移行まで1年をきった「Google アナリティクス 4」 GAとの違いや最新アップデート情報を徹底ガイド
多くのWebサイトで日々利用されている「Google アナリティクス(GA)」が大幅にバージョンアップされ、「Googleアナリティクス4(GA4)」となったのは2020年10月のことだが、来たる2023年7月1日に旧バージョンが計測停止になることがアナウンスされた。
GA4への移行が必要となった今、HAPPY ANALYTICS 代表取締役の小川卓氏が、「Web担当者Forumミーティング 2022春」に登壇し、あらためてGA4とはどのようなツールなのか、何ができて何ができないのか、そして最新のアップデート情報などを解説した。
Google アナリティクス 4、現在の導入状況は?
「2023年7月1日(有償版は2023年10月1日)にサポートが終了する」と発表されたGoogleアナリティクス(以下、GA)。計測停止後も、過去データの閲覧は半年間可能とされているが、その先に関しては発表されていないが、いずれデータの閲覧すらできなくなる可能性が高い。そのため、GA4の本格的な導入が迫られている。
はじめに、小川氏はGA4の導入状況について説明を行った。SEM Technologyが2022年4月末に行った調査によると、上場企業の導入率は19%※。同年3月に行われた調査の15%から、4%増とかなり目立った伸びを見せている。これは前述の通り3月にGAの停止がアナウンスされたためだ。
続けて小川氏はセミナー受講者を対象に、GA4の導入を問うアンケートを実施した。
- 「導入済みで使っている」が11%
- 「導入したが使っていない」が53%
- 「未導入」が36%
「GAの企業への導入率は約75%〜80%。今後もGA4の導入と利活用が進み、この1年でそれに近い数字になっていくだろう」と小川氏は分析する。
まずはGA4の計測思想を理解しよう
ここからは、GA4がどういうツールなのか具体的な内容が紹介された。まず紹介されたのは、GA4の計測思想についてだ。
GA4の計測思想を理解するために、GAと比較しながら振り返った。GAでは「Webサイトはページで構成されており、サイトを訪問してページを見ていく」というのが基本的な考え方だ。
たとえば「トップページから訪問し、下の階層にあるページをいくつか訪問して離脱」といったように「ページ」と「訪問」で分析が行われる。この発想から、「セッション」、「直帰率」、「離脱率」、「セッションの平均滞在時間」、「平均閲覧ページ数」などの指標が生まれたわけだ。
言い方を変えると、「Webサイト側やツール側の事情をもとに計測が行われていた」ということになる。「GAの提供が開始された当時は、このやり方で特に問題はなかった」と小川氏は振り返る。だが年月が経つにつれ、ユーザーの行動は複雑化し、「訪問」と「離脱」という単純な枠に収まらなくなっていった。
アクセス解析は「ページ」「訪問」から「アクション」「ユーザー」ベースに変化
現在の状況を小川氏は、「ユーザーはWebサイト内でさまざまなアクションを行い、その行動を通じてサイトを理解し目的達成に向かう」と整理する。
図で見るとわかるように、同じ1訪問でも、ユーザーによって全くサイト内での動きは異なる。そのため、GA4のアクセス解析ではユーザーの行動の実態をより正確に捉えようとしており、それが考え方の基本になっている(小川氏)
このためGA4では、これまでの「ページ」と「訪問」をベースにした分析ではなく、「アクション」と「ユーザー」を基本的な計測単位としている。ユーザー行動の種類や量(アクション)を計測することにより、サイト内での行動や態度変容が理解しやすくなり、よりユーザーを軸にした分析ツールに進化したのだ。
具体的には、データ計測方式がすべて「イベント」に統一され、その結果大きく3つの変化が起こった。
- 計測や実装方式
- 取得できるデータ
- レポート画面
小川氏はこの3つの変化について解説を進めていった。
イベント統一による変化①計測や実装方式
これまでのGAには「ページビュー」だけではなく、ファイルダウンロードなどの「イベント」、「Eコマース」、「カスタムディメンション」といったいろいろな計測方法がありそれぞれ実装方式が異なっていた。
もともとは「ページビュー」だけだったのだが、Webサイトの技術が発達するにつれEC、動画、アプリなど新しいデータを取るための計測方法が増えていったのだ。「要するに、増築に増築を重ねて住みにくくなってきた」と小川氏は住宅に例えて説明する。
「そこで今回新しく建てられたのがGA4。この機会にすべての計測方法をイベントに統一した」と小川氏は経緯を話す。
GA4ではファイルのダウンロード(file_download)、初回訪問(first_visit)、ページビュー(page_view)、スクロール(scroll)、セッションの開始(session_start)、動画の再生(video_start)といったように、すべてのデータがイベントで計測される。
そして、それぞれのイベントに対し複数のパラメータが付与されるのが、計測の基本法則となる。たとえば「page_view」というイベントは、それに紐付く情報としてページのURL(page_location)、タイトル(page_title)、言語(language)、解像度(screen_resolution)といった形だ。
GAのときはそれぞれ方法がバラバラだったが、GA4はすべてこの法則で統一されていて使いやすくなった(小川氏)
また計測記述に関しては、GAと同様に「タグを直接ページに追加する」または「Google Tag Manager(以下、GTM)で設定する」2つの方式が用意されているが、取れるデータや設定の仕方が若干変更されている。
イベント統一による変化①GA4でのデータ計測で気を付けたい3つのポイント
小川氏は続けて、GA4で計測を始めるにあたって注意すべきポイントを3つあげた。
①既存のGAと併用可能
現在使用しているGAを使い続けながら、同じサイトでGA4を使うことは可能。「現状数字が少しずれることがあるので、平行計測をしつつ数字のズレを確認するやり方がいい」と小川氏。ただし旧バージョンのGAが計測停止となることを忘れてはいけない。
②画面上での設定+計測記述の追加が必須
現在の計測記述(特にGTMを使っている場合)ではGA4の数値を見ることはできない。ただし最新の方式である「グローバルサイトタグ(gtag.js)」を直接ページに埋め込んでいる場合は画面上の設定だけで済む。
③新たにGAのプロパティ(計測の箱)を作る際はデフォルトでGA4のみが作成される
ただしオプションで「両方同時に作成」するか、「GAのみを作成」するかを選ぶこともできる。
イベント統一による変化①GA4で主に取得可能な3種類のイベント
GA4で取得できるイベントは、「自動取得イベント」「GA管理画面で取得できるイベント」「カスタムイベント」の大きく3種類に分類することができる。
自動取得イベント
ページに計測記述を入れれば自動的に取得できるイベント。初回訪問(first_visit)、ページビュー(page_view)、セッション開始(session_start)、エンゲージ(user_engagement)など多数用意されている。各イベントでは、さまざまに紐付いたパラメータ(URL、参照元、タイトルなど)も自動取得される。
GA管理画面でONにするとあらわれるイベント
GA4で新たに増えた拡張機能※。GAの管理画面で設定することによって取得できる(デフォルトはすべてオン)。スクロール(scroll)、クリック(click)、サイト内検索キーワード(view_search_results)、YouTube動画の再生・停止(video_start、video_progress、video_complete)、ファイルのダウンロード(file_download)など、これまではタグマネージャーや独自実装など工夫しないと取得できなかったデータだ。
これらは従来のような単純にページを閲覧したというだけでなく、そこから下にスクロールしたり、ファイルをダウンロードしたり、ページ内でユーザーがどういう動きをしているかをきちんと計測するための機能追加。これまでも不可能ではなかったが、これをデフォルトで取得できるようになったのは大きな進化と考えている(小川氏)
カスタムイベント
自分で自由にイベント名、パラメータを設定できるイベント。特定のリンクを取得したい、ページ内アンカーやハンバーガーメニューのクリックを計測したい、デフォルトでは90%を超えないとフラグが立たないスクロール(scroll)イベントの値を変更したいといった場合に、自由に設定して計測できる。ただし、このカスタムイベントを使用する際には、ページへの追加記述(サイト側の現状の実装次第では不要)+GTM設定+GA4設定が必要になる。
イベント統一による変化②取得できるデータの変更
GA4では計測の思想が変わったため、取得できるデータに関してもいくつか変更が加えられた。大きな変更は、やはり「ユーザー単位」「イベント単位」をもとにした計測項目が増えたことだ。それに伴って、既存の計測項目に関しても計測のルールが変わっている。たとえば「セッション」と書いてあっても、GAとGA4ではその定義が異なることが起きているのだ。
GAとGA4で変わる定義①ユーザー
変わる定義の1つに「ユーザー」も挙げられる。これまでのGAでは、基本的にCookieを使ってサイトに訪れた人をユーザーとしてデータを取得していた。それが、GA4で取得されるユーザーは、「アクティブユーザー(1秒以上前面にページが表示されていたユーザー数)」に変更されている。
ここで言う前面とは、対象となるページがそのユーザーの画面上に映っている状態のことを指す。ブラウザの別タブで開いている(前面に出ていない)場合には、カウントされない。
GAとGA4で変わる定義②セッション
セッションとは、サイトを訪問してから離脱するまでの一連の流れ、時間を意味するが、これについての定義も変更され、細かい部分で仕様が変わっている。
たとえば「流入元が変わった時の挙動」。これまでのGAでは、検索エンジンから流入し、少し離れてから今度は広告バナーから流入してきた場合、新しいセッションとしてカウントされたが、GA4では30分以内(時間は管理画面で指定可能)ならセッションが切れない仕様になった。
また「日をまたいだ場合のセッションの挙動」も変わった。GAではセッションが切れて別セッションとしてカウントされるが、GA4では引き続き同一セッションとみなされる。
このように、「GA4はGAと比べてセッションをより『つなぐ』傾向に変わったため、セッション数が若干減る傾向にある」と小川氏は説明する
GAとGA4で変わる定義③コンバージョン
コンバージョンのカウント方法も変更された。GAでは目標に関して1回の訪問で複数回目標を達成しても「1」としかカウントされない。これは1回の訪問に対するコンバージョンの有無を計測する考え方であり、コンバージョン率も「コンバージョン達成セッション数÷訪問数」つまりセッションをもとにした考え方だからだ。
一方GA4は、基本的にセッションの考え方を極力減らしている。そのため、設定した目標に対して1回の訪問で複数回目標を達成した場合は、その回数分だけカウントされ、コンバージョン数も増える傾向になった。
「『資料請求の入力フォーム画面』をコンバージョンに設定していたクライアントの例では、GA4の方が1.4倍コンバージョン数が多くなっていた。これはフォーム画面を一旦離れ、もう一度戻ってきた場合や送信エラーがあった場合、二重にカウントされるためと思われる」と実例を挙げる小川氏。コンバージョンの種類によってその差が変わることもあるのではないかと言及した。
GAとGA4で変わる定義④「直帰率の仕様変更」と「エンゲージメントの誕生」
さらに「直帰率」に関しても定義が変わった。今までの1ページだけ見て離脱した割合は「ユーザーの行動実態をあらわしていない指標と判断されたのでは」と小川氏は指摘する。
確かにわかりやすくて便利な数字。ただし入って2秒で帰った人と、20分滞在し、動画を見て資料をダウンロードした人、その違いは明らかなのに、1ページだけしか見ていなければどちらも直帰という扱いになってしまう(小川氏)
そこでGA4では「エンゲージ」、「エンゲージメント率」という考え方が誕生した。「エンゲージメント」は、セッション(訪問)ごとにエンゲージしたかどうかをカウントする指標で、以下のいずれかを満たした場合にカウントされる。
- 10秒以上(管理画面で変更可能)の滞在
- 2ページ以上の閲覧
- コンバージョンイベントの発生
GA4では「エンゲージメント率」が高いほど、質の良い流入元という概念に変わった。このように、「思想が変わったことによって指標も変わってきた」と小川氏は語る。
ちなみに「直帰率」に関しては7月中旬に指標として復活したが、こちらは「1-エンゲージメント率」つまり「非エンゲージメント率」という定義になり、今までの直帰率とは言葉は一緒だが、意味が違うので直接の比較はできない。
イベント統一による変化③レポート画面の変更
GA4ではレポート画面にも変更が加えられた。
とはいえ、基本のレイアウトは変わっていない。主な変更点としては、集計用のレポート画面と「探索」と呼ばれる分析用のレポート画面に分かれたことが大きい。
健康診断でたとえると、集計用のレポートが体重、身長、血圧といった基本的な指標を定期的にチェックし全体を把握するものであるのに対し、分析用レポートは、“なぜそういう変化を起こしているのか”といった理由を深掘りするためのレポートと解釈できる(小川氏)
つまり、集計用のレポートは「全体把握」、探索機能で「深掘り」と覚えておくといいだろう。
新しく追加された「探索機能」で何ができるようになるのか
GA4で新しく追加された探索機能は、分析をするためのレポート群になっている。
自分で項目を選んでオリジナルレポートを作成できるのがポイントだが、一方で自分で選ばないと何も出てこない。
今まで見てきたGAのレポートは、グーグルが項目を選んで用意してくれた内容になっていたが、探索に関しては自分で項目を選ぶ形に変わった(小川氏)
その他の特徴として、探索機能には、データを絞り込んで抽出できるセグメント機能が用意されている。この機能は探索でしか利用できない。また、探索機能を使った分析は前日のデータまでしか利用できず、当日データは見られないという制限がある。
さらに、これはGAでも時々見られた現象だが、データ期間とデータ量によってはサンプリングが発生する。サイトの規模が大きい場合など集計時間がかかりすぎるものは、データ量を減らし、後で掛け算して割り戻す手法が用いられる。
BigQueryが利用可能に
GA4で新たに提供されるようなったBigQueryは、レポートを作成する際に使用する生データ(RAWデータ)を取得できる機能だ。このデータはクラウド上のデータウェアハウスに毎月10GBまで無償で保存することができる。かなり大規模なサイトでなければ無償の範囲で利用できるだろう。
保存されたデータに対してSQLで書かれたクエリを投げることで、自由に必要なデータだけを取得することができる。そのデータをBI(ビジネスインテリジェンス)ツールと連携して分析したり、オフラインで保存しているデータと紐付けたりするなど、拡張性が広がったといえる。これまでは有料版のGAでしか使えなかったがGA4では無料版でも連携が可能になった。
知っておきたい最新のGA4アップデート内容
さらに、小川氏はここ数ヶ月で実施された主な変更点を紹介した。
ランディングページという項目が追加
ただしコンバージョン率という指標がないので早期実装を期待。
直帰率が復活する可能性が浮上
すでにAPIに項目として出てきている。ただしその説明を見ると「直帰率=1ーエンゲージメント率」と書いてあるため、今まで使ってきた直帰率とは意味が違う。「なのでもし復活したら混乱が生じる可能性がある」と小川氏は懸念を見せた。
集客と成果の紐付けがデフォルトで「データドリブン」に
GAではあるユーザーが3回来訪し、その結果成果にたどり着いた場合、成果としては最後のクリック(ラストクリック)に紐付いているというのが基本的な考え方だった。それに対しGA4はデフォルトで「データドリブン」に設定され、グーグルが適切な加減を探って紐づけする機能に変更された。
これにより、コンバージョンが『2.87』といった小数点以下の数字になる場合がある。それがどうしても嫌ならラストクリックに戻せるが、GA4ではデータドリブンを推奨している。ユーザーという観点での利活用を推進しているのがその理由だ(小川氏)
結局のところ、GA4で何が変わったのか?
最後に、小川氏はGA4でなにが変わったのかについてのまとめに入る。
- イベント単位での計測に統一された
イベントはイベント名とパラメータの組み合わせで構成される - 集計用(レポート)分析用(探索)ローデータ利用(BigQuery)の3つのアウトプット形式が登場
- 旧GAは計測停止がアナウンスされたので今のうちに導入を行い、平行計測をして慣れていく
従来のGAは来年7月1日の計測停止が決まっているため、現在GAを使用している場合は社内レポートの運用を変えていく必要がある。「GAの代替としてはGA4が本命であるため、今回を大掃除のタイミングと思って導入を検討していくべきだろう」と小川氏は述べる。
さらにGAとGA4について小川氏は、「少し例えが雑になるが、GAの計測停止というのは、今までiPhoneを使っていたのが来年からAndroidしか使えなくなるようなもの。スマートフォンというジャンル内でやれることは同じだが、操作の仕方や見えるもの、使えるものが変わると理解して対応を考えてみてほしい」とまとめた。
よりGA4について詳しく学びたい人に対しては、小川氏が所属する株式会社HAPPY ANALYTICSでは約300Pの資料を無料公開(https://go.happyanalytics.co.jp/ga4)している。GA4の情報サイト「ga4.guide」も公開されているので、興味がある人は目を通してみるといいだろう。
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