SEOで見落としがちな内部施策4つを解説! ユーザー行動の最適化で上位を狙う
「SEO=コンテンツ」という風潮が昨今あるが、SEOはコンテンツだけでなく、サイトの基盤を整える内部施策が重要になる。
アユダンテの江沢真紀氏が「デジタルマーケターズサミット 2025 Winter」に登壇。2025年の最新事情とともに、「サイト構造」「スマホ画面」「カテゴリ設計」「テクニカル要件」の4つに焦点をあて、行うべき重要ポイントを紹介した。

ユーザー行動の「Navboost(ナブブースト)」が重要シグナルに
昨今、「SEO=コンテンツ」という風潮がある。しかし、SEOには大きく分けて「内部施策」と「外的施策」の2つの施策が存在し、コンテンツはあくまで内部施策の一要素に過ぎない。
内部施策は、作業量が多くリソースの負荷が高い傾向がある。しかし、内部施策を行うことでサイトの基盤が整い、Googleのアルゴリズムアップデートに左右されにくくなる。その結果、オーガニック検索で上位表示を獲得しやすくなると江沢氏は語る。
さらに江沢氏は、「現在のSEOにおいて最も重要な要素」は、コンテンツでもE-E-A-Tでもなく、Googleの検索結果からサイトを訪問したユーザーの一連の行動、すなわち「ユーザー行動」であると指摘する。
Googleはユーザー行動のシグナルをもっていて、「Navboost(ナブブースト)」と呼ばれています。検索結果画面上からのクリックデータを分析して、ランキングを調整するシステムです。Googleも“最も重要なランキングシグナルの1つ”と公言しています(江沢氏)
Navboostとは?
たとえば、ユーザーがGoogleの検索結果画面から対象サイトへ遷移し、1クリックで離脱した場合は、悪い体験つまり「badClicks」と判定するのではないか。一方で、遷移先を回遊して5回、10回とクリックが発生したなら良い体験は、「goodClicks」とみなすのではないか。
このようなユーザー行動の評価にはGoogleの検索結果ページだけではなく、Chromeブラウザのユーザー行動データも使っている可能性があるようだ。ちなみに2024年5月にGoogleから流出した社内文書にも、Navboostに関する記述が多数あったという。
Navboostで意識すべきこと
Navboostにおいて意識すべきは、検索結果のCTR(クリック率)を高めるために適切なページを検索でヒットさせること、そして回遊を促すサイト構造や内部リンクの最適化である。さらに、使いやすく読みやすいUXを考慮した画面を設計し、ユーザーのニーズに合ったコンテンツを用意することも重要だ。
これらはいずれも内部施策であり、内部施策を適切に行うことで、Googleが重視するNavboostの最適化につながるのである。
「AI Overview」の参照サイトになるためにも、検索上位の獲得は重要
Googleの検索を巡っては、「AI Overview」も注目すべきトピックである。これは、検索キーワードに対して生成AIが回答を提示するものであり、日本でも2024年夏から検索結果画面での表示が始まっている。
このAI Overviewによってユーザーが内容に満足し、クリックされない「ゼロクリック」の割合が高まり、サイトへの流入が減少するのではないかという懸念もある。一方で、AI Overviewは外部サイトを参照して回答文を生成しており、その参照元サイトに選ばれれば、まだクリックが取れる可能性がある。
米国の調査によれば、AI Overviewの参照元となったサイトの75%は、オーガニック検索における上位12位以内のページから抽出されているという。つまり、AI Overview時代においても、SEOの重要性は変わらないと江沢氏は指摘する。
実践すべき4つの内部施策
江沢氏は実践すべき内部施策として、「サイト構造」「スマホ画面」「カテゴリ」「テクニカル」の4つを挙げ、順に解説した。
① サイト構造
サイト構造図があれば、「対策が不足しているキーワードの発見」や「キーワードのカニバリゼーション回避」、「内部リンクやディレクトリ構造の可視化」、「低品質ページのあぶり出し」など、さまざまな課題発見につながる。
以下の図は、ファッション通販サイトにおける構造図の例だ。
まずはTOPページからボトムページまでをツリー構造で列挙し、リンクの遷移先をまとめていく。なお、物理フォルダ構造ではなく、クリックによる階層構造であり、全ページを記す必要はなく、SEO施策の対象ページのみでよい。
次に、「ターゲットとなるキーワード」、「内部リンクを示す線」、「各ページのSEO的な課題」を付記したものが次図である。
この図では、「キーワードのカニバリの傾向」が浮かび上がっている。サイト内検索とカテゴリページで同じキーワードがターゲットになっているので、これでは順位が安定しない。
また、せっかくのコラムがTOPページからリンクされていなかったり、コラムの一覧ページのページネーションがCanonical設定の不備でインデックスされていなかったりなど、さまざまな課題が見えてくる。
このようにサイト構造を俯瞰してみることで、SEO面はもちろん、UX面の課題も見えてくるはずです(江沢氏)
② スマホ画面
次に、スマホ画面についてだ。スマホ画面は、ユーザー行動と密接な関係にある。PCからスマホインデックス(MFI)に変わり、Googleが評価するポイントが大きく変化している。
これまでのサイト設計では、まずワイヤーフレームを作成してから、デザイン・コーディング、公開/検証という流れだった。最近では、ヒートマップでユーザー行動を把握した上で、ワイヤーフレーム作成、コーディングへ移る体制に変わっているという。
今回の講演では、無料で提供されている「Microsoft Clarity(マイクロソフト クラリティ)」を用いたヒートマップ分析を紹介した。Clarityには、「スクロール」「クリック」「アテンション(熟読された箇所が把握)」「録画」の4機能があり、なかでもアテンションは昨年追加され、より使いやすくなったという。
アユダンテが実際に商用提供しているB2Bサービス「つぶやきデスク」の製品情報サイトを例に説明を続けた。
スマホ表示の場合、課題解決につながる「解説文」をページ上段に配置していたものの、あまり読まれていないことが判明した。PC表示でも同様の傾向が見られ、逆に「価格」や「事例」、「導入企業のロゴ一覧」の部分はよく読まれていることがわかった。
これにクリック傾向のデータを掛け合わせることで、熟読され、かつクリック率も高いコンテンツを把握できるようになる。
こうした分析結果を踏まえて提案された改善案が、次の図である。
③ カテゴリ
良いカテゴリの条件は、「親子階層構造」や「網羅性」、「わかりやすい/探しやすい」などが挙げられる。
たとえば、ファッションのECサイトで示すと、次図のような構造だ。
最適なカテゴリ構造を作ると、ユーザーの流入に貢献し、探しやすさはUX向上にもつながる。
コンテンツでコンバージョンの獲得はなかなか大変ですが、カテゴリの最適化はコンバージョンにも、流入にも貢献度が高いです(江沢氏)
名称のキーワードを調査する
カテゴリの最適化にあたっては、まずDBに登録されているカテゴリ一覧をエンジニアなどに依頼してエクスポートしてもらうことから始める。階層構造がわかるようにし、さらに各カテゴリに紐付く「商品数」「サービス数」「記事数」なども必ず付記していく。
キーワードツールを使って、既存のカテゴリ名称のキーワード調査をしていく。アユダンテの場合は、「Keyword.io」を使い、サジェストや関連語、検索ボリューム、派生語を調べているというが、使用するツールにしばりはない。
たとえば、「バレエシューズ」のカテゴリ名も検索はされているが、「フラットシューズ」は同じ意味合いで使われ、検索ボリュームも多い。このような場合は、「バレエシューズ・フラットシューズ」と併記する方がいいだろう。
「オールインワン」は、洋服とコスメなど該当する内容が複数ある。その場合は、より具体的な名称にしたり、より検索ボリュームが大きい言葉をカテゴリ名称にしたり、派生語を加えたりするなど細かく調整していく。
もしキーワードが探せない場合は、ChatGPTなど生成AIツールに「他にどんな類義語、言い換えの言葉がありますか?」と聞くと参考になります。精度もかなり高いです(江沢氏)
細分化して個数を増やす
第1階層に「下着・インナー」第2階層に「レッグウェア」第3階層に「タイツ」というカテゴリがあったとして、レッグウェアは検索ボリュームが少ないため、タイツを第2階層に昇格させ、「着圧タイツ」「カラータイツ」「網タイツ」「デニール」などの細かいカテゴリに細分化する。これを構造に反映させれば、流入増への寄与は大きくなる。
ただし、カテゴリの細分化が重要だとしても、そのカテゴリに属する製品や記事が0件では、ユーザーにとっては悪い体験になってしまうので、注意が必要だ。
コラムも適切なカテゴリ分類にしよう
ここまでの説明で、カテゴリが重要なのは、DB型サイトだけと思うかもしれないが、コラムでもカテゴリ分類・細分化が有効だ。
コラム記事が数百以上ある場合、適切に階層化・細分化することで、記事ページによく出ている「関連記事」の表示精度を上げることができ、回遊につながる。つまりユーザー行動の担保ができる。
カテゴリの最適化は、やればやっただけで成果が出る
カテゴリの再設計・最適化は難度の高い作業だ。再登録作業も当然発生する。しかし「取り組めば成果が出る」とも江沢氏は言う。
あるECサイトでは、それまで2階層だったカテゴリを3階層にし、カテゴリ数も4倍にした。ページ名称はすべてキーワード調査で発見したキーワードに変更し、さらに重複状況も精査した。この結果、カテゴリページへのオーガニック流入は3.2倍、コンバージョン数は1.5倍に跳ね上がったという。
④ テクニカル
まず前提として、Google側の技術進化により、一般的なWebサイトであればSEOを阻む技術的問題は近年ほぼないという。ただし、次の2点は確認が必要になる。
- 大規模サイト: クロール・インデックスをチェックする
- 全サイト:JavaScriptレンダリングをチェックする
大規模サイトはクロール・インデックスをチェック
大規模サイトではクロール・インデックスが非常にシビアになってきています。ここ数年、AI生成コンテンツがWeb上で莫大に増え、Googleのクロールリソースがかなり逼迫しているようです(江沢氏)
アユダンテが各種の大規模サイトを調査したところ、大規模DB型サイトでは商品ページ群の検出率が84.1%に対し、インデックス率は54.7%に留まった。同サイトのカテゴリページ群に至っては、検出率90.0%に対しインデックス率は34.8%とさらに下回っていた。
Google Search Consoleのレポート画面で大規模サイトによく出てくる、3つのステータスの要因は以下の可能性が高いと解説された。
URLがGoogleに認識されていません:
URLが検出される前段階の問題。サイトマップや内部リンク構成を見直し、まずはURLをGoogleに見つけてもらうことが重要。検出-インデックス未登録(見つけたけど、クロールしない):
新規ドメインの場合は、まず被リンクやサイテーション(ほかのサイトやSNSで自社サイトに言及してもらう)の獲得を優先する。また、サイトマップに依存してリンクがない、サーバーエラー、ディレクトリの質が低いなどが考えられる。クロール済-インデックス未登録(クロールしたけど、登録しない):
重複ページや0件、内容が薄いなどの低品質コンテンツ、また表示速度が遅いページなどもクロールはするが、インデックスしないことがある。クロールリソースを確保するため、不要なページへのクロールは、必ずRobots.txtでブロックする(次図参照)。
全サイトで、JavaScriptレンダリングチェック
一方、JavaScriptは全サイトに関係する問題である。スマホサイトでみかける「モーダル」や「ハンバーガー」、「無限スクロール」などはJavaScriptで実装されているが、GoogleがJavaScriptをレンダリングできなければ、SEO的にはコンテンツの中身が空であるのと同義になってしまう。
GooglebotのJavaScriptの認識力は、過去に比べて上がったものの、まだ完璧ではない。まず、クリックやスクロールを“実行したことによって追加される要素”は今なおGoogleのクロールでは認識できない。また、JavaScriptリンクも対象外とされる。
JavaScriptレンダリングは、見た目での判断は不可能であるため、エンジニアや制作会社と連携を取って、確認しよう。
セミナー後にエンジニアの方向けのレンダリングチェック動画がアユダンテのYouTubeチャンネルで公開されているので、詳しく知りたい人は、見てみるといいだろう。
正しくレンダリングされないと、SEO的にはコンテンツの中身が「空」と認識
ユーザーが便利で快適だと感じてくれるサイトをつくろう
高品質なコンテンツはもちろん重要だが、同時にサイトの基盤を整える「内部施策」の実施も欠かせない。これにより、Navboostの最適化やAI Overview対策はもちろん、アップデートに左右されにくくなり、検索上位の獲得やコンテンツの成果向上にもつながる。
内部施策は手間がかかる作業ではあるが、まずは取り組める部分から始めてほしい──江沢氏はそう呼びかけ、講演を締めくくった。
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