AI検索時代、なぜSNSが重要? フジドリームエアラインズが実践“フォロワー6倍・UGC200%増”の舞台裏
「AIで調べ、SNSで確かめる」ユーザー行動へと変化する今、UGCを軸に再構築して成功を収めたSNS戦略を解説する。
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生成AIの普及で、ユーザーは「AIで調べ、SNSで確かめる」行動へと移行している。そのなかでUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)は、購入前の不安を解消し、最終判断を支える重要な情報源となっている。
フジドリームエアラインズは、この変化にいち早く向き合い、UGCを軸にしたSNS戦略へと舵を切った。その結果、フォロワー6倍、UGCが200%増という成果を実現した。
「Web担当者Forum ミーティング2026 春」のセッションでは、フジドリームエアラインズの井上翔氏とユーザーローカルの佐々木舞氏が登壇。同社が実践したSNS戦略について解説した。

(右)株式会社ユーザーローカル コーポレートセールス部デジタルマーケティングSaaS カスタマーサクセス エンタープライズチーム 佐々木 舞氏
生成AIの普及で、ユーザーの情報収集行動は変わり始めている
SNSでどう情報を届け、UGCを育てていくかは、今や避けては通れないテーマであるとユーザーローカルの佐々木氏は指摘する。
Google検索では、検索結果の上部にAIによる概要が表示されるようになり、ユーザーが外部サイトへ遷移しないケースが増加している。こうしたサービスの必要性は、ユーザー行動の変化からも明らかだ。調査によれば、AI概要の有無によってクリック率が2倍近く変わることもあるという。
また、ユーザーローカルが主催したAI関連ウェビナーのアンケートでも、「AI検索の影響でWebサイトへの流入が減っている」と感じる企業が増えている。
AI検索でサイト流入が減少する今、企業が向き合うべき課題は、ユーザーが自社サイトに到達する前の接点をどう設計するか。つまり、「事前接点」の設計・構築だ。
SNSは単なるサイト送客の手段ではなく、認知・想起・比較・信頼形成の接点として重要性が増しています。また、SNSに投稿された実際の利用者の声、いわゆるUGCは購入前の不安を解消する重要な情報になっています(佐々木氏)
「AIで調べ、SNSで確かめる」ユーザーの新常識
UGCとは、一般ユーザーが自発的に作成・投稿するコンテンツを指す。
たとえば、家電の買い替えを検討するユーザーは、家族構成や生活スタイル、重視したい機能を入力するだけで、AIから複数製品の比較結果を得ることができる。かつて比較サイトが担っていた役割を、今ではAIが吸収し始めている。
しかし、実際にはAIの回答だけでは最終的な判断に至らないケースも多い。「本当にこの製品でよいのか」「実際の使い心地はどうなのか」といった不安を解消するために、ユーザーはSNSへ向かい、実際の利用者の声を確認する。
つまり、ユーザーの行動はAIで調べ、SNSで確かめるという流れへと変化しているのだ。
それに加えて、SNSは生成AIが参照する情報としても存在感を増してきている。UGCがブランドの信頼をつくる時代に入りつつある、ということだろう。
航空会社が挑んだ「UGC軸のSNS戦略」
静岡生まれのリージョナルエアライン「フジドリームエアラインズ」は、2009年の運航開始以来、名古屋・静岡・松本・福岡を中心に地方路線を展開し、1機ごとに色が異なる「マルチカラーコンセプト」で知られる。「地方と地方、人と人を結ぶ」という理念を象徴するカラフルな機体は、SNSでも高い人気を誇る。
フジドリームエアラインズでSNS運用を担当する井上氏は、着任当初、「投稿は広報主導で属人化」「分析や改善が行われていない」「SNSがおまけ業務扱いで、社内協力が得られない」「SNSの価値を社内に証明できていない」といった多くの問題を抱えていたと説明する。
特に大きかったのは、「SNSがどれだけ効果を生んでいるのか」を示せず、社内理解が得られないことだった。他部署からは、メディア取材には協力的でも、SNSの投稿企画になるとうまく協力が得られなかった。
そこで取り組んだのは、次の3点だ。
- UGCをKPIに設定
- UGCを増やすサイクルを構築
- データをもとに発信を強化
UGC創出を加速させたアクション
フジドリームエアラインズのSNS戦略の再構築は、すべてUGCを軸に進められた。具体的なアクションとして、井上氏は以下を挙げる。
ハッシュタグの統一で揺らぎを解消
フジドリームエアラインズの略称である「FDA」で検索すると、海外機関の投稿が混ざり、クチコミ収集が困難だった。そこで公式が「#フジドリームエアラインズ」を呼びかけ、投稿キーワードを統一。UGCの収集精度と投稿誘導の両面で改善を進めた。
SNSキャンペーンで参加ハードルを下げる工夫
福岡空港・新千歳空港と連携したキャンペーンでは、コメントをABCの選択式にすることで入力の手間を削減。地域キーワードを盛り込み、ユーザーが自然に書き込みやすい設計にした。集まったコメントは反響調査に活用し、次の施策へつなげた。
双方向コミュニケーションでファン化を促進
フジドリームエアラインズはSNSを「宣伝ツール」ではなく、「コミュニケーションツール」として運用するようにした。ユーザー投稿に対して積極的にリアクションし、「公式が見てくれている」という親近感を醸成した。これらの積み重ねが、ファン→コアファン→自発的UGCという好循環を生んでいる。
社内への価値証明:広告費換算で伝える
2024年3月、機体が緑色の4号機が退役。フジドリームエアラインズ初の退役を「ひっそり終わらせたくない」と考え、夜8時に合わせて「#ずっと大好き4号機」で一斉投稿を呼びかけた。その結果、多くの人が企画に参加し、関連ハッシュタグが3つトレンド入りし、UGCが一気に増加するなどの成果があった。
トレンド入りした3つのハッシュタグ「#ずっと大好き4号機」「#JA04FJ」「#フジドリームエアラインズ」は合計で100万を超えるインプレッションを記録し、ユーザー投稿の表示回数は推定165万超えとなった。しかし、SNSに詳しくない人に「100万インプレッション」と言っても、その価値は伝わりにくい。
そこで井上氏は、ユーザーローカルが提供するSNS分析・運用支援ツール「Social Insight」を活用し、投稿の表示回数をもとに、同程度の数値を得るための広告費を135万円程度と算出した。
「お金をかけずに135万円分の広告と同じ露出がありました」と報告することによって、SNSに詳しくない人にもその効果を実感してもらうという工夫を行いました(井上氏)
競合分析と初速分析で磨いた投稿内容の最適化とその成果
続いて井上氏は、投稿発信を強化するために、Social Insightを使って競合分析と初速分析を行い、投稿内容の最適化を進めた。
競合分析:反響の高い投稿から学ぶ
競合分析では、同規模の航空会社のアカウントをベンチマークとしてSocial Insightに登録し、反響の大きい投稿をピンポイントで分析。例えば、「モバイルバッテリーの安全啓発」「繁忙期の搭乗手続きの注意喚起」など、世の中の関心が高いテーマを把握し、自社の企画の参考にした。
加えて佐々木氏は、ユーザーローカルのサービスに、AIが人気投稿を自動的にまとめる機能が搭載されたことをアピール。井上氏は、分析工数の削減などに役立ちそうだと期待を語った。
初速分析:投稿の伸び方を決める重要指標
同じく、Social Insightを活用して、投稿の初速(投稿後3~4時間の反応)を分析したところ、初速が高い投稿は2日目以降も伸び続ける傾向が明らかになった。そのため、初速の良し悪しを指標に採用した。
特に初速に対する影響が大きい要因は「1枚目の画像」ということがわかった。特に、機体のアップの写真は初速が高く、引きの写真は初速が低い傾向があった。この知見を写真の選定基準に取り入れるなど、投稿設計にデータを反映している。
数値成果:フォロワー6倍、UGC200%増、インプレッション180%増
こうしてSocial Insightを活用した分析と改善が、下記のような成果につながった。SNSの価値が社内で認められ、運用体制も強化されていったという。
- フォロワー数:6倍
- UGC:200%増
- インプレッション:180%増
- 月次レポート作成工数:約半分に削減
UGCと指名検索の相関分析で見えた3つの重要ポイント
ユーザーローカルではさらに、1年分の月次データから、UGCと指名検索の相関を分析した。しかし、単純に相関係数を出すと、一見、強い相関が見られなかった。
そこで、ダイヤ発表や繁忙期で検索数が自然に増える1月と8月は外的要因として除外して再計算した。すると、相関係数が2~3倍に上昇、UGCが指名検索に寄与している可能性が明らかになった。
一方で、Xでは、リポストを含むUGCは相関が出ず、リポストを除くと強い相関が出た。リポストキャンペーンの影響や、航空会社という業種特性でリポストが指名検索に直結しにくいことが背景にあると思われる。ただし、「リポストは認知拡大の入口としては価値がある」と佐々木氏は補足する。
また、Instagramに絞った相関を24か月で分析した結果、月次では強い相関が見られなかったが、やはり1月・8月を除外することで相関が強まり、半期(半年)で見た場合はさらに相関が強まるなど、期間を長くすると相関が強まる傾向が見えた。
Xはタイムラインがどんどん流れていくフロー型のメディアで、投稿の瞬間に話題を生む瞬発力に強みがある一方で、Instagramはハッシュタグ検索や保存機能を通じて、過去の投稿がずっと見返されるストック型のメディアになっています。時間をかけてじわじわと指名検索に効いてくる構造になっているInstagramの効果は、より長期的な視点でデータを見ていくことが重要です(佐々木氏)
つまり、それぞれの特性に合った評価期間で効果を見ていくことが重要と言えるだろう。
今回のUGCと指名検索の相関分析から見えたポイントは下記の3つだ。
- UGCは指名検索につながる。ただし繁忙期などの外的要因を考慮する必要がある
- 何が相関するかはブランドごとに異なるため、自社に合う指標を見極めることが重要
- Instagramはストック資産であり、長期視点で効果を見ること
SNS運用を仕組み化する「Social Insight」の新機能
ユーザーローカルは、ビッグデータとAIを活用して企業のマーケティングDXを支援する企業だ。Web解析・SNS分析・チャットボット・生成AI基盤など、ユーザー行動の変化に対応するためのデータ活用ツールを、これまで5,000社以上へ提供してきた。同社が提供する主なサービスは、次の4つだ。
- Webマーケティング分析ツール「User Insight(ユーザーインサイト)」
- SNS分析・運用支援ツール「Social Insight(ソーシャルインサイト)」
- 顧客サポートを自動化する「Support Chatbot(サポートチャットボット)」
- 企業独自の生成AI環境構築「User Local ChatAI(ユーザーローカルチャットAI)」
また、Social Insightの新機能として、「クチコミ分析の表示回数の可視化」「AIトピック要約」「投稿作成の自動化」「AI投稿リスクチェッカー」などが紹介された。
SNSの運用は属人化しがちですが、Social Insightの機能で分析や投稿品質を標準化できます。SNS運用において、「人の感性」や「ブランドへの思い」は欠かせませんが、それをひとりで抱え込むのではなく、チームと仕組みで支えることが大切です(井上氏)
ツールやAIは、人の仕事に置き換えるものと捉えられがちですが、本来は人の思いをより遠くまで届けるための仕組みです。これからも、思いがしっかりと込められたSNS運用をSocial Insightを通して支援していきたいと思います(佐々木氏)
生成AI時代、SNSはユーザーの最終判断を支える情報源として重要性を増している。フジドリームエアラインズの事例は、UGCが自然に増えるものではなく、企業の関わり方で育てられる資産であることを示していると言えるだろう。