ここがよかった!ここがスゴイ! 後藤真理恵の企業SNS活用事例ピックアップ

ユーザーの声はこう活かす! 「ソーシャルリスニング+α」でSNSを最大活用している事例3選

ユーザーの声を収集・分析することで、マーケティング、商品・サービス開発、顧客サポート、リスクマネジメントなどの企業活動に活かす「ソーシャルリスニング」で、改めて自社のSNS運用を見直しましょう。

当連載では、企業・団体のSNS担当者のみなさんにお役立ていただけそうな良質なSNS活用事例をピックアップし、「どこが優れているのか」「なぜ話題になったのか」などをやさしく解説していきます。

企業・団体のSNS投稿やSNS施策のなかでも、比較的最近の事例や再現性のある事例を取り上げ、お忙しいみなさんでも数分で読めてSNSアカウント運用の参考にしていただけるような記事を目指しています。

SNSは「情報発信」だけではない! 成果をあげるために見直す点は?

企業・団体がSNSを活用する際、「企業・団体からの一方的な情報発信」にとどまってしまっているケースが依然として多く見られます。もちろん、「人手不足」や「組織の方針」といった、やむを得ない事情がある場合は致し方ないでしょう。その一方で、企業・団体が「SNS=情報発信ツール」という固定観念から抜け出せていないケースも散見され、これは大変もったいないことだと感じています。

企業・団体がSNSを活用する目的には少なくとも以下4種類があり、これらを組み合わせることで、より確かな成果が期待できるはずです。

  • 情報発信  「企業・団体」→「ユーザー」
  • 情報収集    「ユーザー」→「企業・団体」
  • コミュニケーション    「ユーザー」←→「企業・団体」
  • 情報拡散    (「企業・団体」→)「ユーザー」→「ユーザー」

今回は、SNSを「情報発信」だけでなく、「情報収集」「コミュニケーション」「情報拡散」などの目的でも活用している企業事例を紹介します。

すべての事例で使われている「情報収集」について

まず前提として、以下でご紹介する事例はすべて「SNSを“情報収集”に活用している」すなわち「ソーシャルリスニングを実施している」という共通点があります。

「ソーシャルリスニング」とは、SNS、ブログ、掲示板、レビューサイトなどインターネット上に存在するユーザーの「声」を収集・分析することで、マーケティング、商品・サービス開発、顧客サポート、リスクマネジメントなどの企業活動に活かす手法です。従来型のアンケートや市場調査などでは得にくいユーザーの「本音」や「リアルタイムな感情」を捉えられるメリットがあり、多くの企業や団体が実施しています。

「ソーシャルリスニング」という言葉になじみがなくても、「エゴサーチ(エゴサ)」ならご存じの方も多いのではないでしょうか。会社名や商品名、サービス名などで行うエゴサーチも、ソーシャルリスニング手法の一種です。

「ソーシャルリスニング」で得た「ユーザーの声」をどう生かしたのか? またそれに対してどんな対応を行ったのか? 以下でご紹介する事例では、そうした点にもぜひご注目ください。

フェリシモ 公式アカウント:ユーザーの声を生かした商品開発

https://x.com/FELISSIMO_SANTA

2025年4月23日、定期便などダイレクトマーケティング事業を展開する株式会社フェリシモの公式Xアカウントは、ある個人ユーザーの2024年のX投稿を引用ポストし「お客さまの思い出が詰まった90年代のワンピースをこのたび復刻販売することになりました」と発表しました。

商品復刻のきっかけとなったのは、「90年代に母が購入したフェリシモのワンピースを大切に着ている」「この型のワンピースを製作依頼できるところがあればいいのに」という、2024年8月の一般女性によるSNS投稿(UGC:User Generated Content)でした。この投稿には「素敵ですね」「私も欲しい」といった多くの共感が寄せられたため、フェリシモもこの反響に早く気付いたと考えられます。

復刻のきっかけとなったUGC。2025年7月28日現在の表示回数3066万回以上、「いいね」数3万以上、ブックマーク約4000件

SNS投稿の反響の大きさをきっかけに、ユーザーの声を収集・分析(情報収集)し、「平成時代のクラシカルデザインに対するニーズ」を把握。それを「復刻」という形で商品開発に生かすという一連の流れを一気通貫で見せてくれた事例といえるでしょう。

参考2025年4月23日のプレスリリースhttps://www.felissimo.co.jp/company/contents/press/nrr2025203905/

ちなみに復刻版ワンピースは予想以上の売れ行きだそうですが、一方でSNSでは「これじゃない(再現してほしかった点が変更されてしまっている)」と残念がる声も目立ちます。こうしたユーザーの反応も同社は把握しているようですので、今後どう対応していくのかも注目したいところです。

ネスレVOCセンター:ユーザーの気持ちに寄り添ったサポート

https://x.com/NestleVOC

ネスレ日本VOCセンターのX公式アカウントでは、その名称通り「VOC(Voice Of Customer:お客様の声)」を積極的に検索で発見し、ユーザーサポートをおこなっています。過去投稿を確認したところ、平日はほぼ毎日1件以上、ユーザーの「疑問」「質問」「不満」「要望」を見つけては積極的に声かけをおこなっていることがわかります。

2025年7月22日には、ある個人ユーザーが同社商品「ゴールドブレンド」の内ぶたの開封に手こずり途方に暮れている様子がうかがえる投稿をしていました。

個人ユーザーによるUGC

投稿文には「ネスレ、答えてくれ」とありますが、商品に向けた心の声であり、ネスレ日本に対しての呼びかけではないでしょう。実際、このUGCにはネスレに対するメンションも関連ハッシュタグもなく、約500回しか表示されていませんでした。それでも同社はこの「ユーザーの声」をソーシャルリスニングによって発見し、ていねいなサポートを行っていました。

ネスレVOCによるアクティブサポートと、個人ユーザーからの反応

同社からの「お詫び+開封方法の案内」に対して、ユーザーは感謝とともに「今後も飲み続けます」と書き添えている点にご注目ください。ユーザーの声(不満)を拾い上げていねいに対応したことで、ブランドに対する好感度・愛着がさらに高まった事例と言えるでしょう。

エレコム(テスコム電機):X以外でもUGCを見つけて拡散

https://www.threads.com/@elecomjp/

「情報収集」「コミュニケーション」「情報拡散」に活用できるSNSはXだけではありません。InstagramやThreads、Bluesky、TikTokなどにもUGCが発生している可能性がありますので、ソーシャルリスニングを実施するとよいでしょう。

2025年7月12日、ある個人ユーザーが「このプラグを考えた人、天才」とThreadsに動画を投稿し、表示回数約9万回、「いいね」数約4000と大きな反響を集めバズリました。この投稿だけではこのプラグがどこのメーカー製か不明ですが、返信欄に寄せられた他のユーザーからの質問に答える形で、これがテスコム電機の製品であることが明かされていたのです。

突然UGCがバズる幸運に恵まれ、認知拡大や興味喚起のチャンス到来……だったのですが、あいにくテスコム電機はThreads公式アカウントを持っていませんでした(2025年7月28日時点未開設)。

しかし、テスコム電機のグループ会社であるエレコムのThreadsアカウントがこの反響に気付き、5日後には引用ポストを実施。正しい商品名の認知拡大とUGCのさらなる拡散につなげられたと言えるでしょう。

エレコム株式会社はThreadsアカウントを早期に開設し、日々コツコツと運用を続けてきた企業の1つです。ふだんからThreadsでもソーシャルリスニングを行っていたからこそ、グループ会社の製品に対するUGCにもいち早く対応できたのでしょう。

UGCは、みなさんの企業の商品・サービスの魅力を理解し、愛着を持ってくれた消費者が、他者にも響く形で言語化し、時間を使ってSNS投稿してくれる――いわば貴重な資産です。企業としては、ソーシャルリスニングでいち早く発見し、引用ポストや返信、「いいね」を付けるなどの形で投稿者に感謝の気持ちを伝えるのがよいでしょう。それが結果として「企業への好意度向上」や「UGCのさらなる増加」につながるはずです。

XだけでなくThreadsでもソーシャルリスニングで「ユーザーの声」を発見し、適切な対応に努めている事例としてご参考になれば幸いです。

まとめ

企業・団体がSNSを活用する際は、「情報発信」だけでなく「情報収集」「コミュニケーション」「情報拡散」の目的も意識したいものです。
そのためにまず始めたいのは、ソーシャルリスニングによる情報収集でしょう。みなさんの企業・ブランド・商品・サービスについて、ユーザーはどんなリアルな声(疑問・質問・不満・要望など)をSNSに投稿しているでしょうか。

「ユーザーの声」(UGC)を発見・収集・分析することで、以下のSNS施策に役立てられます。

  • 情報発信(公式アカウントからの投稿ネタとして活用)
  • コミュニケーション(アクティブサポート・アクティブコミュニケーション)
  • 情報拡散(UGCをリポスト/引用ポスト/シェア で拡散)

もちろん、UGCはSNS運用以外の企業活動(例:商品開発やマーケティングなど)にも生かせます。

みなさんの企業の公式アカウントは「情報発信」だけに偏っていませんか。SNSならではの強みともいえる「情報収集」(ソーシャルリスニング)、そして「コミュニケーション」「情報拡散」などの施策にも取り組み、目指すゴールを達成してはいかがでしょう。

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