現役マーケター3人が赤裸々告白! マーケターとして生き続けるための「仕事観・スキル・転職」
変化の激しい時代を生き抜くにはどうすべきか。マーケターはなぜ転職している人が多いのか。仕事やキャリアに漠然とした不安を抱えている人に向けて、世代の異なるマーケター3名が「Web担当者Forumミーティング 2022 春」に登壇し、「仕事への向き合い方」「スキルの伸ばし方」「転職の分岐点」などをテーマに、マーケターとして生き続けるヒントを座談会形式で語り合った。
テーマ① 新米マーケターはどんな風に仕事に向き合えばいいの?
前田氏がモデレーター兼パネラーとして、明坂氏と松本氏の2人に質問をする形でパネルディスカッションが行われた。
「新米マーケターはどんな風に仕事に向き合えばいいの?」というテーマについて、明坂氏は、「世の中の全てのことに興味を持つこと。そして、自分が理解できないものを否定しないこと」と回答。
明坂氏曰く、自分も含めてマーケターの方は好奇心が旺盛な人が多いとのこと。
世の中の起こっていることで、本当に興味を持てるのは多分2〜3割くらい。ただし、自分の考えとまったく交わらない商品や、マーケティング戦略にも独自のアイデアがあるし、知ることで新たな発想が生まれることがある。だから、興味の無い8割も基本的には見ているし、無関心であったとしてもまずは体験し、否定しない(明坂氏)
松本氏は、「自社のお客様だけにかかわらず、身の回りの人や事象を観察し、自分なりの仮説を立て客観的に考察し続けること」と回答。さらに、自身の新米時代を振り返り次のように補足した。
初めてマーケの仕事に携わったときに、広告素材を見ながら先輩に『どう思う?』と聞かれて『いいと思います』と答えた。その時に周囲の反応を見て、どう感じたのかの具体的な意見を言わなければいけないと気づいた。常に『あなたはどう考える/どうする』と問い続けられる。仕事の中だけでなく、自分の言葉で説明できるようにしなければと意識している(松本氏)
松本氏は、ビジネス分野だけにかかわらず、音楽や美術やスポーツなどどういう点が琴線に振れるのかを考えながら意図的に見るように心がけているとのこと。
さらに明坂氏は「興味がないものに興味を持つのも大事だが、興味があるものをとことん追求するという方向もある。テレビ東京のクリエイターには、そういう方がたくさんいる」と言う。
その分野のすべてを知っているというくらいの知識があって、おもしろいものは『おもしろかった』だけでなく、『これはこういう理由でおもしろかった』と全部説明できるくらいまで理解している。その積み重ねが、アイデアやさまざまな発想に結びつく(明坂氏)
最後に前田氏は、マーケターの心構えとして井上大輔氏(株式会社ソフトバンク メディア統括部長)の言葉を紹介した。
『マーケターのように生きる』とは、『人の期待に応えることを追求する生き方』のこと。『これは社会に受け入れられるだろうか』『お客様からみて購入しやすいのか』など、ユーザーの気持ちで考える癖が大切(前田氏)
テーマ② マーケティングのスキルの伸ばし方
次に、「どうやってマーケティングのスキルを伸ばしてきた?」というテーマについて、明坂氏は、「守破離の繰り返し。良き師に師事をうけることがなんだかんだ一番大事」と回答。
守破離は、「守」で型を学び、型を身につけたらその型を「破」って他の流儀も取り入れ、最終的に自分なりの流儀を確立するのが「離」だ。明坂氏のマーケティングの守破離は、最初は教わったセオリーを守って、その中で自分なりのロジックに昇華していくこと。この考えにいたるきっかけになった経験を語った。
ベンチャーからリクルートに転職したとき、30歳手前で、ベテランではないけれど新米でもない、自信もそこそこあった頃であったが、規模や勝手が違うので、最初は成果が出なかった。自分なりの試行錯誤や、いろいろな人にアドバイスを聞いても解決できなかった。しかしある日、自分なりのロジックを持っている先輩と組んでその人の仕事ぶりから教わり、頭の中がかなり整理され、急速に成果が出るようになった。がむしゃらにやって自分なりのロジックを得るのも大事だろうが、自分なりにロジックまで昇華している人に教えを請うのが、効率がよかった(明坂氏)
松本氏は、「理論と実践の往復。インプット(社内外の研修・講座・本、実務家の人と直接話す)とアウトプット(仕事の中でトライ&エラー)を繰り返すこと」と回答。
松本氏は、学生時代から「理論と実践の往復」を掲げてきたという。
大学でマーケティング専攻だったが、ゼミの教授が『インプットとアウトプットの繰り返しが大切』と言っていた。仕事をしていると実践の比率が高くなってしまうので、意図的に理論や抽象化に力を入れている。仕事でアウトプットし続けて、そろそろ切れてきたなと思うと、武器を補充する感じでインプット。武器の使い方を学んで、仕事で生かして、と意識しながらやっている(松本氏)
明坂氏も「実務とアカデミックのバランスは、マーケターにとってすごく重要」と言う。
20代の頃は実務ベースだったけれど、30歳で大学院に入ってMBAを取って、アカデミックがないとたどり着かない考えもたくさんあると学んだ。ただ、MBAを取ったからマーケティングができるかというと、決してそうではなく、実務とセットでないといけない(明坂氏)
また前田氏はスキルの伸ばし方について「戦略的に学んだというよりは、たまたま就いた仕事がおもしろくて、開眼した」と回答。
大学では社会学を学んでいたので、もともと人間観察が好きだった。RFM分析とかで行動と購買の結びつきがビビッドに見えて、それに基づいた施策を考えることがおもしろくなってしまった(前田氏)
テーマ③ マーケターの転職が多い3つの理由
次のテーマは松本氏から、前田氏と明坂氏に投げかけられた質問で「マーケターは転職が多い気がするが、職種と転職の多さの関係があるのか?」というもの。
前田氏は、「意図して転職したわけではない」と前置きしつつ、「マーケティングを追求していたら、何度か転職をしていた」と自分の経験を振り返った。
時代とともにテクノロジーが変わっていくので、それがうまく活用できる所へ…と考えていたら、結果的に転職していた。ただある程度、経験を経たタイミングで『顧客起点経営を極めたい』と感じ、それ以降の転職は、吸収すべきことを身につけられる場所を求めていった(前田氏)
明坂氏は、松本氏の「転職が多いと感じる」という点に関して同意したうえで、転職が多い理由を次のように考察した。
- 社内のキャリアパスがないこと
- めちゃくちゃ売り手市場なこと
- 良くも悪くも落ち着きがないこと
マーケターのキャリアパスとして、企業のCMO(Chief Marketing Officer)まで用意されているケースが少なく、“キャリア迷子”になってしまう人がある程度いると指摘。また、マーケターの転職市場が売り手市場であるため、「気軽に転職できてしまう」環境要因も転職理由の多さの原因として挙げた。
自分も20代の頃を振り返ると、たくさんバジェット(予算)を使った新しい広告を打つのが楽しく、howをすごく追い求めていた。30代になった今は、howよりもwill、社会にもっとおもしろいコンテンツを届けたいという意思のようなものが強まってきた。感情のステージが変わった感じ(明坂氏)
松本氏に「内向きから外向きに変わったタイミング」を問われた明坂氏は、「10年くらいやっていると、内向きがある程度充足して、自分でも自信がついてくる。そこから先は外に向けようと思うのが、人間の感情の摂理なのでは」と答えた。
他社のマーケターとつながるには?
この話題の最中に視聴者から「他社のマーケターとのつながりはどうやって作っていますか」という質問が来たので、これについてもアドバイスをした。
マーケティングに関する勉強会やコミュニティがたくさんあるので、そういう場所を探して参加するのが一番早い。そこで、つながりを持てると、あとはどんどん広がっていく(明坂氏)
ただし、これは東京だからこそという面もあるようで、松本氏が大阪にいた時には、つながりを持ちにくかったそうだ。東京出張のタイミングで、コミュニティに参加するなどしていたという。その点、コロナ堝になってからはリモート開催が増え、地方組も参加できる機会は増えているという。
テーマ④ 変化の激しい時代、マーケターとして生き残るには
「変化の激しい時代でも生き残れるマーケターとは?」というテーマについて、3人はそれぞれ以下のような回答をした。
- 明坂氏:5年後を見据えたスキルへ投資
- 松本氏:新しく芽生えた世の中の潮流に、苦手意識を持たず飛び込み続けられること
- 前田氏:信条は「アップデートし続けるおっさん…」
マーケターこそ、次に何が起こるのか予測できているはず。スキルに関しても一緒で、次に何が求められるのか想像しながら、自分のスキルや時間を投資していくのがいい(明坂氏)
周りの方を見ても、好奇心を持って、苦手だなと思うことにも飛び込んで行っているなと思う。今はまだ、自分の好きなことが世の中の潮流と合ってると思うが、時代が変化しても、常に自分が世の中の潮流に混じれるようにしていきたい(松本氏)
メタバースやNFT、大人だろうが若者だろうが、最初は誰もわからなかった。ひとまずキャッチアップしていこう。変化を捉えるのがマーケターだし、追いつき追い越せでビジネスを考えていくのがマーケター(前田氏)
講演の最後にマーケターとして「追いかけていること」について、3人が以下のように一言ずつまとめて、セッションは終了した。
- 松本氏:新しい市場を作りたい
- 明坂氏:テレビやエンタメを、さらに人を幸せにできるように変える
- 前田氏:顧客起点で物事を考えて実行していく
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