辛子明太子やもつ鍋など九州の食文化を軸に、食品製造から小売、外食事業まで幅広く展開する株式会社やまやコミュニケーションズ(以下、やまや)は、2025年6月より、LINEヤフーが提供するデスクリサーチツール「DS.INSIGHT」を導入し、全社的なデータ活用の取り組みをスタートさせた。
本記事では、ツール導入に至った目的や経緯、導入後に生まれた社内の変化や具体的な効果について、やまやでデジタルマーケティングを担当する上田仁美氏、鈴木千尋氏、そしてLINEヤフー側でカスタマーサクセスとして全社的なデータ活用の普及を支援してきた棚原郷太氏に話を聞いた。
(中央)株式会社やまやコミュニケーションズ マーケティング部 BtoCマーケティングチーム 鈴木千尋氏
(右)LINEヤフー株式会社 データソリューション企画ユニット カスタマーエンゲージメントDiv 棚原郷太氏
データ利活用の第一歩として最適だったDS.INSIGHT
――まずは、「やまや」についてお伺いしたいです。やっぱり、明太子のイメージが強いですが。
上田 仁美氏(以下、上田) そうですね。「やまや」というと、辛子明太子メーカーというイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、実際には、もつ鍋やだし、菓子、酒など、日常用からお土産、贈答用まで幅広い商品を展開しています。
食品の製造・小売に加え、外食事業にも積極的に取り組んでおり、海外を含めた直営店は50店舗以上を数えます。事業売上の6割を占める卸販売も含め、博多・九州の食文化を国内外へ広く届けています。

――幅広く事業展開されているんですね。データ活用の範囲も広そうですが、DS.INSIGHT導入以前のデータ活用はどのように行われていたのでしょうか。
上田 以前にもリサーチツールの導入や、マーケティングにおけるデータ活用をスマートフォンで学べるeラーニングの活用などは行われていました。しかし、リサーチツールにおいては実際に使いこなしていたのは、スキルを身につけた一部の社員に限られ、活用目的も「ブランドサイトのSEO対策」といった限定的なものでした。
そうした中で、DS.INSIGHTの直接的な導入のきっかけとなったのは、LINEヤフーさんからのご提案でした。
棚原 郷太氏(以下、棚原) やまやさんは、自社で商品を製造するほか、ECや直営店、卸やOEM提供など多様なチャネルを展開されており、非常に幅広い顧客層をお持ちです。その分、データを活用する余地は大きく、それぞれの部門でデータ分析ができれば、大きな価値が生まれるのではないかと考えました。そこで、専門知識がなくとも直感的なUIで分析・レポートがかなうツールとしてDS.INSIGHTをご提案させていただきました。
上田 かねてから、やまやではDXを推進しており、その中核として、全社的なデータ活用に取り組みたいと考えていました。スキルを持つ一部の人だけでなく、誰もが手軽に分析し、その結果を売上につなげたり、アイデア創出に活かしたりできる環境を整えたいという思いがありました。
そうしたタイミングでLINEヤフーさんからご提案を受け、専門知識がなくても社員が手軽に分析を始められるDS.INSIGHTは、データ利活用の第一歩として、まさに当社のDXの初期フェーズに適していると評価され、導入が決定しました。
オープンな募集で80アカウントが開設、自走に向けて勉強会を開催
――DS.INSIGHTを全社向けに導入されたということですが、実際どのくらいの規模で、どのような方々が活用されているのでしょうか。
鈴木 千尋氏(以下、鈴木) 全社から任意で希望者を募ったところ、マーケティング部門だけでなく、各事業部の営業担当者、物販・外食店舗スタッフやEC担当者、採用担当者など、さまざまな部門から手が上がりました。スタータープランが1契約100アカウントのところ、半年間で80アカウントが取得され、現在は上限に近づいている状況です。
――やまやさんの社員は800名強ですから、10人に1人程度が希望されたということですね。任意でその人数が名乗りを上げるのはすごいですね。
上田 アカウントは、DS.INSIGHTの活用と導入支援を行う鈴木が一人で管理することになるので、当初は「部門を絞った方がいいのでは」という意見もありました。しかし、上長とも相談する中で、「データを活用したい」という意欲にできる限り応えたいという思いもあり、オープンに募集をかけて反応をみようという判断になりました。
正直言えば、ツールを導入しただけでそう簡単に普及するとは思っていなかったです。想像以上に反響が大きかったのは、「データを活用していかなくては」という雰囲気が各部門に生まれていたからだと思います。
――ツールは導入しただけではなかなか活用には至らないといわれています。DS.INSIGHT導入の場合、どのようにしてリテラシー向上を図られたのですか。
鈴木 私たちマーケティング部門が社内への普及窓口を担っていますが、私たちも使い始めたばかりだったため、LINEヤフーさんに勉強会の開催やヘルプデスクをお願いし、部門別・個別にサポートしていただきました。
棚原 勉強会は導入して4ヶ月ほど経った頃に、約20人ずつ2回に分けて開催しました。「どのように使っていいかわからない」という声が多かったので、基本的な操作法や機能のレクチャーのほか、具体的なトピックスを例にあげながら、部門ごとの実践的な分析・活用法を紹介しました。
鈴木 特に、具体的な分析例への反響が大きく、まずはそれを真似て分析してみるという方が多かったですね。具体例を一度試した後は、それぞれの業務に合わせて、さまざまな使い方をするようになっていきました。具体的な分析例を紹介してもらうことは、最初の“ブースター”としてたいへん効果的だったと感じています。
上田 先日、使用状況についてのアンケートを行ったところ、アカウントを持つ社員のほとんどが週1回は使っており、自分たちで「何をどう分析するのか」まで考えながら分析できるようになっていることがわかりました。
マーケ部門だけでなく事業部門でも多彩に活用
――DS.INSIGHTの導入後は、どのように活用されているのでしょうか? 具体的な活用シーンを教えて下さい。
上田 まずマーケティング部門では、商品の市場認知調査といったベーシックな用途を中心に活用しています。
たとえば競合他社さんとのポジション分析もそのひとつです。ユーザーにどんなイメージでどんなキーワードで認知されているのかを探る中で、やまやの強みやニーズを探っています。
上田 また、最近では、注力商品のだしパック「うまだし」の首都圏での認知獲得プロジェクトにおいて、首都圏での検索状況や競合調査をDS.INSIGHTで行い、購買ニーズのポテンシャルを分析しました。
鈴木 商品の分析については、マーケティング部門の業務に直接役立てるだけでなく、社内へのプレゼンテーション時などの仮説確認やファクトチェックなどにも活用しています。
先日は、部長から、「ある新規プロジェクトについて経営陣に説明する資料を作りたいから、仮説が合ってるか検証してほしい」と依頼されて分析を行いました。ちょっと複雑なものだったので、LINEヤフーさんに相談し、フォローいただきながら仕上げることができました。
また、コンテンツ企画を担当するチームにおいてもDS.INSIGHTでの分析は欠かせません。やまやでは、自社ブランドサイトに、明太子やもつ鍋、九州料理など、やまやの商品を使用したレシピを毎月掲載しています。新しいレシピを掲載するにあたっての市場調査や、検索ニーズ・トレンドの把握をDS.INSIGHTで行っています。季節ごとに人気の検索ワードがあれば、自社製品と合わせたレシピを考案するなど、顧客ニーズを捉えつつ、SEO対策を意識した施策を実施しています。
上田 市場調査、ニーズ把握のための活用は、外食メニューの開発チームでも同様に行われています。季節メニューを定期的に考えなければならないので、顧客ニーズが把握できるのは嬉しいですね。
他にも、「店名」「食材」「メニュー名」「地域」といったキーワード検索から、店舗のターゲット層の分析や関連ニーズの把握(インサイト調査)などが行われています。さらにキーワードを追加し、検索人数や年齢層の増減まで確認しています。ゆくゆくはそこからヒットメニューが出てくることを期待しています。
鈴木 ちょっと想定外だったのが、直営物販店での活用です。やまやは博多駅にも物販店を出しているのですが、そこの店長 兼 スーパーバイザーが、DS.INSIGHTを使って人流を季節別に分析し、時期ごとの年代別の増加傾向を踏まえて商品配置やディスプレイなどを決めるのに活用しているんです。
たとえば、「若年層が多い時期はお菓子をもう少し前面に出す」とか、「人気アイドルのライブ開催によってファン層が増えるタイミングには“推しカラー”の商品を充実させる」というように非常にきめ細やかな工夫につなげているようです。
DS.INSIGHTでデータが施策の根拠になり、共通言語になる
――本当に幅広く活用されているんですね。導入してわずか半年とは思えないくらいです。売り上げへの影響は表れていますか?
上田 売上への貢献についての効果検証はこれからです。ただ、これまでは、レシピやメニュー開発にしろ、物販店のレイアウトにしろ、前年を踏襲するか、あるいは担当者の“勘”に頼る部分が多かったのですが、DS.INSIGHTを活用するようになってからは、分析結果を根拠にした新しい提案ができるようになったのが印象的でした。
中長期的な施策も計画しやすくなりますし、今後は効果検証まで行えるようになれば、より効率的なPDCAが回せるようになると思います。
――DS.INSIGHTの導入前と比べて、業務の進め方が変わっていそうですね。
上田 施策の根拠として部内外に対して客観的にデータを示せるようになったこと、全社で同じ数字を見られるので、認識の共有・すり合わせが容易にできるようになったことが大きいですね。“主観”ではなく、“事実”を基に会話ができるようになり、部門連携がさらに進めやすくなったと思います。
鈴木 マーケティングでは施策実施の成果として売上の向上が求められがちですが、仮にそれをすぐには明確に示せなかった場合でも、DS.INSIGHTを使えば、検索数やターゲットの分母の増加といった副次的な数字が示されます。正解に辿り着く途中のプロセスや指標が明らかになり、そこを改善するといった施策へとつなげることができます。
上田 売上には出てこない指標を見られて、PDCAのプロセスを細かく積み上げていけるのはいいですよね。勘と経験に頼っているだけでは、仮にそれでうまくいった場合でも再現が難しいですし、ダメだった場合は何がダメでどこを直せばいいのかわからないわけですから。
LINE公式アカウントとの連携など新施策も
――今後はどのような場面や目的にDS.INSIGHTを活用されたいとお考えですか?
上田 マーケティング部門としては、今後はEC部門とさらに連携し、売上に直結する施策を打ち出していきたいと考えています。
たとえば、年末になると「もつ鍋 レシピ」という検索ワードが伸びてくるのですが、やまやのLINE公式アカウントでも、レシピを訴求したメッセージの開封率が高まると推測されます。そこで、LINE公式アカウントからECへの誘導はもちろん、近隣の店舗で購入いただけるような導線づくりなども実装していきたいですね。
また、DS.INSIGHTの「セグメント連携」機能では、ユーザーの行動を起点に「前後の検索行動」などを可視化することができます。その行動には「LINE公式アカウントと友だちになる」、「特定のメッセージをクリックする」なども含まれており、その前後にどんな検索をしているかを見ることができます。LINE公式アカウントは店舗ごとに運用されているので、エリアごとの傾向を比較して、メッセージを変えたり他店舗の成功事例を横展開したりという使い方もできそうです。
鈴木 主力商品である辛子明太子は、福岡では日常食として認識されていますが、他の地域ではお土産や贈答用の需要が中心となっています。しかし近年は、お中元・お歳暮の縮小傾向に加え、価格や持ち運びといった点から、お土産需要も全体的に縮小傾向にあります。
そうした中で、たとえば明太子を使用した菓子のような、手軽に選んでいただける商品開発が求められており、その検討にあたってもDS.INSIGHTによる顧客ニーズやインサイトの分析を活用していきたいです。
さらには、福岡以外でも明太子を日常食としてもらえるような打ち出し方や施策についても、同様に検討を進めていきたいです。
卸事業や採用活動での展開も期待
――マーケティング部門以外での展望はいかがですか?
上田 もちろん、先ほどご紹介したように、商品開発や外食事業、店舗などでも、もっと活用できたらという要望をもらっているので、DS.INSIGHTは自発的に活用されてほしいと思っています。
一方で、事業売上の6割を占める卸事業では、アカウントは所持しているものの、現状ほとんど使われていないんです。これは、卸事業は、以前からの顧客様が多く、営業活動も信頼関係づくりによるものが重視されるという特徴があるからだと思います。しかし、今後は卸先への顧客の潜在ニーズ提案などにも活用できるのではないかと思っています。
棚原 私の方には、「採用活動」で新たに使ってみたいというご相談をいただいています。特定エリアの出店に合わせて、その店舗へのスタッフ確保のための情報の不足と、戦略立案に課題があると伺っていますので、DS.INSIGHTの強みを活かした活用を現在ご提案させていただいています。例えば、学生アルバイトに注力するのか、あるいは主婦層をターゲットとするのか、土地勘のない場所であってもデータを根拠にした仮説を立てて、 採用率を高めるための、求人票の内容や表現のブラッシュアップを図るところからはじめていく予定です。
DS.INSIGHTでデータ分析が楽しくなった
――最後に、DS.INSIGHTに興味を持たれている方への活用のアドバイスやメッセージをお願いします。
鈴木 DS.INSIGHTのおかげでデータ分析が本当に楽しくなりました。マーケティング活動は、すぐに売上という成果につながるとは限りません。でも、DS.INSIGHTの分析画面で「やまや 明太子」などのキーワードで調べてみると、施策の結果が数字として表れていることがわかってやる気が出ますし、それを共通認識として社内に提出することができます。
注意点としては、DS.INSIGHTはできることが本当に幅広く、興味深い分析結果が次々と出てくるので、漠然と触っているとどんどん時間が過ぎて、今自分が何を調べたいのか、何を知りたいのかわからなくなる恐れがあります。いわばデータの海に溺れる感じですね。そこで、必ず最初に何を調べたいのか、こういう結果ではないかと仮説を立て、その検証ツールだと思って使うようにしています。
棚原 確かに興味深いデータがいろいろ出てしまうというのは、DS.INSIGHTのメリットでありデメリットかもしれません。たとえば、明太子というキーワードを調べると、「塩分」など健康に関するキーワードもたくさん出てくるため、ついつい気になってしまうのですが、市場観を見たいなら、いったんそうした情報をノイズとしてカットして集中することも必要です。
とはいえ、分析はとても楽しいですし、ちゃんと我々がご支援しますので、気軽にチャレンジしてほしいです。
上田 ツールの先にお客様がいらっしゃることを意識して使っていきたいです。
明太子は、ふっと思い出したら食べたくなる、食べずにはいられなくなる魅力ある食べ物だと思っています。その「食べたい!」という気持ちを触発できるような情報を消費者にしっかり伝えていきたいので、これからもDS.INSIGHTを積極的に使いながら施策を考えていきたいと思います。
――ありがとうございました!

「DS.INSIGHT」は、LINEヤフーのビッグデータを活用した、セルフ運用型のデスクリサーチツールだ。Yahoo! JAPANを利用している5,400万人(2025年3月時点)およびLINEユーザー9,800万人という月間ログインユーザーIDのデータを基に、消費者の行動や興味関心を多角的に分析できる。
2025年7月からは、「行動」を起点として、ユーザーの検索行動や人物像を可視化できる「セグメント連携」機能が追加され、従来の検索キーワードだけでなく、広告接触や購買、来店といった実際の行動を起点としてユーザー心理や行動パターンを深く掘り下げられるようになり、より多角的な分析が可能になった。
- より精度の高いユーザー分析を行いたい
- 顧客の隠れたニーズや行動パターンをもっと見つけたい
- ユーザーの行動を起点に、前後の検索行動を可視化したい
- 日々移り変わる検索行動の変化をいち早く捉えたい
- ユーザーのインサイトやペルソナの解像度を上げたい
- 市場や競合調査をもっと効率的に行いたい
- マーケティングに関わる人間の“共通認識”を醸成したい
こうしたWeb担当者は、「DS.INSIGHT」を検討してみてはいかがだろうか。7日間の無料トライアルも提供している。
(※)「DS.INSIGHT」にて分析・可視化されたデータはすべて統計化されており、個人を識別可能なデータは含まれません。