【レポート】Web担当者Forumミーティング 2024 春

GA4の難しさを解明! サイトのパフォーマンス改善に欠かせない指標とは

サイトのパフォーマンス改善をGA4で行う際、UAとは違った「難しさ」を感じている方も多いのでは? プリンシプルの木田氏が、その「難しさ」の本質はどこにあるのか紐解き、解決策を解説した。

GA4は、2020年10月の正式リリース以降、多くのユーザーから「(使いこなすのが)難しい」という声が上がっている。サイトのパフォーマンス改善をGA4で行う際、UAとは違った「難しさ」を感じている方も多いのでは? 「Web担当者Forum ミーティング 2024 春」に、プリンシプルの木田氏が登壇し、その「難しさ」の本質はどこにあるのか紐解き、解決策を解説した。

株式会社プリンシプル 取締役副社長 木田和廣氏

GA4は「ユーザー最適化」ツール。UAは「セッション最適化」ツールだった

はじめに木田氏は「パフォーマンス改善」の言葉の定義を「『集客施策の改善』や『サイト側のコンテンツ追加や改修』を通じて、より大きなインパクトをビジネスに与えること」と定義した。GA4を使ってパフォーマンス改善を行う際に、多くのユーザーが難しいと感じているのが実情だろう。木田氏は難しさの本質は「GA4を本来の目的に合わせて利用していないから」と指摘する。

GA4は『ユーザー最適化』ツールなのに、UA時代の『セッション最適化』ツールのつもりで利用しようとしているから難しい(木田氏)

つまり、ツールの位置付けが大きく変わったのに、利用者が用途・使い道を変えられていないのだ。「GA4ではユーザーが分析できるようになった」と聞くが、 「ユーザー最適化」とはどういうことなのか。

「ユーザー最適化」と「セッション最適化」の違いとは? 

木田氏はGA4が「ユーザー最適化」ツールである証拠として、以下の4つをあげた。

  • ユーザー識別へのこだわり
  • ユーザースコープの「ディメンション」の強化
  • ユーザースコープの指標の強化
  • 探索レポート4つまでが「ユーザースコープ」
GA4がユーザー最適化ツールであることの4つの証拠

GA4は、1人のユーザーが複数のデバイスでアクセスした場合でも、複数のセッションとして扱わず、同一ユーザーであろうことを極力判別しようとする。セッションの発生だけを見ず、あくまで各ユーザーの全体的な振る舞いを検知して、理解しようという発想だ。

ユーザーを解像度高く分析できるようになったGA4が「ユーザー最適化」ツールであることはわかったが、「ユーザー最適化」とはどういった活動なのか。木田氏の考えをダブルファネル図で示したのが以下だ。

ユーザー最適化とは

「自社にフィットするユーザー」を集客し、「ユーザーのファネル上のステップ」に応じたコミュニケーションを行うことによって、初回コンバージョンを獲得し、ビジネスモデル上、リピート購入やサブスク型で利用継続による増収がある場合は、さらにコミュニケーションを行ってLTVを向上させるという、この一連の施策が、木田氏が言う「ユーザー最適化」だ。

これに対して「セッション最適化」は、認知・関心・行動の3ステップのうち、行動フェーズにいるユーザーにアクションしてもらうことだと木田氏は解説する。ユーザー最適化は、セッション最適化に対して、より広範な活動と言えるだろう。「ユーザー最適化」は、認知してもらい、関心を高め、行動してもらう。ファネルを下ってもらえるよう、上から下まで一連の流れで進める必要がある点がポイントだ。

自社にフィットするユーザー=ファネルを下ってくれそうな一部ユーザー

前述の「自社にフィットするユーザー」とは具体的にどのようなユーザーだろうか。その前に、「ファネルをすべてのユーザーが下ると考えるのは、ファンタジーです」と木田氏。

たとえば、私はスカイダイビングを知っていて、認知はしていますが、飛びたくないので関心はありません。また、インド旅行は知っているし、関心もありますが、インド旅行には行ったことがありません。これらは、認知や関心で止まっている状態です。

この状況は、どのビジネスにも当てはまります。つまり、全員がファネルを下ると思って施策を行ってはいけません。一部の人しかファネルを下らないのです(木田氏)

ファネルを下ってくれるのは「一部のユーザーだけ」であることを理解しよう

一部のユーザーだけが、行動や購入に至る。ファネルを下りてくれそうな(認知から関心、関心から行動へ態度が変わりそうな)ユーザーが、「自社にフィットするユーザー」だ。「自社にフィットするユーザー」をどう見つけるかが鍵だ。具体例で考えてみよう。

「自社にフィットしたユーザー」を見つけるメリットとは?

たとえば、あなたがファッションブランドのECサイトの運営者だったとしよう。検索連動型広告などで、“ワンピースの購入意欲が高いユーザー”を発見したとする。該当するユーザーのバックグラウンドは、多岐に渡る。ワンピースの購入意欲の高いユーザーが、全員、自社にフィットするユーザーではないのだ。

「ワンピースの購入意欲が高いユーザー」と言っても、その背景は異なる

「高校の卒業旅行に着ていくワンピースを、予算1万円で探している地方都市在住の18歳のユーザー」がいる一方で、「今月末のホームパーティで着るワンピースを予算20万円で探している港区在住の38歳のユーザー」もいる。

どちらも『ワンピースを欲しいユーザー』ですが、どちらも自社にとってフィットするユーザーになりますか? ならないですよね(木田氏)

ユーザー最適化のビジネス的意義を示したのが以下の図だ。セッション最適化が対象としている収益は初回購入獲得のみ。ユーザー最適化はLTVまで見ていくので、以下の図でピンクの三角形が収益の対象となる。

ユーザー最適化のビジネス的意義

たとえば、運営しているECが高級品志向のサイトなら、後者の38歳のユーザーを「自社にフィットするユーザー」と捉えた方が、2回目・3回目のリピート購入につながりやすいだろう。ユーザー最適化で考えた方が、LTVの向上、業績アップへの影響が大きく、ビジネスで達成したいゴールに近いといえる。

ユーザー最適化が難しいのは、汎用的な施策がないから

では、すぐにユーザー最適化をやろうとなるかというと、すぐにはそうならないと木田氏。なぜかと言うと、「ユーザー最適化には、セッション最適化にはある “汎用的な施策”がない」からだという。

セッション最適化の具体策といえば、次のような定番施策がある。

  • LPO(ランディングページ最適化)
  • 回遊性改善(ページのサイドやフッターへ関連性の高いリンクの掲示など)
  • EFO(エントリーフォーム最適化)

一方で、ユーザー最適化の施策は、同じ業界でもユーザー層が異なれば個別に施策を実施しないといけない。これが、ユーザー最適化が難しい要因だ。個別化する必要があるので、他社の真似や一般的な施策ではダメで、自社のサイトのことを考える必要があるのだ。

ただ一方で、セッション最適化とユーザー最適化は、二者択一の関係ではないと木田氏。

セッション最適化とユーザー最適化は二者択一ではなく、どちらもやる二階建ての関係

セッション最適化とユーザー最適化は、二階建てだと理解してください。セッション最適化は、戦術の最適化。わかりやすく、使いやすいWebサイトにすること。

対して、ユーザー最適化は戦略の最適化です。自社にフィットしたユーザーを集客し、LTVを増やすために行うもの。今まで戦術だけ考えていればよかったのが、戦略の最適化を行う必要があるから、難しいんです(木田氏)

以下の図でユーザー最適化に必要な戦略設計を示した。

  • 3C分析
  • 自社にフィットするユーザーの定義
  • ジャーニーの仮説立案
  • ユーザー獲得やコミュニケーションの施策設計

戦略設計が定まるとKPIが定まり、KPIが定まるとGA4を使いこなすことができる(木田氏)

ユーザー最適化には、戦略設計が必要

かつて、テコの原理を発見したアルキメデスは『我に支点を与えよ、さらば地球をも動かさん』と言ったそうです。これを私たちに当てはめるなら『我にKPIを与えよ、さらばユーザー最適化を行わん』といったところでしょう。何をもってユーザー最適化がうまくいっているか、測定するためのKPIが定まらないと、どの指標を改善すればよいのかわからないので改善はできません。『KPIなくして改善なし』です(木田氏)

ユーザー最適化のKPIはGA4にないケースが多い。解決策は?

ユーザー最適化の一連の工程において、GA4をどう活用できるのか。木田氏はユーザー最適化のためのロードマップを以下の図で示した。ロードマップのうち、GA4が活用できるフェーズにGA4のアイコンがついている。

ユーザー最適化のロードマップにおいて、GA4はどこで活用できる?

ロードマップに従って、ユーザー最適化を行う際、「KPIを可視化する」のフェーズで、ある課題に直面する可能性が高いという。「GA4に、自社のビジネスのKPIに該当する指標がないという問題に突き当たります」と木田氏。まず、KPIの要件の定義を確認しよう。KPIは以下の3つの要件を満たす必要がある。

  • 数値で表現できる
  • KGIと因果関係がある
  • 自社でコントロールできる

自社のKPIを見つけようと思った時、GA4に上記の要件を満たす指標が出てこない場合があるのだ。具体例で考えてみよう。

たとえば、あなたがファストファッションブランドの担当者になったとしよう。年間の収益は、「ユーザー数」×「ユーザーあたりの年間購入回数」×「1回の購入あたりの単価」で決まる。ファストファッションなので商品単価は比較的安く、年間の収益を増やすなら1人のユーザーに何回もリピート購入してもらうのが大事だ。となると、KPI例として「年間○回以上購入してくれる顧客の数」が考えられる。

ユーザー最適化KPIを設定する場合「年間○回以上購入してくれる顧客の数」がよさそう

だが、このようなKPIはGA4にはない。もう1つの例として、「リアル店舗で購入履歴があり、かつ初めてECで購入した顧客の数」をKPIに設定したいとなった場合も、この指標はGA4にはない。

ここで木田氏が勧めるのが、Google Cloudが提供する分析データウェアハウスサービスの「BigQuery」だ。GA4では可視化できない、会社独自のKPIが「BigQuery」であれば描き出せるという。ユーザー最適化に取り組むのであれば、「BigQuery」でKPIの可視化に取り組むべきだと木田氏は言う。

GA4やBigQueryを活用し、KPIを可視化して、ユーザー最適化を成し遂げよう

木田氏は最後に講演をまとめ、次のように語った。

GA4は『ユーザー最適化』のツールです。『ユーザー最適化』のツールにもかかわらず、『セッション最適化』に使っていれば、難しいのは当然です。そもそも、『ユーザー最適化』は型がないので難しいです。

『ユーザー最適化』を行うには戦略設計を行い、自社にフィットするお客さまを定義し、そこから派生するKPIを社内でブレストしながら決めていくしかありません。

KPIを可視化した際に、自社に最適なKPIがGA4にないという課題にあたります。この課題にはBigQueryとSQLを使うことで、KPIが可視化できるので、KPIを可視化してユーザー最適化を成し遂げましょう(木田氏)

木田氏による講演のまとめ
用語集
3C分析 / EC / EFO / KGI / KPI / LPO / LTV / UA / コンバージョン / セッション / ファネル / ランディングページ / リンク / 検索連動型広告
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