マルチデバイス化による検索行動と広告の変化――スポンサードサーチ責任者に聞いた検索連動型広告の最新トレンド
スマートフォンやタブレット向けの広告では、
時間と場所を意識したターゲティングが重要。例えば、スマートフォンは通勤中や昼休みのシーン、
タブレットは帰宅後から深夜のシーン、
そんな利用状況を想定するべきでしょう。運用型の広告施策では、状況の変化に対応しなければいけません。これからはマルチデバイスや顧客の状態を意識した広告戦略を。
2013年1月に、Yahoo!リスティング広告は「Yahoo!プロモーション広告」へとブランド変更を行った。機能拡充したYahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)が注目されているが、もう1つの柱であるスポンサードサーチに変化はないのか?
Yahoo! JAPANの広告ソリューションにおけるスポンサードサーチの位置づけと役割、そして検索連動型広告の最新トレンドについて、ヤフー株式会社でスポンサードサーチの責任者である絹田義也氏に聞いた。
顕在ニーズをくみ取る検索連動型広告としての位置づけは変わらず
―― 2013年1月のブランド変更について、スポンサードサーチから見た意義やYahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)との位置づけ、すみ分けについて教えてください。
絹田氏 今回のブランド変更では、大きな枠組みとしてまず「Yahoo!プレミアム広告」と「Yahoo!プロモーション広告」に分けたことがあります。
- Yahoo!プレミアム広告は、「認知してもらうこと」を目指した広告
- Yahoo!プロモーション広告は、「行動を起こすこと」を目指した広告
という位置づけです。この区別はブランド変更前から変わっていませんが、あらためてそれぞれの目的をはっきりとさせました。
Yahoo!プロモーション広告は、「販促」に近い役割ともいえます。したがってソリューションとしても、パフォーマンスの可視化や成約にどれだけ貢献できたかという部分を中心に強化していくことになります。
Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)に対する位置づけは、「行動を起こす」という部分は共通しています。そのうえで、スポンサードサーチでは検索連動型広告として検索キーワードである「顕在化されたニーズ」と広告のマッチングを行います。この点は従来どおりです。
―― あらためて区別を明確にする必要があった理由は、混同した使い方をする広告主が多かったので修正したかったということでしょうか。
絹田氏 ネット広告としては、最初に「枠を買う」というディスプレイ広告が登場し、それがネットワーク化されていきました。またいっぽう検索がインターネットユーザーの行動で重要な位置を占めるようになって、検索連動型広告が生まれました。そうした現在に至るまでの経緯の中で、もともとの目的が細分化され、役割が変わったものもあります。それを現状に沿った形で整理して、そのあいまいさをなくしたかったのです。
検索行動にも大きな変化をもたらすマルチデバイス化の波
―― スポンサードサーチは、費用対効果に優れた広告の定番として広く利用されていますが、最近の動向で注目すべきことはありますか?
絹田氏 スポンサードサーチというより、それを取り巻く環境の変化として大きいのはスマートフォンです。ネットの利用端末として業界全体で注目しているテーマではありますが、ポータルサイトであるYahoo! JAPANへのアクセスや検索でも、明らかな変化が表れています。
スマートフォンからの検索は、この1年間で2倍に増えました。また、タブレットも規模は小さいものの、同じく倍に成長していて、勢いはスマートフォン以上です。
2012年の後半に各社から7インチタブレット製品が多数出ましたが、それと呼応するように同じ時期からアクセスも一段上がって推移しています。2013年から2014年にかけては、タブレットに向けた広告市場が本格的に立ち上がるのではないかと予想しています。
一方、PCは規模こそまだ大きいものの、タブレットとの併用や置き換えが進む傾向にあります。特に、仕事から帰宅してリビングや寝室で利用する端末として存在感を増しています。
地域別に見ると、東京を中心とした都市圏に偏ってはいますが、それ以外の地域でも徐々に変化していくと見ています。Yahoo! JAPANの調査では、38%のユーザーが複数デバイスを所有しているという結果も出ており、この割合は今後さらに増えるでしょう。
PCやフィーチャーフォンに加えて、スマートフォン、タブレットというマルチデバイス化の流れは避けられない状況になりつつある中では、広告でもそれぞれの特徴を理解しながら対応していくことが求められます。
PC | 検索ボリュームは依然大きいが徐々にタブレットに置き換わっている |
---|---|
スマートフォン | フィーチャーフォンを追い上げている |
フィーチャーフォン | スマートフォンと反比例するように縮小傾向 |
タブレット | 規模は小さいがスマートフォン以上の勢いで増加 |
Yahoo! JAPANが実施したマルチデバイスに関する調査では、PC、スマートフォン、タブレットの利用傾向に注目すべき特徴が表れている。
以下のグラフは「各デバイスにおける時間帯別ユニークブラウザ数推移」(パソコン・スマートフォン・タブレット版Yahoo! JAPANにおける時間帯別ユニークブラウザ数)だ。
このグラフから、以下のような各デバイスの利用傾向が見えてくる。
PC | オフィスでの利用が中心のためか、朝から昼の就業時間にかけて多く、帰宅後に少し上がってから落ちる |
---|---|
スマートフォン | 通勤時などの利用が多く、就業時間では昼休みにピンポイントで高くなる |
タブレット | 昼間は他のデバイスに比べて低いが、帰宅後から深夜にかけてPCよりも利用傾向が高くなる |
以下のページでは、上記以外にも「デバイス別1日平均滞在時間」や「デバイス所有状況」の調査結果も掲載されているので参考にしてほしい。
PCに近いが独自性も持つスマートフォンの検索行動
―― スマートフォンやタブレットでの検索行動には、PCやフィーチャーフォンとは異なる特徴があるのでしょうか。
絹田氏 スマートフォンからのアクセスは、PCと異なる動きを見せています。携帯機器である点はフィーチャーフォンと同じですが、検索デバイスとしてはPCに近い特徴があります。スマートフォンでは、芸能人やスポーツの話題、ニュースなどを、テレビを見ながら調べたり、誰かと会話しながら調べたりする特徴があります。
これらの検索キーワードは従来のPCとは異なっており、これらに対してどういう広告商品を提供するかがスポンサードサーチの課題です。
もう1つの特徴は位置情報に連動している点で、やはり移動中に周辺のレストランやショッピング情報などを検索するという特徴があります。
―― スマートフォンは機能的にPC並みといえる部分がありますが、フィーチャーフォンに比べて検索内容や閲覧するサイトは異なるのでしょうか。
絹田氏 スマートフォンでも検索キーワード数は2~3個が多いようです。検索時の文字入力の煩わしさがネックになるのではないかと思うかもしれませんが、Yahoo! JAPANでは頻繁に検索されているキーワードの組み合わせを候補として提示するなど、入力をサポートする機能を提供しています。入力を助けることは、検索サービスとしてマッチング精度の向上につながるので重要です。
また、最近は音声入力も進歩していますし、入力の煩わしさは徐々に解決されていくと思います。
閲覧サイトについては、フィーチャーフォンではケータイサイトの世界が対象でした。検索結果はインデックスに基づいて表示されますが、ケータイ向けの場合はインデックス自体がPCサイトの世界とは切り離されていました。一部、PCサイトを変換した状態で閲覧できましたが、使い勝手は著しく劣ります。
スマートフォンではPCサイトが検索対象ですから、結果の情報量は充実しています。さらに、大きな画面やタッチ操作のおかげで、PCサイトでもフィーチャーフォンよりもはるかに見やすいです。
ただし、商品の購入や決済という点では、スマートフォンはまだPCに及びません。ここで注目したいのがタブレットです。タブレットは抵抗感がスマートフォンより低いせいか、購買行動に至る率が高い傾向にあります。スマートフォンに比べて、画面サイズがPCに近いことや自宅での利用が多いことが理由かもしれません。
マルチデバイス時代にはターゲティングがより重要に
―― スマートフォンやタブレットが台頭する中で、Web担当者として意識しておくべきことはなんでしょうか。
絹田氏 意識すべき点は3つあります。「ローカルビジネス」「デバイス別のコンバージョンコストとターゲティング」「購買行動の段階に応じた最適化」です。
まず「ローカルビジネス」について。スマートフォンの利用が増えることで、ローカルビジネス(地域に特化した事業)を営んでいる広告主様は、より地域性を活用できます。スマートフォンで来店を促したり、お得な情報を知らせたりと、デバイスのターゲティングが、より有効になります。
次が「デバイス別のコンバージョンコストとターゲティング」ですね。さまざまなデバイスが増える中で、デバイスによってコンバージョンコストが異なる点への意識が必要になります。資料請求のようにオンラインで完結するサービスでは、デバイスの違いによる差はさほどありません。しかし、実店舗へ足を運んだり、商品を購入したりといったサービスや商材では差が出ます。決済でコンバージョンを図りたいなら、先述のようにPCやタブレットのほうが高いので、デバイスのターゲティングが重要になります。
ターゲティングは「デバイス」「場所」「時間」などによって変わってきますが、その最適解はなにをもってコンバージョンとするかによって異なるのです。
最後の「購買行動の段階に応じた最適化」は、前述のようなターゲティングだけでなく、それぞれのインターネットユーザーの状態にあわせて対応すべきです。「情報を得る段階」「ものを選ぶ段階」「ものを買う寸前」など、購買ファネルのどの位置にいるかによって、ランディングページやキーワードを変えるといった最適化を進めると、効果が出るのです。
スポンサードサーチでも、「クイックリンク」という新たな広告表示オプション機能を3月27日に追加しました。これは、広告を目的ごとに細分化してランディングページを複数設定できるという機能です。「旅行」というキーワードがあるとして、さらに「海外旅行」「国内旅行」という形で、よりニーズに直結したリンク=ランディングページを示すことができます。インターネットユーザーが求めているもの、つまりコンバージョンのポイントと広告を近づけることを目指しています。
ポータルサイトであることを活かしながら
変化を乗り切る広告ソリューションを提供
―― スポンサードサーチについての展望とYahoo!プロモーション広告を利用するWeb担当者に向けたメッセージをお願いします。
絹田氏 スポンサードサーチのミッションは、インターネットユーザーからの検索の意図をくみ取って、販促につなげることです。場所や時間帯といった要素も加味しながら、何を意図しているのかを検索キーワードから判断するということです。例えばYahoo!ロコでのような地図サービスはその典型で、お店の名前で検索するときは、「そこへ行きたい」「営業時間を調べたい」「どんな料理があるのか知りたい」といった意図があるはずです。
それを踏まえて、お店の紹介や店長さんの声など、そこへ行きたいと思わせる情報を出すことで、コンバージョンにつなげるということをしていきたいです。
Yahoo!ロコに限らず、Yahoo! JAPANにはショッピングやオークションなど、さまざまなコンテンツやサービスがあります。Yahoo! JAPANでの検索には、そういったポータルサイト内の回遊から生まれるものが多くあります。TwitterやFacebookで公開されているつぶやきや投稿を対象にしたリアルタイム検索や知恵袋といった横のサービスと連携することで、検索サービス全体の質を高めていきたいと考えています。
スマートフォンにタブレットと次から次に考えることが増えてWeb担当者は大変です。前向きにとらえれば、今は楽しい時期でもあると思います。従来のPCだけの世界から、スマートフォンが飛躍的に伸び、それにタブレットが続こうとしています。2013年は激動の年になるでしょう。
その中でWeb担当者には、スポンサードサーチやYahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)をどう活用していくかが求められます。スポンサードサーチは運用型ですから、状況の変化に合わせて対応しなければなりません。われわれとしては、大きな変化が来てもスムーズに移行していただけるようにサポートしていきたいと考えています。
※画面はサンプルです。実際の表示は異なることがあります。
※本情報は2013年3月時点のものです。画面は変更する場合があります。
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