UI/UXとデジタル戦略

「住信SBIネット銀行」から「ドコモの銀行」へ。アプリUIはどう変わったか?

ユーザーが「ドコモの銀行」スマホアプリUIに求めていることとは。

内藤 貴志(Web担編集部)

7:05

8月3日、長らく銀行アプリのUI/UXで高い評価を得てきた「住信SBIネット銀行」アプリが、「ドコモの銀行」に切り替わった。

本稿では、「ドコモの銀行」へのブランド刷新に対する世間の反応を起点に、住信SBIネット銀行アプリがこれまで築いてきたUI/UXの実績、ユーザー評価、そして「ドコモの銀行」がこれから目指す方向性とユーザーが求めるものを整理する。

アプリのUIはどう変わったか?

8月3日、「住信SBIネット銀行」アプリのUIは、「ドコモの銀行」アプリUIに変わった。実際に更新前後のホーム画面を見比べると、単なる配色変更にとどまらない変化が見えてくる。

①ブランドカラーが青系から赤系へ

もっともわかりやすい変化は色調だ。口座切替のドロップダウンアイコンが、青から赤に変更された。ホーム画面のメインカラー自体は青系のグラデーションを維持しているが、アクセントカラーとして赤が随所に差し込まれる構成になっており、「ドコモの銀行」ブランドへの移行を印象づける仕上がりになっている。

②会員ランクの見せ方が「星の数」から「ティア名」へ

会員ランクの表示方法も変わった。従来は星のアイコンを4つ並べてランクを表現していたが、新UIでは星ではなくメダルアイコンと「ゴールド」といったティア名をテキストで明示する形式になった。星の数を数えて自分のランクを把握する必要がなくなり、一目で自分の会員ステータスがわかるようになった点は、視認性の面で明確な改善といえる。

③ホーム画面のクイックアクションが「管理系」から「資産形成訴求」へ

もっとも実務的なインパクトが大きいのが、ホーム画面下部に並ぶクイックアクションアイコンの構成変更だ。「アプリでATM」「入出金明細」「振込」「残高照会」という上段4項目は維持されたが、下段では「デビット」「お客さま情報」が姿を消し、代わりに「SBIハイブリッド預金」「円定期預金」が新たに配置された。日常的な口座管理系の機能から、預金・運用商品への送客を強化する構成へとシフトしており、ホーム画面が単なる取引の入り口から商品訴求の場としての性格を強めている。

④アイコンへのマイクロコピー(訴求バッジ)追加

「アプリでATM」アイコンには新たに「いつでも0円」という手数料メリットを訴求するバッジが、「円定期預金」アイコンには「キャンペーン中」のタグがそれぞれ追加された。アイコン単体に短い訴求コピーを添えることで、遷移前の一覧画面だけでメリットを伝える設計に変わっている。

これらの変更を総合すると、「ドコモの銀行」のUIは見た目の色調変更にとどまらず、ホーム画面の設計思想そのものを「管理のしやすさ」から「商品理解・利用促進」寄りへ振っていることが読み取れる。前述のとおりブランド名やアイコンデザインそのものへの反発がSNS上で目立った一方、こうした導線設計の変化は表面的な話題にはなりにくく、見過ごされがちな変更点でもある。

「ドコモの銀行」に対する世間の反応

新ブランド名の発表は2026年7月9日。住信SBIネット銀行は、個人向けブランドを「ドコモの銀行」に切り替えると発表した。dアカウント連携によるdポイント付与など新たな特典が用意された一方、SNS上ではむしろ懸念や批判の声が目立った。

反発が集中したのは主に3点である。

①ブランド名・支店名への違和感

スイーツをモチーフにした支店名(ドーナツ支店など)が採用されたことに対し、「給与振込先の名前として気恥ずかしい」といった声が上がった。

②アプリアイコンのデザイン

長年親しまれてきた青基調の「d NEOBANK」アイコンから、赤基調の新デザインへ刷新されたことに対し、X上では「ダサい」「視認性が悪い」という批判が短期間で拡散した。

③資本再編そのものへの不安

背景にあるのは2025年12月の資本異動だ。ドコモが保有していた同社株式の一部(約500億円分)が三井住友信託銀行へ譲渡された。同時に実施された第三者割当増資も三井住友信託銀行が引き受けたことで、議決権比率はドコモと三井住友信託銀行で50%ずつとなった。

この経営体制の変化を受けて、「SBI証券とのシームレスな連携を目的に使ってきたのに、今後は連携が縮小するのでは」という実利面での懸念がユーザーの間に広がった。

そもそも住信SBIネット銀行のアプリUIはどうだったか

「ドコモの銀行」への反発の強さは、裏を返せば住信SBIネット銀行アプリへの愛着の強さでもある。

住信SBIネット銀行のアプリは、2011年の初代リリース以降、約15年にわたり地道な改善を積み重ねてきた。

変更内容
2015年スマートフォンサイトをWebViewとして活用するVer 2.0をリリース。取引画面をWebViewで表示する仕様は現在まで継承される基本設計となった。
2016年生体認証ログイン「クイックログイン」やプッシュ通知を実装したVer 3.0で、アプリ名を現行の「住信SBIネット銀行」に改称。同年11月には後に「手裏剣マーク」と呼ばれることになるシンボルマークが誕生した。
2018年Ver 4.0.0で「カードUI」を導入。残高や機能をカード形式で表示し、ホーム画面を自由にカスタマイズできる仕組みは、当時の銀行アプリとしては先進的な試みだった。
2020年認証方式を統合した「スマート認証NEO」の導入に合わせ、現行に近い白背景のアイコンに刷新。同年11月には「アプリでATM」機能が追加され、カードなしでの現金引き出しが可能になった。
2021〜2024年白背景デザインへの全面リニューアル、スマホデビットの発行、口座開設フローの高速化(最短5分)、ペイジー対応、ことら送金対応など、決済・口座開設の利便性を継続的に強化。
2025年3月ホーム画面をリニューアルし、支店名や口座番号の視認性を向上。

出典:「住信SBIネット銀行アプリの歴史をざっくり振り返る」

一貫していたのは「機能追加のたびにホーム画面の情報設計を見直す」という姿勢だ。この積み重ねが後述するユーザー評価にも直結している。

UI/UXにユーザーから高い評価

住信SBIネット銀行アプリのUI/UXは、客観的な指標でも高く評価されてきた。

NTTコムオンライン(現NTTドコモビジネスX)が実施する銀行部門のNPS(顧客推奨度)ベンチマーク調査では、2025年発表分で3年連続・通算6回目の1位を獲得。

評価理由として「公式アプリの使いやすさ・わかりやすさ」「ネットバンキングの使いやすさ・わかりやすさ」が挙げられている。

同調査では、他行が「担当者対応」や「顧客に寄り添う姿勢」で評価される中、住信SBIネット銀行はデジタル接点そのものがロイヤルティの源泉になっている点が特徴的だ。

ストアレビューの定量データも良好だ。2025年5月時点でApp Store評価4.6(レビュー約35万件)、Google Play評価4.2(レビュー約5万件)となっている。

定性的な口コミでも、

「アプリのデザインが直感的で誰でも使いやすい」
「残高確認や振込がストレスなくできる」

といった好意的な評価が多い一方、

「メニュー配置がちょくちょく変わる」
「認証フローがわかりにくい場面がある」

といった、頻繁なアップデートに起因する戸惑いの声も一定数存在する。

総じて、機能面・操作性への満足度は高いが、変更そのものへの心理的コストをどう抑えるかが継続的な課題だったと言える。

「ドコモの銀行」で何が変わるのか

ドコモSMTBネット銀行が掲げる新ブランドのコンセプトは、「ドコモグループとの連携による安心感と利便性」と「生活に溶け込むシームレスな金融体験」である。具体的な取り組みとして、以下が示されている。

  • dアカウント連携の強化:dポイントの付与などドコモ経済圏との統合を進める
  • アイコン選択機能の追加:2026年9月末ごろを目標に、新デザインに加え旧「NEOBANK」デザインのアイコンも選択可能にする
  • 支店名モチーフのアイコン展開:今後、支店名をモチーフにした追加アイコンも順次投入予定
出典:https://www.netbk.co.jp/contents/company/info/2026/0729_006117.html

一方で、社名が「ドコモSMTBネット銀行」となったことからもわかるとおり、経営の実態はドコモと三井住友信託銀行による対等に近い共同運営体制への移行である。単なる見た目のリブランディングではなく、資本構成の変化がブランドとUIの両面に波及している点は、今後のサービス設計を見る上で押さえておくべきポイントだろう。

「ドコモの銀行」スマホアプリUIにユーザーが求めていること

一連の反応を踏まえると、ユーザーが求めているのは主に次の3点に集約される。

①使い慣れた操作性・情報設計の継承

NPS調査で高評価を得てきたのは、機能の多さではなく「迷わず使える」という体験そのものだった。ブランドが変わっても、この操作感を大きく崩さないことが最優先事項として求められている。

②デザイン変更への移行猶予・選択肢の提供

今回のアイコン選択機能の追加は、まさにこの要望に応えたものだ。しかし「選べればよい」という反応だけでなく「そもそもなぜ変える必要があったのか」という声も根強く、変更の理由や利用者にとってのメリットを丁寧に説明するコミュニケーションが今後も求められる。

③実利(連携機能)の維持・向上への透明性

アイコンやデザインといった見た目の議論以上に、多くのユーザーが本質的に気にしているのはSBI証券との連携をはじめとする既存の実利的な機能が今後も維持されるかどうかである。UIの見た目の変更以上に、こうした機能面での継続性についての明確な情報発信が、ユーザーの不安を解消する鍵になるだろう。

「ドコモの銀行」は、約15年かけて磨き上げられてきたUI/UXの資産をどう引き継ぎ、ドコモグループとの新たな連携価値をどう上乗せしていくか、その両立が問われる局面にある。UIやアイコンの変化への注目はその第一歩に過ぎない。今後のアップデートでUI設計がどのように進化していくのか、注目していきたい。

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