【レポート】Web担当者Forumミーティング 2022 春

Z世代が嫌うNGとは? マーケ戦略に役立てたい「価値観や消費行動」を徹底解剖

2019年からZ世代を追いかけているオールブルー Z総研が、Z世代のインサイトを徹底解剖。価値観や消費行動をふまえ、企業がどうコミュニケーションしていけばよいかを紹介する。

1996〜2010年生まれのZ世代はどんな価値観を持ち、消費行動をするのだろうか。また、企業がZ世代とコミュニケーションするにはどうすればよいのだろうか。2019年からZ世代を追いかけ、定量、定性データをもとに日々変わるZ世代を観測しているオールブルーの丸山紘史氏が「Web担当者Forumミーティング 2022 春」に登壇。Z世代のインサイトを徹底解剖した。

株式会社オールブルー 取締役/CCO 丸山紘史氏

利益よりも心地よさに価値をおくZ世代

丸山氏がCCOを務めるオールブルーは博報堂の社内ベンチャーで、マス広告からSNSまで統合的なコミュニケーションを実現している。同社では、2019年にN.D.Promotionと合同でZ世代に特化したシンクタンク「Z世代総合研究所(Z総研)」を設立。Z世代に関する調査、講座、プランニング、キャスティングまで一気通貫で行っている。

Z世代とは、1996〜2010年生まれの世代(現11歳〜25歳)のこと。ソーシャルメディアやスマホ時代に育ってきたソーシャルネイティブの世代だ。このZ世代には、「社会人1~3年目と大学生」「高校生」「中学生」と3つの階層が入り混じっているが、Z総研では、アルファ世代とも呼ばれる中学生は対象に含めていない。

Z世代の1つ前のミレニアル世代(Y世代)は1981〜1995年生まれ(現26歳〜40歳)で、インターネットやケータイ時代に育ったデジタルネイティブの世代になる。

ミレニアル世代が生まれた時は好景気でネットバブルを経験しています。『頑張れば成功できるかもしれない』を信じられた世代です。一方、Z世代はリーマンショック、3.11、コロナ禍など目まぐるしく変わっていく社会環境の中で、未来に対する不確実性・不透明性を常に感じ続けています(丸山氏)

そんなZ世代は「達成して得られる利益(Benefit)よりも、今の自分が心地よいと思う状態(Comfort)を重視する」と丸山氏は説明。続いて、Z世代の価値観や消費行動について解説していった。

「つながり」を欲するZ世代

Z世代の「スマホ利用時間」は30代の約2倍、特にSNSの利用時間が突出している。 

Z世代のスマホ利用時間は30代の約2倍。
<引用の表:◎2019 Toru Saito、出典元「情報通信白書2016」>

そして、Z世代の中でも高校生と大学生を比較すると、高校生は「常に誰かとつながっていたい」「SNSで注目されたい」という欲求が強い。

位置情報共有サービスアプリ『zenly』が高校生に人気のように、親友には位置情報さえも常に共有したい、強いつながりを持ちたいという欲求があります。インタビューをしてみると、無料のLINE電話をしながらそのまま寝てしまうまでつながれるからこそ、孤独が怖い、一人が寂しいという声もあります。誰かとつながることで承認欲求を満たすような傾向があり、つながりを欲する世代だといえるでしょう(丸山氏)

「SNS」の自分を創るZ世代

「WebやSMSの活用」について、日本人全体とZ世代を比較してみると、Z世代はSNSの利用が中心で、身近な人だけでなく有名人もフォローしている。そして、SNSでつながった人だとリアルに会うことに抵抗が少ない傾向がある。リアルとSNSが連動していて、状況によって行き来しているわけだ。

WebやSNSの活用からみえてくる、SNS中心の生活をしているZ世代。
<参照データは、オリコン・モニターリサーチ調べ>

また、Z世代は、SNSのために特定の日「THE DAY」を決めてそこにすべてを注ぐ。たとえば、体育祭、学園祭、学校帰りなど日を決めて、撮りたい写真を撮るために力を注ぐのだ。

かつてのスクールカーストは、リア充かどうかで形成されましたが、今はSNSの『フォロワー』や『いいね』の数でカーストが決まります。Z世代にとってSNSは自己表現のための武器であり、SNS映えするために『行くお店』や『行動』を決めて準備します。SNS上の自分を創るための意思決定をする、そういう世代です(丸山氏)

「音楽に対する考え」をZ世代と他世代で比較してみると、Z世代はアーティストへの「好き」を中心に盛り上がっている。同じアーティストが好きな人とは積極的につながっており、「好き」を中心に生きて、「応援」をすることで幸福感を抱いているのだ。

音楽に対する考えからみえてくる、「好き」でつながるZ世代。
<参照データは、オリコン・モニターリサーチ調べ>

「影響を受ける人は誰か」という調査では、Z世代はインフルエンサーやタレントを上げる人が他世代に比べて多いことがわかった。インフルエンサーとSNSを通じて接することで、彼らを身近に感じていることがうかがえる。

インフルエンサーの中でも、大人の顔色をうかがうことなく、自分の意見をいうオピニオンリーダーに支持が集まっています。オピニオンリーダーの発言によって、ミスコンなどのイベントがなくなるといった経験をしていて、意見で世界が変えられる可能性があると感じています(丸山氏)

「どこに時間やお金を使っているのか」については、Z世代は他世代と比べて「推し活」を中心に使っている。90%以上に「推し」がいて、そして70%以上が「推し」に影響されて何かを新しく始めている。たとえば、「推しが韓国人なので韓国語を勉強し始めた」「推しの趣味がキャンプだからキャンプにハマった」「推しの着ているブランドのサイトをよくみる」などだ。

推しが大事で、ファン活動の中で影響を受けて意思決定をしているZ世代の特徴が浮かび上がります。推しは現実のインフルエンサーに限らずアニメのキャラクターのこともあり、推しによって進学先など自分の人生の進路を決めている人もいます(丸山氏)

推しの影響を受けてモノを買う「推しゴト消費」も活発だ。推しが身に付けている服、コスメ、持ち物などを特定し、同じものを持ちたくて消費をしているのだ。

Z世代の「職場選び」では、「好きなことができる環境かどうか」によって決めている人がY世代よりも多くなっている。たとえば、「趣味も仕事も両立したい」「仕事が終われば好きなことをしたい」と考えて職場を選択する。「好き」に影響されて人生を決めているわけだ。

「好き」が原動力なZ世代

また、興味深いことに、Z世代は他世代よりもCDを購入する傾向がある。サブスクリプションやYouTubeなど無料で音楽を享受できるにも関わらず、CDを購入しているのだ。

デジタルネイティブだから一周回ってアナログに価値を感じているのかもしれません。カセットテープや使い捨てカメラなど、アナログがかっこいいと思う傾向に近く、『推し』のためならCD、DVD、グッズを買う傾向があります。身近なSNS発のアーティストが『推し』になり、スモールトライブ化する中でファンのつながりは強固になって、『推しゴト消費』が加速している印象です(丸山氏)

次に、「Y世代とZ世代の表と裏」についてだが、Y世代はリアルが表でSNSが裏という価値観だったが、Z世代はSNSに表と裏が存在する。「SNSが主戦場」だからこそ、そこに表と裏があるのだ。

「アカウントを複数持つ」のが当たり前になっていることも、Z世代の特徴だ。たとえば、InstagramのアカウントではZ世代の88.5%が複数のアカウントを持つ。平均2−3個だが、なかには10個持つ人もいる。そして、複数アカウントには表と裏があるのだ。

Instagramでは、インスタ映えする投稿を行う表アカウントとは別に、『フィンスタグラム(Fake Instagram)』という裏アカウントがあります。信頼した人だけに向けた本音アカウントです。SNSでは、表と裏をアカウントごとに使い分けているのです(丸山氏)

Z世代には、「推し活ごとにアカウントを用意する」傾向もある。アカウントごとに自分を演じ分けるので、「好き」の数だけ人格が存在する。そのため、推しが好きではなくなったり、トライブの人間関係でトラブルがあったりすると、アカウントを消すことになる。つまり、アカウントを消去してSNSでの人格を消滅させる「ソーシャルクレンジング」を行うわけだ。

「メディアの利用傾向」では、LINE、Twitter、YouTubeの利用率が高く、TikTokは10代の女性の利用率が高い傾向がある。推し活ではTwitterとの相性がよく8割が使っている。憧れメディアであるInstagramは、ファッション、メイクなどの購入の動機になることもある。

LINE、Twitterの利用率が高く、10代女性ではTikTokの利用も上昇中
<データはTesTeeより>

「月間の消費行動」を男女別で見てみると、女性のZ世代は他の世代よりWebでファッションを購入する金額が高く、男性のZ世代は理美容(エステ、ネイル、散髪など)にかける費用が他の世代より高い。ジェンダーレスな価値観を持ち、男性も美意識が高いことがわかる。

Z世代向けのマーケティング戦略

Z世代の価値観を整理すると、次の3つのことがいえる。

  • 「つながり」を欲するZ世代:つながることが当たり前だからこそ、つながっていない自分が怖い。誰かとつながっていること自体が承認欲求にもなりうる。

  • 「SNS」の自分を創るZ世代:SNS上での自分を創るために意思決定をする。そんな「自分」を持っている人こそがかっこいいという価値観を持つ。

  • 「好き」が原動力なZ世代:誰かと「好き」でつながりたい。「好き」が私たちを幸せにしてくれるから。

上記のようなZ世代の傾向をマーケティングに活かす際におさえておきたいコトは主に次の3つだ。

  • ヤラセや嘘は見抜くソーシャルネイティブ
  • 広告にアレルギーがある
  • SNS投稿のネタ探しをしているコンテンツジャンキー

ソーシャルネイティブのZ世代は少しでも嘘や演出を感じると冷めてしまう。ヤラセは絶対NGだ。インフルエンサーが本当に好きで使って紹介しているのか、単なるPR投稿なのかを見極めている。

そしてZ世代は「広告にアレルギーがある」一方で、「コンテンツジャンキー」である。自分で投稿ネタを探し、スマホの中にあるコンテンツにまつわる話が共通言語になっているため、新しいコンテンツを常に求めている。

広告にアレルギーがあり、マスマーケティングは効きにくくなっていますが、コンテンツが好きなZ世代には、マスマーケティングとコンテンツの合わせ技が有効です。コンテンツを作って、その中に商品やサービスをプレイスメントするのです(丸山氏)

コンテンツ好きなZ世代には自走するコンテンツマーケティングがよい

これらを踏まえて、Z世代を動かすには次のようなものがある。

  • 推しゴト消費を刺激するティーンを動かすコンテンツ
  • ドラマで商品のシーンやモチベーションを訴求
  • CMV(Commercial Music Video)コンテンツタイアップを資産に

最後に丸山氏は、あらためて「Z世代向けのコンテンツマーケティングで、嘘やヤラセは絶対にやってはだめ。SNS投稿のネタ探しをしているZ世代には、SNSドラマ、CMVなどで自走するコンテンツを作り、推しゴト消費を喚起するとよい」と強調。そして、「Z総研では、半期に一度トレンドランキングとトレンド予測をしているので、Z世代に何が流行っているか参考にしてほしい」と締めくくった。

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