeb担当者をつなぐための手引書

エンジニアのためのSEO入門

はじめに

SEOがWebサイト運営にとって欠かせないマーケティング方法となっている今日では、関連書籍やWebサイトにSEOに関するたくさんの情報が掲載されるようになりました。そういった情報をもとに、Web担当者やマーケターの方たちは、さまざまなアイディアをだして実際にサイトの改善を行っています。そして、担当者の知識は年々蓄積され、ノウハウとして確立しているように感じられます。

その一方で、SEOの施策を実際に行う人といえばシステムエンジニアやプログラマと呼ばれるエンジニアの方たちです。いわばWebサイトの裏方さんたちです。

Webサイトの運営は、エンジニアチームとWeb担当者チームのチームプレーによって成り立っています。SEO施策を行う上でも両者の密な協力がなければ、100%のSEO効果を得ることはできません。とはいえ、スキルセットの異なる人たち同士のコミュニケーションは往々にして噛み合わないことがあります。

とあるプロジェクトの一幕です。ちょっと大げさかもしれませんが、Web担当者を相手に、こんな会話を経験したことはないでしょうか?

Web担当者:ユーザーテストをした結果、購入プロセスのページを改修したいんだけど

エンジニア:改修に対する影響範囲を考慮すると、開発・テストまで含めてリリースは2か月後ですね

Web担当者:こことあそこを少しだけ直すだけなんだけどな

エンジニア:なるほど。では1.5か月くらいかな

Web担当者:……

少しの改修にみえても、変更する仕様を確定し、コードをなおして実装する。もちろん他の様々なシステムに影響がないかどうかをきちんとチェックするフェーズを設けると、そんなに簡単に済む話ではありません。

Web担当者:SEO会社の提案で、ページネーションのURLを静的にしたいんだけど

エンジニア:あー、あそこはフレームワークで生成しているので、手をつけられないな

Web担当者:フレームワーク?直すのにどのくらいかかるの?

エンジニア:ベンダーさんに聞かないとわからないなー

Web担当者:……

今すぐ、なるべく早く直したいと担当者が申し出てきても、システムを導入したベンダーに問い合わせないとわからない場面も多いはず。システムに弱いWeb担当者ではなかなか理解してもらえないポイントです 。

これらは極端な例ですが、 エンジニアがSEOの意義やポイントさえ理解していれば、別の方法がとれることもあるのです。この連載では、エンジニアの方たちがSEOとSEOに必要な技術を整理して理解することで、Web担当者と同じ目標を持って協力しあえる「ドリームチーム」の結成を実現できるようにアドバイスしていきます。

この連載は誰のためのもの?

ここで、今回の連載で対象とする“エンジニア”について一度整理してみたいと思います。エンジニアとは、技術者やシステム屋とも呼ばれ、サーバーの監視運用、プログラム開発、データベース設計運用など、システムの構築・運用に携わる数多くの分野の人々の総称として用いられます。会社規模にもよりますが、システムエンジニア、プログラマ、サーバー管理者、ネットワークエンジニアといったより細かな職種にわけられることもあります。SEOの技術はさまざまな分野の幅広い知識を理解する必要があるので、今回の連載のターゲットはこれらの細かな職種を含めたエンジニア全員を想定して進めていきます。主に、開発なのか運用なのかにかかわらずシステム全般を担当するシステムエンジニアをターゲットの中心とし、その他の職種の方々にも理解してもらいたい内容に関しては、各章の冒頭で対象者を明記して説明していきたいと思います。

対象者はこんな方々です。

  • システムエンジニア
    下記のような数多くの専門技術者を取りまとめる立場
  • サーバー管理者
    サーバーが停止しないようネットワーク負荷が高まらないように監視・運用を行う
  • プログラマ
    デザイナーやコーダーが作成したHTMLにプログラムを埋め込みテストを行う
  • データベースエンジニア
    大事なデータが消失しないようデータベースを最適化・バックアップする
  • ネットワークエンジニア
    ネットワークシステムの構築・運用を行う

SEOの基本 SEOとPPCの違い

それでは、連載のタイトルにもあるSEOについて説明していくことにしましょう。SEOに関する技術的なポイントはシステムエンジニアのみならず、他の技術系のどんな職種の方にとっても覚えておいて損はないはずです。そのため、今回はエンジニア全員を対象として進めていきます。

今回の記事の対象者
システムエンジニアサーバー管理者プログラマデータベースエンジニアネットワークエンジニア

Web担当者の方にとっては当たり前かもしれませんが、SEO(Search Engine Optimization)とは、SEM(Search Engine Marketing:検索エンジンの検索結果ページへの露出を最適化するマーケティング方法)の一種です。以下の検索画面を例にとって説明していきましょう。

エンジニアのためのSEO図1
図1:Googleで「デジタルカメラ」と検索した際の検索結果画面(実際の画面には色は付いていない)

この画面に表示されている内容は、大きく分けて2種類あります。

  • 黄色で示したエリア:キーワード広告表示エリア
    お金を出して広告枠を購入し、ユーザーがクリックするごとに広告主から広告費として(この例の場合だと)Googleに料金が支払われます。
    →PPC(Pay Per Click)やリスティング広告、キーワード広告、検索連動型広告などといいます。

  • 青色で示したエリア:自然検索(オーガニック検索)結果表示エリア
    この場合「デジタルカメラ」というキーワードを入力したユーザーにとって、Googleが最も有益なサイトだと判断したページを順番に表示します。
    →SEOの対象エリアです。

Google以外にも日本の主要な検索エンジンとしては、Yahoo! JAPANなどがありますが、ほとんどの検索エンジンは上記と同じような構成(広告エリアと自然検索エリア)をとっています。

SEOとは、その自然検索エリアで上位に表示されるよう検索エンジンに対してサイトを最適化していくことを指すのです。

ただし、あるサイトに検索エンジン経由で来訪したとしても、直帰(1ページだけ見て別のサイトへ行ってしまうこと)されてしまえば、そのサイトにとっては意味がありません。コストをかけた企業Webサイトであることを考えると、来て頂いたユーザーになるべく長く滞在してもらい、再訪を促し、コンバージョン(物を買ったり、登録したり)してもらうため、ユーザビリティの改善やLPO(Landing Page Optimization)といった手法も含めてこそのSEOだと考えられます。

検索エンジンの目的

続いては、SEOを行ううえで相手となる検索エンジンの考え方(ビジネスモデル)を整理しておきましょう。

検索エンジンは、広告(PPC)エリアから収益を得ることをビジネスモデルのひとつとしています(Googleは2007年度決算において97%が広告収入です)。そのため、たくさんのユーザーに検索してもらい、広告をたくさんクリックしてもらう必要があります。よりよい(=検索したユーザーが求める)ページを自然検索部分で無料提供し、ユーザーにとって優秀な検索エンジンであり続ける必要があります。そうでなければ、二度とその検索エンジンで検索をしてもらえなくなるからです。そのため、世界中のサイトを巡回し、それらを分析し、ユーザーの入力キーワードに、より合ったページを表示するようアルゴリズムを日々チューニングしています。

参考:「Googleのビジネスモデル

SEOは検索エンジンが相手ですから、しばしば検索エンジンのアルゴリズム変更で「順位が下がった」「検索結果に出てこなくなった」という話を聞いたことがあると思います。しかし、実は検索エンジンの意図をしっかり理解して対策を行っておくと、アルゴリズム変更による順位変動の影響を少なくすることができます。検索エンジンは以下のような内容を機械的に正しく判断評価をしていきたいと考えています。

  • そのページが何のテーマについて書かれているのか?
  • そのページの他にどんなページがあるのか?
  • そのドメインはどんなテーマのサイトなのか?

世界中から集めたページの中から同じテーマ(キーワード)のページを相対評価しあい、ユーザーに有益なページ(検索結果)を提供しています。そのために、スパム行為(検索エンジンの目をごまかして検索順位を上げようとする悪意のある操作)に対しては徹底的に排除しようと、厳しく目を光らせています。こちらに悪意がなくても検索エンジンに誤解されてしまうこともありますので、サイト側では以下の2点を基本的な考え方として対策していきましょう(詳細は次回以降お伝えしていきます)。

  • そのページが何についてのページなのかを正しく間違いなく伝えられるようにする。
  • そのドメイン、サイトが何のサイトかを正しく間違いなく伝えられるようにする。

SEOの3要素

SEO対策は、通常「内的施策」「外的施策」に大別されますが、アユダンテでは以下の3つに分類しています。
  1. キーワードとカテゴリ設計
  2. 内的施策
  3. 外的施策

技術者の方が活躍する対策は、そのうち主に内的施策の部分です。3要素を詳しくみていきましょう。

キーワードとカテゴリ設計

検索エンジンは「キーワード」を通じて、サイトとユーザーを橋渡しします。たとえば「ネットブック」を販売するページがあるとしましょう。でも、そのページ(HTML)に「ネットブック」というキーワードを入れずに「UMPC」というキーワードを入れてしまえば「ネットブック」で検索するユーザーの検索結果には絶対に表示されません。

サイトにあるコンテンツ、商品、情報などを「ユーザーがよく検索するキーワード」に基づいて、そのサイト内での配置を設計する作業をキーワード設計、カテゴリ設計と呼びます。これらは主にWeb担当者やマーチャンダイザー、インフォメーションアーキテクトなどが担当します。

内的施策

内的施策とは、サイトのドメイン名やURL構成、HTML、CSSなど、そのサイトの内側に施す対策です。ここが主に技術者の方の腕のみせどころです。この内的施策に関しては、次回以降ポイントごとに解説していきます。

外的施策

GoogleのPageRankという指標は周知の通りですが、別ドメインの、価値や関連性が高いページからのリンクをもらっていればいるほど、ユーザーにとってそのサイトは有益なページであるという考え方です。サイトを作っても、外部からのリンクが1本もなければ、基本的には検索結果に出てきません。

◇◇◇

SEOとは上記の3つの対策をバランスよく行うことで全体的に価値を上げていく施策となります。もちろんその中では、エンジニアの理解と技術力がなければ、マーケティングもうまくいきません

この連載では、SEOというマーケティングに関して必要となる技術的なポイントを説明していきます。次回は、内的施策を行う上で、相手となる検索エンジンのクローラーについて説明していく予定です。

用語集
CSS / HTML / PPC / PageRank / SE / SEM / SEO / エンジニア / オーガニック検索 / キーワード広告 / クローラー / コンバージョン / システムエンジニア / ドメイン名 / ユーザビリティ / ユーザーテスト / リスティング広告 / リンク / 検索エンジン / 検索連動型広告 / 直帰 / 自然検索
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