ここがよかった!ここがスゴイ! 後藤真理恵の企業SNS活用事例ピックアップ

消費者心理を掴む! インサイトで差をつけたSNSマーケティング事例3選

「インサイト」とは、消費者自身も気付いていない無意識の心理や潜在的なニーズ。効果的なSNSマーケティングには不可欠です。

当連載では、企業・団体のSNS担当者のみなさんにお役立ていただけそうな良質なSNS活用事例をピックアップし、「どこがすぐれているのか」「なぜ話題になったのか」などをやさしく解説していきます。企業・団体のSNS投稿やSNS施策のなかでも、比較的最近の事例や再現性のある事例を取り上げ、みなさんのSNSアカウント運用の参考にしていただけるような記事を目指しますので、よろしければどうぞお付き合いください。

インサイトをうまく捉えている3つの事例を紹介

SNSマーケティングにおいて大事なことの1つは、ターゲットユーザーのインサイトを押さえること、そして社会の変化に対応することです。「インサイト」とは、消費者自身も気付いていない無意識の心理や、潜在的なニーズを購買欲求へと変化させる要素のことを指します。効果的なマーケティングには、インサイトの把握が不可欠です。今回は、ターゲットユーザーのインサイトをうまく捉えている3つの事例を紹介し、企業のSNS担当者が参考にできるポイントを解説します。

(1)温湯温泉 佐藤旅館:1人旅需要の高まりに対応

参照元温湯温泉 佐藤旅館(@nuruyu_sato)さん / X
https://x.com/nuruyu_sato/

「温湯温泉 佐藤旅館」のX公式アカウントは、一人旅を歓迎する姿勢を明確に打ち出し、一人旅のお客様に喜ばれるサービスを積極的に紹介しています。さらに、一人旅の方限定のキャンペーンを実施し、同旅館で1人旅を楽しんだお客様のユーザー生成コンテンツ(UGC)が増える工夫も行っています。

「1名1室」プランの存在と人気ぶりを紹介した投稿
一人旅を楽しんでいる様子をSNSに投稿するとプレゼントがもらえるキャンペーンを実施中

この事例は、日本社会の「1人好き」傾向の高まりというインサイトを的確に捉えているといえるでしょう。博報堂生活総合研究所の「1人意識・行動調査1993/2023」によれば、過去30年間で、1人の時間を大切にする傾向が強まり、生活のさまざまな場面において1人で行動したい人が増加しています(コロナ禍もこの傾向を加速させたと考えられます)。

出典博報堂生活総合研究所 「1人意識・行動調査1993/2023」
https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/106979/ 

潜在ニーズに応える形で一人旅客向けのサービスを前面に押し出し、差別化に成功しています。
さらに、お客様の体験談や写真がUGCとしてSNS上に増えれば、同旅館の一人旅向けサービスの認知はますます拡大し、信頼感と魅力も高まることでしょう。

(2)サンバリア100:SDGs配慮型商品をアピール

参照元サンバリア100(@sunbarrier100) • Instagram
https://www.instagram.com/sunbarrier100/

「サンバリア100」の公式Instagramアカウントでは、10年間使用された、折り畳み式の完全遮光日傘の状態を動画で紹介し、長期間使用しても機能に問題がなく愛用できることを分かりやすく伝えています。

10年使った完全遮光日傘が問題なく利用できることをアピールするリール投稿

この事例は、消費者、特に若年層の間で高まっている「環境や人に配慮した商品に対する関心の高まり=SDGs」というインサイトを捉えています。「長く使える商品」であることをアピールする以外にも、環境に配慮した原材料の使用や環境にやさしい製造工程など、SDGsを意識した情報発信が効果的でしょう。

朝日新聞社が実施した「第10回SDGs認知度調査」によれば、商品購入やサービス利用の際にSDGsに沿ったものであるかどうかをどの程度考慮するか、という質問に対して特に10代は過半数が「考慮したい」と答えています。

出典【第10回SDGs認知度調査】若い世代でSDGsに高い関心 商品購入に影響も:朝日新聞SDGs ACTION!
https://www.asahi.com/sdgs/article/15212866

「傘」の耐久年数は一般的には数年といわれ、ビニール傘のようにほぼ使い捨てされてしまうこともある商品です。「サンバリア100」の「機能/品質を維持したまま10年使える」という特長は、他社商品にはない魅力として若年層に受け入れられる可能性が高いでしょう。

(3)丸井グループ │ この指とーまれ!:男性社員の育児休暇取得を推進

参照元丸井グループ │ この指とーまれ!|note
https://note.com/marui_0101

丸井グループの公式noteでは、同社での働き方を中心に、人的資本に向けた取り組みや働く社員の姿を紹介しています。「サステナビリティ」や「Well-being」に関する取り組みを、社員のリアルな声で紹介したり、親しみやすいイラストを添えたりすることで、親近感を醸成しています。特に目立つテーマの1つが「男性社員の育児休暇取得」です。

「男性育休取得率4年連続100%」を前面に出し、育休取得を会社として推進する理由や、実際に育休取得した男性社員の実体験をまとめた投稿
半年間育児休暇を取得した男性社員による投稿

この事例は、Z世代を中心とする若年層の「働き方に対する新しい価値観」というインサイトを捉えています。
たとえば厚生労働省の調査によれば、男女とも、若年層の9割近く(88.6%)が配偶者にも育休を取得してほしいと思っており、就職したい気持ちが高まる情報1位は「男性の育休取得率」だそうです。

出典厚生労働省「若年層における育児休業等取得に対する意識調査」(速報値)
https://www.mhlw.go.jp/content/001282074.pdf

男女ともに育児休暇をとりやすい企業への就職を希望する若年層にとって、丸井グループのnoteは有益かつ魅力的な情報として捉えられることでしょう。

まとめ

効果的なSNS活用のためには、「ターゲットユーザーへの深い理解」や、「社会変化を捉えた情報発信」が重要です。

インサイトの理解は容易ではありませんが、上述したような調査結果を参考にする他、アンケート調査、ユーザーインタビュー、ソーシャルリスニングを行うなど多角的なアプローチを組み合わせることで、より深い洞察を得られます。顧客の声に耳を傾け、社会の変化に敏感であり続けることで、より効果的なマーケティング戦略を展開できるでしょう。

もちろんSNS活用においては、単なる情報発信だけでなく、フォロワーとの双方向コミュニケーションを活性化することも重要です。インサイトを理解した上で適切な情報発信とコミュニケーションを継続し、ブランドと顧客との間に深い絆を築いていきましょう。

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