ここがよかった!ここがスゴイ! 後藤真理恵の企業SNS活用事例ピックアップ

個性・専門性・熱量が光る! 社員が主役となって成果を上げているSNS好事例

社員や職員が人柄・専門性を見せつつ、商品や組織のプロモーションにつなげる施策に注目してみましょう。

後藤真理恵(コムニコ)[執筆], なとみみわ[イラスト]

7:05

当連載では、企業・団体のSNS担当者のみなさんにお役立ていただけそうな良質なSNS活用事例をピックアップし、「どこが優れているのか」「なぜ話題になったのか」などをやさしく解説していきます。

企業・団体のSNS投稿やSNS施策のなかでも、比較的最近の事例や再現性のある事例を取り上げ、お忙しいみなさんでも数分で読めてSNSアカウント運用の参考にしていただけるような記事を目指しています。

SNSでは「何を」以上に「誰が」発信しているかが重要

企業のSNS運用では、「何を発信するか」に注目が集まりがちです。しかし、近年の国内外での調査結果を見ると、消費者にとっては「誰が発信しているか」の重要性が高まっているように感じます。すなわち、信頼できる情報源として「企業公式アカウント」の位置づけは変わらないのですが、それ以上に「友人や知人のクチコミ」や「専門家や研究者の発信」を重要視する消費者が増えているのです。

そんななか、注目されているのが、社員や職員がSNSに登場して、人柄・専門性を見せつつ、商品や組織のプロモーションにつなげる施策です。今回は、社員や職員が組織のSNSに登場することでファンづくりやブランド価値向上につなげている事例をご紹介します。

【シャボン玉石けん】- 「美肌社員リレー」が放つ、確かな説得力

シャボン玉石けんの公式TikTokアカウントでは、実際に働く社員がしばしば登場しています。2025年6月には「美肌社員リレー」と題した動画投稿が人気を博しました。登場しているのはもちろん、同社の社員です。

@shabontik 肌悩みしている人必見💡 2人目の肌ケアが簡単すぎた!! #シャボン玉石けん #無添加せっけん #肌悩み #スキンケア ♬ かわいい ほのぼの 子供 ペット 運動会 - SOUND BANK(サウンドバンク)

 反響の大きかった「美肌社員リレー」投稿

この動画は、美肌を持つ社員に「きれいな肌を守る秘訣は何ですか?」と尋ねた後、「あなたが、肌が一番きれいだと思う人を紹介してください」と依頼し、リレー形式で次の社員が登場するというシンプルな構成になっています。

注目したいのはただの商品PR動画にはなっていない点です。おそらく動画に登場する社員全員が自社商品愛用者だと思われますが、美肌を守る秘訣として「当社の〇〇を毎日使っています!」と答えている社員は半数ほど。残り半数は「タンパク質を摂る」「よく寝る」など、ごく一般的な習慣を挙げているのが印象的です。つまり、商品を主役にするのではなく、人(社員)を通じてブランド価値を伝えているのです。

企業が自ら自社商品の特徴や効果を語るよりも、「自社商品を実際に毎日使っている社員」の姿(美肌)を見せる方が、説得力・親近感が高まり信頼されやすくなる好事例といえるでしょう。

また、「美肌社員が多い会社」=「自社商品に愛着を持っている社員が多い会社」という印象にもつながるため、商品だけでなく企業そのものへの好感にもつながることも期待できます。

【こちら島根県庁全力公務員】- 職員をフックに行政への理解促進

島根県子ども・子育て支援課の公式Instagramアカウントの一つ「こちら島根県庁全力公務員」では、結婚支援や子育て支援といった県の取り組みを「全力公務員」がショート動画で楽しく紹介しています。「島根県庁に絶対いる人」は、「誰もが何かのスペシャリスト」として、県庁職員を紹介する人気動画シリーズです。

職員が体を張って登場する姿や、各職員のユニークな経歴や趣味などが共感を呼び、県内外のユーザーから好意的なコメントが多く寄せられています(以下はコメントの一例)。

  • 人生を楽しみながらお仕事できる職場って素敵ですね。
  • 島根に引っ越したくなりました
  • 島根県大好きです さらに大好きになりました

行政機関のSNSは、どうしても硬いお知らせ中心になりがちです。この「こちら島根県庁全力公務員」Instagramアカウントは、流行の音源やフォーマットを取り入れながら、職員自身が素の姿で情報発信している姿を見せることで、信頼感と親近感の両立に成功しています。

興味深いのは、県の取り組み・住民のための各制度を知ってもらうために、まず「投稿に登場する『人』(職員や首長)に興味を持ってもらう」、そして「県のSNSアカウントに関心を持ってもらう(フォローしてもらう)」ことをフックにしている点です。

行政広報においては「正確性」「わかりやすさ」が重要ですが、そればかりを追求しても、SNSを通じて住民に情報を届けることは難しくなっています。このアカウントは、「親しみやすい職員が多いな」「こんな特技を持つ職員が働いているんだな」など、まずは「人」に興味を持ってもらい、結果的に「県の取り組み/制度」や「県職員の働き方」の理解促進につなげています。

【高島屋】畑 主税(高島屋和菓子バイヤー公式)- 「専門家社員」が組織のブランド価値を向上

上述した2つの事例は「公式アカウントの投稿に社員/職員が登場する」スタイルでしたが、こちらは「社員が、自分の個人アカウントで情報発信する」事例です。高島屋の和菓子バイヤー・畑主税さんのXアカウントは、圧倒的な熱量と専門知識を持つ「個人のバイヤー(私)」が発信することで、ユーザーからの絶大な信頼とエンゲージメントを獲得しています。

このアカウントでは、全国の和菓子情報や和菓子文化の魅力を日々発信しています。特徴的なのは、高島屋の商品紹介/催事案内だけをしているわけではないことです。競合店を含む他店で購入した和菓子もたびたび紹介されていることに驚きます。どの投稿にも共通するのは、和菓子職人など作り手への敬意と、地域文化への愛情です。

競合店で購入した和菓子についても、愛と知識あふれる解説が添えられる

洋菓子やラーメンを紹介することも

フォロワーは、「高島屋の宣伝が見たい」というよりは「畑さんのおすすめ和菓子が知りたい・買いたい」と思って集まっているのでしょう。社員個人の専門性が信頼を集め、「専門家のページ」としての地位を確立。その結果、「和菓子に対する愛と知識量がすごいバイヤーがいる百貨店」として企業そのもののブランド価値向上にもつながっています。

まとめ

今回紹介した事例に共通しているのは、「人の顔が見える」ことです。

シャボン玉石けんは社員のリアルな姿で信頼を獲得し、島根県庁は職員の人柄で行政への関心を高め、高島屋はバイヤーが専門家としての個人ブランドを築いています。

企業がSNSを活用する場合、必ずしも「企業」という大きな主語で語る必要はありません。今回紹介した事例のように、社員や職員の個性、専門性、熱量をそのままSNSのコンテンツに生かすことで、商品や企業の価値を伝え、ユーザーからの共感や信頼、親近感を得られます。まずは自社の「個性豊かな/専門性の高い/熱量が高い人材」を見つけるところから始めてみてはいかがでしょうか。

なお、「個人」を前面に出すSNS運用を行う場合、通常の広報投稿とは異なるリスク管理が必要です。協力してくれる社員を各種トラブルから守るためにも、以下のチェックリストを参考にしてください。

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【本人の同意取得】
□ 本人の掲載同意を書面または記録に残る形で得ている(SNSの種類・掲載期間など)
□ 個人情報の表示範囲について合意している(フルネーム可・名前のみ可・イニシャルのみ可など)
□ 退職・異動時の投稿の取り扱いを決めている(残す・アーカイブする・プロフィールだけ削除 など)

【リスクマネジメント】
□ SNS投稿の内容・表現に問題がないかダブルチェック体制をとっている(機密情報・プライベートな情報・誤った情報・不謹慎な内容 など)
□ 炎上や誹謗中傷が発生した場合の対応ルールがある
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