こんにちは。大日本印刷の田口佳央莉です。
あなたは、サイトを訪れるユーザーが、どのような気持ちでページを見ているのか、把握できていますか?
「ページビューや平均滞在時間など、全体の数字だけでは、個々の行動の理由を説明できない。しかし、1人のユーザーの行動を詳しく追っても、それが全体を代表しているとは言えない」
そんなジレンマを感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、そんな悩みを解決する「田口式ミクロ解析レポート術」をご紹介します。ユーザー一人ひとりの行動と、全体の傾向をつなげて読み解く、実践的な分析方法です。
アクセス解析ツールの行動フローを見ても何もわからない
最も身近なアクセス解析ツールの例として、ここでは GA4(Google Analytics 4) を取り上げます。
下の画面は、GA4の「経路データ探索」ページです。
サイト訪問者のページ遷移とページビュー数の割合を、視覚的に把握できるようになっています。
一見すると見やすいですが、実際に分析しようとすると、いくつか悩ましい点があります。
たとえば、最もアクセスの多いランディングページからの経路以外は、ほぼ同じ幅の線で表示されてしまうため、どこに課題があるのか見つけにくいことがあります。
さらに、同じページが複数のステップに登場することも多く、「どこをどう見ればいいのかわからない」「ユーザーの動線が読み取れない」と感じる方も少なくありません。
ぱっと見ただけでは、離脱の割合も把握しづらいですよね。
項目をクリックしてドリルダウンしていくと、最もアクセスの多いランディングページからコンバージョンまでの流れを、きれいなウォーターフロー型で確認することもできます。ただし、これはキャンペーンサイトのように明確なゴールが設定されている場合に有効なケースです。
たとえば「商品購入」というゴールがはっきりしていれば、ゴールまでのステップを短くしたり、ランディングページの改善ポイントを見つけたりといった分析が可能です。
しかし実際には、多くのサイトでユーザーの目的は一つではありません。ターゲットによって目的が異なり、明確なコンバージョンが設定しにくいケースも多いでしょう。
たとえば、コーポレートサイトの「企業情報」コンテンツには、会社概要、役員一覧、拠点情報、事業紹介など、さまざまなページがあります。ユーザーにそのうちのどれか一つだけを見てほしい、というわけではありませんよね。
重要なのは、サイトを訪れたユーザーそれぞれの目的がきちんと満たされているかどうかを読み解くことです。
そこで今回は、その課題を発見するための方法をいくつかご紹介します。
行動フローを見て、「迷子動線」を見つけよう!
課題が見つけにくい行動フロー図を、一瞬で意味のあるデータに変える方法があります。下の画面を見てください。
この図だけを見ると、分岐が多く、どこに注目すればよいのかわかりにくいですよね。
そこで、行動フロー図の中から、ページビュー数の多いコンテンツだけをピックアップして整理したものが、次の図です。
このように整理すると、「拠点一覧」や「部門」までアクセスしたにもかかわらず、その後に「会社概要」へ戻るケースが多いことがわかります。
これはたとえば、
- 拠点を探しているのに見つけられず、迷ってしまっている
- 拠点情報ではなく、事業内容を知りたい
といったように、求めるコンテンツとは異なるコンテンツにアクセスしてしまっている可能性が考えられます。
このように、ページ間を行ったり来たりする動きを「迷子動線」と呼びます。
サイトを訪れるユーザーは何らかの目的を持っています。そのため、上位階層と下位階層を行き来する「迷子動線」の動きが多い場合は、ユーザーが情報を見つけられていない可能性があり、サイト上の課題と考えられます。
迷子動線、4つの種類
迷子動線には、以下のような種類があります。
ナビ迷子動線
ユーザーが「このカテゴリに目的のページがあるはず」と考えてアクセスしたものの、求めている情報が見つからない場合、いったんサイトトップに戻って探し直すケースが多くなります。
サイトトップに何度も戻る動きが見られる場合、ナビゲーションがユーザーにとって理解しにくい構成になっている可能性があります。
カテゴリ迷子動線
皆さんも、探している商品が「キッチン用品」にあるのか、「雑貨」にあるのか迷った経験はありませんか。
似たようなカテゴリのページを何度も行き来している場合、カテゴリの分類がユーザーにとってわかりにくい可能性があります。
サイト運営側の分類と、ユーザーが思い描く分類は必ずしも一致しているとは限りません。そのため、どのカテゴリから探しても目的の情報にたどり着けるようにすることが、改善のポイントになります。
目的迷子動線
下位階層のページには進まず、上位階層のページばかりが多く閲覧されているケースがあります。
このようなサイトでは、ユーザーが「この会社は何をしている会社なのだろう?」と、まず全体像を知ろうとしている可能性が考えられます。
つまり、ユーザーの閲覧目的そのものが定まっておらず、サイト内で迷ってしまっている状態です。
この場合は、サイトを訪れた人がひと目で会社の概要を理解できるページを用意するなど、短時間で全体像を把握できる動線を整えることが必要です。
検索迷子動線
サイト内検索を利用して情報を探すユーザーもいます。たとえば、検索結果が「0件」の場合に表示されるページに専用のURLを設定しておくと、その行動も行動フローの中に現れるようになります。
また、検索結果ページを「1ページ目→2ページ目→3ページ目」と深く閲覧している場合は、検索結果が多すぎて目的の情報を見つけられていない可能性があります。
このような場合は、検索結果の並び順や絞り込み機能を見直すなど、ユーザーが目的の情報にたどり着きやすくする工夫が必要です。
ゴールから起点をたどって、ゴールデンルートを見つけよう
このように分析を進めていくと、どうしても「問題のある動線」ばかりに目が向きがちですが、良い動線を見つけることも重要です。
その方法の一つが、サイト訪問者のゴールから起点をたどる分析です。終点から始点へとさかのぼっていくことで見えてくるユーザーの行動ルートは、「ゴールデンルート」と呼ばれます。
GA4では、「探索レポート」で「経路データ探索」を選択すると、画面右上に青い文字で「最初からやり直す」と表示されます。まずは、そのリンクをクリックしてみましょう。
すると、「始点」と「終点」を選択できる画面が表示されます。
ここで 「終点」 をクリックし、検索窓にゴールとなるコンテンツのURLの一部を入力して検索してみましょう。

以下は、その結果の一例です。
お問い合わせページを終点として設定すると、そこに到達したサイト訪問者が、その前にどのようなコンテンツを閲覧していたのかを確認できます。
さらに、起点に向かってドリルダウンしていくことで、ユーザーが最初に閲覧したページまでさかのぼって分析することも可能です。
「お問い合わせ」「資料ダウンロード」「会員・メルマガ登録」「採用エントリー」といった、いわゆるコンバージョンにあたるページを起点にさかのぼって分析することは、とても有効です。
また、「製品詳細の閲覧」「拠点検索」「動画視聴」「記事の読了」「カート追加」など、ユーザーが興味や関心を持って行動していると考えられるページ――いわゆるサブコンバージョンについても、同様にさかのぼってみるとよいでしょう。
まとめ:行動フローこそ解析者の真価が現れる
アクセス数などの全体傾向を把握するだけでなく、行動フローを読み解けるようになると、解析者としての価値は大きく高まります。
行動フローの分析は、特別なデータを大量に集めなくても、1つの画面を見るだけで多くの示唆を得ることができるシンプルな手法です。ぜひ皆さんも、この視点で行動フローを見てみてください。
もちろん、これだけですべてがわかるわけではありません。
それでも、データの先にある課題を明らかにするためには、手元にある材料の中から読み解いていく姿勢が欠かせません。
AIや機械的な分析が進化している今だからこそ、人間ならではの洞察や仮説設計が重要になります。ぜひ、人にしかできない視点でデータを読み解き、解析者としての真価を発揮していきましょう。
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