難しいことはAIに任せて、素人でもデータ分析できるのか? ChatGPT4-oで検証!
世界の話題を牽引するAIチャット「ChatGPT」は、幅広いビジネス分野での活用が期待されている。Webビジネスを成功させるためには欠かせない業務のひとつであるデータ分析も、その例外ではない。
「Web担当者Forum ミーティング 2024 春」では、IT分野の記事執筆や講演、企業向け研修などを行っているAIコンサルタントのマスクド・アナライズ氏が登壇。本記事では「現実的なAIデータ分析」活用についての講演セッションの内容をレポートする。
データ分析とは? Web担当者にはなぜ必要?
データ分析は、データの収集、データの整理、パターンの発見や問題を特定し、その結果を経営の意思決定などに用いている。データ分析にはさまざまな手法はあるが、分析手法やツールを使いこなすには、数学の知識やプログラミング学習が必要だ。
難しいことは生成AIに任せて、自分でもデータ分析を行いたいと思っている担当者も多いだろう。
データ分析をしてみたいがハードルが高いと感じている担当者は多いはず
まず、マスクド氏は「Web担当者にとってのデータ分析とは?」という意識合わせからスタート。Web担当者は、業務でWeb解析データや広告データ、売上データさらには、効果測定やA/Bテスト、広告配分、売上やKPI測定などのデータに触れることがあるだろう。
実際、データ分析を行うことによって、データから知見を得て、根拠や裏付けのある施策を立案したり、目標達成に効果的な施策を実行したり、また売上やPV向上といった成果につなげたいと考えている担当者は多いはずだ。
とはいえ、データ分析の実践者が次々と増えていかないのは、むろん理由がある。「統計や数学などの知識が求められる」「高額な分析ツールや複雑なプログラミングが必要」などといったデータ分析ができるようになるまでのハードルの高さだ。結局は、データ分析を仕事に役立てられるほどになるまでには習得することが多く、時間もかかり、なかなか難しいのが現状だろう。
ChatGPTでデータ分析者になれる(気がする)?
では、データ分析に関わる難しい部分はChatGPTでカバーしてもらい、仕事に役立つデータ分析を行うことは、現状可能だろうか?
なお、データ分析者のスキルにもレベルがあるため、今回は「ビジネスパーソンとしてのデータ分析能力の程度として、担当者1人で、数万件のデータを使って、統計、数学の知識は少し使いながらも、ツールはExcel(マクロや関数)」というレベルをベンチマークに、ChatGPTでいろいろなデータ分析を試していく。
なお、あらかじめChatGPTを使っていない人向けに簡単に紹介すると、現在の有料版のChatGPT(※無料版でも制限付きでデータ分析機能が利用可能)は、Excelファイルを添付して送信すると中身を確認して説明し、さらにそのデータの内容を元にグラフを作成するといったことができる。さらにそれをPowerPointに変換して戻すこともできるので、プレゼン資料まで作成することも想定できる。
ChatGPTのデータ分析をExcel作業と比較し実践した例を紹介
実際にChatGPTで、とあるスーパーの売上データを使っての売上改善のための分析とそれを報告書にまとめるまでの流れが紹介された。比較する作業や労力としては、上記の一人Web担当者がExcelを使って自力でなんとかする場合と対比している。以下のような8つのステップで確認していった。
- 分析の目的を決める
- 必要なデータの準備
- データの不備を確認する
- データの要約と把握
- 課題設定と仮説検証
- 統計と分析
- グラフと可視化
- 資料にまとめる
1. 分析の目的を決める
自力:分析の目的を決めるには、通常なら自分で分析目的を考えたり、ネットで調べたり、知見者に聞いたりする必要がある。また、分析する手順も自分で調べなければならない。
ChatGPT:分析できることからその手法まで、すべてChatGPTに日本語で質問することで提案が戻ってくる。
2. 必要なデータの準備
自力:次に必要なデータを取り寄せる作業となる。通常なら、メールや文書で関係部署からデータを取り寄せる必要がある。データを組み合わせて使う場合に関数やマクロの処理、またデータ集計が必要だ。
ChatGPT:データ取り寄せ作業は人力で行う必要があるが、取り寄せの依頼メールの作成から読み込み方法までChatGPTに日本語で質問して作業を行わせることができる。
3. データの不備を確認する
自力:入手したデータを扱う際には、データの漏れや明らかなエラー数値などをあらかじめ修正しておく必要がある。Excelを使う場合フィルターを使ったり、関数・マクロでデータを調べて修整したり。あるいは、箱ひげ図や標準偏差を使ったりしながらデータを置換する必要がある。
ChatGPT:データの修正方法を質問したり、提示された作業を引き続きChatGPTに実行したりできる。
4. データの要約と把握
自力:データの要約や集計、商品別の売上構成をExcelで行う場合は、ピボットテーブルなどを使う必要がある。
ChatGPT:要約、集計、商品別の売上構成も日本語で質問すれば簡単に結果を表示してくれる。トレンドや将来動向についても質問すると、答えが返ってくる。
5. 課題設定と仮説検証
自力:課題設定と仮説検証には、通常ならデータから自分で課題を探し出したり、解決策を探ったりするため、知見が必要とされる。また、解決策の成果についてもデータを使って検証する必要がある。
ChatGPT:「課題や課題への解決策を教えて」と依頼すれば、データを参照した上で課題を発見したり、その課題に対する解決策をかなりのボリュームで提案を戻したりしてくる。
6. 統計と分析
自力:統計やグラフ化は、自分でやる必要がある。
ChatGPT:統計や分布も行える。たとえば「販売単価の標準偏差を出して」と質問すれば、以下のような回答が得られる。
また、得られた分析結果を参照して施策を提案できる。
7. グラフと可視化
ここまでにもグラフは出てきたが、あらためてグラフと可視化についても触れておく。
自力:当たり前だが、自分でExcelなどを使ってグラフを形成する必要がある
ChatGPT:「月別の売上金額の推移グラフを作って」などと日本語で指示すれば、グラフの作成も可能。
8. 資料にまとめる
自力:こういった分析結果や施策ができたあとも、ビジネス上では、内容をまとめて資料を作る必要があるだろう。PowerPointなどを開いて自ら報告書を作成する必要がある。
ChatGPT:凝ったレイアウトは現時点ではできないが、「報告書」の目的、分析内容、それを踏まえた施策提言、結論と次のステップといったことをまとめて、と指示すればファイルが作成される。
これだけできればChatGPTだけでデータ分析はできるか?
「デモを見ていると、ChatGPTに問いかければデータ分析はできるようにも思えた。しかし注意点も多々存在するのだ」とマスクド氏は続けた。まず、ChatGPTでデータ分析をする長所と短所は以下に挙げられる。
- Excelの機能や関数やマクロを覚える必要がない
- やりたいことが自由かつ簡単にできる
- 自分で分析できる
- 作業時間の削減
- 日本語が正しく表示されない
- 回答が毎回異なる
- たまに間違える
- 処理ごとに待ち時間が発生
- 利用回数の制限がある
- 分析の精度はまちまち
- 出力した資料のデザイン修正は必要
- 大量データの分析は苦手
- 分析結果や根拠の提示は分析者に依存する
長所としてはデモで示されたように、Excelの機能や関数・マクロを覚える必要がなく、自分で分析ができる、作業時間を削減できるなどだが、短所もかなりある。そして、最終的にプレゼンをするのは、なんといってもWeb担当者自身だ。
ChatGPTが分析や提案までしてくれるといっても、分析結果や根拠説明は、担当者自身に依存します。さすがに“ChatGPTが言っていました”では意見は通らないでしょう(マスクド氏)
では、やはりChatGPTだけでデータ分析を実現というのは無理なのだろうか。マスクド氏によればChatGPTがデータ分析に関してできることはかなり、高度といってよい。ただ、それが生かせるかどうかは、あくまで使い手本人の統計知識やデータ分析に対する理解によってくるということだ。
ChatGPTをデータ分析の補助輪に
ChatGPTをデータ分析の実務に生かすためには、使い手にある程度の知識があることが重要だろう。少なくとも、統計に関する最低限の知識(平均、中央値、標準偏差などの意味理解)を持ち、データセットに関する知識を持っている必要がある。
また、見やすいデータの見せ方(グラフや可視化の基本)といったものも知っていなければならない。それに加えてChatGPT、検索やExcelなどのITリテラシーも備えておくことだ。こういった勉強と実務経験は、やはり必須となってくるのだ。
しかし、ChatGPTの先に挙げた能力やデータ生成能力を踏まえれば、「ChatGPTはデータ分析の“補助輪”である」とマスクド氏は表現した。
はじめてデータ分析を行うときに、フォローしてくれる補助輪があると安心だろう。データ解析や処理の補助役となり、間違いが少ないように道案内をしてくれる、ChatGPTはそういった存在だと捉えるのがいい(マスクド氏)
ChatGPTは、社内でデータ分析をやってみたいという人材を育てるなど、簡単な分析を自分でできる人を増やすための起爆剤にはなる。ただし、データ分析者そのものになり代わることはできない。だからこそ、ChatGPTをデータ分析の“きっかけ”にするというのが、現在、ChatGPTの現実的な使い方だという。
それを実践するならば、下図のフローのように、まずはChatGPTでデータ分析を体験、続いて実務経験を積む、ある程度データ分析の仕方を習得してきたところで、ChatGPTを伴走者として使いながら、分析の根拠や施策は担当者自身が考え、有効な成果を上げていくという使い方が好ましい。
なお、本セッションで紹介したデータの添付や、送信したデータの分析の機能は、無料版でも利用可能になった。ChatGPTや生成AIの話題はとにかく流れが速い。次々と新機能が生まれ情報がすぐに古くなってしまうので、仕事で使いたいと考える人は、最新情報は常に把握しておくようにしよう。いまはまだ難しい分析についても、近い将来、ChatGPTでもっと簡単にできるようになっていくかもしれない。
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