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SEOの歴史対談! SEOが社会的に大きな影響力をもち始めた【第3回住氏&辻氏】

黎明期からSEOに携わってきた住太陽氏が、専門家とともに歴史を振り返る本連載。第3回は、2016年~2023年までを、辻正浩氏とともに語り合う。

深谷 歩[執筆], 永友ヒロミ[撮影]

9月17日 7:05

本連載では、SEO黎明期からSEOに携わってきた住太陽氏が、専門家とともにSEOの歴史を振り返っていく。

第1回:90年代終わり~2011年
第2回:2012年~2015年
第3回:2016年~2023年頃
第4回:2024年~現在
第5回:これからのSEOを展望

第3回は、WELQ(ウェルク)問題が社会的に取り沙汰された2016年からAI検索が広まる前の2023年ごろまでのSEOの状況について、so.la 代表取締役であり、Faber Companyの上席SEOコンサルタントをされている辻正浩氏と振り返る。

(左から)ボーディー有限会社 代表取締役 住太陽氏
株式会社so.la 代表取締役/ 株式会社Faber Company 上席SEOコンサルタント 辻正浩氏

2016年~2023年までの概要

2016年、医療・健康情報サイト「WELQ」の信頼性の低い記事や大量生産されたコンテンツが社会問題化。「誰」が、どのような「根拠」をもとに情報を提供しているのかが問われるようになった。Googleは、医療・健康といった、人々の生活に大きな影響を与える領域において、信頼性をより重視するようになっていく。

また、スマートフォンがWeb利用の中心となり、Googleはモバイル版のコンテンツを基準にインデックスするMFI(Mobile First Index)への移行を進めた。

さらにSEOでは、コンテンツの内容だけでなく、「誰が発信しているのか」が大切になる。品質評価ガイドラインのE-A-T(専門性、権威性、信頼性)に「Experience(経験)」を加えてE-E-A-Tへ。専門性や信頼性に加え、発信者の経験の価値も意識される時代となった。

2016年WELQが社会問題化。大手IT企業が運営していた医療・健康情報サイト「WELQ」において、信頼性に問題のある情報の大量掲載や他サイトからの無断転載が問題となった
AMP対応が広がる。Googleがモバイル検索の「トップニュース」などでAMP(Accelerated Mobile Pages、スマートフォン向けにWebページを高速表示する技術)対応ページの表示を開始
MFIの実験を開始。GoogleがMFI(モバイルファーストインデックス)の実験開始を発表
2017年12月に、Googleが医療・健康に関連する日本語検索結果を改善。医療機関などによる、より信頼性が高く有益な情報が上位に表示されるよう評価方法を変更した
2018年漫画村が社会問題化。無料で読める海賊版サイト「漫画村」が2016年に開設。急速に利用者を増やし、日本の出版業界に甚大な被害を与えた。2018年に閉鎖
MFIの本格展開を開始。SEOでも「モバイル中心」が鮮明になる
Googleが大規模なコアアルゴリズムアップデートを実施。通称Medicアップデートと呼ばれ、医療・健康などYMYL(Your Money or Your Life)領域で大きな順位変動が起こった。SEO業界でE-A-Tへの関心が高まる
2019年BERTを検索に導入。自然言語処理技術によって、検索クエリに含まれる言葉の文脈やニュアンスをより深く理解できるようになる
2021年ページエクスペリエンスアップデート。Core Web Vitalsなど、ページ体験に関するシグナルをランキングシグナルの一つとして反映
2022年E-A-TからE-E-A-Tへ。品質評価ガイドラインのE-A-TにExperience(経験)が加わる。専門性・権威性・信頼性に加えて、実体験や一次情報の価値にも注目が集まる
2023年MFIへの移行が完了

WELQ問題とは何だったのか

大手IT企業は、2015年末から医療・健康情報サイト「WELQ」の運営を開始し、検索流入を中心に急成長。月間600万人以上が利用する人気サイトとなった。しかし、不正確な医療情報や著作権上問題のある記事が大量に掲載されていたことが明らかになり、大きな社会問題となった。SEOを優先しすぎたコンテンツ制作の危険性を世の中に知らしめるきっかけにもなった。

辻氏はSEOの専門家として、テレビやニュースでコメントした他、医師や患者の集まりなどでも説明に追われることになったという。

まずは、WELQ問題から話をしていきましょう。

WELQは、2015年末にサービスを開始し、わずか3〜4ヶ月で医療・健康系の検索結果を席巻しました。2016年春ごろから医療ジャーナリストや医師からの苦情がなぜか私のもとに寄せられるようになり、苦情がどんどん深刻になって、夏には医師の集まりなどにSEOの専門家として呼ばれる事態となりました。

医師たちの話では、この時期に誤った情報を信じて病院に来る患者が急増して診察現場でトラブルになることが増えたそうです。ネットで見た誤った治療方法で症状を悪化させてしまった患者も少なくなかったと聞いています。その情報ソースのほとんどがWELQでした。

同年9月には報道機関にも取り上げるようになり、私は専門家として調査に協力したり、コメントをしたりしました。そして、201612月にWELQの運営母体の大手IT企業による謝罪会見が開かれて全記事の非公開化に追い込まれました。

WELQ問題渦中でのご苦労を、辻氏だからこそ語れるエピソードとともに話してくれた

住:問題が明るみになった後も、検索順位は下がりませんでしたよね。

辻:そうなんです。この問題の難しいところは、WELQは、長文で一定品質のコンテンツを大量生産していただけで、スパム行為やテクニカルなガイドライン違反をしていたわけではないということです。そのため、社会問題になった後も、サイト閉鎖までは検索順位が落ちませんでした。

どのようなコンテンツが大量生産されたかというと、たとえば、「175cm 体重」という検索に対応するために、145cm180cmまで、1cmきざみで記事を作成し、それら1記事ごとに5000文字を用意していたんです。それらの記事はすべてユニークな文章で構成されていて、コピペではありませんでした。大手IT企業の社員がタイトルとリード文だけしっかり作って、それ以降のテキストはクラウドソーシングで、複数人に分けて発注する形が多かったようです。

1cmきざみで記事を作成していた
1cmきざみで作成していた記事の目次例

辻:WELQはある程度の品質を保ちながら、数千文字規模の長文を組織的に大量生産する体制を構築していたのです。長文コンテンツ自体はスパムではありませんが、「医療」という人命に関わる極めてセンシティブな領域にもかかわらず、医師などの専門家による十分な監修がないまま、健康・医療に関する誤った記事が公開されたことで、取り返しのつかない実害をもたらしてしまいました。

住:SEOの施策として大量の長文コンテンツが作られていたことを考えると、SEO会社にもある程度責任がありますね。

辻:あのWELQ問題以降、私は「SEOという技術は、ただのWebマーケティングの手法ではなく、社会そのものを大きく揺るがす危険性と影響力を持つものなのだ」と、その重みを深く学ぶことになりました。サイトが閉鎖されたあとも、いろいろと迷惑を被った医師に呼ばれて、まるで私が運営者かのように怒られることがたくさんありました。SEOがこれほど社会に影響を与えるようになったのだと痛感する1年となりました。

SEOが功罪合わせて社会的に大きな影響力をもった

WELQ騒動後のアルゴリズム変更で衝撃が走る

WELQ騒動後、Googleは2017年12月に医療系対策としてアップデートを行いましたが、これは世界が変わってしまったくらいの衝撃があり、過去にないほどの順位の変動がありました。

巻き添えで順位が下がった病院も多かったですね。

辻:そうなんです。他にも巻き添えになったのが、医師のブログサイトです。正しく医療情報を伝えているのに、検索結果から消えてしまいました。有名な大学病院が独自ドメインで運営していたサイトも表示されなくなるなど、やりすぎのレベルで、検索結果が変わりました。

闘病記にも影響がありました。もちろん、悪質な偽闘病記も多くて、がんで余命宣告を受けた人が、ある健康食品に出合って完治しました、みたいな健康食品の宣伝ブログもありましたから、その排除は理解できます。しかし、本当に闘病されている人のブログも検索で表示されなくなり、多くの人の救いになっていた闘病記というブログのジャンル自体が衰退してしまったと感じます。多くの問題を引き起こしていた状況下では、Googleも過剰にでも対応せざるを得なかったのだと思いますが。

住:2018年になると、世界的にMedicアップデートがありました。

辻:このアップデートでは、日本への影響はなかったですね。私は医療系のキーワードを幅広く監視していましたが、日本では少ししか変動がありませんでした。日本では2017年12月に医療系の大変動がありましたが、それがMedicアップデートの先行だったのだと思います。

住:日本では健康アップデートといわれていましたよね。

コロナ禍の中、SEOが社会の支えに

辻:一方で、SEOが社会を害するものであると同時に、社会に対して支えにもなるものだと考え直すこともありました。コロナ禍の2020年4月くらいから、報道機関や公的機関からコロナ関連の正確な情報発信に関するSEO支援の依頼がたくさんありました。
当時、コロナについて検索した方はほとんどの検索結果で私がSEOとして関わったページを見ていたはずです。2016年後半、コロナ関連の検索結果には大抵私がSEOをサポートしたページが上位表示されていましたので。

たとえば、「コロナワクチン接種で流産するのでは?」という検索が増えているのを確認すると、その情報がデマであることを伝えるページを上位に表示させるようにするなど、正しい情報を伝えようとするWebサイトにご協力して全力で良い検索結果を作っていました。コロナワクチンの接種率も向上させるサポートができたと思います。私の貢献は0.01%にも満たないとは思いますが。

当時、私がサポートした方々以外にも多くの人たちが正しい情報を検索結果に出そうと努力されていました。これまで見たことがないような数の検索が毎日行われる中、コロナ流行の初期段階で日本の検索結果がそこまで悪くない状況を作れたのは、多少なりともSEOの力が貢献できたと思います。

行ったことは通常のSEOです。どのような検索が行われているかを調査し続けて、適切なコンテンツを検索されやすいように調整するという、これまで行ってきたSEOです。

初期にはコロナの呼び方も変化し続けたり、求められる情報も短期間で変わり続けましたし、特殊な検索の仕様もあって大変でした。ただ、これまで積み上げてきたSEOの力を発揮できたことはよかったですし、害悪になるだけでなく、社会の支えにもなるんだと感じました。

害悪なことをやる人はいなくならないので、正しいことを発信して表示させるということも続けていかないと、社会がどんどん悪い方向に向かってしまいますしね。

コロナ禍で意識した「SEOは社会の支えになる」との思いを語る辻氏

長文コンテンツも、ユーザー行動のスパム手法の一つ

辻さんが対談相手ということでWELQ問題から話し始めましたが、2016年くらいにはユーザー行動のハックも多かったですね。

2015、2016年くらいから、クリックなどのユーザー行動が検索結果に影響するようになりましたよね。2015年に、一つのフロアに50人くらいいる会社で、個人のスマホから検索で特定URLにアクセスしてもらいましたが、それだけで順位が上がることがありました。それくらいシンプルにユーザー行動が評価されていたこともありました。

その後、リンクからユーザー行動へという変化が広く知られるようになって、2018年くらいからユーザー行動をコントロールして順位を上げようというスパム的な行動が出始めました。

住:どんな手法ですか?

辻:クラウドソーシングが主でした。さまざまな手法で検索結果のクリックをたくさんの人に依頼するんですが、当初は効きました。Googleが対策をしたので、2024年くらいからはほとんどの人為的な操作は効かなくなりましたが。

間接的なユーザー行動スパムもありました。長文記事についても、Googleがテキストの分量を評価しているわけではなく、ユーザー行動のハックの一つだったと思います。長文記事は、ユーザーがスクロールする、長く滞在する、わかった気になる、ということで再検索しないということがあるので、評価されていたのです。つまり、ユーザー行動のハックだったんですね。

住:ガイドラインで禁止されていないだけでスパムでしたよね。Googleがガイドラインを公開する前から、私自身の判定の基準としたことが、ユーザーのためにやっているのか、機械のためにやっているのかということです。僕は、機械のためにやることは全部スパムと割り切りました。

だから、機械向けでやっていいことは、robots.txtやXMLサイトマップの用意などガイドラインに書かれていることだけ。それ以外の機械向けの対策はスパムと考えていました。その後のガイドラインの更新でもその考えは概ね正しいことが証明できました。
その点で、ユーザー行動をハックするような長文コンテンツは僕の感覚では邪悪の極みですよ。読者を騙して、広告主を騙して、検索エンジンを騙しているので、騙されていない人がいないのではないかと思います。

辻:ある程度やっていた側の人間としては、耳が痛い部分があります。ただ、ページを細かく分けるよりも、1ページにしたほうが遷移の手間がありませんし、情報を盛り込んだほうがいいという考えもありました。SEOと検索が複雑化していることも影響していると思います。ユーザー行動のハックは、今はできなくなりましたし、やるべきことはシンプル化していると思います。

「この施策はユーザーのためか」が、実施の判定基準だと語る住氏

AMP対応、モバイルファーストなど、変遷に合わせてチューニング

2016年にはAMPへの対応が広がって、大手のニュースサイトなどは対応していました。ただしこちらは、2021年以降評価されなくなりましたので、私もこの前、最後の一つのサイトのAMPを終了しました。

僕はもともと細かいチューニングは面倒でやりたくないのですが、そういうのも不要になってきていますよね。辻さんはこれまで大変だったでしょう。

辻:2016年に、Webサイトを評価・インデックス登録する際に、パソコン版ではなくスマートフォン版のページを基準とするMFIなどもありましたよね。レスポンシブデザインにできるWebサイトはいいのですが、巨大サイトの場合はすべてレスポンシブにはできません。

住:大規模で複雑なサイトは、MFIが開始されても、当初はPC版とスマホ版を出し分けるしかやりようがありませんでしたが、それから何年か経つと、モバイルファーストで設計することが当たり前になって、レスポンシブでパソコン版の画面を作るようになりましたよね。

辻:そうですね。でも大変だったということでいえば、ガラケー時代のほうが大変でした。2005年くらいになりますが、端末ごとにページを分けて作る時代がありましたから。

ガラケー時代からご苦労されてきたモバイル対応について、笑顔で語ってくれた辻氏

まとめ:2016年~2023年までのSEO

今回取り上げた2016年~2023年には、まさにSEOが社会に大きな影響力をもったことを象徴する出来事が多く起こった。その都度、GoogleやSEO業界の関係者はさまざまな対応に迫られた。SEOが社会にもたらしたものは、功罪ともにある。このことを、SEOに携わる関係者は、しっかり胸にしまっておきたい。

次回の対談相手はアユダンテの江沢氏。生成AI時代に突入する第4回に乞うご期待!

2026年7月に、インプレスの会議室で、2016年~2023年を振り返ってくださった住(左)、辻氏(右)。特にWELQ問題は、当時の状況が目に浮かぶように語ってくださった辻さん。ありがとうございました

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