Webサイトのトップページはもはや不要? 商品情報を「売れるコンテンツ」に変えるPIM/DAM連携
更新ツールと化したCMSからの脱却。PIM/DAM×CMS連携により、商品情報を「売れるコンテンツ」へと変える設計論をキノトロープが解説する。
7:05
スマートフォンの普及によって流入経路が激変し、トップページ起点の設計が通用しにくくなった今、CMSは単なる「更新ツール」ではなく「サービス基盤」として捉え直す必要がある。「Web担当者Forum ミーティング 2026 春」に登壇したキノトロープの生田昌弘氏は「PIM/DAM×CMS連携の最適解」をテーマに、コンポーネント化とユーザー体験シナリオを軸にした設計からDB、運用までをつなぐ実践的なアプローチと、商品情報を「売れるコンテンツ」に変えるための戦略を解説した。

スマホとSNSの普及でユーザーと企業が出会う「入口」が激変している
生田氏は自身がオーナーを務めるeスポーツチーム「KINOTROPE gaming」の取り組みを紹介した。同チームは世界最大規模の大会「Esports World Cup(EWC)」において、「APEX部門」と「PUBGモバイル部門」の2部門で出場を果たすなど、世界を舞台に躍進している。
生田氏は、このeスポーツ事業を通じて、ユーザーと企業が出会う「入口」の激変を実感しているという。たとえば生田氏がeスポーツの話をした際、25歳以下の若者たちは目を輝かせて聞いてくれるが、30歳を超えた大人たちはまったく関心を示さない。世代間で情報に対する反応が完全に分断されているのだ。
この変化は、キノトロープの採用活動における明確な数字となって表れている。eスポーツチームの所属選手陣を含めたSNSの総登録者数は100万人に到達。その結果、求人活動を一切行っていないにもかかわらず、マイナビからの新卒エントリー数がこの3年で4倍以上に急増したという。
生田氏の指摘する「入口の変化」とはまさにこのことだ。かつてユーザーが企業を知る入口といえば「企業サイトのトップページ」だった。しかし今の若い世代は、SNSや自分たちの関心ごと(eスポーツなど)を「入口」として企業を認知し、直接アクセスしてくる。
この流入経路の変化をもたらした根本原因が、スマートフォンの普及である。データを見ると、インターネット利用はすでにスマホが主流であり、「スマホ利用者」が全体の90%、「スマホのみ」の利用者が53%と過半数を占める一方で、「PCのみ」の利用者はわずか1%にすぎない。
生田氏が「今のWebは激変している」と語る背景には、こうしたライフスタイルと行動動線の根底からの変化がある。
更新のしやすさだけを求めたCMSがゴミの山と化す理由
スマホによって入口が分散した結果、現代の企業サイトに求められるのは、「ユーザーを迷わせず、必要な情報にすばやく到達させる」ことだ。ところが実際のCMS運用はむしろ逆方向へ進んでおり、「今のCMSの状況はゴミだらけになっている」と生田氏は指摘する。
10〜20ページ程度であれば品質を保てるが、1000〜2000ページ規模になると管理の目が行き届かなくなる。さらに、各部署の担当者が自由に運用・更新できるようになった結果、品質の低いコンテンツが量産され、誰も全体をチェック・統制できない状態に陥ってしまうのだ。
生田氏によれば、その根本原因は、日本のCMSがブログツールから発展してきた歴史にあるという。つまり、ページ単位(1対1)で「現場が更新しやすいこと」を目的に導入されているケースが多く、それはあくまで「運用更新ツール」にすぎない。
資料の見た目を整えるだけでは、ユーザーの問題は1ミリも解決しません。更新が大変なのはシステムやツールの問題ではなく、サイト全体の「設計」が欠けているためです。CMSは「更新ツール」から、ユーザーへのサービス向上を目的とした「サービス基盤」へとパラダイムシフトしなければならないのです(生田氏)
CMSの本質はユーザーの検索流入を迷わせない「マルチエントランスマネジメント」
では、本来のCMSのあるべき姿とは何か。生田氏はAmazonを例に挙げる。
閲覧履歴や購買履歴を前提に動的にページが生成されています。すべてのページがこうなるべきでしょう(生田氏)
これを一般の企業サイトに当てはめると、「トップページから入る時代は終わった。すべてのページが入口であり、出口であるべき」という考え方に行き着く。つまりCMSとは、ユーザーがどこから来てどこへ向かうのかという導線上に、最適なコンテンツを配置するための「心臓部」なのだ。
ここで求められるのが、ユーザー体験シナリオと連動した「マルチエントランスマネジメント」である。生田氏は「トップページやリストページという概念はない」としたうえで、「このキーワードにはこのページ」と割り切ってでも、検索流入の入口でユーザーが満足できるページを用意すべきだと説く。
重要なのは、お客様が一番ハッピーになれる「入口」と「出口」のシナリオを考えてサイトを作ることです(生田氏)
コンポーネント化でページ単位の管理から脱却
では、入口と出口を意識した最適なユーザー体験を、膨大なページ群の中でどう実装するのか。その解が「コンポーネント化」である。
生田氏はホテル情報を例に挙げた。ホテル名、紹介文、画像、電話番号などの情報(エレメント)をひとつのパッケージにし、それを「コンポーネント」としてデータベースに登録する。ポイントは、テンプレートにはめ込む際、一覧ページ用や詳細ページ用など、「表示1、表示2、表示3…」と複数の表示形式を選べるようにすることだ。
コンポーネント単位で管理することで、CMSの自由度が劇的に高まります(生田氏)
さらに生田氏は、運用を「仕組みで軽くする」発想を取り入れるべきだと説く。極端にいえば、コンポーネントのリストを作ってそこからコピーして使うルールにするだけでも、運用負荷は大幅に下がる。紙媒体の制作工程では、あらかじめ「箱(レイアウト)」を決めて情報を流し込むからこそ短納期で回せる。Web制作がこの発想を十分に取り入れず、都度ページを作る属人的な「全部盛り制作」を続けていることの限界を指摘した。
PIM/DAM×CMS連携は「OUT」から設計する
本セッションのテーマであるPIM(商品情報管理)/DAM(デジタル資産管理)とCMSの連携も、単にデータを1箇所に集めるだけでは価値を生まない。
生田氏は、PIMやDAMを入力が簡便な「基本データベース」として評価しつつも、設計をシステム担当者だけで進めてしまうことに警鐘を鳴らす。
システム側は「今ある素材でちゃんと表示できること」しか考えておらず、使いやすさを考慮していません。だからこそ、コンテンツを作る制作側の人間が設計に立ち会うべきです(生田氏)
キノトロープでは、情報の「IN(入力)」と「OUT(出力)」の洗い出しをディレクションの仕事と位置づけている。しかも、手元にあるデータ(IN)からページを作るのではなく、「このページ(OUT)にはこれだけのコンテンツが必要だ」というユーザー起点の必要要件から定めるのだ。
実務におけるデータベース設計の手順は、以下のように明確な「逆算型」となる。
フェーズ 0:必要項目の洗い出し(OUTの設計)
比較や絞り込みといった機能も含め、最終出力(OUT)に必要な要素(パンくず、カテゴリ名、商品説明、画像、型番など)をすべて洗い出し列挙する。
フェーズ 1:概念設計
列挙した要素をカテゴリ/シリーズ/商品などのエンティティにカテゴライズしてまとめる。
フェーズ2:論理設計
ER図(Entity Relationship Diagram:実体関連図))を作成し、正規化によって従属関係や多対多の関係を整理する。
生田氏は、「このフェーズ0の『OUT像』をきちんとシステム側と共有できれば、設計は終わったようなもの」だと語る。以降の概念設計や論理設計は一般的なデータベース構築と同じであるため、任せてしまってよいという割り切りだ。逆に、この「OUT設計」を飛ばして、PIM/DAMに「今あるデータ」を入れ始めると、後から必要な情報を出力できず、カスタマイズの泥沼にはまることになる。
設計するのはシステムではなく「出会いの場」である
PIM/DAMやCMSの議論は、どうしても「どのツールを入れるか」「どうすれば更新しやすくなるか」に偏りがちだ。しかし、CMSの本質は「コンテンツを一元管理し、適切に素早く出力すること」にある。その中に入るコンテンツを作るのが担当者の仕事であり、この軸がブレると更新ツールの延長としてサイトだけが膨張し、統制を失っていく。
設計がないまま更新だけが積み重なるサイトは、建築途中で放置された巨大なホテルのようなものです(生田氏)
Webにおけるユーザー体験シナリオとは、「場所(ページ)」ではなく「ユーザーニーズ」そのものである。「あれがしたい」「これが欲しい」というニーズがキーワードとなって表れる。だからこそ、「キーワードを入力したユーザーが一番幸せになる形」を考えることがすべてであり、トップページ中心の構造はもはや前提として成り立たないのだ。
生田氏のメッセージはシンプルだ。
- OUT:何を出すか
- 部品化:どう再利用するか
- DB:どう持つか
- 運用:誰が作り、誰が守るか
この順序で設計を固定することが先決である。
あなたが設計しているのは「システム」ではありません。「お客様と商品の出会いの場」なのです(生田氏)
その出会いの場を成立させるためにPIM/DAMとCMSをつなげば、商品情報は単なるデータから、ユーザーの意思決定を前に進める「売れるコンテンツ」へと変わると訴えた。