Web担当者のためのドメイン入門

東宝系に問題が集中、ワーナーはゼロ!映画サイトのドメイン名問題、邦画ヒット作10年間332本の実態を調査

映画の公式サイトがオンラインカジノや成人向けサイトに? 邦画ヒット作10年間332本の調査で見えた、ドメイン名管理の実態。

内藤 貴志(Web担編集部)

7:05

Webサイトの閉鎖により廃止されたドメイン名を、第三者が再登録して悪用する問題が広がっています。

公式サイトURLにアクセスすると、フィッシング詐欺サイトや違法カジノサイト、成人向けコンテンツサイトに変わっていた――そうした被害が行政機関や学校法人、医療機関など幅広い分野で相次いで報告されており、ドメイン名の「なりすまし転用」は今や看過できない社会問題となっています。

こうした問題は、映画の公式サイトにも及んでいます。「あの映画の情報が見たくて公式サイトと紹介されているリンクをクリックしたら、オンラインカジノのサイトが開いた」。そんな経験をした方もいるのではないでしょうか。

今回、過去10年に公開された邦画(興行収入10億円以上・公式サイトあり)332本を対象に、現在のサイト状況を調査しました。その結果、全体の15.1%にあたる50本の公式サイトで、ドメイン名が第三者に再登録されている可能性が高いことが判明しました。

【調査概要】

  • 対象期間: 2016年 〜 2025年(10年間)
  • 対象作品: 興行収入10億円以上、かつ公式サイトがある邦画 332本(期間内の全公開作 6,191本から抽出)
  • 調査手順:
    1. 「日本映画データベース(JFDB)」で対象作の公式サイトURLを特定
    2. 「WHOIS検索」を用いて、各ドメインの現在の登録状況を確認・分析
  • 判定基準: ドメインの登録日が映画の公開日よりも新しいものを「第三者に再登録されたドメイン名」としてカウント

第三者に再登録されたドメイン名は15.1%

調査対象332本のうち、ドメイン名が第三者に再登録されていたのは50本(15.1%)。その現状と内訳は以下のとおりです。

no.公開年月作品名配給会社ドメイン名
12023/1イチケイのカラス東宝ichikei-movie.jp
22021/12あなたの番です 劇場版東宝anaban-nana-shouta.jp
32020/12約束のネバーランド東宝the-promised-neverland-movie.jp
42020/8東宝ito-movie.jp
52020/10浅田家!東宝asadake.jp
62019/12午前0時、キスしに来てよ松竹0kiss.jp
72019/12ルパン三世 THE FIRST東宝lupin-3rd-movie.com
82019/12屍人荘の殺人東宝shijinsou.jp
92019/2七つの会議東宝nanakai-movie.jp
102019/7アルキメデスの大戦東宝archimedes-movie.jp
112018/12こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話松竹bananakayo.jp
122019/8引っ越し大名!松竹hikkoshi-movie.jp
132019/3君は月夜に光り輝く東宝kimitsuki.jp
142019/11決算!忠臣蔵松竹chushingura-movie.jp
152017/12DESTINY 鎌倉ものがたり東宝kamakura-movie.jp
162018/8検察側の罪人東宝kensatsugawa-movie.jp
172017/12スマホを落としただけなのに東宝sumaho-otoshita.jp
182018/6空飛ぶタイヤ松竹soratobu-movie.jp
192018/1祈りの幕が下りる時東宝inorinomaku-movie.jp
202018/9コーヒーが冷めないうちに東宝coffee-movie.jp
212018/3北の桜守東映kitanosakuramori.jp
222017/7君の膵臓をたべたい東宝kimisui.jp
232016/12映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!東宝eiga-yokai.jp
242017/7忍びの国東宝shinobinokuni.jp
252016/12海賊とよばれた男東宝kaizoku-movie.jp
262017/6昼顔東宝hirugao.jp
272017/4帝一の國東宝teiichi.jp
282017/8打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?東宝uchiagehanabi.jp
292017/10ミックス。東宝mix-movie.jp
302017/9亜人東宝ajin-movie.com
312016/12土竜の唄 香港狂騒曲東宝mogura-movie.com
322017/3ひるなかの流星東宝hirunaka.jp
332017/3チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~東宝cheerdance-movie.jp
342017/11ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~東宝last-recipe.jp
352017/5追憶東宝tsuioku.jp
362017/9ナミヤ雑貨店の奇蹟KADOKAWA/松竹namiya-movie.jp
372017/10斉木楠雄のΨ難SPE/アスミック・エースsaikikusuo-movie.jp
382015/12映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!東宝eiga-yokai.jp
392015/12母と暮せば松竹hahatokuraseba.jp
402016/564-ロクヨン- 前編東宝64-movie.jp
412016/664-ロクヨン- 後編東宝64-movie.jp
422016/9怒り東宝ikari-movie.com
432016/8後妻業の女東宝gosaigyo.com
442016/9四月は君の嘘東宝kimiuso-movie.jp
452016/3家族はつらいよ松竹kazoku-tsuraiyo.jp
462016/5殿、利息でござる!松竹tono-gozaru.jp
472016/8青空エール東宝aozorayell-movie.jp
482016/2黒崎くんの言いなりになんてならないショウゲートkurosakikun-movie.com
492015/12杉原千畝 スギハラチウネ東宝sugihara-chiune.jp
502016/4劇場版 「遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS」東映yugioh20th.com

【再登録されたドメイン(Webサイト)の現状内訳】

再登録後サイトのカテゴリ件数主な内容
コンテンツ消滅17元の映画情報は完全に失われている状態
ドメイン転売サイト14ドメイン自体の売買を目的としたページ
オンラインカジノ6カジノ、スポーツベッティング、またはそれらへの誘導ページ
アフィリエイト1主に成人向け電子コミックへの誘導
その他12広告目的のリンク集や、悪質な誘導サイトなど
合計50 

「オンラインカジノ」には、カジノやスポーツベッティングの本体サイトだけでなく、それらへ巧妙に誘い込むフロントページも含まれています。

「アフィリエイト」の多くは、成人向け電子コミックの購入ページへの誘導を目的としたものでした。

「その他」の多くは、広告収入を狙ったリンク集です。しかし中には、越境ECサイトを装って別サイトへリダイレクトさせるものや、偽のエラー画面をポップアップ表示させてユーザーを騙そうとする非常に悪質なサイトも確認されました。

9年以上前では、3~4割が「問題あり」

問題の深刻度は公開年が古いほど高く、時間の経過とともにドメイン名の廃止・再登録が進む構造が見えてきます。

【2016~2025年の年ごとのドメイン名再登録状況】

本数再登録数再登録率(%)
20253700.0%
20243000.0%
20233313.0%
20222613.8%
20213313.0%
202021523.8%
201940615.0%
201831722.6%
2017381642.1%
2016431330.2%
合計3325015.1%

東宝系に問題が集中、ワーナー・ブラザースは問題ゼロ

配給会社別に問題の発生件数を集計したところ、非常に顕著な偏りが見られました。内訳は以下のとおりです。

【配給会社別のドメイン再登録状況】

配給会社対象再登録再登録率(%)
東宝(共同含む)1843720.1%
松竹(共同含む)54916.7%
東映2926.9%
ワーナー・ブラザース(共同含む)2900.0%
その他3625.6%

最多の37件(20.1%)を記録した東宝に対し、ワーナー・ブラザースは被害数ゼロ(0.0%)という結果となりました。

ワーナー・ブラザースが被害を完全に防げている理由は、サイトの「アドレスの作り方」にあります。 ワーナー・ブラザースは各映画のサイトを独立したドメイン名ではなく、自社の公式サイト(wwws.warnerbros.co.jp)の配下にぶら下げる形で制作しています。

そのため、映画の公開が終了してもドメイン名を手放す必要がなく、第三者に悪用されるリスクを構造的にシャットアウトできているのです。

同じく被害が2件と非常に少なかった東映も、東映アニメーションなどの「親ドメイン名」で一括管理する傾向が強いため、ドメイン名の流出を防げています。

※ワーナー・ブラザースの日本における映画劇場配給業務は、2025年12月31日をもってワーナー ブラザース ジャパン合同会社での直接配給が終了しました。2026年以降の洋画作品の配給は、東宝グループである東和ピクチャーズが行っています。

『イチケイのカラス』『罪の声』『スマホを落としただけなのに』などが被害に

ドメイン名再登録後の転用の手口はさまざまですが、特に目立つのがオンラインカジノ・ギャンブル系への転用です。

『イチケイのカラス』(2023年・東宝、ichikei-movie.jp)は、現在オンラインカジノの広告サイトになっています。しかも単なる書き換えではなく、ページヘッダーに「イチケイカジノ」とデザインされており、元のサイト名を知った上で意図的に転用したとみられます。


『イチケイのカラス』の公式サイトは、現在、オンラインカジノの広告サイトになっている

同様に、『罪の声』(2020年・東宝、tsuminokoe.jp)、『スマホを落としただけなのに』(2017年・東宝、sumaho-otoshita.jp)もオンラインカジノに誘導するフロントページに転用されています。


『罪の声』の公式サイトも、オンラインカジノに誘導するフロントページになっている

『スマホを落としただけなのに』の公式サイトだったURL。「スマホを使ってオンカジをオトシタい」というロゴが表示されている

成人向けコンテンツへの転用もあります。『ラーゲリより愛を込めて』(2023年・東宝、lageri-movie.jp)と『沈黙のパレード』(2022年・東宝、galileo-movie3.jp)の公式サイトはともに成人向けコンテンツ販売サービスbokuaikimiai.jpにリダイレクトされています。


『ラーゲリより愛を込めて』『沈黙のパレード』の公式サイトは、現在、成人向けコンテンツ販売サービスにリダイレクトされている

『わたしの幸せな結婚』(2023年・東宝、watakon-movie.jp)の公式サイトだったURLでは、現在はDLSiteのアダルトコンテンツを紹介するアフィリエイトサイトになっています。映画はライトノベルが原作でターゲットの中心は10~20代の女性です。公式URLにアクセスしたユーザーが、突然こうした内容に遭遇することになります。


『わたしの幸せな結婚』の公式サイトは、アダルトコンテンツを紹介するアフィリエイトサイトになっている

ドメイン名管理のベストプラクティス——人気シリーズの取り組みに学ぶ

前述のようにワーナー・ブラザースは親ドメイン名運用で問題を回避していますが、東宝もサブドメイン方式を採用している作品は無事です。

たとえば、2024年公開の『変な家』(hennaie.toho.co.jp)の公式サイトは、すでにコンテンツ自体は消滅しているものの、ドメイン名が第三者に転用される問題は生じていません。同一の配給会社内でも、ドメイン名の管理戦略によって結果が全く異なる実態は、業界全体への示唆となるでしょう。

人気IPの映画シリーズについては、IPごとに情報管理・発信の考え方の違いが見えてきます。

「映画ドラえもん」シリーズはすべてdoraeiga.comで発信され、作品ごとに公開年をサブディレクトリにして制作し、映画公開終了後もサイトを保全しながら公開しています。

一方で「ポケットモンスター」の劇場版シリーズは、pokemon-movie.jpで常に最新作のみを公開し、旧作は同サイト内の「ポケモン映画プレイバック・ザ・ヒストリー」にアーカイブ化して移行しています。

「名探偵コナン」シリーズも映画情報をconan-movie.jpに集約して、長らく最新作の情報だけを発信する形で運用していましたが、2024年公開の『100万ドルの五稜星(みちしるべ)」以降は公開年をサブディレクトリにして公開するようになっており(https://www.conan-movie.jp/2024/)、現在も過去作の公式サイトを閲覧できます。

一方、これまでに劇場版8作品を公開している「妖怪ウォッチ」シリーズは、時期によって運用の明暗が分かれています。シリーズ初期は eiga-yokai.jp や youkai-world.com などの独自ドメインで情報発信を行っていましたが、現在はこれらすべてが第三者に再登録されています。

こうした背景もあってか、現在は独立した映画公式サイトとしての運用はありません。最新作の情報はアニメを放映するテレビ東京のサイト内から発信されるのみとなっており、過去作の情報についてもレベルファイブの公式サイト内でアーカイブとして紹介されるに留まっています。

映画公式サイトが、公開終了後も作品の「顔」であり続けるために

ドメイン名を手放すことのリスクは民間企業の間で徐々に認識されつつありますが、自治体などではまだ十分に周知されておらず、偽サイトや不審なコンテンツの温床となる事例は後を絶ちません。映画業界も例外ではありません。

対策の方向性は明確です。ワーナー・ブラザースのように親ドメイン名・サブディレクトリ方式に統一すること、あるいは少なくとも主要作品のドメイン名を長期(5年以上)で登録・更新しておくことが有効です。JFDBや映画情報サービス各社も、リンク切れを定期的にチェックして警告表示する仕組みを整えることが望まれます。

すでに動き出している配給会社もあります。松竹は2022年頃を境に、作品ごとの独自ドメイン名運用からmovies.shochiku.co.jpやsh-anime.shochiku.co.jpのサブドメインおよびその配下のディレクトリ構造へと移行していると見られ、新作のほとんどが親ドメイン名で管理されています。この方式であれば作品公開終了後もドメイン名は松竹が保持し続けるため、第三者による再登録は構造的に起こりません。今回の調査でも、2022年以降の松竹配給作品への第三者による再登録はゼロでした。過去の独自ドメイン名に転用被害が残る点は課題ですが、この方針転換は業界全体が参照すべきモデルといえます。

SEO専門家の辻正浩氏は、使わなくなったドメイン名は「ペットと同様、登録したら最後まで面倒を見る」覚悟で保持し続けるべきだと説きます。サイト閉鎖後も最低1年はリダイレクトを維持してSEO評価をリセットし、その後さらに9年、計10年間は手放さないことを推奨しています。安易な放棄は詐欺サイトへの悪用やブランド毀損を招くだけでなく、「だらしない管理をしていた企業」という社会的評価にもつながりかねないと指摘します。

映画の公式サイトは公開期間中だけでなく、作品が長く愛される限り「顔」であり続けます。ドメイン名の年間更新料は数千円から数万円程度。作品の信用と観客の安全を守るコストとしては、決して高くないはずです。ドメイン名の適切な管理は、今や映画会社としての社会的責任のひとつといえるでしょう。

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