Web担20周年記念

SEOの歴史対談! 混沌とした黎明期から、リンクスパム全盛時代へ【第1回 住氏&渡辺氏】

黎明期からSEOに携わってきた住太陽氏が、専門家とともに歴史を振り返る本連載。第1回は、1990年代終わり~2011年までを、DMM.comのPF事業統括本部 SEO部渡辺隆広氏とともに語り合う。

深谷 歩[執筆], 渡辺 淳子[編集], 永友ヒロミ[撮影]

9月3日 7:05

生成AI時代に入り、SEOにも大きな変化が起こることが予想される。そんな時だからこそ、黎明期からSEOに携わってきた住太陽氏と専門家とともに、SEOの歴史を次の5回に渡ってたどってみたい。

第1回:1990年代終わり~2011年
第2回:2012年~2015年
第3回:2016年~2023年頃
第4回:2024年~2026年現在
第5回:これからのSEOを展望

第1回は、インターネットの利用が一般にも普及し始めた1990年代終わり~2011年までのSEOの状況について、住氏とDMM.comのPF事業統括本部 SEO部渡辺隆広氏とで振り返る。

(左から)ボーディー有限会社 代表取締役 住太陽氏、
合同会社DMM.com PF事業統括本部 SEO部 渡辺隆広氏

1990年代終わり~2011年までの概要

対談内容を紹介する前に、まずは、1990年代終わり~2011年までのSEOの状況をさらっておこう。1990年代後半、インターネットが普及し、Webサイトが急増。検索エンジンが情報収集に重要なツールとなった。質の高い検索結果が求められるようになる中、1998年にGoogleが創業し、キーワードや被リンクをもとに検索順位を決める仕組みが広まり、SEOが急速に普及する。

一方で、検索順位を上げることを目的に、キーワードの詰込みや相互リンク、ワードサラダ(キーワードを並べて自動生成した意味の通らない文章)といった手法が横行。この時期のSEOは、検索エンジンの仕組みを読み解き、上位表示を競うもので、低品質コンテンツが増加した。そこで、Googleが2011年にPandaアップデートを実施。コンテンツの質を評価するようになった。

1998年Google創業。多くの信頼できるページからリンクされているページほど、価値が高いと評価するPageRankが登場。SEOという概念が広まり始める
2003年GoogleがFloridaアップデートを実施。順位上昇を目的とした相互リンクやアンカーテキストへの過剰なキーワード詰め込みなど、過度な最適化への対策を行う
2004年~2006年有料リンク販売がビジネスとして始まる
2008年~2010年コンテンツファーム(SEO目的にコンテンツを大量生産)急増
2008年、2009年2008年にGoogleが英語版「Search Engine Optimization Starter Guide」を公開。2009年に日本語版「検索エンジン最適化スターターガイド」を公開
2010年Googleの新しいインデックスシステムCaffeine(カフェイン)導入。新しいコンテンツが迅速にインデックスされるようになった
2011年GoogleがPandaアップデートを実施。低品質コンテンツの検索順位を下げ、質の高いコンテンツを評価するようになる

検索エンジンの仕組みはブラックボックスだった

Googleが創業したのが1998年。PageRankというリンクを評価するアルゴリズムが生まれ、のちのSEOという概念が広がり始めた時期だ。住氏、渡辺氏はともに、この頃から検索エンジンと向き合い始めている。

しかし、当時は検索エンジンの仕組みはブラックボックスで、現在のようにGoogleがガイドラインを公開しているわけでもなく、何がスパムで何がスパムではないのかも明文化されていなかった。オープンソースの全文検索システム「Namazu」をローカルにインストールして、パラメータを検証してみる、あるいはInfoseekやLycos(ライコス)などに、ページを更新するたびにURL登録をして順位変動を確認するなど、完全な手探り状態だった。

検索エンジンとしては、Yahoo! JAPANがシェアを獲得しており、Google、Infoseek、Lycosなどが追随していた。

渡辺

1990年代は「SEO」よりも「Search Engine Placement」「Web Positioning」といった用語を使っていましたよね。

当時は検索結果が今ほど正確ではなくて、何を検索しても最終的にアダルトサイトに飛ばされるような状態がありましたよね。メタキーワードタグに有名人や政治家、アイドルの名前を羅列しておけば、順位が上がるということもありました。

渡辺:Google自体もWebマスターとコミュニケーションをすることを避けていて、情報発信をしていませんでしたから、今の基準から見るとスパム判定されるようなことも、普通に行われていました。

SEO黎明期の思い出を笑顔で語り合う住氏(左)と渡辺氏(右)

新しいやり方を試しては検証する日々

渡辺

今は、リアルタイムで検索エンジンが更新されますが、当時は検索エンジンによってインデックス登録されるまでの時間がバラバラでしたね。

Googleが月に一度インデックスを更新していて、それが早いと言われていました。更新中はデータセンターごとに検索結果が違っていたため、順位が数日間大きく上下するので「Googleダンス」なんて言われていました。検索エンジンによっては、検索結果が半年から1年くらい変わらないので、検証のページが上位に残っていることもありました。

渡辺:1997年のデジタルガレージのプレスリリースで、Infoseekが1日100万件のインデックスを生成することを発表していますから、当時は100万で十分インパクトがありました(参照:https://internet.watch.impress.co.jp/www/article/970423/infoseek.htm)。

住:ディレクトリの時代から見れば100万件は圧倒的なので、プレスリリースにもなりますよね。ディレクトリ時代の攻略法もありました。ディレクトリの場合は、数字、ABC、あいうえお順で上から登録されるので、社名に数字を入れたり、あ行系の企業名が多かったりしました。
この順番は、電話帳の名残ですね。当時は、電話帳に馴染み深い引っ越し業者や探偵事務所などが、検索結果の上位にいました。

渡辺:タイトルにキーワードを2回入れるのと、4回入れるのでどう順位が変わるのか検証するために、タイトルだけ変えて中身は同じファイルを上げるということもありました。他にも、今はもう使われていない<center>タグや<strong>タグを入れると上がるなんていうこともありましたね。情報がなかったので、とにかく自分たちで調べて検証していました。

住:Infoseekは、インデックス申請してから、15分で反映されたため、タイトルを少しずつ変えながら順位変動を検証するツールとして活用していましたね。

渡辺:当初は検索エンジンごとに最適化したページを用意していましたが、そのうち自動化してくれるツールも登場しました。

できることをやってみて、検索順位の変動を検証する日々を語る渡辺氏

キーワードの詰込みがスパム判定されるようになったFlorida アップデート

潮目が変わったのが、2003年11月のGoogleのFlorida アップデートだ。これにより、キーワードを詰め込むような手法はスパムとして認識されるようになった。

渡辺

Floridaアップデートの前後から、Webmaster World Forumという掲示板にGoogleGuyというハンドルネームの人がいて、Google社員としてWebマスターと対話して、スパムはNGという認識が広がりました。後にこの方はGoogleのMatt Cutts氏として登壇などをしています。

Webが汚染される一方だったので、Googleは、「これがスパムだ」と伝えていくことに方針転換したのでしょう。

渡辺:PageRankの仕組みが広がり始めて、2003年以降はリンクが注目されるようになりました。Floridaアップデートによって、検索順位が大幅に落ちた通販サイトは、売上にも影響したという話もあり、アメリカの大手新聞でもニュースになりました。

住:それまでは検索結果の順位がニュースになることなんてありませんでしたし、世の中への影響も小さかったんです。しかし、Googleもこの頃に、自分たちのさじ加減で世の中が騒ぎになるということに気づいて発信するようになったのだと思います。

渡辺:SEO関連のイベントが開かれるようになり、基調講演でGoogleの人が新しい機能の発表をしたり、アルゴリズム変更の説明をしたりするようになりました。

住:Googleが社会に向けて、目指すビジョンを話すようになったのもこの頃ですね。それまで僕らは近視眼的に次にどうなるかしか見ていませんでしたが、10年後、20年後を見ているんだとわかって、潔くスパム的なSEOはやめました。そうした技法は遠くないうちに完全に無駄になることが明らかでしたから。
ただ、Googleがやってはいけないとしている手法は、裏を返せばやると効くという手法でもありました。

渡辺:日本の場合は、Google一強ではなかったので、他の検索エンジンではやりたい放題でしたね。当時は、Webページの<head>の中に順位を上げたいリンクのURLを入れておけば順位が上がってしまう、バグのような仕様も存在しました。

Googleがビジョンを示すようになり、潔くスパム的なSEOをやめたと語る住氏

リンクスパム全盛時代を経て、コンテンツの質を問うPandaアップデートを実施

2003年から2010年まではリンクスパム時代でもあった。検索順位を上げるためだけに作られたリンクネットワークやリンクの有料販売などもあった。リンクネットワークは、個人または企業が数十~数百のWebサイトを運営し、それらがお互いにリンクを張り合う仕組みだ。順位を上げたい本命サイトへリンクを集めることで、多くのサイトから推薦されているように見えるため、PageRankを人工的に上げられた。

渡辺

リンクネットワークを販売する会社が増加し、月額100万円で複数のサイトからリンクを貼り続けるサービスなども登場しました。

売れそうなページを作って、そのリンクを貼るだけで上位表示ができましたね。これが魔法のように効いたので、僕自身はこの頃やる気を無くして登山などをしていました。このリンクが落ち着いたらまたやろうかなと思っていました。効くリンク、効かないリンクっていうのもあったみたいですが、僕は詳しくないです。

渡辺:効くリンクということでいえば、関係性の低いサイトからのリンクより、テーマに関連したページからのリンクのほうが効くということがありました。たとえば「探偵の探し方」みたいなページを用意して、その文章中のキーワードから探偵業者のサイトにリンクを貼ると効果がありました。以前は、ページの上のほうや下のほうにリンクを置いていましたが、文章の中からリンクを貼るほうが、効果があったんですね。

しかしそのアンカーテキスト一致率でスパム判定されるようになったので、60%に抑えるのがベストといったテクニックも出たりしました。リンクを100本作る時に、60本は「探偵」というキーワードでリンク貼って、残りの40本は別のキーワードにするというようなことですね。こうしたノウハウがブログやイベントで共有されていました。でも、こうした取り組みは、住さんがおっしゃるように、おもしろくなかったですね。

リンクスパム全盛期を経て、やがて2011年にPandaアップデート、2012年にPenguinアップデートがあり、それまでのリンク重視からコンテンツ重視に変わることになっていく。また、2011年からYahoo! JAPANがGoogle検索エンジンを採用することになり、Googleのシェアが6割になり、その後スマートフォンの普及などもありシェアがさらに拡大していく。

渡辺:リンクのスパム判定が厳しくなって、Google.co.jp自体がペナルティを受けたこともありました。Googleが代理店にキャンペーンを依頼したところ、その施策が金銭を伴うブログ投稿、いわゆるペイパーポストでした。結果としてこれがガイドライン違反の有料リンクと判定され、PageRankが下げられる事態になったんです。Pandaアップデート、Penguinアップデートの後には、SEOの仕事を廃業した会社も多かったですよね。

住:ゼロにはなりませんでしたが、1か2まで下がったのは面白かったですね。手動ではなく機械的な判断でスパム判定してペナルティが適用されることが明らかになりました。ホワイトリストはなくて一律なんですね。

まとめ:1990年代終わり~2011年までのSEO

今回取り上げた時代はまさにSEO黎明期。今ほどガイドラインや情報が整理されていなかったため、関心のある人たちが、今ではスパム判定されるようなテクニックも使いながら、検索エンジンの仕組みを解き明かしていた1990年代から2000年代前半。

そして、被リンク数というシンプルな評価指標が絶対視されたため、リンク数をどう稼ぐかがSEOの中心だった2000年代中盤から後半。2010年代に入って、コンテンツ重視に変わって、アルゴリズムがより複雑化していく。

第2回の対談相手は、サイバーエージェントの木村賢氏。乞うご期待!

2026年7月、インプレスの会議室で、SEO黎明期を熱く語ってくださった住氏(左)、渡辺氏(右)。黎明期からSEOに携わってこられたお二人だからこその話が続々と飛び出した。住さん、渡辺さん、ありがとうございました

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る