初代編集長ブログ―安田英久

“iPadが当たるプレゼントキャンペーン”にアップルは“NGです”

アップル的には、実はiPadを賞品としたプレゼントキャンペーンはNG
Web担のなかの人

今日は、集客などのキャンペーンでプレゼントを提供する際の注意点を。実は、「iPadが当たる」キャンペーンはNGだって……知ってましたか?

「iPadが当たるプレゼントキャンペーン」、多いですね。人気のiPadですから、応募も多くなるし、WiFi版ならiPhoneのような契約は必要ないので、プレゼントとしては扱いやすいですからね。でも、アップル的には、実はiPadを賞品としたプレゼントキャンペーンはNGなんですよ。

主にオンラインでプレゼントキャンペーンを企画するマーケ担当者さんのために、プレゼントキャンペーンで注意する点をご紹介します。

なぜiPadプレゼントはNGなの?

アップルに確認したところ、「iPadのプレゼントキャンペーンでの利用はご遠慮いただいております」という回答で、その理由は「新製品だから」。プレゼント目当ての購買抑制を避けるためで、「ある一定の期間が過ぎれば、OKにする場合もある」とのこと。

というのは表向きで、実際にはおそらく、ブランディング的な意味合いが大きいでしょう。極端な話、アダルトサイトの入会キャンペーンでiPadがプレゼントにされたり、特定の宗教団体に関係する形でiPadが扱われたりすると、アップルのブランディング的にはマイナス要素となってしまいますからね。

実際に、アップル以外にも、文房具やファッション系などで著名なブランドでは、賞品のプレゼントキャンペーンでの利用をNGとしている場合が意外と多いものです。

ブランド認知の高い商品をプレゼントキャンペーンの賞品にする場合は、事前に広報に確認をとってみるのがいいでしょう(企業の広報連絡窓口は、著名な企業ならばサイトを探せば出てきますし、プレスリリースのページから見つかる場合も多いでしょう)。

禁止しているの? 違反すると訴えられたりするの?

とはいえ、企業側の姿勢はあくまでも「ご遠慮ください」というもの。お金を出して購入した商品の利用方法を禁止することはできないんですね。実際のところ、ブランド商品をプレゼントキャンペーンで賞品にしたことで訴えられた例は聞いたことがありません。

ただし、注意しなければいけないのは、プレゼント紹介で使う写真。正式に許諾を得てプレゼントキャンペーンを行う場合は紹介用写真を提供してもらえる場合もありますが、そうでなければ、企業サイトの商品紹介写真を勝手に使うと著作権を侵害してしまいます。

結局、iPadプレゼントはやっていいの? ダメなの?

メーカーは「NO」と言っているが、それに従わなくても実害はない。では、マーケ担当者はどう対応するべきなのでしょうか? そもそも、聞いたらNGと言われるのなら、聞かずにやってしまうほうがいいのでしょうか?

安田の個人的な見解は「プレゼントキャンペーンでの使用は事前にメーカーに確認し、NOだと言われた商品はプレゼントに利用するべきではない」で、その理由は、パブリシティ権的な面からみた尊重です。

iPadを例にとると、それを賞品にしたキャンペーンを行うのは、いまiPadが話題になっていて、賞品として取り上げることで、そのキャンペーンにより多くの注目を集められるからですね。

少し視点を変えると、同様に、有名な存在を利用して注目を集める手法として、タレントの起用があります。パッケージや宣伝に著名人の写真や名前を使えば、それだけでアテンションをとれます。

しかし、タレントの写真や名前を勝手に使うことはできませんね。それは、日本でも「パブリシティ権」として「その氏名、肖像から顧客吸引力が生じる著名人が、この氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利」が認められているからです。

つまり、「著名な人のもつ知名度に勝手に便乗」することはできないのです。

とはいうものの、人格権をベースとした「人のパブリシティ権」とは異なり、「物のパブリシティ権」といったものは、まだ認められているわけではありません。だからブランド商品をプレゼントキャンペーンにしても今は訴えられたり追加の料金を請求されたりすることはありません。

ですが、著名人のパブリシティ権と同様に、著名な物のパブリシティ権を尊重することはできます。

iPadのようなブランド力のあるものを賞品としてプレゼントキャンペーンを行うことは、悪い言い方をすれば「iPadのもつ知名度に便乗して」いるわけですから、ポイントは物のパブリシティ権を尊重するかどうかです。

あなたが「社会で活動するにあたっては、直接の利害関係者でなくてもそれを可能な限り尊重し、自社の利益のために正当な理由なく他社の尊厳をないがしろにすることはするべきではない」と考えているのでしたら、ブランド元がNOと言った商品を使ったプレゼントキャンペーンは行うべきではないでしょう。

あなたが「ブランド元の意向なんて関係ない、キャンペーンで自社に人が集まればいい」と考えているのでしたら、アップルが何と言おうと、正当に店舗で購入したiPadを賞品にしてプレゼントキャンペーンを行えばいいでしょう。

もちろん、各社がネットを使ってさまざまなキャンペーンを行える今の時代に、そこでの商品の使用を一律に禁止するのが最善かどうかについては、議論の余地はあるでしょう。購買欲や興味を喚起するチャンネルの1つとして、メーカー側が個別の判断に応じてYes/Noを決める方法もあるでしょうし、その効果は意外と大きいのではないかと思います。

とはいえ、ブランドを作り上げた人たちの考えを尊重するかどうかは別の問題ですね。

他者を尊重できない企業文化は、回り回って、尊重されない企業という結果を生んでしまうのではないかと、私は考えています。あなたはいかがでしょうか?

この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

B2C
Business to Consumerの略。B to Cとも。 企業から ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]