ここがよかった!ここがスゴイ! 後藤真理恵の企業SNS活用事例ピックアップ

「攻撃しない!」「じゃれあわない!」企業アカウントがライバル企業とSNSでからむコツとは

過去、もしくは直近で話題になったSNS投稿やSNS施策に関して、「なぜ話題になったか」「良かったポイントは」などをコムニコ後藤さんが解説。

企業・団体のSNS担当者のみなさん、日々のアカウント運用、大変おつかれさまです。お忙しい日々を送られるなか、良質で大量な情報インプットを続けることはできていますか?

当連載では、企業・団体のSNS担当者のみなさんにお役立ていただけそうな良質なSNS活用事例をピックアップし、「どこがすぐれているのか」「なぜ話題になったのか」などをやさしく解説していきます。企業・団体のSNS投稿やSNS施策のなかでも、比較的最近の事例や再現性のある事例を取り上げ、みなさんのSNSアカウント運用の参考にしていただけるような記事を目指しますので、よろしければどうぞお付き合いください。

今回取り上げるのは、「ライバル・競合・好敵手」とうまくからむことで、両社ひいては業界の認知拡大や好意度向上などにつなげることができた事例です。

日本の比較広告が“海外ほど攻撃的でない理由”とは

海外とくにアメリカのSNSでは、「相手企業をけなす・攻撃する」「自社商品が競合に比べいかに優れているかを派手にアピールする」といったケースがよく見られます。これは、アメリカでは比較広告に対する規制が比較的ゆるやかであることが最大の理由でしょう。

一方で日本の場合、比較広告は禁止されていないものの、「不当景品類および不当表示防止法(景品表示法/景表法)」によって制限されています。比較によって自社商品が優れている、もしくは有利であるとの誤認を招く比較広告は「禁止」されていますし、中傷、誹謗にあたるような攻撃的な内容は「注意が必要」とされています。

参考消費者庁|比較広告に関する景品表示法上の考え方(PDFファイル)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_37.pdf

そのため、国内では比較広告自体あまり見かけませんし、あったとしても「自社製品の新旧比較」や「他の社名や商品名は伏字」にされているケースが目立つわけですね。

ここはアメリカではなく「日本」。そして舞台はユーザー同士がつながり合う「SNS」です。選択肢の1つは「ライバルにはふれない・かかわらない」こと。社内の運用ルールでそう決めている場合は、引き続き遵守するのがよいでしょう。

ライバルとからむなら「目的」「意識」「タイミング」が大切

「社内ルール上も問題ない」「ぜひ、ライバルともからんでみたい」のであれば、その「目的」をしっかり定めること、意識を変えることが大切です。

(例)
  • ライバルのイメージを落として、売上を奪ってやろう!
  • ライバルの公式アカウントから、フォロワーを奪ってやろう!
 ↓  ↓  ↓
  • ライバルに関心があるユーザーは自社にも関心を持ってくれるかも。ライバルにもユーザーにも嫌われないよう注意しつつ、つながりの輪に入れてもらおう!
  • ライバルとの「優劣」ではなく「違い」をユーザーに理解してもらって、購入検討時の選択肢に入れてもらおう!
  • ライバルと協力して、業界全体を盛り上げよう!

さらに付け加えるならば、SNS発信には「タイミング」も重要です。
こうした目的・タイミングもふまえて、参考になる好事例をご紹介していきます。

事例:「#ライバルが手を結ぶ日」しあわせ信州&まるごと青森

直近にあった絶好のタイミングといえば、1/21「ライバルが手を結ぶ日」でした。ライバル企業・団体同士がSNS上でからむ中、キラリと光った2例を紹介します。

りんごの産地として有名な長野県と青森県の両アカウントは、「ライバルが手を結ぶ日」である1月21日に内容を揃えて同時投稿していました。

このように、複数アカウントが同時刻に同内容(または関連内容)を同時投稿する、という手法は、すでに見慣れた人も多いでしょう。ここで注意すべきは、「ただのじゃれあい」「お互いに褒め合うだけ」に終わらせないことです。妙な身内感・仕込み感は、フォロワーを冷めさせてしまいかねません

その点、両アカウントは互いのりんごを褒めるだけでは終わりませんでした。続くツイートでは「シナノスイート」は長野県、「ふじ」は青森県でそれぞれ誕生したことを解説。この「豆知識」を受けて「そうなんだ」「でも自分は〇〇産の方が好み」など、互いのフォロワーから多くの共感と反応を集めることに成功しています。

ちなみに、これが事前に打合せした上での同時投稿だったことは誰の目にもあきらかですが、両者が仲良くしていることを多くのフォロワーは微笑ましく好意的に捉えたようです。

事例:「#ライバルが手を結ぶ日」Honda Bike(ホンダ バイク)

同じく「ライバルが手を結ぶ日」に、ホンダ バイクの公式アカウントが、ライバルである国内メーカー3社(スズキ、ヤマハ、カワサキ)のアカウントをメンションし「これからも業界をいっしょに盛り上げていきましょう」と呼びかけました。

どうやらこれは事前打ち合わせのないツイートだったようで、呼びかけられた3社はそれぞれ異なった対応を見せていたのが興味深いところです。

ヤマハ バイク の反応

午前8時のホンダ バイクからのツイートに対して、午後7時ごろに画像付きで返信。突然の呼びかけに反応すべきか否かの確認や、返信内容の承認を得るために、中の人は「(社内を)走り回っていた」のかもしれませんね。

ヤマハ バイクは、時々ユーザーや他アカウントの投稿に反応していますので、この3社のなかでは一番返信してもらえる可能性が高かったといえるでしょう。実際一番乗りで反応したことから、ますますこのアカウントの“親しみやすさ”が増したに違いありません。

カワサキモータースジャパン の反応

1月24日0時に、シンプルな内容を文字だけで返信しています。おそらく社内確認&承認をきちんととった後で、予約投稿したもののようです。

注目すべきは、通常このアカウントは他アカウントやユーザーからの返信に反応していないという点です。おそらく今回は、アカウント運用ルールの「例外」扱いだったのでしょう。フォロワーたちもこの点に気付いていたようで、お気に入りメーカーがライバルからの呼びかけに珍しく反応したことに対して、驚きと喜びのコメントが多く寄せられていました。

スズキ・国内二輪公式アカウント の反応

https://twitter.com/suzukicojpmotor

3社のうちスズキだけは、ホンダからの呼びかけにいっさい反応していません(3月7日時点)。このアカウントはもともと、他アカウントやユーザーとのコミュニケーションをしていないので、今回の対応も社内の「アカウント運用ルール」を遵守した結果なのでしょう。スズキだけが反応しなかったことに気付いているユーザーも多々いましたが、ネガティブな意見はなく、むしろ「ブレない姿勢」を認める声が見られました。

“二輪メーカー各社のファン=二輪のファン”と捉え、「みんなで二輪業界を盛り上げていきましょう」とする呼びかけは、多くのユーザーから好意的に反応されていたことがわかります。

また、上述した三者三様の対応とその結果は、みなさんの企業がライバルから突然呼びかけられた際の参考にしていただければ幸いです。

事例:自社またはライバル企業にとって特別な意味を持つ日

ライバルとからめるタイミングは、他にもいろいろあります。自社またはライバル企業にとって特別な意味を持つ日を探してみましょう。

浄土真宗本願寺派(西本願寺)公式インスタグラム

https://www.instagram.com/p/CmjAe8ItZX5/

浄土真宗本願寺派(西本願寺)は、キリスト教徒にとって特別な日である「クリスマス」に、ブッダからイエス・キリストへのメッセージを投稿しました。宗派や国、民族などの違いを超えて平和を願うメッセージは、ロシアによるウクライナ侵攻が続いている今だからこそ、いっそうユーザーの心にも染み渡ります。

慶應義塾 & 早稲田大学

慶應義塾と早稲田大学は、両学にとって大切な日「1月10日」に同時投稿しました。この日は、早稲田大学の創設者である大隈重信の命日であると同時に、慶應義塾創設者の福澤諭吉の誕生日とのこと。「2人は大変仲も良く互いに助け合った」と伝わることから、両学も“永遠のライバル”と呼ばれる間柄でありながら、ここまで仲睦まじい関係性をSNSで見せてくれているのでしょう。

ちなみに前述した「ライバルが手を結ぶ日」でも、両学は同時投稿したりしています。

まとめ

SNSでライバルとどうかかわるべきか。もちろん、「いっさいふれない・かかわらない」のも選択肢の1つです。それでもあえて、SNS上でライバルとかかわることで、フォロワーとの良好な関係構築をしたい・業界全体を盛り上げたいとお考えなら、以下のポイントを意識しながら、念入りかつ慎重に準備を進めてみてくださいね。

  • 攻撃的にならない。
  • フォロワーが冷めるほど内輪感を出さない。
  • ユーザーから共感を集められる要素を加える。
  • 投稿タイミングを見極める。
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