初代編集長ブログ―安田英久

オウンドメディア記事やリリースで数字を扱うときに最低限意識しておきたい2つのポイント

記事やリリースで「○○%アップ」とアピールしたくなったときに、優良誤認とかの問題を引き起こさないように表現をチェックするポイントをお届け
Web担のなかの人

今日は、記事やリリースで「○○%アップ」とアピールしたくなったときに、優良誤認とかの問題を引き起こさないように表現をチェックするポイントをお届けします。

オウンドメディア記事やプレスリリースなどで、数字を押しだした内容にすることってありますよね。

コンバージョン率が140%にアップ!

売り上げが270%アップ!

直帰率が30%も改善!

こういう表現、実は注意しないと誤った表現になり、場合によっては優良誤認と判断されかねないというのを、知ってましたか?

最低限注意したいポイントは、次の2つです。

  • 「○%アップ」と「○%になった」の違い
  • パーセントどうしの比較で使う「パーセントポイント」と「パーセント」

それぞれ解説します。

「○%アップ」と「○%になった」の違い

こんな表現を見ることは、よくありますよね。

コンバージョン数が1年で230%アップ

コンバージョン数が1年で230%アップ

2つの違いは「に」の有無だけです。しかし、この「に」を使うかどうかで、数値が正しく記載されているかが変わるのです。

具体的に見ていきましょう。

たとえば、事例の実際の数字が「1万CV → 2万3000CV」だったとします。その場合、表現によっては次のように誤った伝え方になってしまいます。

  • コンバージョン数が1年で130%アップ  →○(差分を正しく表現)
  • コンバージョン数が1年で230%にアップ →○(全体を正しく表現)
  • コンバージョン数が1年で230%アップ  →×(差分を過大表現)

少しわかりづらいですが、数値で示している変化が「増分」なのか「全体」なのかによって、日本語の表現も適切に変える必要があるんですね。

  • 変化量の差分を示す場合
    • ○%改善
    • ○%向上
    • ○%アップ
    • など
  • 全体の変化前後の比率を示す場合
    • ○%に改善
    • ○%に向上
    • ○%にアップ
    • ○%になった
    • など

過小表現するぶんにはまだいいんですが、問題は、本来よりも効果が大きく出ているような表現をしてしまっている場合です。

上の図で示した例だと、「230%アップ」と表現してしまうと、実際の姿よりもはるかに効果が高いように見せかけていることになってしまい、非常にまずいです。

たまに見かけるのが、記事本文では「230%にアップ」と記載しているのに、タイトルでは「230%アップ」となってしまっているような例ですね。おそらくですが、「文字数を減らして魅力的な記事タイトルにしよう」とがんばった結果、そうなってしまったのでしょう。

しかしこの場合、「事実と異なるが誘因力が高い表現を、あえてタイトルに使った」ということになります。そのため、顧客からみるとなおさら「ここの企業を信頼していいのか」という不安が増えかねません。

もっと言うと、こうした表現をしていると、場合によっては景表法でいう「優良誤認」だととらえられてしまっても仕方ありません。

もちろん現状では景表法上の「表示」の対象は主に商品自体や広告であり、オウンドメディアの記事やリリースはそこには含まれていないようです。

しかし、顧客からみれば広告であっても自社サイトであっても、「その企業が言っていること」に変わりはありません。事実と異なることを記載していたら、信頼を損ねてしまいます。

また、厚労省が最近だした医療広告ガイドラインの改正では、広告だけでなく医療機関のウェブサイト自体における表現も規制の対象となりました。そうしたトレンドを考えても、自社サイト上での表現にはしっかりを気を遣うべきでしょう。

パーセントどうしの比較で使う「パーセントポイント」と「パーセント」

こちらはすごくシンプルです。パーセンテージ同士を比較する場合、増減については「パーセント」ではなく「パーセントポイント」を使うほうがわかりやすいということです。

図で示した例では、「クリック率が40%から60%に変わった」を表しています。

この場合、表現として正しいものと誤っているものは次のとおりです。

  • クリック率が20パーセントポイント改善 → ○
  • クリック率が20ポイント改善 → ○(省略表記)
  • クリック率が50パーセント改善 → △
  • クリック率が20パーセント改善 → ×

要は、「パーセントとパーセントの間での変化量」を表すのにパーセントを使ってしまうと、それが絶対値なのか比率なのか判断しづらいということですね。

そうした場合には、数値が絶対値であることを示すために「パーセントポイント」を使います(略して「ポイント」とすることもあります)。

上記で「△」を付けている表現は、間違ってはいません。しかしこの表記の場合、読み手が「この『パーセント』は本当にパーセントを示しているのかそれともパーセントポイントを書き間違えているのか」と不安になり、結局データをしっかりと調べなければいけないという問題があるため、私は好みません。

とはいえ、「CV率が2%から6%になった」を表す場合には、絶対値を示すと「CV率が4ポイントアップ」となってインパクトが弱いですよね。そういう場合、私なら次のようにすると思います。

  • CV率が3倍に改善(CVR 2% → CVR 6%)
  • CV率が3倍にアップ(4ポイント向上)

こちらのほうは、あまり優良誤認につながるようなミスは起きにくいのではないかと思います。とはいえ、「この数値はどっちを言ってるんだ? 比率か? 絶対値か?」という判断を読み手にさせるのではなく、読み手がスムーズに正しく理解できるように意識して表現したいものですね。

◇◇◇

数字というものは、正しく扱えば、コンテンツに非常に強い力を与えてくれます。しかし、扱い方を間違えると、信頼を損なうなどの問題を引き起こしかねません。

ホントにちょっとしたことではありますが、こうした表現の細部を「適切に」「正しく」「わかりやすく」示すことは、情報を伝達するうえで心がけておくべき大切なポイントですね。

それがオウンドメディアであれ、プレスリリースであれ、広告であれ、営業マテリアルであれ。

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