Web担当者のためのドメイン入門

「.com」と「.jp」はどちらが有利? “ドメインパワー”って本当にあるの? SEO専門家・住太陽氏に聞いた

「ドメインパワーが高いサイトほどSEOに有利」は本当なのか。SEO業界の第一人者・住太陽氏に聞いた。

森田秀一[執筆], 住太陽[監修]

7:05

「SEOで勝てないのは、ドメインパワーが足りないから?」

Google検索で上位表示を目指して施策に取り組む担当者ならば、聞いたことがあるかもしれない「ドメインパワー」という言葉。ドメインとは、Web担当者Forumなら「webtan.impress.co.jp」、Yahoo! JAPANなら「.yahoo.co.jp」という具合に、あらゆるサイトはドメインのもとで運用されているが、それぞれのドメインに対する信用力のようなものが数値化され、検索結果順に大きく影響する……とも言われる。だが、Googleが公開しているSEOガイド文書「Google 検索セントラル」などには、ドメインパワーの関与を伺わせる記述は見当たらない

ドメインパワーは本当にあるのか? その疑問に対する答えを探るべく、SEO専門家の住 太陽(すみ もとはる、ボーディー有限会社 代表)氏にメールインタビュー形式で話を伺った。1999年から四半世紀以上にわたってSEOに携わっている住氏の見解を聞く。

本特集は、2026年6月を「ドメイン特集月間」として、ドメインに関する記事を毎週水曜日にお届けしている。今回は第2弾となる。


住 太陽 氏

ドメインパワーは“第三者の独自指標”。Googleが公式に認めていない以上、気にしても仕方ない

住氏は現在、Web担当者Forumで「ひとりSEO担当者の疑問に答えます」を連載中だ。さらにはX(旧Twitter)や、代表を務めるボーディー有限会社の公式サイトを通じて、AI時代におけるSEOの在り方についても積極的に発信している。

職歴25年を超え、SEOの興隆と常に向き合ってきた住氏に「ドメインパワーとは何か? 実際に存在するのか」と質問してみたところ、「あまり聞き慣れない用語」というのが第一声だった。今回の取材にあたってわざわざ調べたほどという。どういうことか。

あまり聞き慣れない用語だったため調べてみたところ、Moz社の「ドメインオーソリティー」やAhrefs社の「ドメインレイティング」のように、ドメインに対する“被リンクの状況”をサードパーティーが独自にスコア化したものの総称(がドメインパワー)のようですね。Googleが公式に認めたものではなく、あくまでもツールベンダーによる独自指標という訳です(住氏)


Moz社のWebサイト。ドメインオーソリティーという独自指標を集計・公開している(画像出展:同社公式サイト)

実際のところ、「ドメインパワー」でGoogle検索すると、多くの解説記事が表示される。その大半で「Googleは存在を公式に認めてはいないが重要な指標である」と記述されている。

界隈では、一悶着あったのも確かだ。2024年3月~5月頃にかけて、Google社内からSEO関連の文書が流出。その中では「siteAuthority」という、ドメインパワーと思しき属性の存在が示唆された。これをもって、多くの関係者がドメインパワーを意識するようになった側面はありそうだ。

とはいえ、これは流出した文書での情報に過ぎない。「僕たちが数値を見るなどして利用できるスコアではありませんので、気にしても仕方ありません」と、住氏は“スルー”を勧める。

私は「ドメインの強さ」のようなものは見ていません。代わりに見ているのは、サイトやその運営会社などがウェブ上でどれだけ言及されているか、その頻度の推移はどうか、といったことです(住氏)

ドメインパワーの存在を認めるかどうかはさておき、SEOでは被リンク──外部サイトからどれだけリンクされているか──の数や質が重要とされてきた。多ければ多いほどよいという風潮も一時はあったが、住氏の分析によれば、被リンクの重要性は下がっているという。

ドメインパワーを被リンク状況の指標であると考えるなら、(優劣によって)検索順位にもインデックスにも差は出るでしょう。ただし個人的には現在、自然検索のSEOでもAI検索のSEOでも、被リンクはそれほど大きな注力ポイントではないと考えています。現在ではページやドメインの被リンク状況よりも、外部から言及される質や量の推移、指名検索を含むユーザーのクリック行動の方が、はるかに重要だからです(住氏)

アテになるかわからないドメインパワーを意識するよりも、もっとやるべきことがある。自社のサイトやサービスがWebの世界でどれだけ言及され、その頻度はどう推移しているかといった状況を把握すべき──これが住氏の答えだ。

「.com」と「.jp」に差はある? 中古ドメインってどう?

ドメインパワーを意識しなくて良いというのが住氏の立場である。よって「.com」と「.jp」を比べたときにSEO的に有利不利はあるか」という質問には「誰でも取得可能な汎用ドメインに関しては優劣はない」。「サブドメインはSEO的にどうか」には、「サイトの運用状況に合わせて決定すればそれで構わない。ごく普通のものなら問題なくGoogleは理解できる」との考えを示している。

もしもドメインパワーが機能しているのなら、一定の実績を積んできたサイトドメインを中古市場から取得するという発想もあるかもしれない。住氏はドメインの取引に詳しくないと前置いた上で、いくつかの質問に答えてくれたので、ここで紹介する。

Q. 新規サイトの立ち上げにあたっては、結局どのドメインを選ぶのが無難か

A. 好きなものを選んで問題ありません。ただし「日本国内で登記された法人」しか取得できない「.co.jp」のような属性型ドメインが取得できるならそのほうが良いと考えますが、それも主にユーザーに対するアピールであって、SEOの観点からは特に差はありません。

Q. 中古ドメインを利用するメリットとデメリットについて

A. メリットは、運がよければ過去の運営状況からの恩恵が得られること。デメリットは、運よくメリットを得られたとしてもそれが永続的ではないことです。

Q.サイト立ち上げ時にいきなり中古ドメインに手を出すのはアリか

A. 流行の商材を使った短命なアフィリエイトサイトや、短期的に稼いだらすぐ撤退するグレー商法など、使い捨てが前提のサイトでは利用価値があるものと想像します。しかし、長期的に事業を存続させることを意図している普通の企業にとっては無関係です

被リンクよりも、いまは“エンティティ”

SEOの動向は、5年~10年という長期的視野に立てば、明確に変化している。2012年の「ペンギンアップデート」や、2016年の「モバイルファーストインデックス」をご記憶の方は多いだろう。直近では、なんといってもAIの動向に注目が集まっている。

日本国内のGoogle検索では2024年8月頃から「AI Overviews」(AIによる概要)の表示が本格化した。検索ワードに対する直接的な回答が、おもに検索上位サイトの記述を引用するかたちで表示されるようになった。SEOへの影響はないか。心配の声は増えている。


「AI Overviews」(AIによる概要)の表示例

ただ、そうした情勢下でも、ドメインの重要性が高くなってはいないというのが、住氏の見立てだ。むしろ生成AI誕生の数年前から、SEOを巡っては大きな潮流変化があったと指摘する。

2016年ごろから、ある特定のトピックにおいて、サイトやそのサイトの運営企業、コンテンツの著者、製品やサービスなどのブランド名といった“エンティティ”の評判がどうかを、Googleは評価するようになってきていると考えています(住氏)

エンティティとは「実体」「存在」などを意味し、SEOの文脈においては「他の物事と区別できる、一意性を持った物事」とされる。検索キーワードと意味合いは似ているが、明らかに違う。たとえば、「山田太郎」というキーワードがあったとする。同姓同名の人物が多数いるだろうが、これを「野球漫画の登場人物の山田太郎」「〇〇業界で著名な活躍をする山田太郎」というように、異なる別の概念──別のエンティティとして、今のGoogleは切り分けて扱っているとみられる。

そしてエンティティは、公式サイトの有無に関係なく、生成され得る。

Google検索で「近くの焼鳥屋で一人で入りやすいお店は?」とか「近くでドレッドヘアが得意な美容院は?」のように、近くの飲食店や理美容店を探すような自然文で検索をすると、AIによる概要でいくつかのお店が推薦されます。ところがこれらの推薦されたお店をよく調べると、独自のサイトを持っておらず、食べログやホットペッパービューティーやInstagramしか見つからないお店がまあまあ見つかります。独自のサイトがないということは、ドメインも被リンクも役立つコンテンツもないということです。あるのは“エンティティ”としてのお店と、その評判です(住氏)


Googleで飲食店を検索した場合の例。独自サイトを構築していないお店であっても、グルメサイトのクチコミ情報などを総合して、検索ワードに沿ったオススメ店舗を表示している

こうした傾向は、店だけでなく商品でも共通しているという。つまり、製品ごとに独自のドメインやサイトが用意されていなくとも、クチコミサイトにおける詳細情報や、それに基づくクチコミ文から、その存在を“エンティティ”という処理単位で、Googleが認識しているという分析が成り立つ。

そもそも、一般の人々のクチコミやレビューにおいて、店や製品やサイトに言及したり評価したりすることはあっても、ドメインに言及することはまずありません。このため、ドメインを単位にしては、人々からの評価を幅広く勘案することは不可能です(住氏)

ドメインは気にせず、エンティティに集中しよう

住氏はここまでに結論を出しているが、それでもしつこく、“ドメインパワーを育てる”という発想が今後必要か否か、最後に伺った。

ドメインのことはあまり気にせず、サイト、そのサイトの運営企業、コンテンツの著者、製品やサービスなどのブランド名といった、エンティティに対する言及や検索を増やすことに注力するほうが得策だと思います(住氏)


ボーディーのサイトでは、エンティティについても解説している

 

Googleからの流出文書には、ドメインパワーと思しき要素の記述があった。しかしGoogleは今のところ、ドメインパワーの存在を公式には認めていないし、Web担当者やユーザーが確認したくても、できない。一般的にドメインパワーと呼ばれる数値は、あくまで第三者企業がとりまとめたものに過ぎない……これが、ドメインパワーに関する議論の現状である。

その上で、住氏の助言は明快だ。ドメインの種類などをいちいち気にするよりも、エンティティの獲得・醸成にこそ力を注ぐべし。「ドメインパワーが高そう」などと中古ドメインに目を向ける必要もないとした。

Googleは、検索を着実に進化させており、その方向性が「ユーザーにとって真に便利なサービスの提供」であることに疑いの余地はない(その過程で利益を上げたいねらいは当然あるだろうが)。ならばWeb担当者・運営者側は「あまり知られていない方法を自分だけが知って、どうにか得したい」と考えるより、徹底的にユーザーに向き合って、役立つコンテンツやサービスを届けてはどうか。その結果、ユーザーは満足し、さらには検索順位も上がるという、理想的なサイクルがいずれ構築されるのではないか? 住氏の解説からは、そんな明るい未来を感じた。

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