SEOの歴史対談! リンクスパムは終焉へ、量産型コンテンツが台頭――SEO現場の試行錯誤とは?【第2回住氏&木村氏】
黎明期からSEOに携わってきた住太陽氏が、専門家と共に歴史を振り返る本連載「SEOの歴史から今後を読む」。第2回は、2012年~2015年までを、サイバーエージェントSEOラボ研究室長 木村賢氏とともに語り合う。
9月10日 7:05
本連載では、SEO黎明期からSEOに携わってきた住太陽氏が、専門家とともにSEOの歴史を振り返っていく。
第1回:90年代終わり~2011年
第2回:2012年~2015年
第3回:2016年~2023年頃
第4回:2024年~2026年現在
第5回:これからのSEOを展望
第2回は、リンクスパムが終了し、コンテンツSEOが注目された2012年から2015年までの状況について、サイバーエージェントSEOラボ研究室長 木村賢氏と振り返る。
ボーディー有限会社 代表取締役 住太陽氏
2012年~2015年までの概要
Googleは、2011年のPanda(パンダ)アップデートに続き、2012年にPenguin(ペンギン)アップデートを実施。不自然なリンクなどを利用したリンクスパムへの対策を強化した。リンクスパム全盛時代も終焉に近づく。
さらにGoogleは、キーワードそのものだけでなく、その背景にある「検索意図」を理解する方向へと進む。2013年のHummingbird(ハミングバード)、2015年のRankBrain(ランクブレイン)によって、単純なキーワード一致から、言葉の意味や概念を理解して適切な情報を提示する検索へと進化していった。また、スマートフォンの急速な普及を背景に、2015年にはモバイルフレンドリーもランキング要素となる。
ただし、日本のSEOでは「網羅性」や「文字数」が重視され、検索流入を狙った記事の大量生産や、必要以上に長いコンテンツも増加。SEOの現場では、さまざまな試行錯誤が行われた。
| 2012年 | GoogleがPenguinアップデートを実施。不自然なリンクなどを使って検索順位を上げるリンクスパムへの対策を強化。リンクを大量に獲得することを重視したSEOが大きな転換点を迎える |
| 2013年 | GoogleがHummingbirdを導入。個々の検索キーワードの単純な一致だけではなく、検索クエリ全体の意味や意図を、より的確に理解する方向へと進む |
| 2014年 | GoogleがPanda 4.0を実施。Q&Aや掲示板、ユーザー投稿ページを大量に抱える一部のUGC(User Generated Content)サイトも影響を受けた |
| 2015年 | Googleはモバイルフレンドリーアップデートを実施。スマートフォン(スマホ)で読みやすく使いやすいページをモバイル検索で評価するようになる。そのため、Webサイトのスマホ対応がSEOでも重要になる また、RankBrainを導入。機械学習を活用することで、検索語の意味や意図を理解し、より関連性の高い検索結果を表示できるようになった |
| 2015年~2017年頃 | 2015年頃から長文・網羅型コンテンツが増加。検索意図に幅広く応えるため、関連情報を盛り込んだ数千~数万文字の記事が増え、「長いほどSEOに強い」という考え方が広がった |
SEO業界に激震が走ったリンクスパムの終焉
住木村さんとはリンクスパムが終了し始めた時期から振り返っていこうと思います。アルゴリズムのアップデートの前に、手動での規制が入りましたよね。
木村2011年にターゲットを絞られて大手何社かは規制され、少し話題になり始めました。そして2012年頃で一斉に手動規制が入り、ビジネスモデルを変えざるをえなくなりました。私は当時リンクサイトを大量に運営して販売していたんですが、あるときサーチコンソールに通知が大量にきて、一晩でリンクサイトが万単位で消え、大きな損害を出しました。他のSEO会社も同様の損害を被っていました。
住:僕は、リンクスパムはまったくやっていなかったけれど、クライアントのところにいくつかとばっちりで通知がきていました。怪しいと指摘されたリンク元サイトを見ると、同じ町内のご近所リンク集や地域の同業者のリンクなど、問題ないところが指摘されていました。それを見て、やりすぎだなと思うと同時に、もうリンクスパムは終了だなと感じました。
木村:業界的には、大手はすぐに転換しましたが、小さい会社は廃業したところも多かったですね。一部業者はそれでも通報逃れをするようなやり方で、リンクスパムを続けていましたけどね。
住:リンクスパム自体は、今でもできますが、費用対効果と合うかどうかでいうと、合わなくなりましたね。
リンクスパムよりひどい? 低品質コンテンツの大量生産
住SEOを請け負っていた会社のビジネスモデルはどう変わったのですか?
木村私自身は2013年にメディア部門に異動し、インハウスSEOを担当することになったので、その後のSEO会社の苦しみを知らないんですよね。SEO業界全体としては、コンテンツ制作にシフトして、オウンドメディア、コンテンツSEOなどが主流になっていったと記憶しています。
住:コンテンツの大量生産はクラウドソーシングに発注する会社が多くて、品質の低いコンテンツが増えました。リンクスパムのときより、ネット上の汚染がひどかったという印象があります。
木村:リンクスパムサイトは人の目に触れませんが、コンテンツは人の目に触れますからね。リンクスパムは資金のある大手サイトがやっていたので、実は検索結果がきれいだったんですよね。
住:そうなんですよ。このころ、薄くて内容のないコンテンツが検索結果の上位に上がって「Googleは使えない」という声も聞かれるようになりました。2011年のPandaアップデートで低品質コンテンツを下げるということでしたが、そのようにはならなかったですね。
木村:リンクスパムのあとに、簡単に順位を上げる別の方法を見つけられてしまったのは、Googleの失敗でもあると思います。その後2014年頃のアップデートでUGCが影響を受けたことがあって、アメーバブログの検索結果も大きく下がったことがあります。
普通にコンテンツは残って、UGCが消えてしまったときには、Googleへの不信感が生まれました。2010年代半ばから2020年代前半に作られた低品質コンテンツへの評価が下げられるようになったのは、ここ数年です。
問題の背景には、Webマーケティング担当者のKPIと事業成果の分断がある
住僕の顧客は主に中小企業が中心ですが、経営者の方は、「検索エンジンを騙すのはその先にいるエンドユーザーを騙していることであり、それがバレたらリスクになる」という判断をする方が多いです。低品質コンテンツも、リンクスパムについても、リスクと捉えていました。
一方で、専任のWebマーケティング担当者がいるような大企業ではPVやユーザー数がKPIとして四半期ごとに考査されるので、会社のブランドレピュテーションよりも、まずは担当者のKPIを上げる方法を優先するという背景が、リンクスパムやコンテンツ大量生産を生んだのかもしれませんね。
木村リンクスパムには多少罪悪感があるものの、コンテンツ量産のほうは悪いことをしている意識があまりなくて、むしろホワイトハットのSEOをやっていると信じられていたように思います。コンテンツが重要だと言われて、それを履き違えて、小手先のテクニックを流用しながら大量生産するSEO会社が多かったです。
住:なるほど。Webマスターガイドラインには、低品質コンテンツの項目が最初から入っていましたが、クライアントは、自分のドメイン配下に低品質のコンテンツを置くことに抵抗はなかったんでしょうか。
木村:当社は、大手企業のクライアントが多いので、コンテンツ制作に関しては、低品質のコンテンツは認められていませんでした。しかし、もう少し規模の小さいSEO会社は大量生産していましたし、それを気にしない担当者もいたから、低品質コンテンツがあふれたんだと思います。
今は、このころに作られた低品質コンテンツがサイト内にあると検索順位が下がることもあるので、多くが削除されています。コンテンツの品質を評価するアップデートも何度かブラッシュアップされて、大量にコンテンツをもっていても評価されなくなりました。
住:そうすると、クライアント側も量産型コンテンツを避けるようになりますね。
木村:そもそも低品質のコンテンツでは、コンバージョンが取れないはずです。でも、KPIがコンバージョンではなく、PVやユーザー数になっていると、SEO担当者が事業の最終ゴールに責任をもたなくなりますよね。ここに根本的な問題があったと感じます。これは今でも同じで永遠の課題ですね。
本来であれば、SEO会社が担当者の意識を変えていかないといけないのでしょうが、業界としてやらないままだったことは反省点です。
長文コンテンツは順位向上に効果があったが、網羅しすぎて意味がわからなくなることも
木村年に2回、5人の評価者に品質評価ガイドラインを読んでもらい、5万URLくらいのサイトを評価してもらうユーザーテストを行っています。2015年くらいまでは、キュレーションサイトは、自分でいろいろなサイトを見に行かなくても情報がまとまっているので、評価が高かったんです。しかし、2010年代後半になると、キュレーションサイトに低い評価がつくようになりました。健康・医療に関する不正確な情報が社会問題になったこともあって、ユーザーの感覚が変わったんですね。
住「AIによる概要」の精度が高くなって、みんなが便利に使っているのと同じですね。ユーザーは横着で便利なものがあれば使うので、キュレーションサイトが人気だったのもその理由でしょうね。その後に長文コンテンツが流行するようになりますね。
木村:長文コンテンツは当社もやっていたのですが、結果として順位は上がるので、優位性があったのは確かだと思います。
もちろん、コンテンツを分けて、ナビゲーションなどUXで誘導するようにしてもいいのですが、それをするとSEOで苦しくなるので長文でまとめてしまうという、一種の必要悪みたいなところもありました。この時期から、むしろ文字数を減らしたほうが上がるというケースもありましたが、上位のコンテンツが長文なので、怖くて減らせないんですよね。
住:Googleからは、長文コンテンツが優位だという発表はないんですけどね。
木村:日本人は、長文が書けるし、読めるし、嫌がらないという文化も背景にはあったと思います。英語では長文コンテンツは離脱されるので、少ないんですね。検索アルゴリズムが英語ベースで作られているので、長文コンテンツが量産されることを想定しておらず、結果として上位にあがったのではないかと推測します。
住:聞いた話では、上位のサイトを分析して、それらに入っている内容は全部網羅してコンテンツを作成するという方針の会社もあったそうで、びっくりしました。クラウドソーシングにコンテンツ作成を発注するときも説明しやすいので、これは量産するのに使われるわけだなと思いました。1から10まで間違っているけれど、確実なやり方といいますか。
木村:20位までのh2レベルの見出しを自動抽出するツールを開発する会社もありました。この時代はSEO担当者の転職が激しくて、別の会社で前職のノウハウを横展開することが多いこともあって、広がっていきましたね。ただ私が調査したところでは、1位のコンテンツの文字数の平均はそこまで多くなかったんですよね。だから数万文字のコンテンツは必要なかったと思いますが、それでもSEOの効果はありました。
住:長文コンテンツは今でも多いですよね。AIの学習材料になるということもあるのかもしれません。僕が名前を出して記事を書く場合は、読み切れることを意識しています。それはGoogleのためというよりも、読む人のためですけれど。
木村:文字数の検証でグラフを作るとき、たまに10万文字くらいのものがあります。異常値でグラフの縦軸の尺度が変わってしまうので補正を入れないといけなくなります。本1冊分はありますからね。
情報を詰め込んでも順位が上がらないときには、さらに情報を加えていく担当者がいます。ある不動産会社が地域ごとの情報をまとめていたんですが、だんだん入れる情報がなくなって、県の鳥の情報を図鑑みたいに入れていて、意味がないなと思いました。住むのを検討している人に、鳥の生態情報は不要だと考えればわかるのに、情報を増やすことだけ考えて、連想ゲームのようになってしまうんですね。
住:情報がつまっただけのページはクリック率が下がるので、今後はどうなるのでしょうか。AIの概要を見て終わる人や、詳しいことを知りたい場合はAIモードで個別に聞く人もいます。順位を取るだけであれば今後も生き残るとは思いますが、そこに意味があるのかどうか。
木村:比較サイトの場合は、やはりページの上部に記載されたものでコンバージョンする人が多いですね。下のほうは見られない。
住:あとは2015年のモバイル対応がありましたが、これはやるしかないという状況でしたよね。大規模サイトは対応が大変だったと思いますが。
木村:大規模サイトの場合のモバイル対応は大変だったと思います。私はこの時期はテクニカルな、クロール&インデックスばっかりやっていましたね。タグやページ構造、重複ページの管理などですね。今はクローラーが賢くなりましたが、この時期はしっかりクロールの状況を見て、コントロールしないといけないですし、サイトマップの更新などにも気を配っていました。
振り返ると、リンクスパムがペナルティを受けた後の5~6年間は、私自身何が正しいかわからないままやっていて、苦しさもあった時代でした。
まとめ:2012年~2015年までのSEO
今回取り上げた2012年~2015年は、リンクスパム全盛が終焉を迎え、Googleは良質なコンテンツを評価する方向に進もうとするが、日本では量産型低品質コンテンツが増加し、長文コンテンツがなぜか上位になった時期。必要以上に長い「長文・網羅型記事」が上位表示され、これが2016年のWELQ(ウエルク)問題にもつながっていく。
第3回の対談相手は、so.la 代表取締役であり、Faber Companyの上席SEOコンサルタントをされている辻正浩氏。乞うご期待!
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