「AI検索の最新動向を追いきれない」「AI検索広告が始まると聞いたものの、何から手をつけるべきかわからない」―そんな担当者も多いのではないだろうか。
それも無理はない。AI検索をめぐる動きは、この1年で急速に進んだ。AI検索の利用者は増え、ゼロクリックサーチが拡大し、検索AIサービス上での広告配信も海外から始まりつつある。検索や広告のあり方など、マーケティングの前提が変わり始めている。
本記事では、Hakuhodo DY ONEの研究プロジェクト「次世代検索研究所 piONEer(パイオニア)」が発行した調査レポート「AI検索白書2026」をもとに、今起きている変化を読み解くとともに、Web担当者が知っておきたいAI検索の最新トレンドを聞いてきた。
株式会社Hakuhodo DY ONE プラットフォーマー戦略本部 第二セールス推進局 第一推進部 兼 株式会社博報堂 プラットフォーマー戦略局 第二セールス推進部 増本美加氏
株式会社Hakuhodo DY ONE プラットフォーマー戦略本部 第一セールス推進局 第一推進部 兼 株式会社博報堂 プラットフォーマー戦略局 第一セールス推進部 佐藤優衣氏
「AI検索白書2026」が明らかにしたトレンド
Hakuhodo DY ONEの「次世代検索研究所 piONEer(パイオニア)」は、長年培ってきたSEM(検索エンジンマーケティング)市場の知見をベースに、AI検索時代の新たな広告戦略を創出するプロジェクトだ。
同プロジェクトでは2025年に他社に先駆け、AI検索に関する調査レポート「AI検索白書2025」を発行。2026年も同一の設計・手法で継続調査を実施しており、AI検索をめぐる変化を定量的に捉えることが可能だ。
3月上旬に公開された最新の「AI検索白書2026」は、何を明らかにしたのか。作成に携わったメンバーに、調査結果から浮かび上がったトレンドについて話を聞いた。
AI検索の利用率は約3.5倍に増加
まず、大きなトレンドとして特筆すべきは、AI検索の利用率が、プライベート・ビジネスシーンを問わずに伸びている点だ。
AI検索を情報収集手段として利用しているユーザーは、2025年3月の前回調査では10%にも満たなかった。しかし、わずか8か月後の2025年11月の調査では、約3.5倍となる30%近くに達している。
増えることは予測していましたが、ここまでとは正直意外でした。調査対象はあくまで一般のユーザーで、特別AIに詳しい人たちではありません。それでもこの数字が出ています(増本氏)
一方、GoogleやYahoo!に代表される従来型検索については、AI検索利用者のうち22.1%が「検索機会が減った」と回答している。前回調査時よりも「検索行動の減少」を自覚するユーザーが増えており、生活者の検索体験そのものが変わり始めていることがうかがえる。
AI検索サービスの知名度でGoogle AIモードが2位に
AI検索サービスの知名度調査では、ChatGPTが約7割と引き続き首位だが、注目すべきは、GoogleのAIモードが2位にランクインしたことだ。2025年9月の日本リリースから約2か月という短期間で急伸し、調査チームも驚いたという。
この急速な伸びの背景にあるのは、AIモードが、固有のアプリケーションなどではなく通常のGoogle検索画面のひとつの機能として表示される点だろう。ユーザーがあえて“AIサービスを選ぶ”意識を持たなくても、従来どおりの検索行動の中で自然にAIモードに触れる機会が生まれるというわけだ。
だが、AIモードが伸びたからといってChatGPTの勢いが鈍化したわけではない。ChatGPTも前回調査から認知度を36.2ポイント伸ばし、7割を突破している。
特筆すべきは、年代別の利用率の変化だ。40〜60代の伸びが大きく、先行していた若年層との差は縮小しつつある。AI検索は幅広い年代に浸透し、“本格的な大衆化”のフェーズに入ったと言えそうだ。
あわせて、生成AIの回答に対する信用度も変化している。前回調査では10~20代の信用度が高く、50~60代は相対的に低かったが、今回調査では、50代が前回比で13.6ポイント増、60代が8.6ポイント増と信用度が上昇した。かつてはAIの回答に慎重だった中高年層も、いまや若年層と遜色ない信頼を寄せており、世代間ギャップは解消されたと言えよう。
およそ4人に1人が「ゼロクリックサーチ」で完結
AI検索では、検索結果画面に直接回答が提示されるため、Webサイトへのアクセスなしに検索行動が完結する「ゼロクリックサーチ」が生まれやすい。
今回の調査では、ゼロクリックサーチに該当する行動を自覚しているユーザーが全体の23.9%に上った。およそ4人に1人が、Webサイトを訪問することなく、AI検索だけで検索行動を完結させていることになる。
一方で、AI検索の回答に満足できず、従来の検索エンジンで追加検索をするユーザーも32.8%存在する。AI対策を進めつつも、SEOを軽視できない状況は続いており、企業にはAI検索と従来型検索の両輪を見据えた対応が求められる。
AI検索は「意思決定」や「消費行動」にも影響を及ぼし始めている
AI検索の回答をきっかけに、実際の商品購入や来店といった消費行動に至ったユーザーは全体の7.4%に上る。AI検索は単なる情報収集にとどまらず、ユーザーの意思決定や具体的なアクションにまで影響を及ぼし始めている。
この背景には、購買プロセスにおける「比較検討」自体がAIへと移行している実態がある。
たとえば、旅行において「準備段階でAI検索をどのような場面で使うか」を聞いた調査では、観光スポットや名所の情報収集が最多だった一方で、「目的地候補を比較したい」といった比較検討フェーズでの利用も目立った。
これまで「認知→比較検討→購入」の購買ファネルの中で、比較検討フェーズは、主に比較サイトや口コミサイトが担ってきた。しかし、その役割をAI検索が代替しつつある。この変化は、既存の比較サイトや口コミサイトへの流入が今後減少する可能性を示唆する一方で、AI検索を経由してからWebサイトを訪れるユーザーは、AIとの対話を通じて意思決定が進んだ“熱意の高いユーザー”が多くなる可能性も示している。
2026年版白書の総括として、佐藤氏はこう語る。
AI検索の実生活や消費行動への浸透は急速に進んでいます。生活者とAIの密接度が、すごく上がった1年でした(佐藤氏)
なお、これら以外にも多様な調査や分析を記載したフルバージョンの「AI検索白書2026」は、こちらから入手可能だ。豊富な調査データを通じて、AI検索の現在地を立体的に把握できる内容となっている。
AI検索に選ばれるWebサイトを構築するために
AI検索がユーザーの消費行動にまで影響を及ぼすようになった今、企業にとっては、AI検索エンジンに“選ばれる”Webサイト構築の重要性が高まっている。単に情報を掲載するだけでなく、AIに正しく構造を理解させ、かつ引用されやすいデータ構造やコンテンツ設計が求められる時代となった。
こうした激変する検索環境に対し、Hakuhodo DY ONEは、AI検索への対応を支援する多彩なサービスを展開している。
まず、自社の現状を把握するための「AIO(AI最適化)診断サービス」だ。これは、主要なAI検索エンジンへの自社の露出状況や対応状況を調査・評価し、改善施策を提示するコンサルティングサービスである。
さらに、実運用を支援するAIエージェント型サービス「ONE-AIGENT(ワン・エージェント)」も提供する。複数の専門特化型AIエージェントが連携し、市場分析からクリエイティブ制作、広告運用、効果測定まで、マーケティングプロセス全体を包括的に支援する。
AI検索への対応を本格化させるうえで、こうした専門性の高い支援サービスの活用は有効な選択肢の一つとなるだろう。
AI検索広告の最新トレンド4つと対応のポイント
ここからは、マーケターが注視すべき、AI検索広告を取り巻く最新トレンドと対応のポイントを説明していこう。
トレンド① ChatGPTへの広告配信がスタート
ユーザー行動の変化と並行して、広告の世界でもマーケターが注目すべき動きがある。AI検索への広告配信がすでに始まりつつあるのだ。
ChatGPTは2026年2月、米国における広告テスト開始を発表した。現時点では申請フォームを通じてOpenAIに直接申し込む方式で、認定された広告主のみが参加できる仕組みだ。
日本国内での開始時期は発表されていないが、米国の動向を見れば、「明日にでも来るかもしれない」(村上氏)という段階にある。
Microsoft Copilotもすでに広告配信を開始しており、AI検索サービスへの広告展開が広がりを見せている。広告主は、国内での本格始動に備えておくべきだろう。
トレンド② AI Max導入とGMC整備が対応の鍵
米国のGoogleでは、AI OverviewsおよびAIモードへの広告配信が開始されており、こちらも日本国内にいつ展開されてもおかしくない状況だ。
現在、Google広告が提供する「P-MAX(パフォーマンス最大化キャンペーン)」や、既存の検索キャンペーンで利用可能な「AI Max(AI最大化設定)」を導入することで、AIモードやAI Overviewsにも広告が配信されやすくなる仕組みが整いつつある。
Googleが推奨する自動化配信の設定である「AI Max」には、大きく分けて3つの機能がある。
- クエリ拡張:設定したキーワードの文字列だけでなく、AIがユーザーの検索意図を読み取り、関連性の高い検索語句へと自動で広告配信を広げる機能
- テキスト自動生成:ランディングページの内容や既存の広告アセットから学習し、広告テキストを自動生成する機能
- リンク先URLの拡張:検索語句やインテントに基づいて、関連性の高いURLを選定する機能
リリース当初は「意図していない広告テキストが作られる」「遷移先URLをコントロールできない」といった懸念の声も少なくなかった。しかし、2026年春頃には、その懸念を払拭するアップデートが行われる予定で、導入のハードルは下がることが予想される。
広告パフォーマンスの最大化を追求するのであれば、AIに委ねる領域を広げていくことも、合理的な方向性ではないでしょうか(村上氏)
また、「Google Merchant Center(GMC)」の整備も急務だ。GMCはショッピング広告配信の基盤となる管理画面だが、近年はAI検索への配信を意識したアップデートが増えている。
特に注視すべきは、「ショップの品質」スコアの向上だ。配送日数、送料、返品ポリシーといったユーザー向けの情報を網羅的に登録することでスコアが上がり、AI検索上でも優先的に表示されやすくなる。
トレンド③ 「指名検索」を確保するための「認知広告」の重要性
AI検索の普及は、見落とされがちだが重要な変化をもたらす。それは、従来型検索エンジンの利用が減少することで、ブランド名による「指名検索」も連動して減少する可能性がある点だ。
先に述べたとおり、「AI検索白書2026」では、AI検索の利用によって従来型検索の機会が減少したと感じているユーザーが22.1%に上った。これは、検索窓に直接ブランド名を打ち込む行動が少なくなっていることを示唆している。
これからのユーザー行動では、従来型検索で指名検索してもらう機会をいかに戦略的に増やすかが重要になります(村上氏)
その手段として重要性が増すのが、YouTubeなどの動画広告、SNS、TVCMなどを通じた認知施策だ。認知を広げるだけでなく、動画やSNS施策によって指名検索がどれだけ増えたかを示す「指名検索リフト」をKPIに据えた取り組みの重要性は、今後さらに高まっていくだろう。
加速する変化に、今から備える
AI検索の利用者が急増し、消費行動にも影響が及び始め、AI検索上での広告配信が始まった。この変化は「すでに起きていること」であり、同時に「これからさらに加速すること」でもある。
AI検索対策における明確な勝ち筋は、提供事業者を含め、誰もまだ手にしていません。だからこそ、今は、変化を理解し、できる対策から小さく試すことが重要です。
AI検索対応やAI検索広告の大波が押し寄せてから慌てて対策を始めるのでは遅く、今この瞬間から取り組んだ方がいい。少なくとも、その変化を注視し、準備を整えることは始めておくべきです(村上氏)
企業には、早期の情報収集と、本格的なAI検索時代の到来を見据えた準備を行うことをお勧めしたい。まずは、「AI検索白書2026」のダウンロードからはじめてみてはいかがだろうか。