「GA4にログインした、次何する?」初心者が知るべき“3つの改善の原則”
「GA4(Googleアナリティクス4)を開いても、何のためにどのレポートをみればいいのかわからない」と悩むGA4初心者は多い。そこで、多くの企業にWebマーケティングの支援を行っているプリンシプルの木田和廣氏が「デジタルマーケターズサミット 2025 Winter」に登壇。レポート迷子から脱却できるよう、GA4担当者のミッション、3つの改善の原則を紹介した。

GA4担当者のミッション
GA4担当者のミッションとは何だろうか。その答えは、次の2つであるという。
- 主要指標のモニタリング
- 合理的なパフォーマンス改善施策の立案(と効果検証)
前者は比較的難易度が低い分、付加価値は「中」。「できて当たり前」といわれがちな分野だ。それに対して後者は比較的難易度が高い分、付加価値も「高」。これができればGA4担当者としての評価が高まっていく。
GA4担当者の立ち位置とミッション
次図をみてわかるように、Web担当者の一部に含まれるGA4担当者だが、そのミッションを果たすべき相手(社内クライアント)は、SEO担当者や広告担当者、SNS担当者やコンテンツ担当者といった「Webサイトの改善担当者」である。GA4担当者のミッションは、次図の赤字部分、「モニタリングをし、改善提案を改善担当者に対して行うこと」だといえる。

改善担当者もGA4をまったく見ないわけではない。だが、彼らはGA4の専門家ではなく、不定期かつ部分的に参照するだけである。それに対し、GA4担当者は、定期的かつ体系的に分析して、改善担当者からの質問にいつでも答えられるようにしておく必要がある。
主要指標のモニタリング
主要指標のモニタリングを行うことがGA4担当者としてのミッションの1つであると先述したが、そのためには「指標の定義」と「意味の理解」が不可欠となる。その理由を説明するために、木田氏は次の例をあげた。
血液検査の結果を見た医師から「アルブミンの値が3.4g/dLですね」といわれ、患者が「アルブミンって何ですか?」と問うたとしよう。それに対し、医師が即座に解説できず、「ちょっと医学辞典を調べてみるのでお待ちくださいね」なんていってきたら、患者は間違いなく『このお医者さん、大丈夫なのかな』と不安を覚えるはずだ。
逆に、「アルブミンとは、血中に含まれるタンパク質の一種であり、肝臓で合成されます」と“定義”を示し、「基準範囲は3.9g/dL以上とされているので、それ未満の場合、栄養不足や肝臓の異常が疑われます」と“意味”を答えてくれたなら、「なるほど!」と患者も合点がいくだろう。
モニタリングの際は、ただ数値を眺めていればよいわけではなく、指標の定義と意味を理解したうえで、「だからこうするべきだ」と改善担当者に具体的な指針を示すことが求められます。そうすることで、担当者としての信頼を勝ち取り、価値を発揮できるようになります(木田氏)
19の指標の定義の覚え方
GA4の主要指標は19種類もある。たくさんあるように思えるが、以下のように分類していくと覚えやすい。
19の指標を、「生の指標」と「割り算の指標」に分ける
次図で「緑色」と「グレー」に塗られているところが、GA4の主要指標である。このうち緑色の指標(=「生の指標」)の10個だけを覚えればよい。それ以外のグレーの指標は、「〜あたりの〜」や「〜率」といった「割り算の指標」であるため、分子と分母がわかれば自然と導き出すことができ、覚える必要がないというわけだ。

生の指標を3つのスコープに分ける
さらに、この10個の生の指標は、次図のように「ユーザー」「セッション」「イベント」の3つのスコープに分けられる。

「スコープはGA4で最も難解な概念である」と指摘した木田氏は、スコープを理解するために、GA4でユーザーの行動履歴がどのように計測されるかを、次の図を用いながら解説した。

cid(Client ID)はGA4が「ユーザー」を識別するために自動付与しているIDであり、この図ではcid111とcid999の2人がいるとわかる。また、ユーザーがWebサイトにアクセスしてから離脱するまでの一連の行動(=「セッション」)が矢印で表されている。
そして、それぞれの丸は、Webサイト上でのユーザーの行動が「イベント」として記されたものだ。ちなみに、セッションは30分間ユーザーが何も行動しないと(=イベントが発生しないと)自動的に終了する。
このcidを数えるのが「ユーザースコープ」であり、矢印を数えるのが「セッションスコープ」、丸を数えるのが「イベントスコープ」であることから、この図では2ユーザー、6セッション、28イベントが発生しているといえる。
各スコープに含まれる生の指標をさらに2つに分ける
それぞれのスコープに含まれる生の指標は、さらに「全部の○○」と「条件つき○○」に分類できる。

たとえば、先の例でいうと全部のイベント数は28だ。一方、「キーイベント」はGA4担当者があらかじめ設定したもので、「ファイルダウンロード(紫色の丸)」だけをキーイベントに設定していれば「1」であり、「ファイルダウンロード」に加え「購入(赤色の丸)」もキーイベントに設定していれば「2」となる。

なお、生の指標のなかで唯一、発生回数ではなく“時間”を計測している指標が「エンゲージメント時間」だ。エンゲージメント時間とは、ユーザーがブラウザ上でページを表示して、実際に操作していた時間のことである。それがわかれば、割り算の指標である「アクティブユーザーあたりの平均エンゲージメント時間」は、エンゲージメント時間の合計をアクティブユーザー数で割ったものであると理解できるだろう。
19の指標を、意味を込めて説明することが重要
ここまでは、主要指標の「定義」についての解説だったが、ここからは指標の「意味」について解説する。
「目標数への影響」を示し、指標に「意味」を込める
指標に意味を込めるには、「目標数への影響」を示す必要がある。たとえば、
先週のセッション数が、先々週のセッション数よりも2割増えた
というよりも、
セッションが増えて、セッションキーイベント率が変わらなかったので、セッションが増えた分、目標数が増えた
と、目標数への影響を踏まえて報告すれば、指標に意味を加えることができる。
やったこと(=努力)と紐づけ、意味のインパクトを大きくする
さらに、「やったこと(=努力)」と紐づけると、意味のインパクトが大きくなる。たとえば、次のAとBの違いをみてほしい。
A: セッションが増えて、セッションキーイベント率が変わらなかったので、セッションが増えた分、目標数が増えた
B: 自然検索からのセッション数が増えて、セッションキーイベント率が変わらなかったので、セッションが増えた分、自然検索からの目標数が増えた
Bのように「自然検索からの」を追加するだけで、「SEO担当者の功績だ」とわかるようになる。要するに、GA4から読み取った事実を誰かのやったこと(=努力)と紐づけると、意味のインパクトが大きくなり、Web担当者への評価もあがるわけだ。
合理的なパフォーマンス改善施策の立案
続いて、木田氏はGA4担当者の2つ目のミッションである「合理的なパフォーマンス改善施策の立案」に話を移した。
3つの「改善の原則」
パフォーマンス改善施策には、過去20年にわたって先人が積み上げてきた “鉄板施策”といえるものがすでに確立されている(次図参照)。

そのうえで、「新しいテクノロジーの進展によって、今後も多少増えるかもしれないが、すべての施策は以下の3つの『改善の原則』にあてはまる」と木田氏は説く。
- 改善の原則① 質のよいセグメントの量を増やす
- 改善の原則② ファネルの離脱点を発見して対策する
- 改善の原則③ CV(コンバージョン)したユーザーの固有の行動を、非CVユーザーに促す
この3つの改善の原則に基づいてGA4を活用すれば、闇雲にレポートの森をさまよって「レポート迷子」になることがなくなる。次図に示すように、GA4でいきなりレポートの森を徘徊するのではなく、まずは3つの改善の原則のうち、どれに従って施策をみつけるのかを決めてほしい。そして、自分なりの仮説を立て、そのためのレポートだけをみて仮説の検証を行うことを徹底したい。

仮説を検証できたら、合理的な施策である証です。GA4にはたくさんのレポートがあって最初は難しく感じるかもしれませんが、仮説を確かめられるレポートだけをみるようにすれば、迷子になりようがありません(木田氏)
改善の原則① 質のよいセグメントの量を増やす
では、改善の原則を少し深掘りしてみよう。次図の例をみてほしい。原則1に従って施策をみつけることとし、「流入元のメディアによって質にばらつきがあるだろう」と仮説を立てることで、「メディア」をセグメントの軸としたレポートを見て施策を発見した例だ。

結果として、「自然検索」のCVR(コンバージョン率)が良いため、「来期はSEOに予算をつけてしっかりとやる」という、まさに改善の原則1の「質のよいセグメントの量を増やす」施策となっている。
改善の原則② ファネルの離脱点を発見して対策する
ファネルとは、サイト訪問からゴール(CV)に到達するまでに一定のステップがあると考えること。GA4の「ファネルデータ探索」を用いて、ファネルの途中で離脱の多い箇所をみつけて、対策する。
ECの場合は、「サイト訪問→商品ページ→カート→購入完了」といったように、ファネルを描きやすい。B2Bの場合は、“キーとなるページ”を見つけ、次図にあるようなグラフを描くことが重要になる。なお、キーとなるページとは、自社サービスについて「購入する理由をもっとも説得力高く説明しているページ」のことである。

上記の2つのグラフを見比べたときに、何がわかるだろうか。左のグラフでは、キーページからフォームへの遷移率は高いが、キーページはあまり見られていない。そこで、キーページに誘導すれば良いことがわかる。
一方、右のグラフでは、キーページはよく見られているものの、フォームへの遷移率が低い。これは「そのページがキーページではない」、あるいは「サービスそのものに魅力がない」といった可能性を示している。このようにファネルの離脱点を発見することで、次の打ち手が見えてくるのである。
なお、GA4には、ファネルを描くための「ファネルデータ探索」という専用のレポートフォーマットが用意されている。
改善の原則③ CVユーザーの固有の行動を、非CVユーザーに促す
次図は、原則3にもとづいて施策例を発見した例だ。CVしたユーザーが事例を見ていることが多いので、「サイトで2分以上滞在したユーザーには、MA(マーケティングオートメーション)で事例紹介ページに誘導するメッセージを出そう」と記されている。まさに、CVユーザーの固有の行動が「事例を見ること」で、非CVユーザーにもその行動を促そうという施策である。

GA4レポートは、「CVしたユーザー」と「CVしていないユーザー」というセグメントをそれぞれ作成して、「アクティブユーザーあたりのビュー」などの指標で比較するとよい。
なお、セグメントはほかのレポートにも転用できるため、原則2で紹介したファネル探索レポートで活用すれば、CVしていないユーザーがどこで離脱しているのかを確認して、打ち手を考えることもできる。
最後に木田氏は、次図を示しながら3つの改善の原則と、GA4でどのようなレポートを利用すればよいかをまとめて、セッションを締め括った。

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