「リード数は足りているのに受注が増えない」はなぜ? 営業が「動きたくなる」質の高いリードを生み出す「BBM」

BtoBマーケティングに携わる人なら、誰もが一度は直面するであろう、リードの量と質のジレンマ。多くの企業がリードの獲得に疲弊し、営業との連携に頭を悩ませている。それを解決するには。

深谷 歩[執筆]

7:05

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「もっと質のいいリードをくれ」「十分なリードは渡しているが、営業がフォローアップしてくれない」「獲得リードが増えた! で、売り上げは?」――BtoBマーケティングに携わる人なら、誰もが一度は直面するであろう、リードの量と質のジレンマ。多くの企業がリードの獲得に疲弊し、営業との連携に頭を悩ませている。

そこで今、注目したいのが、LBM(Lead-Based Marketing)とABM(Account-Based Marketing)の間にある、「BBM(Balance-Based Marketing)」という考え方だ。一体どのような手法なのか?

提唱者であるALUHAの荻野永策氏にその考え方についてうかがった。

株式会社ALUHA 代表取締役 荻野永策氏

現状のBtoBマーケティングサイクル

BBM(Balance-Based Marketing:バランス・ベースド・マーケティング)を提唱するのは、石川県金沢市に拠点を置くコンサルティング会社「ALUHA」の荻野氏である。

ALUHAは2003年に荻野氏が創業した。地方の小規模な組織でありながら、独自のマーケティング手法を武器に、名だたる大手企業や製造業、IT企業からコンサルティング依頼が絶えないという。「営業しない会社をつくる」をミッションに掲げ、顧客から自然と「買いたい」と言わせる仕組み作りを追求している。

BBMの詳細に入る前に、現在のBtoBマーケティングが抱える課題を整理しておこう。BtoBマーケティングは、下図のようなサイクルを繰り返すことだと荻野氏は話す。

BtoBマーケティングサイクル
BtoBマーケティングサイクル

このサイクルを繰り返す中で、マーケティング部門が「見込客を獲得する」ことを主眼として、「リード獲得件数」のみをKPIに据えると、どうしても「量」の追求に偏りがちだ。その結果、「目標リード数は営業に渡した」と満足してしまい、獲得したリードが実際に商談へつながったかどうかまで追跡しきれないケースがある。

しかし、リード獲得の後には、「育成(ナーチャリング)」「案件化・商談化」、そして「受注」というフェーズが控えており、そこには多大な時間と営業コストが投入される。そのため、営業部門からはリードの「質」を求められ、「もっと質のいいリードをくれ」と要望を言われてしまうことになる。

リードの質を判断するための3つの軸

リードの質とは具体的に何を指すのか。荻野氏は3つのリード評価指標を挙げる。

① 受注への近さ(検討度)

獲得経路によって、受注までの距離は異なる。「製品デモ依頼」であれば受注に近く、「展示会での名刺交換」や「汎用的なホワイトペーパーのダウンロード」であれば、まだ距離があるのが一般的だ。

② 将来的なLTV(顧客生涯価値)

受注に至った際、将来的に大口顧客へと成長するポテンシャルがあるかどうか。営業戦略や方針にもよるが、一般的に営業部門は大口顧客を好む傾向が強い。

③ 相思相愛(リードとの相性)

相思相愛とは、「リードが解決したい課題」と「製品・サービスで解決できる課題」が合致している状態のことをいう。課題が合致していなければ、歯車が合わず、商談はなかなか進まない。当然受注率も下がる。

この3つの軸のうち、1、2の組み合わせによってリードの質は4つに分類できる。

4つに分類されたリード
4つに分類されたリード

営業が最も歓迎するのは、図の左上にあたり、「受注に近く、かつLTVが高い」リードだ。さらに相思相愛のリードであれば最も喜ぶ可能性が高い。一方で、量を重視するマーケティング部門が獲得しがちなのは、図の右下にあたる「受注から遠く、LTVも低い」リードである。このミスマッチが、「リードはあるのに受注できない(受注できても小口が多い)」という営業側の不満と、「リードを供給しているのに営業が動かない」というマーケティング側の不満を生み、両部門の溝を深める原因となっている。

その結果、マーケティング活動に営業が非協力的になり、施策に必要なコンテンツ制作への協力が得られなくなるなど、組織全体の連携が弱まっていくのだ。さらには、「マーケティング部門が何をやっているのか見えにくい」「売上にどれだけ貢献しているのか?」「予算をかけて展示会をやったのに、十分な成果(受注)は出ているのか?」といった厳しい声が上がり、結果的に部門の存在意義までもが問われる事態に陥りかねない。

LBMで量を取るか、ABMで質を取るか? それぞれの限界

大量のリードを獲得・育成して受注へつなげる手法は「LBM(Lead-Based Marketing)」、あるいは「デマンドジェネレーション」と呼ばれ、多くの企業がMA(マーケティングオートメーション)を活用して実践している。広範囲にアプローチできる反面、前述した質の低下が課題となりやすい。

大量のリードを獲得して受注へと絞り込んでいくLBM
大量のリードを獲得して受注へと絞り込んでいくLBM

一方、その対極にあるのが、質を重視する「ABM(Account-Based Marketing)」だ。ターゲットアカウント(TA)や理想の顧客像(ICP:Ideal Customer Profile)を明確に定め、アカウント営業と連携して、特定の企業にあわせた提案やセミナーなど1to1の深いアプローチを行う。

限られた企業との取引金額を最大化していくABM
限られた企業との取引金額を最大化していくABM

荻野氏は、ABMのメリットとリスクを次のように分析する。

ABMは商材が高額で、ターゲットとなる市場が限定的な場合には、リソースを集中できるため極めて有効です。一度受注すれば、その後の長期的な関係が期待でき、LTVが向上します。しかし、ターゲットが市場に多数存在する場合、1社ごとに工数をかけるABMではリソース不足に陥りやすく、向いていません。

また、特定の顧客に売上を依存しすぎることは経営リスクになり得ます。顧客側の経営層の交代など環境の変化によって取引が見直される可能性があるからです。さらに、ターゲット企業に固執するあまり、他の成長市場への展開機会を逸失してしまう恐れもあります(荻野氏)

第三の選択肢:BBM(Balance-Based Marketing)

LBM(量)とABM(質)のどちらかに振り切るのではなく、利益が最大化する質と量の最適なバランスを追求する。それが、荻野氏の提唱する「BBM(Balance-Based Marketing)」だ。BBMはABMとLBMの中間に位置づくマーケティング手法といえる。

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質と量のバランスを重視しながら売上・利益の最大化を行うBBM
質と量のバランスを重視しながら売上・利益の最大化を行うBBM

BBMを始めるには、まず以下の3つの条件に基づいたICP(理想の顧客像)の定義を行う。

  • LTV条件:高いLTVが期待できること
  • 確度条件:比較的短期間で受注につながる可能性があること
  • 相性条件:自社の強みとリードの課題の相性がいいこと

それぞれの条件に合致しているかは、エビデンスを元に、どんな企業ならLTVが高いのか、どんな課題に悩んでいる企業なら自社が解決できるのかを明確にする。特に相性条件は重要で、他2つの条件を満たしていても相性が悪いと、競合に負ける(失注する)可能性が高くなる。“相思相愛”のリードは失注しにくくなる。

BBMの用語定義“相思相愛”とは
BBMの用語定義“相思相愛”とは

ICPを定義することで、リードと顧客を次のように分類できる。

  • ICP該当リード:ICP条件を満たし、将来の優良顧客候補となるリード
  • ICP非該当リード:ICPには該当しないが、購入の可能性があるリード
  • ICP該当顧客:ICP条件を満たす既存顧客。アップセルやクロスセルの可能性が高い
  • ICP非該当顧客:ICPの条件を満たさない既存顧客で、これ以上のLTV向上はなかなか見込めない顧客
ICP該当リード/顧客とは
ICP該当リード/顧客とは

自社の顧客リストに「パレートの法則」を適用し、売上の8割を支える2割の企業を分析してみてください。そこから共通する企業条件(業種、売上規模、従業員数など)を定め、彼らが解決したい課題をヒアリングで明らかにしていきます。ICPを定義することで、ABMほど特定顧客に依存せず、LBMほど量を偏重しないマーケティングが可能になります(荻野氏)

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「ICP率」で質と量のバランスを可視化する

BBMにおいて、質と量のバランスを測る重要なKPIとなるのが「ICP率」だ。これは、獲得した全リードのうち、理想の顧客像であるICPの条件を満たすリードが占める割合を指す。

たとえば、Webサイト経由で400件のリードを獲得し、そのうちICP該当リードが150件であれば、リード獲得時点のICP率は37.5%となる。さらに、最終的に5件受注したうち、4件がICP該当リードであれば、受注時点のICP率は80%となる。

ICP率とは
ICP率とは

ファネルごとのICP率を追跡すれば、課題が明確になります。リード獲得数が多くてもICP率が低ければ、質に課題があると言えます。逆に、受注件数が伸び悩んでいるなら、リード獲得の量自体を増やすべきという判断が下せます。健全な状態であれば、ファネルの下流(受注・継続)に進むほど、ICP率は高まっていくはずです(荻野氏)

目指すべきは、売上が最大化する最適なICP率を見つけ出すことだ。この最適値は企業ごとに異なるため、四半期や年次単位で継続的にデータを蓄積し、検証していく必要がある。自社にとっての最適値をいち早く導き出したい場合は、過去に最高利益や最高売上を記録した年度のデータを遡り、当時のリード獲得数とICP率を算出してみるのが近道だ。

ICP率が可視化されることで、マーケティング部門は、量と質のバランスを考慮してリードを獲得していることを客観的に示せるようになり、営業部門への貢献度も明確になる。

営業部門にとってもメリットは大きい。リソースが不足している時は質(ICP率)を重視して効率を上げ、逆にリソースに余裕がある時は量を重視して活動領域を広げるといった、状況に応じた柔軟な調整が可能になるからだ。

ICP率という共通指標を持つことで、時期や営業スタイルに合わせて、ABM寄りの施策とLBM寄りの施策を柔軟に切り替えられるようになります。営業現場のニーズ(通常期か決算前か、など)を汲み取りながら施策を並行・連動させることで、部門間連携が円滑になります(荻野氏)

施策の源泉となる課題データベースの構築

ICPを定義する上で欠かせないのが、顧客の課題と自社の解決策が合致しているかという相性条件だ。この精度を高めるために、営業活動を通じて得られた顧客の声を蓄積した「課題データベース(課題DB)」の活用を荻野氏は推奨する。

当社では2018年から顧客の課題を蓄積しており、その数は現在約1,300件に達しています。ホワイトペーパーやメルマガを作成する際は、このデータベースにある実際の課題を起点にコンテンツを企画します。

質を重視するならICP該当層特有の課題に、量を狙うならより多くの企業に共通する汎用的な課題に焦点を当てます。このように、目的に応じて訴求する課題を使い分けるのです(荻野氏)

こうした施策を実行しながらICP率の変動を観測し、最終的な売上との相関性を検証していくのがBBMの実践プロセスとなる。

課題データベース
課題データベース

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実例:ALUHAにおけるBBMの成果

2018年からBBMを実践しているALUHAでは、Web経由で獲得したリードのICP率を継続的に計測している。下図がそれだ。

ALUHAのICP率
ALUHAのICP率

アクセス数に対するコンバージョンを「ICP」と「一般」に分けて計測した結果、獲得時点のICP率は39.92%の約40%となった。さらに先のフェーズでは、商談化時点で約52%、受注時点で約57%と、下流に行くほど比率が高まっていったという。

さらに、既存のICP該当顧客からの紹介案件も発生している。紹介によって獲得したリードのうち、約50%がICP条件を満たしていた。これは、ICP顧客が自社のグループ会社や取引先など、似た属性の企業を紹介してくれる傾向が強いためだと分析している。

最後に、荻野氏は次のように話して、BBMの推進を後押しした。

BtoBマーケティングを突き詰めると、必ず量と質のバランスという壁に突き当たります。そんな時こそ、BBMの考え方を取り入れてみてください。社内へ成果をアピールするためにも、バランスを意識した戦略的な施策展開が求められています。具体的な進め方に悩まれている方のために、勉強会や相談会も実施していますので、ぜひ弊社に相談してください(荻野氏)

BBMの考え方に共感したならば、まずは直近3ヶ月のリード100件を、ICP条件で仕分けしてみることから始めてみてはいかがだろうか。

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