Googleアナリティクス4はいつ導入すべき? 旧GAとの違い・利用メリットを小川卓氏が徹底解説
デジタルマーケティングには不可欠な存在となった「Googleアナリティクス(GA)」。2020年10月にGoogleアナリティクス4(GA4)として大幅なバージョンアップがなされたものの、今もまだGAを使っているという人が多いようだ。
はたしてGA4はどのように進化したのか、使うべきポイントはどこか、切り替え時はいつか。HAPPY ANALYTICS 代表取締役の小川卓氏が、「Web担当者Forumミーティング 2021 秋」に登壇し、GAとの違いや今後の対応などを解説した。
2022年はGA4元年に。今からGA4の導入を!
GA4は、2020年10月に正式リリースされた第4世代のGAだ。GAが登場して以来15年間で最大の更新といわれており、計測方法や分析できる内容などが大きく変わっている。小川氏はGA4への対応ポイントを次のように語り、「2022年がGA4元年になる」と話す。
- GAとGA4は、仕組みも、計測方式も、さらにはレポートも違うので、別の解析ツールと思った方がよい。
- 将来的にはGAは停止される可能性が高いので、並行して計測できる今のうちに導入しておくことが大事。
- 1〜2年は昨年対比などを見たくなる可能性が高いので、GA4のCV設定はしておきつつ、メインの利用はGAで大丈夫。ただし、1〜2年で切り替わってくるので、その間にGA4に慣れておく。
では、日本の上場企業における現在の導入状況はどうなのか。2021年10月現在、GAが約80%であるのに対し、GA4はわずか約10%に過ぎないという。とはいえ、「毎月1%ずつ増えているので、2022年末には少し加速して30~40%になっている可能性があり、そのときにはGA4を使いこなせるようになっておくことが必須。今から計測を開始することをおすすめする」と小川氏は語った。
GA4のリリース理由
そもそもGA4が開発されたのは、「GAがすでにユーザーの利用状況に合わなくなってきたから」だ。GAはWebサイトメインの分析ツールであるために、アプリや動画、SNSなどと連携させた分析が難しい。そこでGA4では、そうした多彩なメディアを横断し、適切なデータを取得する仕組みへと進化させてきたというわけだ。
「AIや機械学習などを活用して分析の機能強化や自動化を進め、サイト改善や広告配信の最適化をより実現するため」という目的もある。さらにもう1つ、「これまでは有償版にしか設けられていなかったログデータの取得を可能にし、より高度な分析を実現できるようにするため」だ。
そのうえで、GA4で大きく変わったのが、次の3点だという。
- 計測方式
- 取得できるデータ
- レポート画面
変更点① 計測方式
まずは、「計測記述」に関して小川氏は次のように解説した。
GAで計測するにはタグを入れる必要があり、①タグ追加方式と、②Google Tag Managerの2つの方法がある。GA4でも方法は変わらないものの、記述する内容が変わる。GAを導入しているサイトでGA4での計測を開始するなら、新たなタグを追加する必要がある(小川氏)
続いて、小川氏は注意ポイントを示し、以下のように計測方式の変更内容を解説していった。
- 既存のGAと併用して実装できるので、当分の間は並行計測を推奨する。
- 新たに“計測の箱”であるプロパティをつくると、デフォルトではGA4のみが作成される。オプションで「GA、GA4の両方同時に作成する」「GAのみを作成する」も用意されているので、両方を見たい人はGAの作成も忘れないようにする。
取得するデータの方式の変更
今までは「ページを開いて表示されること」が計測の基本単位で、そこにURLやデバイス情報などのさまざまな情報が入り、計測されていた。つまり、「セッション」「直帰率」「離脱率」「ページ滞在時間」「平均セッション時間」「平均閲覧ページ数」「ランディングページ」などはすべて、ページビューありきの指標だったことになる。
また、GAには、スクロールや動画再生、ファイルダウンロードなどのデータ取得も可能にするといった、数多くの機能が追加されてきているが、それぞれ取得方法が違い、システムとしてつぎはぎの状態だった。それを一新したのがGA4というわけだ。具体的には、ファイルのダウンロード(file_download)、初回訪問(First_visit)、ページビュー(page_view)というように、データの計測方式をイベントとして統一する形になった。
こうした「イベント」単位での計測によって、次のようなメリットが得られるようになった。
- データ取得の実装や設定方法が統一されてわかりやすい。
- イベント同士の分析が行いやすい。
変更点② 取得できるデータ
「取得できるデータ」が大きく変更になったのも、今回の特徴だ。小川氏は、3つの変更ポイントを挙げ解説した。
- 一部設定が必要だったものが自動で取得できるようになった。
- 一部指標の定義が変わった。
- 計測指標の削除や追加があった。
一部設定が必要だったものが、自動で取得できるようになった
コードを入れておけば自動的に取得できるデータとして、初回訪問(First_visit)や新たに追加されたエンゲージメント(user_engagement)などのイベントがあり、以前からGAで見慣れていた大半はほぼ網羅されている。
さらにGAでは別途実装しないと得られなかったものも、管理画面上でONにするだけで自動取得できるようになった。たとえば、90%の深さまでのスクロール(scroll)や別ドメインへのクリック(click)、埋め込みのYouTubeの動画の再生などがその代表例だ。
一部指標の定義が変わった
セッションの定義変更
セッションに関しては、GAとGA4で指標の定義が変更されているので注意が必要だ。たとえば、セッションの長さについてGAでは「最後のページ表示時間から、最初のページ表示時間を引いた時間」となっているが、GA4では「最後のイベント発生時間からSession_Startのイベント発生時間を引いた時間」となっている。
流入元が変わったときの定義変更
また、流入元が変わった時の挙動は、GAでは新しいセッションとして認識されていたが、GA4では新しいセッションとは認識されない。また、日をまたいだ場合もGAでは別セッションとなっていたが、GA4では同じものとみなされる。よりセッションが「つながりやすくなった」ということであり、結果としてセッション数は減少することが予測される。
コンバージョンのカウント方式の定義変更
コンバージョンのカウント方式も変わっている。GAでは1回の訪問で複数回、同一の目標を達成してもカウントは1回だったが、GA4ではその回数分だけカウントされる。つまり、GA4の方が、コンバージョンが高くなる傾向にある。
さらにGA4のデータの送信は計測記述が読み込まれた後、5秒の遅延をもって送られ、5秒以内に複数のイベントが発生していた場合、同時に送信される。この時、ページを開いて5秒以内で遷移しても計測されるが、閉じてしまうと計測されなくなるという。つまり、GAとGA4でかなり大きく数値が変わる可能性があるというわけだ。
計測指標の増減があった
GA4で消えた「直帰率」
また、実態的にあまり意味を成さないためか、直帰率はGA4の画面で出てきません。たとえば、GAでは動画を1本見てから画面を閉じても「直帰率」にカウントされてしまう。どうしても必要であればBigQueryなどを用いて計算することも可能ではあるが、あまり現実的ではない。小川氏は「潔く諦めましょう」とコメント。
エンゲージメント・エンゲージ率が新たにGA4に追加
その代わり、「エンゲージ」、「エンゲージ率」という指標が新しく加わった。「エンゲージ」は10秒以上の滞在、または2つ以上のイベントがなされた時にカウントされる。なお、管理画面で10〜60秒の10秒刻みで変更が可能だ。
また、「ユーザー」は、マウスオーバーすると「アクティブユーザーの合計数」という説明が表示される。これはエンゲージメント(10秒以上の滞在)のあったユーザーであり、実ユーザー数を見るためには、「探索」機能の「ユーザーの合計数」の指標を利用する。
変更点③ レポート画面
レポート画面については、基本的な内容・構造はそう大きく変わらないという。変更点で主なものは次の3つだと、小川氏は解説した。
- 「集計用のレポート」と「分析用のレポート」に分かれた。
- 「集計用レポート」は、GAで用意されていたレポートと同様、決まった項目が表示され、全体を見るのに適している。「比較」はできるが、「セグメント」は作成できない。あくまで全体状況の把握に利用するものとなっている。
- 「分析用レポート」は、「探索」用の機能が用意されており、データの深掘りや気付き、発見が行える。GAでいえば、カスタムレポートに近い。なお、自分でどの項目をどのように見るか、分析したい内容を考えながら自ら項目を選んで設定する必要がある。
GA4のメニュー
メニューとしては、「レポート」「探索」「広告」「設定」の4つに大きく分かれており、各メニュー内にそれぞれの機能が用意されているという構成だ。なお、「レポート」については、2022年1月時点で、レポートのスナップショット、リアルタイム、ユーザー属性やテクノロジー属性などが入っている。
さらに「ライフサイクル」のレポートでは、流入元などを分析した「集客」、イベントの発生回数などを確認できる「エンゲージメント」、「収益化」については実装しているeコマース関係の数字が表示される。
なおeコマースの実装方法はGAとGA4では異なるので注意が必要だ。並行は可能だが、それぞれの記述を入れる必要がある。Google タグマネージャーなどで変換することも可能だが、難易度は高めだ。「維持率」については、新規とリピーターとの継続率や、ライフタイムバリューなどが閲覧できる。
「広告」メニューについては、集客ごとの間接効果、コンバージョンの初回流入や導線などが閲覧できる。「設定」メニューでは、イベントの表示や作成、コンバージョン設定の表示、デバッグレポートなどが確認できる。
探索機能とは?
多彩な分析レポートのカスタマイズで「知りたいこと」を調べる機能
レポート機能の中にある「探索」は、自分で項目を選んで表やグラフを作成するというものだ。分析を行う場合はこちらの機能を活用する。小川氏は「自分で項目を選んで絞ってレポートを設定し、作成できる。ただし、反面自分で選ばないと何も出てこない」と語り、次のように探索機能のポイントを示し、解説した。
- 「コンバージョンをした人」「このページとこのページを見た人」というような細かなセグメント機能は、この分析レポート内でのみ作成が可能。
- 分析は前日までのデータが対象になっており、当日のデータは閲覧できない。
- データ期間とデータ量によってはサンプリングが発生することになる。
探索機能の構成は、下図のように左側に項目やセグメントの一覧が表示される。どのような項目を追加・表示するかは、左側から右側へドラッグドロップすると追加され、反映されるという仕組みだ。ディメンションは、行や列に追加するとピボットテーブルのように入るようになっている。また指標には値を入力し、データの絞り込みにはセグメントを追加する。
アウトプット形式を変更できる「手法」
GA4にはさまざまな分析用テンプレートが用意されており、「手法」でアウトプット形式を変更することも可能だ。手法には次のような種類がある。
「データ探索」:ディメンションや指標などを組み合わせてさまざまなレポートを作成し、閲覧することができる。
「コホート分析」:コホート対象者・リピート条件を決め、ある期間に戻ってきた人を蓄積して見せることで、継続率の分析に使う。数字はもちろん、パーセンテージでも表示することもできる。
「目標達成プロセス分析」:自分でチェックポイントを追加してどんな経路をたどったか、自由にステップを設定し、遷移率を確認できる。なおステップは「ページを見た」だけでなく、「外部リンククリック」「ファイルダウンロード」などユーザーにとってほしいイベントを設定することも可能だ。
「セグメントの重複」:セグメントを設定できるだけでなく、最大3つまでのセグメントの重複を確認できるようになったことも評価が高い。たとえば、「モバイルから」「ノーリファラー」「25~34歳」という3つの指標を設けたとしたら、それぞれ重複率や人数が可視化されるというわけだ。これまでGAではそれぞれを個別に見る必要があったので、大きな成果といえるだろう。
「経路の分析」:ページやイベントの遷移の内訳を見ることができる。GAでも行動フローがあったが、あくまでページ単位だった。GA4ではイベント単位での遷移内訳を閲覧でき、細やかな導線閲覧が可能になる。コンバージョン(終点)から逆引きで、どのような経路をたどったかも閲覧できる。
「ユーザーエクスプローラー」:GAに続きGA4にも実装されている。1人1人のユーザーが、どのようなページをどのような順番で閲覧したか、足跡を見ることができる。たとえば、コンバージョンした人だけを追って、どのような動きをしたかを見ていくというものだ。その中で何か共通項などがあれば、ヒントになるというわけだ。
「ユーザーのライフタイム」:ユーザー軸で見た滞在時間やセッション回数などを閲覧でき、購買に結びついたものなどについても長い期間で把握できる。
まずはデモアカウントで体験を!
GA4が、Webサイトを超えて広くも深い分析が可能になりつつある中で、私たちはいったいどう対応すればいいのか? 小川氏は、「冒頭でも申し上げたが、GAとGA4はあくまで異なる分析ツールであり、今後Webサイト以外の効果まで把握する必要があるならば、GA4の導入は不可欠だろう。また、コンバージョンなどの数字が大きく変わることも明らか。Google自身も推奨しているが、両方とも実装することをおすすめする」と語った。
なお、サイトに導入前に触ってみたい、という方のためにGA4のデモアカウントが公開されている。以下のURLにアクセスし、「デモアカウントを追加」を押すとGAプロパティが1つ、GA4のプロパティが2つ追加される。
https://support.google.com/analytics/answer/6367342
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