【レポート】Web担当者Forumミーティング 2022 秋

ユーザー軸の分析「GA4」の導入で何が変わる? 知っておきたい基礎と最新情報|小川卓氏が解説

2023年7月に旧GAが終了する。国内上場企業の8割がGAを導入しているが、GA4への移行は4割にとどまる。これから導入する担当者向けにGA4の最新情報をお届け。

Google発のWebアクセス解析サービスとして企業の間で広く浸透しているが、旧バージョンにあたる「ユニバーサル アナリティクス(UA)」のサービスが2023年7月に事実上終了。そして、新バージョン「Google Analytics 4」(GA4)への移行が急がれる事態となっている。

UAのあまりの普及ぶりに、GA4への移行が遅れているとの指摘は多い。何が特徴で、具体的にどんな違いがあるのか? 「Web担当者Forumミーティング 2022 秋」のセッションにて株式会社HAPPY ANALYTICS 代表取締役の小川卓氏が専門家の立場から詳しく解説した。

株式会社HAPPY ANALYTICS 代表取締役 小川 卓氏

「ページを訪問」から「サイト内のあらゆるアクションの計測」へ

GA4の正式リリースは2020年10月のこと。気がつけば既に2年にわたって、実利用されているアクセス解析サービスだ。現在問題視されているのは、旧バージョンにあたる「ユニバーサル アナリティクス(UA、本稿では以後GA表記する)」での計測終了。無償版は2023年7月1日に、有償版GAが2024年7月1日(当初の2023年10月1日終了予定から延長)に停止となる。

旧バージョンでの計測は2023年7月1日に終了

GAとGA4は計測思想が異なり、Webサイト側に埋め込む計測用タグを変更するなどの明確な移行手続きが必要だ。このため、ユーザーへの影響は極めて大きいと考えられている。国内上場企業の約80%がGAを利用していると言われるなか、GA4の上場企業導入率は約40%(2022年9月末時点)とされる。

GAとGA4は何が違う?

ではGAとGA4では何が違うのだろうか? 小川氏によればGAは「Webサイトはページで構成されており、サイトを訪問してページを見ていく」というのが大前提の計測法であった。ユーザーが“ページを訪問”すればセッションとして計測し、その次のページへの遷移などをもとに「直帰率」「離脱率」「平均滞在時間」をはじき出していた。

GA時代は「ページの遷移」が計測の基本だった

対してGA4は「ユーザーはウェブサイト内でさまざまなアクションを行い、その行動を通じてサイトを理解し目的達成に向かう」という前提に立っている。

2005年にGoogle アナリティクスがサービスを開始して、それから10数年、Webの有り様は変わっていった。GA4の登場にいたっても『Webサイト』の概念は残っているが、ページのスクロールや、(ページ遷移を伴わない)動画再生、画面をスワイプしたりといった具合に、ユーザーは『ページ内でさまざまな行動』をするようになった。さらには、2005年頃にはそもそもなかったアプリについても考慮しなければならない(小川氏)

ユーザーはさまざまな行動をとっており、GA4ではそれを計測できる

技術の進歩と歩調を合わせる形でユーザー行動は変化しており、企業側もその行動をより正確に把握したい。そうしたニーズを満たすため、GAも段階的に拡張していた訳だが、それにも限界はある。大規模な刷新が必要だったからこそ、GA4が誕生したといえるだろう。

GA4の計測は「イベント」で管理する

計測単位についても、GAが「ページ」と「訪問」が軸であったのに対し、GA4では「ユーザー」と「アクション」がベースとなる。たとえばGAでは「ページを訪問」と単に捉えられていたものが、GA4では「アクションの1種であるページ訪問をユーザーが実施した」という格好になる。ページスクロールやファイルのダウンロードも、GA4における「アクション」の1種として扱われる。

そしてアクションを統一ルールで計測するため、GA4ではデータ計測を全て「イベント」として扱うようになったのも特徴である。計測や実装方式も変わったため、GAとはデータ互換性がない。よって、新たにGA4のデータを蓄積していかなければ「3年前の同月とCVを比較する」といったことはできなくなってしまう。

イベントに統一された結果として

GA4における「イベント」とは?

GA4の最重要概念である「イベント」だが、具体的な例は以下のようなものになる。「file_download」「first_visit」などがイベント名にあたる。

  • file_download=ファイルのダウンロード
  • first_visit=初回訪問
  • page_view=ページ閲覧
  • scroll=ページスクロール
  • session_start=セッション開始
  • video_start=動画再生
GA4のイベント例

さらに、各イベントに対してはパラメータが複数個同時に設定される。以下の図は「page_view(ページ閲覧)」イベントに設定されるパラメータの例である。ページURL、ページのタイトル、ページの言語設定、表示端末の画面解像度などのパラメータが紐づいている。

イベントの構造を理解する

イベント」は大きく分けて3種類

イベントは、取得法に応じて3種類に大別できる。

1. 自動で取得されているイベント

GA4ユーザーが特に意識していなくても、自動で集計・計測されるもの。「first_visit(初回訪問時にのみ発生)」「page_view(ページが表示された時に発生)」などが代表的。

イベント名とパラメータの組み合わせ

2. GA4の拡張イベント計測機能

GA4の管理画面で有効化することで計測できるようになるイベント。代表的な項目は「scroll(各ページの90%の深さまでスクロールした時に計測)」「click(ユーザーが現在のドメインから別ドメインに移動するリンクをクリックした時に計測)」などが挙げられる。2022年10月から新たに、フォームの操作に関するイベント「form_start(フォームを初めて操作した時に計測)」「form_submit(フォームを送信した時に計測)」が追加された。

GA4の画面で自動取得できるイベント

3. カスタムイベント

他のイベントに該当せず、独自にイベント名・パラメータ名を設定して計測したい場合に利用する。たとえばscrollイベントでは90%閲覧したかが本来の判定基準になるが、これを10%刻みで計測したい場合などにも使えるという。

カスタムイベント

GA4では、この数値の意味が変わった

GA4はイベント単位で計測されるようになったため、GAと比較してデータ項目が増えた。数値の意味合いが変わるといった影響も出ている。

ユーザー

第一に、GA4で表示されるユーザーとは、サイト訪問者数ではなく、アクティブユーザーの数を示す。具体的には1秒以上、画面前面にページが表示されていたユーザーがカウントされる。

ユーザーとアクティブユーザー

セッション

セッションの定義も変更された。GAまでは「セッションの長さ = 最後のページ表示時間 ー 最初のページ表示時間」という計測だった。このため、最後に表示したページに対してはそもそも計測ができない。GA4では「セッションの長さ = 最後のイベント発生時間 ー session_startのイベント発生時間」をマイナスして計測する。また画面が前面に表示されていない場合は滞在時間としてカウントされない。

また、ユーザーが流入元を変えて再訪問した時は、30分以内(デフォルト設定値)であれば、GA4では新セッションとしない。そして、日をまたいだ場合のセッションの扱いは、GAではセッションが切れて別セッションにしていたが、GA4では別セッションにしない。このため、GA4はセッション数が減る傾向にあると小川氏は指摘する。

セッション

コンバージョン(CV)

ECサイトなどで商品詳細ページの閲覧をCVとしていた時、たとえば、1回の訪問で3つの詳細ページを閲覧した場合、GAではCVは「1」とカウントされた。しかしGA4では「3」となる。訪問ではなく、あくまでユーザーの行動を重視するGA4ならではの仕様といえる部分だ。ただしGAと比較してCV数が増えたように見えやすい。

コンバージョン

直帰率とエンゲージメント

エンゲージメントはGA4で新たに盛り込まれた概念。10秒以上の滞在(秒数は変更可能)、2ページ以上の閲覧、CVイベント発生のどれかを満たした時にカウントされる。レポートなどにも「エンゲージメント率」などとして表示されるが、「2ページ以上の閲覧」条件からもわかるように、直帰率とは真逆の指標である。

たとえば、訪問ユーザーが1つのページを20分見て、次ページに遷移することなく離脱した場合、GAでは「直帰」と判定されていたが、GA4では「エンゲージメント」としてカウントされる。

直帰率に置き換わるエンゲージメント

なおサービス開始当初のGA4においては、直帰率の概念がなかったが、現在は表示できるようになった。ただし、これはGAでいう直帰率ではなく、あくまで「1-エンゲージメント率」という計算値になっている。よってGAとGA4の直帰率を比較しても、前提条件が違いすぎるため、意味がない。

ここまで説明してきたように、主要な指標はGAとGA4ではズレがでる。実際に比較してみても、プラスマイナス5%程度は差が出るようだ。CVとセッション滞在時間は、それ以上にズレが出やすいので注意が必要だ(小川氏)

通常のレポートに加えて、「探索」の活用を

レポート画面周りも大きく変わった。GA4で新たに加わった「探索」機能を使うことで、GA4の標準レポートより高度な分析ができる。レポートは集計用、探索は分析用という立て付けであり、データを深掘りしたり、何らかの気付きを得たりしたい時は、必ず「探索」のほうを使うことになる。

GA4の「探索」とは

探索では、ユーザー自身が項目を選んでいく。実際の画面上でも探索を選択すると、真っ白な画面が表示される。

自分で項目を選ばないと、そもそも何もでてこないため、具体的に何がやりたいのか、レポートをみて決めてから進める(小川氏)

探索画面

探索の対象となるデータは前日分までで、当日データは反映されない。またデータ期間とデータ量によっては、全数分析ではなくサンプリングでの結果となる。

なお探索画面には「手法」という項目が用意されていて、これが実質的なテンプレートとして利用できる。「目標到達プロセスの分析」は、CVに至るまでの中間指標の到達度判定などに役立つという。

探索のなかの「目標到達プロセスの分析」の利用例

機械学習やBigQueryにも注目

GA4が今後進化していくにあたって、大きく寄与するであろう技術が機械学習(AI)である。現状のGA4でも機械学習の恩恵はある。計測値に急激な上昇・下降が検出された場合に自動で分析が行われ、その影響を要約する機能がすでに提供されている。

またGAとGA4の双方とも、ユーザーやセッションの単位で絞り込む「セグメント」機能があるが、この絞り込み条件が自動で提示される。たとえば「CVする可能性の高い(低い)セグメント」といった具合で、そのセグメントに対してGoogle 広告によるターゲティング広告を実施することも可能だ。

機械学習データを元に、数値の急激な変化を指摘してくれる
セグメントの自動提案も

また、Googleのデータウェアハウスサービス「BigQuery」との連携も強化された。これまでは有償版GAのみ、BigQueryのクラウドにアクセスデータを保存できたが、GA4では無償版でも連携可能(BigQueryの料金は別途必要)となった。

「BigQuery」との連携

GA4はGAとは根本の設計が違うため、ユーザーにとっては使い慣れた・覚えた操作を一部切り捨てることになる。ただし機械学習との連携など、将来的な期待もまた大きいと小川氏は説明。これを理解したうえで、早期にGA4へ移行すべきだと強く訴える。

GAは計測停止がもうアナウンスされているので、なるべく早く移行したほうがよい。移行は、ただタグを入れ直すだけではない。数値の意味も違うし、操作に慣れたり、レポートを設定し直したりするには時間がかかる。最低でも2022年内に着手、2023年3月までにはGA4導入を目指してほしい(小川氏)

HAPPY ANALYTICSのWebサイトではGA4関連の資料を配布している。また小川氏の個人サイトでも情報を発信しているので、是非活用してほしいと呼び掛け、講演を締めくくった。

HAPPY ANALYTICSのWebサイトではGA4関連の資料を配布中

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