近年のメディアでは、「SEOはもう終わった」という言説が頻繁に取り上げられている。しかし、過去10年以上にわたり、日本で行われるすべての検索の5〜15%分に登るアクセス解析と、約20万語もの検索順位を継続的に追い続けてきた辻氏(so.la/Faber Company)は、こうした見方を「過剰反応だ」と断言する。
その理由は明確だ。2025年春から夏にかけて、企業の大規模サイトから個人ブログまで幅広く俯瞰しても、自然検索からの流入は「ほとんど減っていない」からである。辻氏は、「AI検索については、99%の企業がSEOの観点では様子見で問題ない」と指摘する。
では、検索環境が大きく変化する中で、いま本当に重視すべきSEOの視点とは何なのか。本記事では、「Web担当者Forumミーティング2025 秋」のクロージング講演「激変するSEO――その中で成果を上げるために必要な“たった一つ”のこと」をもとに、AI時代におけるSEOの最前線に迫る。
10年間、検索上位をキープし続けることは難しい
「まずは過去10年分のデータを振り返り、2015年に強かったサイトが、この10年間でどのように推移したのかを見てみましょう」と切り出したのは、so.laで辻氏の右腕を務める伊藤氏である。
分析対象としたのは、「さいたま 転職」「金沢 転職」など、「(地名)+転職」という検索語句300個だ。これらについて、検索結果10位以内に表示された語句数が多い順にサイトを並べ、2015年から2025年にかけて順位状況がどのように変化したのかを示したものが、以下のグラフである。
たとえば「転職サイトA」は、2015年10月時点では300語句中273個が検索結果10位以内にランクインしていた。しかし、2025年10月には0となり、すでにサイト自体が閉鎖されている。このように、A〜Iの転職サービス9つとハローワークのサイトを対象に、2015年と2025年の「10位以内にランクインした検索語句数」を比較すると、10サイト中7サイトで減少が見られた。
同様に、「茨城 ホテル」「金沢 ホテル」など、「(地名)+ホテル」という検索語句166個について分析すると、10サイト中6サイトで、検索結果10位以内にランクインした語句数が減少していた。このうち、実際にサービスを終了したのは1サイトにすぎない。それにもかかわらず、減少した6サイトのうち3サイトでは、2025年時点でランクインした検索語句数が0となっていた。
「ほかにも幅広い業界の検索語句を調べたところ、過去に強かったサイトであっても、半数以上が5〜10年以内に検索上位から姿を消している事実が見えてきた」と伊藤氏は語る。
こうした結果を見ると、「それならSEOをがんばっても意味がないのではないか」と感じてしまうのも無理はない。しかし見方を変えれば、残りの半数近いサイトは、順位を維持するか、むしろ伸ばしていることになる。
この明暗を分けた要因は何だったのか。より詳細なデータを手がかりに、その理由を掘り下げていこう。
株式会社so.la. 大学時代に長期インターンでSEOに出会い、新卒で株式会社メンバーズに入社。大手企業を中心に様々なサイトの制作・運用を支援。2025年、so.laに加入した。
Googleは記事コンテンツを評価しなくなったのか?
次に伊藤氏は、「クレジットカード」を含む検索語句151個と、「保険」を含む検索語句188個について、検索結果10位以内に表示される記事コンテンツの数を調べたデータを示した(便宜上、URLに「/article」を含むページを記事コンテンツとしてカウントしている)。
2018年4月から2025年10月までを時系列で比較すると、いずれのテーマも2024年4月までは増加傾向にあった。しかし、それ以降は一転して、急激に減少していることが明らかになったという。
記事コンテンツに代わって検索結果で増えていたのが、サービスページやFAQページ、Yahoo!知恵袋などのUGC(ユーザー生成コンテンツ)、さらにはSNSの投稿である。Googleは突然、記事コンテンツを評価しなくなったのだろうか。
伊藤氏の結論は、「そうではない」。その理由を理解するためには、これまでGoogleが年に数回実施してきたコアアップデート――すなわち「検索アルゴリズムの大幅な更新」を振り返る必要があるという。
株式会社so.la 代表 兼 株式会社Faber Company 上席SEOコンサルタント。2007年からSEMを中心とした広告代理店でSEOコンサルタントに従事。2011年に独立後、主に株式会社so.laで活動。2025年1月、Faber Companyにグループイン。Webマスターと検索ユーザー、検索エンジンの三者が利益を受けるSEOを信条にしている。
信頼性の高いサイトも、それだけでは評価されなくなった
2020年以降のコアアップデートでは、「サイト単位の価値や信頼性」が強く評価されるようになり、検索順位が大きく変動するケースが増えた。とりわけ、金融や健康といった、いわゆるYMYL(Your Money or Your Life)領域では、信頼性の高い公的機関のサイトが上位に表示されやすくなっている。
ところが、2025年に入ってからのコアアップデートについて、伊藤氏は「サイト単位の評価だけでは説明できない順位変動が目立つようになっている」と指摘する。その具体例として示されたのが、「南海トラフ」を含む検索語句179個に関するデータだ。
「南海トラフ 確率」「南海トラフ 前兆」などの検索語句を対象に、「国土交通省」「気象庁」「大阪市」「東京都防災ホームページ」「消防庁」という5つの公的機関サイトの順位が、2025年3月14日から27日に実施されたコアアップデートの前後でどのように変化したのかを比較した。
その結果、4月2日時点では、全体のおよそ4割の検索語句で、これらのサイトが検索結果の上位10位以内から外れていた。
ほかにも、「寄与分」という法律用語に着目すると、この用語を解説した裁判所の公式記事コンテンツが、2025年3月14日から27日に実施されたコアアップデート後、検索順位が1位から50位圏外へと大きく下落した事例が確認された。さらに、検索語句によっては、裁判所を装った偽サイトが上位に表示されるケースも見られ、裁判所が注意喚起を行う事態にまで発展したという。
公的機関のサイトでさえも、これだけ順位が変動しているのは、なぜなのか。サイトの信頼性よりも重視されているものとは、いったい何なのか。次に詳しく見ていこう。
評価が分かれた理由は、ページ単位のユーザビリティ
続いて伊藤氏は、2025年3月14日から27日に実施されたコアアップデート後も、検索順位の変動が比較的小さかった公的機関サイトとして、「政府広報オンライン」を挙げた。裁判所の公式サイトと政府広報オンラインの記事コンテンツを比較してみよう。
裁判所のサイトは、テキストが詰め込まれ、1ページあたりの情報量が多く、ユーザーにとって理解しにくい構成になっている。一方、政府広報オンラインは図版を多く用い、見出しやレイアウトにも工夫が施されており、読みやすい構成となっている。
この比較を踏まえ、伊藤氏は「サイトとしての信頼性が同程度であっても、ページ単位でのユーザビリティの差が、Googleの評価に影響を及ぼしている可能性が高い」と分析する。
伊藤氏がこうした見方に至った背景には、so.laのクライアントサイトでの経験が影響している。Googleのクローラーからみるとごく軽微な修正に見える変化であっても、それが人間から見て大きくユーザビリティを損ねる変更だった場合、検索順位にも影響が出て順位が下落した。このような動きは他の検索語句やページでも検証され、何度もほぼ同様の結果が確認された。
つまり、Googleが記事コンテンツそのものを嫌うようになったわけではない。「ユーザーの期待に応えられないコンテンツを、検索結果から下げるようになった」と捉えるべきだと伊藤氏はいう。
Googleは、検索結果から流入した後の「ユーザーの満足度」までを、より高い精度で、かつリアルタイムに測定・評価し、それを検索順位に反映できる段階に入っている。
Googleは創業当初から、ユーザーの利便性を最優先に掲げてきた。実際、データを見ても、ユーザーに選ばれ続けているサイトほど、長く生き残っている。もはや、記事コンテンツを公開するだけで簡単に評価を高められる時代ではない。これからは、「ユーザーのニーズに最も応えられるのはどのようなコンテンツか」を考え、「それに最適なフォーマットを選ぶ」視点が重要になる(伊藤氏)
これからの時代に、SEOでやるべき「たった一つのこと」
「ユーザーの満足度が検索順位にダイレクトに影響する時代に入ったいま、SEOで考えるべき“たった一つ”のことは、検索ユーザーの満足度を、正しく検索エンジンに伝わる形にすることだ」と辻氏は強調する。
良いコンテンツをつくることは、もはや当たり前。その価値が、ユーザーの行動を通じて検索エンジンにも伝わる構造を整えておく必要がある(辻氏)
ユーザー行動の中でも特に重要なのが、検索結果ページ上でのユーザー行動だという。たとえば、検索結果からクリックした先のページに高い満足感を得られれば、ユーザーは検索結果に戻ってくることはない。一方で、訪問先のページに求めていた情報がなく、すぐに検索結果へ戻るユーザーが多ければ、そのページは「満足度が低い」と評価されてしまう。
「つまり、いまのSEOは、検索結果でクリックされるだけでは不十分。クリック後にユーザーが満足したかどうかまでが、重要な評価指標になっている」と辻氏は語る。そして、「ユーザー満足度を検索エンジンに正しく伝えるために必要なポイント」として、次の3点を挙げた。
①検索結果1ページ目表示を目指す
検索結果1ページ目に入っていない場合は、「Web担当者Forum」の過去記事などを参考にしながら、SEOの基本を正しく実行することから始めよう。極端に競争の激しいキーワードを除けば、1ページ目に表示されること自体はそれほど難しくない。
②クリックされるタイトルにする
検索結果の上位で表示されるようになるには、ユーザーに「クリックしたい」と思わせるタイトル設計が欠かせない。
検索結果には似たようなページが並びやすいため、一覧で見たときに目を引くよう、他と明確に異なるポイントを打ち出し、差別化を図る必要がある。その際、自社ならではの強みや訴求ポイントをtitle要素に盛り込むことが効果的だ。
なお、title要素をページ内のh1要素と一致させる必要はない。むしろ、意図的に変えるべきである。なぜなら、Webページを訪れた読者と、検索結果を眺めている検索ユーザーとでは、求めている情報が異なるからだ。読者が主に目にするのはページ内の大見出しであるh1要素であり、検索ユーザーが目にするのは検索結果に表示されるtitle要素である。
SEOで成果を上げているサイトの中には、この2つを役割に応じて明確に使い分けている所も少なくない。Google自身もヘルプドキュメントの一部ページで、この考え方に基づいた設計を採用している。
③満足度の高そうなユーザーに選んでもらえるタイトルにする
検索ユーザーの意図に寄り添ったコンテンツづくりを行うことは前提だが、そのうえで重要なのは、誰にでもクリックされることを目指すのではなく、クリック後に満足してくれるユーザーを見極める視点だ。
もし、ページを開いた直後に失望して離脱されてしまうのであれば、最初からクリックされないほうが結果的には評価を下げにくい。満足度の高いユーザーだけに選ばれるよう、タイトル設計には意図的な工夫が求められる。
ユーザーに価値を届けられるサイトは生き残る
最後に、辻氏は次のように語った。
今回示したデータから、「SEOの激変はいまに始まったことではない」とお分かりいただけたのではないだろうか。SEOがどれだけ激変しようと、価値を届けられるサイトは生き残り続ける。これは我々とクライアントが証明してきた事実だ。ユーザーに寄り添う姿勢さえ持ち続けていれば、これからも大きく道を外すことはないだろう。今一度、「ご自身のサイトが提供できる“価値”とは何か?」「それをどう表現すれば、必要とするユーザーに届くのか?」を、見つめ直すきっかけにしていただきたい(辻氏)

