データ分析はAIで次のステージへ。GA4×生成AIで実現する超高速PDCA
HAPPY ANALYTICSの小川卓氏が、GA4と生成AIをMCPサーバーで連携し、自然言語だけで分析からレポート作成までを行う手法を解説した。
1月8日 7:05
「生成AIは、ついにデータ分析の現場でも本格的に使える段階に入った」――そう語るのは、Webアクセス解析の第一人者・小川卓氏だ。「使える段階」とは、特別なスキルがなくても、ほぼ無料で日々の実務に取り入れられるレベルに到達したという意味である。
小川氏は、MCPサーバーを介してGA4と生成AIを連携し、自然言語だけで分析からレポート作成まで完結させる手法を紹介した。これは業務効率化に留まらず、施策の精度向上にもつながる、極めて実践的なアプローチだ。
ついにWebアクセス解析でも生成AIが実用レベルに
「月次レポートの作成に丸一日かかる」
「データのエクスポートに時間がかかる」
「手作業の集計が多く、AIで自動化するにも準備が大変」
「分析の深掘りまで手が回らない」
「改善施策を実行しても、データとつながらない」
こうした課題を抱える担当者は多いだろう。生成AIは万能ではないものの、小川氏によれば、分析・集計・レポーティングの負荷を大幅に軽減し、さらに人間が見落としがちなポイントを拾ってくれる可能性もあるという。
実際、生成AIを業務フローに組み込むことで、たとえば月次レポート作成の作業は次のように大幅に簡略化され、作業時間の削減効果も大きい。
この分析の自動化を実現する上で鍵となるのが「MCPサーバー」だ。
MCPサーバー
MCPサーバーとは、「Model Context Protocol(MCP)」に対応したサーバーのこと。AIアシスタントと外部データソース(Google アナリティクス、BigQuery、Google Adsなど)をつなぎ、自然言語でデータの取得・分析ができる環境を提供する仕組みである。
従来は、GA4からデータをダウンロードし、ファイルを加工して生成AIにアップロードするなど、手作業が多く非効率だった。このため、小川氏もこれまでAI活用を積極的に紹介することはなかったという。
MCPサーバーを使えば、日本語で生成AIに質問するだけで、GA4から必要なデータを取得し、分析結果を文章・グラフ・表で返してくれます。GA4と生成AIの橋渡し役になるのがMCPサーバーなんです(小川氏)
基本機能は無償で利用できる。ただ、生成AIへのリクエスト回数には上限があるため、分析量が多い場合は生成AIサービスの有償プランの利用を推奨する。自然言語で気軽に指示できる一方で、質問の仕方次第でアウトプットの品質が大きく左右される点には注意が必要だ。
1時間で完了! MCPサーバーの設定手順
MCPサーバーは、一度設定してしまえば、その後は継続して利用できる。
【設定の流れ】
- Googleクラウドプロジェクトの作成
- APIの有効化
- サービスアカウントキーの作成
- 認証情報ファイルのダウンロード
- GA4に権限の付与
- GA4からプロパティIDの取得
- node.jsのインストール
- Claude Desktopのインストール
- Claude Desktopでの設定
小川氏がデモで紹介した生成AIは、Claudeだ。デスクトップアプリから直接設定できること、ローカル環境で動作すること、外部サーバーを使わずに済むことなどの理由で選定したという。GeminiやChatGPTと連携して利用することも可能だが、設定の難易度はClaudeより高い。
詳細な手順は小川氏のブログでステップごとに丁寧に解説されている。作業時間の目安は 30分〜1時間程度 だ。
Google Analytics MCP Serverを利用し、AIで無料分析を開始する方法をわかりやすく解説(画像手順書付き)Claude編
仮説づくりから改善まで。PDCAをAIが伴走する
小川氏はまず、「シンプルにWebサイトの改善案をAIに出してもらう」一連の流れを紹介した。
- ペルソナを設定してサイトを利用
- サイトを理解してもらった上で、改善案を出す
- 改善案が適切なのかGA4のデータと照らし合わせる
- 改善案を具体的に作成してもらい、ワイヤーフレームであったり文章の草案も考えてもらう必要であればAB案も出してもらう
- 評価方法や実装しておくべきイベントを確認する
まずは、生成AIにWebサイトを理解させるところから始める。ペルソナを設定し、そのペルソナとしてサイトを利用するよう指示する。
次に、GA4のデータを使わずに課題と改善案を出すように依頼する。この段階では、課題ではない指摘に対して人間側がコメントを入れ、改善案の妥当性をGA4のデータで確認していく。
実際にデータを確認すると、ステップ2の改善案が正しい場合もあれば、そうでない場合もある。データを踏まえて改善案が再提案されるため、その内容をもとにボタン配置や文章の草案、A/Bテスト案など、より具体的なアウトプットを生成AIに作成してもらう。
最後に、施策の評価項目や、計測のために実装しておくべきイベントをAIとともに確認し、追加の必要があればタグマネージャーで設定する。必要な指標が正しく計測できる状態を整えることで、施策の効果検証がしやすくなり、次の改善にもつながる。
AIのアドバイスに沿って施策を実施し、その評価もAIに聞き、さらに改善案をもらう。これを繰り返すことで、AI側にも知見が蓄積され、より精度の高い分析ができるようになります。これまで私が2〜5時間かけていた作業が、大きく短縮できます(小川氏)
月次レポートのプロンプトを大公開
続いて小川氏は、「月次レポート作成に使えるプロンプト例」を紹介した。
ECサイトのサマリー、改善案、優先順位、良い点・悪い点、売れ筋商品など、ひととおりの要素が網羅されている。
AIにプロンプトを入力すると追加質問が返ってくるため、それに答えていくだけで、最終的に「月次レポート」としてまとまった内容を生成してくれる。
決まったフォーマットでレポートを出したい場合も、生成AIが使える。講演では、同じデータをもとに Claude、Ganma、Gensparkで生成した3種類のレポートが紹介された。
プロンプトエンジニアリングのスキルを上げる9つの実践テクニック
小川氏は次の図にプロンプトエンジニアリングの9つの実践テクニックを示した。これらを組み合わせ、使い込んでいくことで、プロンプトエンジニアリングのスキルが上げられるという。
表現や構成はAIごとに異なるものの、サイト評価、前年同月比・前月比、改善施策、目標といったポイントは共通して整理されている。小川氏は、「気に入ったレポートを選び、必要に応じて情報を追加・削除しながら使えばよい」と説明した。
施策評価のためのプロンプトも公開
続いて小川氏は、施策評価用のプロンプトを紹介した。
プロンプトを入力するとAIから質問が返ってくるので、それに回答する。すると数分後には、パフォーマンス指標、次の施策、他ページとの比較、最終評価点、競合との差別化ポイント、ビジネスインパクトなど、分析結果がまとめて提示される。
同じデータでも、AIの種類やモデルによってレポートの視点や強調ポイントは変わります。しかし、どのAIでも実務で検証の上、活用できるレベルのレポートは作れます。ただし、精度を高めるには事前にサイト情報を学習させることが不可欠です(小川氏)
生成AI分析は、なぜ失敗するのか?──答えは事前学習不足
生成AIに分析をさせたものの、
- 改善案がありきたり
- 提案が抽象的で使えない
- 技術的・予算的に実現不可能な案が並ぶ
と、がっかりした経験はないだろうか。その多くは事前学習の不足が原因だ。以下は「事前学習なし」で作ったレポートの例である。
そこで、「ECサイトの特徴」「ターゲット」「目標」「実現可能な施策の範囲」などを入力すると、同じデータでも課題の本質を捉えたうえで、実現可能な改善策を提示するようになる。
さらに、「同業他社情報」「ファネル情報」「人件費コスト」などを加えてチューニングすれば、改善策の精度はより高まり、内容も具体的になる。
事前情報は秘伝のタレ──チューニングが成果を左右する
小川氏は、生成AIで高精度な分析結果を得るためには「事前にインプットする情報の質」が極めて重要だと強調する。
付加情報は、いわば秘伝のタレです。自社サイトに合わせて追加したり調整したりしながら、AIをチューニングしてください。生成AIの結果が物足りない場合は、情報を追加すれば精度は上がります。AIを社員として育成するイメージで考えてみてください。
プロンプトは保存しておけば毎回入力する必要はありません。気に入ったレポートのフォーマットがあればアップロードし、同じ形式で作成するよう指示することもできます。
最初は段階的に質問を行いながら情報をインプットする方法がおすすめです。期間は必ず指定し、時系列比較や前年同月比較も行うことで、季節要因も考慮できます。
さらに可能であれば、Googleドライブに保存したマーケティングカレンダーや施策記録を活用すると、より精度の高い分析が可能になります(小川氏)
便利な一方で、AIによる分析には制限もある。GA4のAPIを使う場合について、小川氏は分析可能な範囲と限界についても注意を促した。
- セグメント別ユーザー分析はできない
(例:CVユーザー、新規・リピーター比較など) - Webサイト内の経路分析は不可
- 場合によってはAIが推測で回答するため、妥当性のチェックが必要
- これらを解決して、精度を上げる方法としてMCPサーバーを利用した生成AIとBigQuery連携を導入する
まとめ:AIが担う領域、人間が担う領域
最後に小川氏は、サイト改善のフレームワーク「DMAIC」に沿って、AIと人間の役割を整理し、講演を終えた。
サイト改善は、DMAIC(Define、Measure、Analyze、Improve、Control)のフレームワークで進めます。
目標やKPIを設定するDefine(目標)の候補出しは生成AIと会話しながら行えます。しかし、意思決定は社内で責任をもって行うべきです。Measureは必要なデータを指示してくれますが、実装は人間が担当します。Analyze(分析)とImprove(改善)は大幅に効率化きる部分です。Control(継続的な改善活動)は、月次レポートの作成などは得意ですが、継続的な改善活動を行うためには予算や人が関わるため、AIでは代替できません。
つまり、AIが力を発揮するのは分析・改善・レポーティングの部分です。一方で人間が関わる領域は引き続き残るため、そのスキルを高めることが重要です(小川氏)

