【レポート】Web担当者Forumミーティング 2026 春

AI検索で“自社がお勧め”されない! お米ギフトの八代目儀兵衛が実践、GEO時代のECサイト改善

“勝ちたい”プロンプトでの露出を8.2%から20.3%にまで向上させたギフト専門サイト「八代目儀兵衛」のGEO実践事例を紹介。

伊藤真美[執筆]

7:05

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生成AIの普及により、消費者が購買の際にAIに「おすすめ」を尋ねる行動が増えている。こうした中で、ECサイトはいかにしてAIに“選ばれる存在”になればよいのか。

Web担当者Forum ミーティング 2026 春」に、お米のギフトECを展開する八代目儀兵衛の神徳 昭裕 氏とFaber Companyの月岡 克博 氏が登壇し、八代目儀兵衛での取り組みを紹介しながらAI検索時代に求められるSEO、第三者評価、そしてブランド想起のあり方を語った。

(左)株式会社Faber Company 執行役員 エグゼクティブマーケティングディレクター 月岡 克博氏 (右)株式会社八代目儀兵衛 取締役CMO 神徳 昭裕氏
(左)株式会社Faber Company 執行役員 エグゼクティブマーケティングディレクター 月岡 克博 氏
(右)株式会社八代目儀兵衛 取締役CMO 神徳 昭裕 氏

まず取り組むべきは、AI検索の仕組みを意識した「SEOの見直し」

「GEO(Generative Engine Optimization)やAI検索対応などが注目されているが、いずれも目的は、AIに自社のサービスやブランドを認知してもらい購買につなげること。そのためには、AI検索の6割を占めるGoogle AI OverviewsやAIモードはもちろん、ChatGPTやGeminiも含めた対策が必要」と、Faber Companyの月岡氏は語る。

AIの回答は、「事前学習した情報に基づくもの」と、「検索によって外部情報を参照する検索拡張(RAG)」によるものがあり、後者には通常の検索結果に加えてWeb上の“信頼できる情報”が反映される。つまり、検索エンジンに評価されるコンテンツやサイト構造といったSEO施策は、AI検索時代にも必須というのだ。

AI検索の裏側で動く技術の1つが「クエリファンアウト(Query Fan-Out)」だ。検索語そのものだけでなく、その検索に関連する問いを自動的に広げ、より最適な答えを導く仕組みである。たとえば、「おいしいお米」について「どこで買えるのか」、「価格はどうなのか」など関連する質問を推測し、それらについて一気に検索して情報を要約し表示する。これまでのSEOの施策の延長線上だが、こうした細かなニーズに対応するコンテンツや施策が必要となる。

某海外の調査によると、従来のSEOで露出が減少した約12サイトが、各種AIの露出においても同様に減少しているという。これは、SEO施策の不備がGoogle検索だけでなくAI検索にも負の影響を与えるという証左でもある。

加えて月岡氏は、「SEOといっても、対象は自社サイトの最適化にとどまらない」と語り、第三者からの評価や言及も重要であることを強調した。具体的には、他の人によって「商品・サービスがどのように言われているのか」、「どのようなイメージを持たれているか」が大切であり、自社で受けるレビューだけでなく、モールでのレビューや評価、業界団体のサイト、業界メディアなど、その領域において信頼性の高いサイトでの評価や紹介が重要な要素となる。

月岡氏は、「自社や他者、メディアなどの総合評価がブランド力につながる。GEO施策はこの延長線上にある」と語り、それぞれのAIが好んで参照する媒体の特徴を理解し、適切な媒体での露出を図る必要があることを強調した。

自社サイトでのSEO対策に加え、他社サイトでの評価や信頼性の高いメディアでの露出が重要
自社サイトでのSEO施策に加え、他社サイトでの評価や信頼性の高いメディアでの露出が重要

検索上位なのに「ギフト専門サイト」として認識されない課題が表出

AI検索を見据えた対策事例として、お米のギフトECを展開する八代目儀兵衛の取り組みが紹介された。

同社のEC売上の内訳は、自宅用が1割程度、9割がギフトであり、その多くを出産・結婚などの内祝い、香典返しが占めるという。「人生の節目のイベントにおけるギフト」という商品の性質上、目的が発生した時にしか興味を持ってもらえないため、流入・購入につなげるには、「検索」を強化することが最も効果的と考えられてきた

神徳氏は、「SEO施策として2021年から5年間にわたり、月に10本の記事を継続的に投稿し、約400記事が蓄積している。その8割が検索結果で1ページ目(10位以内)に表示されており、そこからの流入が売上につながる重要な導線となってきた」と語る。

しかし、近年、この検索からの流入が25%も減っており、AI検索で「自社ブランドが表示されない」、「自社のコンテンツが引用されても他社が紹介される」などの事象から、強い危機感を抱いたという。顧客の声を分析したところ、予想通り、多くの顧客が検索などで初めて知って購入に至ったことが明らかとなり、「AIで検索した後に問い合わせをしている」、「自社商品がAI検索では表示されない」などの課題が浮き彫りになった。そこで、今後に向けたAI対策の必要性を感じ、Faber Companyへの相談に至った。

実は、Webサイトからのコンバージョンや売上に対するAIの影響を正確に把握している企業は少ない。たとえば、AIで何かのサービス名を認知した後に、そのブランド名で検索してサイトを訪問したパターンにおいて、GA4などの解析ツールではSEOの指名検索の流入となってしまい、それがAI経由であることを判別できない。そこで、購買時のアンケートに「AIで調べたか」といった質問を追加することで、AIの購買への影響を測定できるようになる。これはどんな会社でもすぐにでもできることなので、ぜひ実施してほしい(月岡氏)

「勝ちたいプロンプト」を定義し、継続的に検証する

現状を把握しきれていない、または課題を発見したが施策に迷いがある企業に対して、Faber Companyが提供しているのが「ミエルカ式 GEOアプローチメソッド」だ。

このメソッドでは、AI検索を直接的に操作しようとする手法は推奨されていない。その理由について、月岡氏は「AIの仕組みが複雑で進化が速いので、不確定要素が多く、短期的なハック対策では中長期に成果を得られないため」と説明する。そして、「現在の基礎的な取り組みをしっかりと行うこと、その上でカスタマージャーニーを適切に設計し、できていない部分を再設計することが大切」と強調した。

特に、消費者が特定の商品カテゴリーの利用や購入を思い出す「きっかけ」や「状況」、「感情」、「目的」といった「カテゴリーエントリーポイント(CEPs)」の概念を用いて、「どのような場面でどのようなプロンプト(AIへの質問)になるのか」という仮説を立て、その中で“勝ちたい”プロンプトを定義することがコツだという。

「ミエルカ式 GEOアプローチメソッド」のプロセス
「ミエルカ式 GEOアプローチメソッド」のプロセス

そして、重要なのは、想定したプロンプトを実行して、自分たちの商品やブランド、会社が実際に「おすすめ」として挙がるかを継続的に確認することだ。もし競合サイトとの差があるなら、その原因はWeb上の情報量や内容の差にある可能性が高い。そこで、自社サイトや第三者メディア上の情報を見直し、改善を重ねる必要がある。

Google の検索数などが参考になるが、私は AI検索とGoogle 検索では「聞きたいことや気持ち」が異なると感じている。そこで、顧客へのヒアリングを通じて、常に考え、定義することが必要だ。複数の生成AIで繰り返し検証し、自社や競合ブランドの出方を比較しながら改善していく、PDCAが求められる(月岡氏)

八代目儀兵衛では、「結婚の内祝い用におしゃれなギフト」、「目上の方に丁寧に選びたい贈り物」などを定義し、あらゆるAI検索において「どのように表示されるか」、「競合ブランドはどれが出てくるか」などを調査したという。なお、その内容や順番などは毎回変化していくため、複数回の調査を継続して行う必要がある。

八代目儀兵衛では200プロンプトを設計・調査し、「ギフト専門サイトとしての認知が弱い」、「第三者評価が十分でない」、「お米を贈る体験自体が一般化していない」といった仮説を得た

八代目儀兵衛がミエルカ式 GEOアプローチメソッドで定義した“勝ちたい”プロンプトの例
八代目儀兵衛がミエルカ式 GEOアプローチメソッドで定義した“勝ちたい”プロンプトの例

八代目儀兵衛が実践した、AI検索で選ばれるための3つの施策

AI検索結果の調査から見えてきた課題について、解決を目的として、Faber Companyではいくつかの施策を八代目儀兵衛に提案しており、その中で3施策の実施内容が紹介された。

① 「ギフト専門サイト」の明確な言及

八代目儀兵衛はブランド認知の向上に注力してきた一方で、結婚内祝いや出産内祝い、香典返し、目上の方向けギフトなど、どのような用途で使えるサイトなのかは十分に言語化されていなかった。神徳氏も「サイトを見ればギフト商品を扱っていることはわかる。しかし、人間には伝わっても、検索エンジンやAIには明確に伝わっていない可能性があることに、指摘を受けて初めて気づいた」と振り返る。

そこで、ECサイトはもちろん、会社サイトなどにも、「出産内祝い」、「結婚内祝い」、「香典返し」などの用途に適したギフトを扱うサイトであることを明記、人間だけでなく、検索エンジンやAIにも理解されやすい情報設計へと見直した。

AIに理解してもらうために「ギフト専門サイト」であることを明記
AIに理解してもらうために「ギフト専門サイト」であることを明記

② 調査PRと自社レビューの強化

調査PRと自社レビューの強化施策は、第三者の声に触れられる機会を増やすことで、ブランドへの信頼を高めるのが狙い。まずは、外部調査会社に頼らず、購入者アンケートなどの自社に蓄積された既存データを活用し、調査リリース化する流れを整理した。

さらにレビューについては、目的別に整理された内容をトップページ上でも見つけやすく配置し、ユーザーにもAIにも伝わりやすい形に見直した。あわせて、検索エンジンに適切に認識されるようインデックス登録も進めた。

アンケートやレビューなどの既存データから第三者視点の評価をサイトに記載
アンケートやレビューなどの既存データから第三者視点の評価をサイトに記載

③ メディアコラボ & デジタルPR施策

次は外部接点の強化策だ。前述のような定点観測を続ける中で、想定したプロンプトに対してどのようなサイトやドメインがAIに引用されやすいのかを可視化し、そこから協業先となり得るメディアを洗い出した。約300サイトの中から実際にアプローチ可能な候補を30〜40サイト程度まで絞り込み、チームに共有しているという。

候補としては、一般的なニュースメディアや業界特化型メディアに加え、アフィリエイトメディアも対象となる。出稿の有無だけでなく、自社の商品説明が掲載されているか、掲載位置は適切か、内容がブランドの強みを正しく伝えているかまで確認し、優先的に働きかけるメディアを整理した。

さらに非競合企業との連携も進み始めている。たとえば現在は、ジュエリー系企業とのコラボレーションを検討中で、相手先の文脈の中で八代目儀兵衛を紹介してもらう取り組みを進めているという。こうした取り組みはまだ掲載前の段階だが、AIに参照されやすい外部接点を増やす施策として期待されている。

AIに引用されやすいメディアを洗い出し、出稿先やコラボ先を選定
AIに引用されやすいメディアを洗い出し、出稿先やコラボ先を選定

AI対策はSEO改善にも波及、ただし土台は商品力と顧客体験

こうした施策を地道に進めた結果、月岡氏によると、定義したプロンプト群におけるブランド露出率は、当初の8.2%から20.3%まで上昇したという。神徳氏も、「半年ほど取り組みを続ける中で、大きな手応えを感じている」と語る。

加えて、ギフト関連キーワードを意識したSEOの見直しも、短期的な成果につながった。Google Search Console上で「ギフト」を含むキーワードの平均掲載順位を見ると、約11.3位だったものが5.4位まで改善している。神徳氏は、「レビューや用途別ページの整備に加え、これまで十分にできていなかったSEOの基本施策を改めてやり直したことが、大きく作用したのではないか」と振り返る。

定義したプロンプトでの露出率が8.2%から20.3%まで向上した
定義したプロンプトでの露出率が8.2%から20.3%まで向上した

一方で神徳氏は、「AI検索対応やSEO施策はあくまでテクニカルなもの。大前提として、商品やサービス、顧客体験そのものの質が問われる」と強調する。良いレビューは良い体験があってこそ生まれるものであり、AIに評価される前に、まず顧客に選ばれ、想起されるブランドであることが重要というわけだ。八代目儀兵衛でも、贈り物を考えたときに検索するまでもなく自然にブランド名が思い浮かぶ状態を目指し、施策を進めてきた。

そうした努力を無駄にしないためにも、「AI検索の最適化」という取り組みを推進するには、経営層に現状を正しく伝えることも大切だ。たとえば、「AI検索で自社名がまったく出てこない」という事実は、危機感を共有し、予算や体制の整備を進めるうえで強いインパクトを持つ。現時点でWebサイトへのAI経由の直接流入は全体の1%未満にとどまるケースが多いものの、AIでブランドを知ったあとに検索や購入へ至る行動は確実に存在する。だからこそ、自社がどのような質問で露出しているのか、どの程度コンバージョンに影響しているのかを観察し、継続的に把握していくことが重要になるのではないか。

月岡氏は、八代目儀兵衛の取り組みについて、「AI検索への対応は、小手先のテクニックではなく、自社がどのような文脈で選ばれるべきかを見極め、その情報をWeb上で正しく伝わるかたちに中長期的に整えていく営み。それを改めて実感した」と総括した。SEOの改善、レビューや調査PRの強化、メディア連携、そして商品・顧客体験そのものの磨き込みを並行して進めながら、継続的に観測と改善を重ねていく。その地道な積み重ねこそが、“AIにおすすめされるブランド”への近道となることは間違いないだろう。

AI検索モニタリングツール「ミエルカGEO」

セッションの最後に、AI検索の最適化に向けてPDCAサイクルを回していくための支援策として、Faber Companyが2026年1月に提供を開始したAI検索モニタリングツール「ミエルカGEO」が紹介された。同ツールは、指定したプロンプトに対して各種生成AIがどのような回答を返し、どのブランドやドメインが参照されているのかを継続的に可視化できるのが特徴だ。ChatGPTやGeminiなどモデルごとの違いや、参照されやすいページ、ブランド露出率の推移などを定点で把握できるため、施策の効果検証や改善の優先順位付けに役立つという。

月岡氏は「AI検索の結果は、モデル更新や周辺環境の変化によって揺れやすいからこそ、単発ではなく継続的に観測し、面で捉えることが重要になる」と語る。AI検索時代に選ばれるブランドになるには、現状を可視化し、仮説を立て、改善を積み重ねることが欠かせない。まずは現状把握から始めてはいかがだろうか。

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