スポンサードサーチ再入門

リスティング広告で「思い込み」でやってしまう失敗の傾向と対策「その対策は本当に正しいですか?」

多少の経験を積むと問題の対処にも慣れてくるが、思わぬ見落としから誤った施策になっている可能性もある
小西一星(LIC) 2013/7/31 18:00 |
[Sponsored]

今回は、あまりリスティング広告の運用に慣れていない方々が陥ってしまうであろうと思われる勘違いやミス、そしてその対策についてまとめました。

あなたは、リスティング広告を運用していて、こんなことはないだろうか。

予算消化ペースが早いので、上限予算の設定を下げる
東京にある店舗だから、配信地域は東京のみにする
ユニファイドキャンペーンでスマホに出過ぎないように入札調整率を下げる
突然コンバージョンが無くなった、これは広告設定が原因だな
ビッグワードは成果が出ないから止めておこう

……これらはセオリーどおりと思える対応だが、実はあなたの思い込みによる大間違いかもしれない。

「コンバージョン数が落ちて、CPA(顧客獲得単価)が高騰。このままでは今月の目標が達成できない……」こんなとき、なんとかしなければと焦って不安になることでしょう。

成果が悪くなった原因を探って対策を考えるわけですが、このとき自分では十分に探ったつもりが実は不十分で、誤った対策を取ってしまうことがよくあります。明確な問題点を見つけて的確な対策を考えられないことの原因は、多くの場合は「思い込み」です。

この思い込みを解消し、より正しく対処するにはどうすればよいのか? 5つの典型例で具体的に解説します。

運用がうまくいかないと、
「競合がパッといなくならないかなぁ」
「品質インデックスが急に上がらないかなぁ」
「いっそのこと管理画面のコンバージョン率を好きに変更できれば……」
などと思わず願ってしまった経験はありませんか?

しかし、そんな奇跡が起きることはまずありません。正しく原因を突き止め、適切な対策を行うしか解決の道はないのです。

思い込み その1
予算消化ペースが早いなぁ……。よし、上限予算の設定を下げておこう

1日あたりの掲載費が大体5,000円、でも月の予算は10万円なので、1日あたり3,000円台前半に抑えたいなぁ……。よし、上限予算設定を変えてみよう!

掲載費のペースをコントロールするには上限予算設定だ。CPAも悪いのにこのままにしていたら無駄に掲載費を使ってしまう。上限予算設定を抑えてから、CPAを引き下げる対策を考えることにしよう……。

ちょっと待った!

成果を上げることも視野に入れつつ予算消化ペースを抑えるために、上限予算を抑える。それは、常に最適な対策なのでしょうか?

「上限予算設定」という項目は、その項目名からして予算コントロールのためにあると思われがちです。もちろん予算消化ペースをコントロールすることはできますが、成果を上げながら予算消化ペースをコントロールするためには、「上限予算設定」は常に最適な手法であるとは言い切れません。

次の2つの表を見てください。

上限予算を下げる前
上限予算/日クリック数クリック単価コスト
5,000円25020円5,000円
上限予算を下げた後
上限予算/日クリック数クリック単価コスト
3,300円16520円3,300円

掲載費は抑えることができましたが、クリック数は85減りました。これは当然といえば当然です。コストを抑える手段は他に、入札単価を抑えるという選択肢もあります。それでは、入札単価を変えてみましょう。

入札単価を下げる前
上限予算/日クリック数クリック単価コスト
5,000円25020円5,000円
入札単価を下げた後
上限予算/日クリック数クリック単価コスト
5,000円22015円3,300円

この場合、コストは希望額に収まり、クリック数は30の減少にとどめています。

上記はあくまでも例で状況によって異なりますが、上限予算を変更しなくても、入札単価を抑えることで、クリック数の減少を抑えることができています。結果的にコストも下げることができますが、クリック数の減少幅が小さいほうが、コンバージョン数が下がる可能性も小さくなるでしょう。

もちろん、入札単価の調整では綺麗に狙いどおりのペースにすることは即座にできるものではないですし、予算消化ペースの安定性も高くないでしょう。日々かけられる手間とのバランスの問題もあるため、運用体制によっては必ずしもこれが正解とは言えません。それでも、この場合は単に上限予算を抑えるだけという施策は、最適だとは言えないでしょう。

また、この例のように入札単価を下げると、掲載順位も下がる可能性は高いものです。したがって、掲載順位がコンバージョン率に大きく影響している場合はこの限りではありません。さまざまな視点を持って、「自分の考えは本当に正しいのか」「そもそもの目的や目指すべきゴールはどこだ」といったことを、いつでも念頭に置いておきましょう。

思い込み その2
東京にある店舗だから、東京だけに指定配信すればいいね

うちの店舗は東京だけだし、来る人は東京にいる人なわけだから、東京にだけ配信すればいいや。他の地域に配信しても無駄な配信になるだろうし……。

ちょっと待った!

今東京にいる人は確かに「東京にいる人」ですが、その中で千葉や埼玉、神奈川から来ている人も多いですよね。路線を見ても、池袋は埼玉県から、秋葉原や東京駅は千葉県から、渋谷、新宿、品川は川崎市や横浜市から来やすく、毎日通勤している人も多くいます。

ちょっと考えると想像できますが、この見落としは意外にもよくあります。もちろん、東京の効率が一番よくて、他の地域に配信しても効率は悪いだろうという推測は自然です。

しかしここで重要なのは、「完全に無駄」なのか「無駄ではないけど効率が悪い」のかを考えることです。

仮に、千葉、埼玉、神奈川におけるコンバージョン率は、単純に東京の半分だとしましょう。その場合は、次のように入札単価を調整します。

キャンペーン配信エリア入札単価
東京指定配信東京のみ100円
千葉指定配信千葉のみ50円
埼玉指定配信埼玉のみ50円
神奈川指定配信神奈川のみ50円

都道府県ごとに単価を変えるには、これまではキャンペーンを分けて作成し個別に入札単価を調整する必要がありました。ところがユニファイドキャンペーンでは今後、1つのキャンペーンで地域別に入札単価を調整できるようになります

広告配信前に単価を考えるには、事前にアクセス解析ツールなどでメインターゲットのエリア以外のコンバージョン率を確認しておくのがいいでしょう。そういった参考になるデータがなければ、広告配信をしてみてからデータを確認して調整するしかありません。

ユニファイドキャンペーンならそれも簡単に設定できるので、低めの単価からでも試して、データを見ながら判断していきましょう。

思い込み その3
ユニファイドキャンペーンになってスマホに出過ぎるとまずいよな……。とりあえず入札調整率を下げておくか

うちのサイトはPC用だから、スマホで見ても誰もコンバージョンしないはず。スマートフォンの入札単価はとりあえず下げておこう……。

ちょっと待った!

確かにPC用の入力フォームはスマートフォンだと入力しづらくてCPAは悪いかもしれません。しかし、CPAを確認せずに適切な入札単価は判断できません

PCとスマートフォンと分けて運用している人なら、スマートフォンの結果を以前から確認しているので適切な入札調整ができるはずです。しかし、これまでスマートフォンのパフォーマンスを見ていなかった人は、ぜひこの機会に見てみましょう。

キャンペーン管理画面で、「表示」>「デバイス」と選択すると、PC、タブレット、スマートフォンの掲載結果を確認できます。
キャンペーン管理画面で、「表示」>「デバイス」と選択すると、PC、タブレット、スマートフォンの掲載結果を確認できます。
※この画像はサンプルです。

スマートフォンからの流入に対してリンク先がPC用サイトだったとしても、コンバージョンしないと決め付けてしまうには時期尚早です。

思い込み その4
ある日から急にコンバージョン無し。クリックはあって広告審査も落ちてないのになぜ?

先週の水曜日から一切コンバージョンしなくなっている……。とりあえず入札単価を下げるか上げるかしてみようか……。それとも広告を変えてみる? いったいどうしたらいいのだろう……。

ちょっと待った!

本当にリスティング広告のやり方自体が問題だと言い切れますか?

コンバージョンタグが外れているかも?

SSL証明書の有効期限が切れているかも?

入力フォームが障害を起こしているかも?

他人事なら笑い話で済みますが、実はよくある話です。Web担当者も四六時中Webサイトのことを監視できているケースばかりではありません。

答えは常に管理画面内にあると思い込んではいけません。運用をがんばるあまり、リスティング広告の運用にのめり込むのもいいのですが、たまには一歩引いて視野を広く持ちましょう。

思い込み その5
こんなビッグワードじゃ絶対に成果が出ないよね。止めておこう

うちは新宿にあるエステサロンだから、「新宿 エステ」みたいなワードにするべき。「エステ」なんてビッグワードじゃ、単価が高くて広告費用だけかかって成果につながらないからやめたほうがいいはず

「単価が高いワード」というのは、リスティング広告の悪い思い込みの典型例です。単価が高いワードなんてありません。単価の相場が高いワードがあるだけです

リスティング広告では、クリック単価を自由に決められます。ただ単に、それぞれのワードの持つパフォーマンスに合わせて最適な入札単価を設定すればいいだけなのです。

次の表は、ビッグワードをうまく活用できた実際の掲載結果です。

ビッグワードを活用できた掲載結果例
キーワードカテゴリインプレッション数クリック数コンバージョンCPCCPA掲載費
ビッグワード58万3,8821万1,7360.04%55円1万1,471円5万7,356円
掛け合わせワード16万7,3631,7570.68%1256円8,218円9万8,613円

実際のキーワードは明かせませんが、前述の例だとビッグワードは「エステ」で、掛け合わせワードは「エステ 新宿」「エステ 東京」のように地名と掛け合わせたものや「脱毛 エステ」「痩身 エステ」のように具体的な施術名と掛け合わせたワードの合計です。

ビッグワードはクリック単価が安くなっていますが、これは入札単価を数円にしているからです。圧倒的な検索ボリュームがあり、この入札単価でもかなりの表示回数とクリック数が稼げています。コンバージョン率は悪いですが、クリック単価が安いがためにCPAは特に悪いわけではなく、クリック数が大量なために結局はコンバージョン数もそれなりのボリュームになっています

もちろん、これはさまざまな要因が重なった成功例であり、あらゆるビッグワードでこの結果が出るわけではありません。ただ、「あまりにもビッグすぎるワードだから……」と思われているせいか、あまり入札されていないワードは探せばあるものです。そういったワードを見つけたときは、この例のように低単価で多くのクリック数を稼げることがあります。

いずれにしても検索ボリュームは大きいので、コンテンツを見直してコンバージョン率を上げたり、YDNサイトリターゲティングで繰り返しアプローチしたりと、試せることはいろいろあります。

日本最大の検索エンジンであるYahoo! JAPANで検索する大多数のインターネットユーザーにアプローチできる機会を活用しない手はありません。それは、とても大きな可能性をみすみす逃すことになると筆者は思っています。

引き出しの整理を常に心がけて「思い込み」から脱却

成果が悪くなったとき、「こういうときはこうする」という引き出しを持っている運用者は、日々の運用の効率も良く、問題の発見と解決するための施策を決めて実行するスピードも早いものです。ただし、広告システムの仕組みも世の中のトレンドも変わっていく中で、その引き出しが常に正しいとは言い切れません

「自分の引き出しはなぜ作られたのか」「それは今のこの仕組みとトレンドだからだ」ということを意識していれば、状況の変化に応じていち早く引き出しの整理ができるでしょう。

たとえば、以前は「とにかくキーワードを多く入れたほうがいい」と言われていたのは、なぜなのか。それは、当時のシステムによるところが大きいわけで、解決法が今も通用するとは限りません。

それをわかっている人で今も大量のキーワードを作っている人はいます。でもその人は、昔の大量キーワードとは全然違う大量キーワードを作っているはずです。

「この場合はこうすべき」という思い込みではなくて、「こうではないか?」「それでなければこうではないか?」と、あれこれ想定や仮説を思いつく人は、問題の発見と対策が早く、その質も高くなるのです。

次の3つの心がけで、思い込みによる失敗から卒業しましょう。

  • 仮説をきちんと立てること
  • データをよく見ること
  • 自分の中の引き出しの整理を常に心がけること

引き出しの整理をしていないと、私生活でも失敗します……。

「梅雨が明けた!」「今年の夏は遊ぶぞ!」と言って夏服の入った引き出しを開けたら、5年前に買った当時の流行の服ばかり……なんてことを想像してみてください。

[Sponsored]
この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

DX
Digital Transformationの略。企業におけるデジタル化・電子化 ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]