この数字、どう読み解けばいい? DNP流「新人にまず教える」アクセス解析入門
DNPグループのWeb担当者の解析などの教育を担うウェブ解析士マスターの田口佳央莉氏が、今すぐ実務に活かせる数字の読み解き方を解説。さらに、AI対応の取り組みも紹介した。
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「サイトのアクセス数は追っているけれど、結局何が言えるのかわからない」――そんなデータ分析の“手前”で立ち止まっていませんか?
そこで「Web担当者Forum ミーティング2026 春」に、ウェブ解析士マスターである大日本印刷の田口佳央莉氏が登壇。田口氏は、DNPグループのWeb担当者の解析とSEOの教育を担う。DNPの現場でまず新人に伝えているのは、ツール操作ではなく「数字の裏側にある“意図”」の読み解き方だという。今すぐ実務に活かせる解読術を解説する。さらに、AI対応の取り組みも紹介した。
Webサイトは「家」、ページは「各部屋」に例えて解析用語をおさらい
はじめに、田口氏はWebサイト全体を『サザエさん』の「家」に見立てて、各部屋(お茶の間や客間など)を各Webページと捉え、校長先生が磯野家に訪問することを例にアクセス解析用語の説明をしていった。
- ユーザー(訪問者)
玄関から入ってきた「校長先生」
サイトにやってくる訪問者(ブラウザ)を指す。磯野家にやってきた校長先生が、まさにこの訪問者にあたる。
- セッション(訪問)
校長先生が玄関から入ってくる「訪問行動」
ユーザーがサイトを訪れてから去るまでの一連の行動を意味する。校長先生が玄関を開けて磯野家に入ってきたら、それでひとつの訪問が成立する。
- ページビュー(PV)
茶の間や客間など「入った部屋の数」
ユーザーがWebサイトの中で閲覧したページの総数を示す。校長先生が「企業情報の部屋」に入り、さらに隣の「技術・研究開発の部屋」に入った場合、合計ふたつの部屋を見たことになるため、部屋の移動数がそのまま閲覧数として2とカウントされる。
- コンバージョン(CV)
サイトのゴールである「波平さんに会えること」
Webサイトが目標とする最終的な成果(商品の購入、資料請求、問い合わせなど)を指す。校長先生が磯野家にやってくる理由としては、波平さんと会うことである。つまり、校長先生が波平さんに会えたら目標達成となる。
- ランディングページ(LP)
直接たどり着いた「窓やのき先」
ユーザーが検索エンジンや外部サイトを経由して、Webサイトで最初に足を踏み入れたページを指す。校長先生は、必ずしも正面玄関(トップページ)から入るわけではない。「波平はここにいる」と事前に知った上で、直接、庭側の窓(のき先)から部屋に入ってくることがある。この最初に降り立った部屋が、ランディングページにあたる。
- 新規ユーザー と リピーター
初めてのお客さんか、顔なじみか
Webサイトに初めて訪問したユーザーを「新規ユーザー」、過去に訪問したことがあり、再び訪れたユーザーを「リピーター」と呼ぶ。校長先生が人生で初めて磯野家に来たなら「新規」、以前にも来たことがあれば「リピーター」として区別する。
- 直帰
玄関先(最初の部屋)だけで「すぐに帰ってしまうこと」
サイトに訪問したユーザーが、最初の1ページだけを見て、他のページに移動せずにサイトから立ち去ってしまう現象を指す。校長先生が玄関や庭の窓から入ってきたものの、その部屋だけを見て「用件が済んだ」あるいは「やはりやめておこう」と、次の部屋に行かずにそのまま帰ってしまった状態がこれに該当する。
- 滞在時間
校長先生が「磯野家の中にいた時間」
ユーザーがWebサイトに滞在していた時間、あるいは特定のページを読んでいた時間のことを指す。校長先生が磯野家の中にとどまり、お茶を飲んだり話をしたりして過ごした合計時間が、そのまま滞在時間となる。
Webサイトは、“お客様とのコミュニケーションの場”。アクセス解析はお客様の反応を見るために必要
アクセス解析の基本用語を理解したところで、ここから本題に入っていく。データを基に改善をしていく大前提として、企業にとって「Webサイトとは“お客様とのコミュニケーションの場”。Webサイトでの体験次第で、会社のイメージは大きく変わってくる。すべてのお客様にポジティブなイメージを持ってもらうことが重要だ」と語る田口氏。
コミュニケーションと言うからには、発信したい情報を一方的に送り付けるのではいけない。とはいえ、リアル店舗や対面営業と同様に、「自分がどのような属性で、どのような期待を持って来訪しているのか」、お客様が自らの言葉で直接教えてくれることは滅多にない。
だからこそ、お客様の行動をアクセス解析で分析し、「お客様が目的を達成するために不足している情報はないか」と検討を重ね、Webサイトの改善につなげることが大切だ。お客様の“反応を見ること”がアクセス解析の目的だと、改めて肝に銘じておきたい。
アクセス解析でありがちな2つの失敗例
アクセス解析の重要性が分かったところで、次にアクセス解析でありがちな失敗例と、その改善策について見ていこう。田口氏は以下の2つのケースを挙げた。
失敗例① アクセス数を月単位でまとめて「なんとなく」眺める
たとえば、下図のような月間のページ閲覧数(PV)を棒グラフにまとめ、流入経路の割合やスマートフォンからのアクセス比率、成約率(CVR)などを並べたレポートを作成していないだろうか。こうしたレポートをもとに「アクセス数は毎月ほぼ横ばいである」「検索からの流入が〇割」「スマホからのアクセスが〇%」といった、報告をするだけで終わってしまうケースは少なくない。このように、月単位にまとめた大まかな数値だけを見せられても、その結果が「良い状態」なのか「悪い状態」なのかを正しく判断することはできない。
この問題を解決するためには、月単位ではなく「日別」のアクセス推移をグラフに落とし込むことが効果的である。月別のグラフでは変化がないように見えても、日別で細かく観察すると、アクセスが急増している「山」の存在に気づくことができる。
さらに、その山が発生した日に「どのような言葉で検索されていたか」「どのページにアクセスが集中していたか」を掘り下げる。これにより、たとえば「先端技術に関する話題が注目を集めている」といった具体的なユーザーの関心を特定できるようになり、「そのテーマに関するコンテンツをさらに充実させよう」という実践的な改善策を導き出すことが可能となる。
失敗例② 数値の変化という「事実」だけを並べて報告する
「アクセス数が前月より増えた」「検索からの流入が減った代わりに直接の訪問が増えた」といった、数値の動きをただ並べただけのレポートを提出し、上司から「だから何なのか」と問い詰められてはいないだろうか。大前提として、レポートは“上司が上層部に成果を報告するため”に存在する。そのため、「特定の施策を実行した結果、これだけの売上UPに貢献できた」とビジネス視点で説明できる内容にする必要がある。
データには「安定して動きの少ないデータ」と「時期や状況によって変動するデータ」がある。期間ごとの比較で意味のある分析を示すには、この「変動しやすいデータ」に注目することが有効である。さらに、上司が納得する深い気づきを導き出すためには、これら「安定しているデータ」と「変動するデータ」の二つを掛け合わせて分析することが重要となる。
数値の変化が「ビジネスにどのような好影響を与えたか」を明確に紐づけて報告することで、レポートの価値は高まる。以下は、田口氏が実際に上司から高く評価された報告の仕方である。
アクセス数が増加した際の報告例
「PVが+18%上がりました」と報告するだけではなく、次のように因果と効果を交えて報告する。
PVは前年比+18%増加。流入構成を見ると、検索エンジンでの「会社名+◯◯」の検索流入増加が主因です。製品と合わせた会社の認知拡大が起きています。
外部サイトからの流入が増加した際の報告例
「外部サイトからの流入が30%増えました!」と報告するだけでは、増加の背景、その効果が伝わらない。
主に◯◯サイトでニュースリリースが掲載されたことにより、外部サイトからの流入が30%増えました。アクセスした訪問企業を見ると、自治体・学校からの流入が増えました。また、これまでアクセスのなかった新規の企業からの訪問が1500件達成、教育分野での認知拡大に貢献しています。
深掘り分析の方法はターゲットと、その目的によって異なる
次に「深掘り分析」に着手する。数字の裏にひそむユーザー心理を深く理解し、より成果の高い改善につなげるためだ。深掘り分析は、次の2つのステップで進めていく。
STEP1ターゲットを理解する
アクセス解析の数字を正しく評価する、つまり数字の良し悪しを判断したり、指標の優先づけを行なったりするには、“ターゲットがWebサイトを訪れる理由”を正しく理解することが不可欠だ。その前提として、まずは自社サイトのページがそれぞれ誰のどんな目的に応えるために作られたものかを把握しておく必要がある。
田口氏は次の3点で整理できると言い、どんな企業サイトにも当てはまる汎用的な一覧表を示した。
- ターゲット類型(誰が来ているのか)
- 訪問目的(何が知りたいのか)
- 求める情報(どのページを見ているのか)
たとえば、基礎データの読み解きによって、成長戦略やESGページのアクセスが増えていたら、「将来性・成長戦略・AI/DX対応力を確認したい投資家・株主」の来訪が増えていると推測できるわけだ。
STEP2目的タイプを分類し、深堀りで取り組むことを決める
次に、ターゲットがサイトを来訪する目的は、次の2つに分類できると田口氏は説明する。
- 目的が明確な「目的達成&タスク型」
- 目的が曖昧な「探索・リサーチ発見型」
目的タイプによって、そのユーザーが見ているコンテンツや、深掘りするポイントや分析手法、作成する分析レポートの種類が変わってくる。
タイプ別にコンテンツを分類したのが以下の図だ。
ではそれぞれどのような深掘り方法があるのか。たとえば、コンテンツ分析の対象が企業情報の場合、目的タイプは「目的達成&タスク型」なので、「新規ユーザー」を対象に、以下のような分析をすると良いだろう。
分析対象が導入事例の場合、目的タイプは「探索&リサーチ発見型」なので、「リピーター」を対象に、以下のような分析をするのがおすすめだ。なお、ここで取り扱う「コンバージョン(CV)」分析について田口氏は、「最初から問い合わせや購入を目的に来訪したユーザーではなく、サイト内を探索した末に意思決定を行う、購買意欲の醸成フェーズにいるユーザー」を想定していると解説。広告などを起点に、意思決定段階がまだ低い状態で訪れたユーザーに対し、最終的な行動(CV)へどう導くかを紐解くアプローチとなる。
分析結果をもとに導線マップを作り、増やしたいユーザーがどこから来ているかを把握する
続いて、田口氏は普段から取り組んでほしいこととして、導線マップの作成をあげた。導線マップとは、以下のようにサイトマップのキャプチャを組み合わせ、ユーザーの導線を可視化したものだ。自社が注力しているコンテンツに対して、「ユーザーはどこから、どのくらいアクセスしているのか」を表している。
田口氏は事例として、製品ページの改修例を紹介した。ヒートマップ分析、キーワード分析、コンバージョン分析で深掘りを実施した。分析によってお客様が何に興味があるのかが分かり、関心ポイントにすぐ遷移できるように製品ページにアンカーリンクを追加したところ、大幅にアクセス数が増加し、大きく売上に貢献したという。
加えて、各指標はサイトやコンテンツごとに異なるが、一般的な数値と照らし合わせて、基準となる自社なりの一般指標を決めておくとよいと田口氏。以下が例だ。指標があれば、「自社の一般基準をこれだけ上回ったので良い施策だった」という風にスムーズに社内でコミュニケーションができそうだ。
増加するAI流入。DNPが行っているAI対応を紹介
最後に田口氏は、DNPで行っているAI対策について紹介した。DNPのWebサイトにもAI経由の流入が増加しており、そのうち約8割がChatGPT経由だという。AIへの対応を講じるために、まずはAIの参照元となっているページを確認し、どんな人が見ていそうなのかターゲットを設定する。次に、ターゲットごとにAIにどのような質問をしているのか、想定質問を洗い出す。
たとえば、製品・サービスページを見ているならユーザーは「企業のDX・製造・流通・出版・モビリティ・医療関係者」か「研究者・業界メディア・BtoB取引先候補」だと推定。これらのユーザーがページにたどり着く前に、AIにどんな質問をしたのかを考える。「DNPの電子部材・光学フィルムの特徴を教えて」など。その際、AIを使って質問を洗い出し、実際にAIに質問してサイトが回答に表示されるかを確認するという流れだ。
想定質問に対して、「AIが引用しやすい形」つまり構造化を意識して、以下の図の5つの項目を意識しながら、コンテンツを見直す。
AIは“情報の網羅性”を重視する。逆に、コンテンツの長さ(文字数の多さ)はそこまでネガティブな影響を与えないという。優先順位をつけて、ターゲットごとにLLMOを設計することが重要だ。最後に田口氏は「みなさんの解析Lifeが楽しいものでありますように!」と伝え、セッションを締め括った。
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