当連載では、企業・団体のSNS担当者のみなさんにお役立ていただけそうな良質なSNS活用事例をピックアップし、「どこが優れているのか」「なぜ話題になったのか」などをやさしく解説していきます。
企業・団体のSNS投稿やSNS施策のなかでも、比較的最近の事例や再現性のある事例を取り上げ、お忙しいみなさんでも数分で読めてSNSアカウント運用の参考にしていただけるような記事を目指しています。
生成AIを活用する企業が過半数に、SNS運用はどうなる?
総務省が2025年7月に公開した「令和7年版 情報通信白書」によると、生成AIに対して「積極的に活用する方針」「活用する領域を限定して利用する方針」を定めている企業の比率は49.7%とほぼ半数。さらに「何らかの業務で生成AIを利用している」と回答した企業は55.2%と半数を超えたそうです(2025年2月時点)。
いずれも米国、ドイツ、中国など他国と比べると低い数値ですが、2024年調査より確実に増加しており、日本でも業務で当たり前に生成AIを使う時代がやってきたと言えるでしょう。
参照元:総務省|令和7年版 情報通信白書|企業におけるAI利用の現状
企業の業務の1つである「SNS運用」においても、生成AIを使って「効率化」「量とスピードの向上」「コスト削減」を実現している/目指している企業が増えています。
今回は、そんな時代なのに、いえ、そんな時代だからこそ、AI生成ではなく「実写の画像・動画」をSNSでうまく活用している企業事例を紹介します。
そもそも「生成AIが得意な画像・動画」とは
各種生成AIの進化は目覚ましく、AI生成なのか否か見分けが難しいほど質の高い画像や動画が、SNSでも多く見られるようになりました。たとえば以下は、特に生成AIが「得意」とする画像の例です。
- SNS投稿に使うアイキャッチ、説明図
- 抽象的な概念を視覚化(例:「未来」「安心」)
- 商品画像のバリエーション展開(例:背景変更、季節感の演出)
- イメージ画像(例:商品使用シーン、ペルソナのビジュアル)
一方で、生成AIにも「苦手」または「作れない」画像や動画があります。その具体例、つまり「実写にすべき画像や動画」の例を、以下事例で見ていただければと思います。
【羽田空港】- 足でネタ探し&その場だけの「音」を伝える
羽田空港のInstagram公式アカウントでは、羽田空港に関するタイムリーな情報やショップのおすすめ商品、飲食店の注目メニューなどを発信しています。
2025年11月16日には、空港内文具店でのみ取り扱っているポストカードを紹介していました。「羽田空港のあちこちで見つけた“いい色”を集めてみました」として、SNS担当者がポストカードを手にして空港内を回り、(おそらくスマホで)撮影した画像を使っています。
この投稿は、実際にポストカードを手にして空港内を歩き回り、「ここぞ」というポイントを見つけなくては実現しません。一見カラフルで華やかな投稿ですが、「SNS担当というのは、意外と泥臭い仕事なんだな」と親近感を覚えたユーザーもいたことでしょう。
また、2025年11月10日には「羽田空港で聞こえるこの音、何の音?」とクイズ形式で音声入りの動画投稿を行っていました。正解は自動走行モビリティの音だそうで、「乗ってみたい」「必要な方にはありがたいですね」など、好意的なコメントが寄せられています。モビリティそのものの認知だけでなく、同空港のバリアフリーへの取り組みも、認知拡大できたのではないでしょうか。
観光地や施設などのPRにおいて、風の音や水のせせらぎ、鳥のさえずりや虫の声などは、その場の空気感を伝える重要な要素といえます。AIで生成する環境音は一般的な音のライブラリ的合成になりやすく、その場所固有の反響やノイズなどを再現することは難しいでしょう。「そこに行かなければ聴けない、リアルな音」を入れた動画を作ることで、ユーザーに「行ってみたい」と思ってもらえる可能性が高まります。
【佐野機工】- 「リアルな反応」と「臨場感」を動画で届ける
進化系防犯グッズなどを製造販売している佐野機工のXアカウントでは、同社の防犯製品の使い方や特徴を、リアルな動画で紹介しています。
2025年5月8日には、進化系さすまたのリニューアルについて「どこが変わったのか」を動画で見せていました。
\\ シン・不動🦖⁉️ //
佐野機工の進化系さすまた
【 #不動 / FUDO 】を
リニューアルしました!
「どうやって使うの?🤔」
「どこが変わったの?🤔」
今後公開する8⃣本の動画で
詳しくご紹介していきます📺
暮らしの安心安全を守る新しい防犯製品#佐野機工の不動 をご覧ください🙌 pic.twitter.com/oOEPQZlvUa— 佐野機工|進化系防犯グッズ+暮らしの銅雑貨の会社 (@sano_kiko) May 7, 2025
注目すべきは、社長が自ら身体を張って(倒され、拘束され)、自社製品をアピールしている点です。他の動画でも社長がよく登場しているため、「社長さんアザとか大丈夫?」「社長の身体が心配」等、気遣うコメントが多く寄せられていました。SNS担当者からは、社長は柔道経験者で受け身がうまいこと・ケガも筋肉痛もないことなどをていねいに返信し、安心感を与えている点も好印象です。
また2025年11月11日には、小学校で行った「不審者対応訓練」の様子を動画で紹介していました。「訓練ってどんな雰囲気なのだろう?」「訓練では何をするのだろう?」といった疑問への答えが、約1分間の動画にまとめられています。
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廊下で不審者に遭遇🕵️
あなたならどうする⁉️⁉️⁉️
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今回は平塚市勝原小学校さまで行った
防犯講習・訓練の第3⃣弾‼️
「不審者対応訓練」をご覧ください👀💡
平塚市教育委員会さまから
市立幼稚園・小中学校全4⃣5⃣施設に
佐野機工の進化系さすまたを導入いただき
全校に訪問し訓練実施中です🏫 pic.twitter.com/lIUBkNLz92— 佐野機工|進化系防犯グッズ+暮らしの銅雑貨の会社 (@sano_kiko) November 10, 2025
動画には現場の音もそのまま入っており、不審者役が大声で威嚇している様子や、周りで見守っている参加者のどよめきなどリアルな反応が伝わります。また、最初は笑いすら出ていたのに、最後の質疑応答の時間になると参加者の顔つきがガラリと変わるなど、「その場で撮った動画でしか伝えられない臨場感」をぜひ参考にしていただければ幸いです。
【松浦機械製作所】- 実写で伝える技術力や社風
工作機械メーカー 松浦機械製作所のDX推進室長 松浦氏のXアカウントでは、自社の高い技術力や業界の専門知識をユーモアとともに発信しています。(同社は複数SNSを運用していますが、Xには公式アカウントがありません)
2025年11月11日には、ハイブリッドAM工法(3Dプリントと切削の統合)を用いた3D QRコード製作動画を投稿し、「なんかこの工法だからこそ効果的な複雑部品って世の中ないですか?」とユーザーに問いかけていました。
ちょっと3Dプリントして,削る…
ちょっと3Dプリントして,削る……
ちょっと3Dプリントして,削る………
弊社の開発した機械(ハイブリッドAM工法)だと深い細溝でも安定して削ることができるというわけです
なんかこの工法だからこそ効果的な複雑部品って世の中ないですか? https://t.co/pkEXubeieG pic.twitter.com/PWdeiUDkDW— しつちょう|しゅごい工作機械屋さん (@yuto_matsuura) November 10, 2025
こうした製品デモ・耐久テスト・実験動画などは、実写だからこそ技術力や安全性の「証明」になります(AIで生成すると偽・誤情報に該当する可能性があります)。また、実写だからこそ、多くのユーザーの共感を集めるのです。
2025年11月5日には、社内イベント(定年を迎えた方を祝う会)の様子を動画で紹介していました。演出や映像編集などはほぼなく、もちろんAI生成ではありません。実写だからこそ「会社および社員のリアルな姿」が伝わってきます。
弊社では定年を迎えた方にはお祝いをお渡ししています
社内の有志の協力者から500円ずつ集めるのですが,毎回担当者や協力者が直接現金を回収したり渡したりしています
こういう寄付とかカンパのアプリってなんかいいのないですかね(給料天引きの処理は面倒だからダメらしい) pic.twitter.com/WyAwDiAfnL— しつちょう|しゅごい工作機械屋さん (@yuto_matsuura) November 4, 2025
30秒ほどの短い動画ですが、窓が大きく明るいオフィスの様子や、従業員の服装や属性(年齢・性別など)も確認でき、同社への入社を検討しているユーザーに喜ばれるコンテンツといえるでしょう。
まとめ
2025年現在、インターネット空間における「真実」は希少なものとなりつつあります。企業の公式SNSアカウントの役割に、「事実の立証」が新たに加わったと考えていただくのがよいでしょう。今回取り上げた「SNS投稿用画像・動画の作成」でいえば、「生成AIで作れるもの」と「実写で作るべきもの」を分けることが大切です。
AI生成の画像・動画には、ディープフェイクなど偽・誤情報の拡散、著作権侵害、消費者の「AIアレルギー」に起因するブランド毀損など、従来存在しなかった複雑なリスクが増えてきました。それでも、SNS担当者のみなさんには、こうしたリスクと取るべき対策を理解した上で、生成AIを一層積極的に活用していただきたいと願っています。
「真実」は実写の画像・動画で伝えつつ、生成AIを使ってSNS運用の「効率化」「量とスピードの向上」「コスト削減」を目指していただけたら幸いです。
