Web担20周年記念

WordPress一強時代はいつまで続く? 3年、5年、10年、それ以上?

SaaS型CMSやノーコード、ヘッドレスCMS、生成AIの台頭は、WordPressの牙城を崩せるのか?

内藤 貴志(Web担編集部)

7:05

世界のWeb制作シーンにおいて、WordPressは長らく事実上の標準CMSとして扱われてきました。

しかし現在、SaaS型CMSやノーコード、ヘッドレスCMS、生成AIの台頭により、その位置づけに変化の兆しが見え始めています。

WordPressの一強時代は、果たしていつまで続くのでしょうか。

WordPressのシェアは下がり始めているが……

W3Techsの計測では、全世界でCMSを使うサイトに占めるWordPressのシェアは、2025年10月の60.7%から2026年10月の58.7%へ下がりました。下げ幅は約12か月で2.0ポイントと小さいものの、確認できた計測点はいずれも前の時点を下回っています。

WordPressのCMS内シェアの推移。出典:W3Techs「Market share trends for content management systems」

減った分の受け皿になったのはSaaS型です。2025年10月から2026年10月にかけて、Shopifyのシェアは6.8%から7.8%に、Wixは5.7%から6.1%に伸びました。

CMS2025/10/12025/11/12025/12/12026/1/12026/2/12026/3/12026/4/12026/5/12026/6/12026/7/12026/8/12026/9/12026/10/1増減(pt)
WordPress60.7%60.5%60.4%60.2%60.0%59.9%59.8%59.6%59.4%59.2%59.1%58.9%58.7%-2.0
Shopify6.8%6.8%6.8%7.0%7.1%7.2%7.2%7.3%7.4%7.5%7.6%7.7%7.8%+1.0
Wix5.7%5.7%5.8%5.8%5.9%6.0%6.0%6.1%6.1%6.1%6.1%6.1%6.1%+0.4
Squarespace3.4%3.4%3.4%3.4%3.4%3.4%3.5%3.5%3.5%3.5%3.5%3.5%3.6%+0.2
Joomla2.0%1.9%1.9%1.9%1.8%1.8%1.8%1.8%1.8%1.7%1.7%1.7%1.6%-0.4
Tilda1.1%1.1%1.1%1.1%1.2%1.2%1.2%1.2%1.2%1.2%1.2%1.2%1.2%+0.1
Webflow1.2%1.2%1.2%1.2%1.2%1.2%1.2%1.2%1.2%1.2%1.2%1.2%1.2%0.0
Duda1.0%1.0%1.0%1.0%1.0%1.0%1.0%1.0%1.1%1.1%1.1%1.1%1.1%+0.1
Drupal1.1%1.1%1.1%1.1%1.0%1.0%1.0%1.0%1.0%1.0%1.0%1.0%0.9%-0.2
Adobe Systems1.0%1.0%1.0%1.0%1.0%0.9%0.9%0.9%0.9%0.9%0.9%0.9%0.9%-0.1
GoDaddy Website Builder0.9%0.9%0.9%0.9%0.9%0.9%0.9%0.9%0.9%0.9%0.9%0.9%0.9%0.0
Google Systems0.8%0.8%0.8%0.8%0.8%0.8%0.8%0.8%0.8%0.8%0.8%0.8%0.8%0.0
主要CMSのシェア推移(CMS利用サイトに占める割合)出典:W3Techs「Market share trends for content management systems」

WordPressの首位は今後も揺るがない

今回調べた範囲では、今後数年以内にWordPressが1位から陥落すると予測した論者は見当たりませんでした。議論の焦点は、下落がどこで止まり、WordPressの用途がどこまで絞られるかにあります。

論者見立て
Gautam Khorana氏(Seahawk Media共同創業者)全サイト比で今後2〜3年に2〜3ポイント下落し、2028年末に39〜41%で横ばいになる。その後も20年はWebの中核であり続ける
Jean Galea氏(WP Mayor創業者)崩壊ではなく、狭くなる。EC、大企業、プロの出版に用途が絞られ、簡易サイトの層はAIやホスト型サービスに移る
Robert Jacobi氏(Joomla運営団体の元代表)10年で根本的に変わる。ヘッドレス化やSaaS化で、利用者からは見えにくい存在になる
Rouge Media(B2B企業向けのWordPressサイトを専門にしているイギリスのWeb制作会社)CMSシェアでは2位の約8倍。崩れているのではなく、市場が細分化している
Matt Mullenweg氏(WordPressの開発者)100年後もWebの中核をなしている(開発者の発言として割り引いて読む必要がある)

各論者の違いは、シェアの数字そのものより「どの用途が残るか」の見立てにあります。それを左右するのが、次の2つのポイントです。

ポイント①:新規のWebサイト構築で選ばれ続けるか

1つ目のポイントは、既存サイトが離れるかどうかではなく、新しく作られるサイトがWordPressを選ぶかどうかです。WP Mayor創業者のJean Galea氏は、ここを先行指標と位置づけています。

Galea氏の分析では、シェア低下の主因は既存サイトの流出ではなく、Web全体の増え方に、WordPressで作られるサイトの増え方が追いつかなくなっていることです。導入済みのサイトは簡単には動かないため、全体のシェアはゆっくりとしか下がりません。その代わり、新規構築での選ばれ方に変化が先に表れる、というのが同氏の見立てです。

その兆しとして、開発者向けの領域ではWordPress以外の選択肢が伸びています。静的サイト生成のフレームワーク「Astro」は、Best Of JSの集計でnpmの月間ダウンロード数が2025年10月の379万から2026年9月には2,400万へと6倍以上に増加しました。

一方、現場からは異なる声もあります。1万2000以上のWordPressサイトを構築してきたSeahawk MediaのGautam Khorana氏は、自社では2024年から2026年にかけてWordPressの新規構築と保守の需要は変わっていないと報告しています。

同氏によれば、AstroやNext.jsで受ける案件の多くはWordPressからの移行ではありません。AI関連企業のマーケティングサイトなど、そもそも新しい種類の案件だといいます。

W3Techsは新規構築に絞ったシェアを出していません。このポイントを見極めるには、制作会社の新規案件の内訳や、代替ツールの採用動向を追う必要があります。

ポイント②:ノーコード・AIツールなどの新勢力が、WordPressの領域をどこまで奪うか

2つ目のポイントは、WordPress以外の新たな選択肢が、その裾野をどこまで削るかです。ここ1年でシェアを伸ばしたのはShopifyやWixといったSaaS型で、その伸びはWordPressの減少分とほぼ見合っています。

新たな選択肢は、大きく3つの勢力に分けられます。

1つ目は、STUDIO、Wix、Squarespaceに代表されるノーコード・SaaS型のサイトビルダーです。サーバーの保守やセキュリティ対策は提供元が担うため、利用者側の管理は原則として不要です。コードを書かずにデザイン性の高いサイトを短期間で作れることから、中小規模のサイトやランディングページで有力な選択肢になっています。

2つ目は、Shopifyをはじめとする EC特化型のプラットフォームです。安定した決済基盤や充実した在庫管理機能に加え、セキュリティ対策を提供元に任せられる点が評価されています。

3つ目は、microCMSやContentfulなどのヘッドレスCMSと、Jamstack(JavaScript、API、Markupのを組み合わせてWebサイトやWebアプリケーションを構築するモダンな開発手法)と呼ばれる構成です。表示を担うフロントエンドと、コンテンツを管理するバックエンドを完全に分けることで、高い表示速度と、攻撃を受けにくい構造を実現します。ユーザー体験や安全性を重視するWebメディアや大規模サービスで、採用が広がっています。

このうち1つ目の勢力を加速させているのが、生成AIです。作りたいサイトをプロンプトで指示するだけで構築できるツールは、すでに大きな事業になっています。たとえば、スウェーデン発のバイブコーディングプラットフォームLovableは、年換算売上が約5億ドルに達したと報じられています。WordPressの大手ホスティング事業者であるHostingerでさえ、自社のAIビルダーで100万以上のサイトが作られたと公表しています。

日本ではWordPress一強がさらに長く続く可能性

ここまでの議論は主に海外のものです。日本では、2つのポイントの影響が海外より小さく、一強の状況はより長く続く可能性があります。

第1回で見たように、日本語サイトでのWordPressのCMSシェアは82.9%と、世界の約59%を大きく上回ります。この差を生んだ受託制作の「正のループ」は、新規構築の流れを変えにくくする方向に働きます。ライセンス費ゼロで提案でき、制作会社を替えても保守を引き継げ、国内の主要レンタルサーバーには簡単インストール機能がある。この条件は今も変わっていません。

新規構築については、大企業の場合、もともとWordPressを本業の基盤から切り離し、オウンドメディアなどに限って使う分離運用が主流です。WordPressが新たに失う領域は、海外ほど大きくないかもしれません。

ノーコード・AIツールについては、国内ではSTUDIOがWordPress代替の受け皿として伸びています。海外のAIツールが日本の小規模サイトにどこまで浸透するかは未知数です。

WordPressの一強状況は、少なくとも今後しばらくは変わりそうにありません。ただし、その中身は変わります。

Web担当者にとって大事なのは、シェアの数字より自社サイトの位置づけです。更新体制を持ち、継続的にコンテンツを増やすサイトなら、WordPressは今も有力な選択肢です。一方、更新がほとんどない小規模サイトなら、それ以外のCMSを検討する時期に来ていると言えるでしょう。