自主制作映画を撮ってみた! 観るだけでは気づかなかったマーケティングとの共通点

こんにちは、田口佳央莉です。
今回は、自主映画制作の経験を振り返り、映画を「撮る側」になってみて、その過程で気づいたこと、そしてマーケティングにも応用できる映画制作の裏側をご紹介します。
観るだけではわからない、映画づくりの奥深さ
まずは、今回制作した映画「Dangerous Pair-BEYOND-」をご覧ください。
私は主演を務めており、刑事もののアクション映画です。やんちゃな女刑事コンビが事件の真相を追い、悪を滅ぼすというハラハラドキドキのストーリーです。

この映画は完全自主制作。スポンサーなしで、脚本家、カメラマン、俳優もすべて趣味仲間が集まり、機材もAmazonで購入したライトや反射板を活用。限られたリソースの中で、いかに映像のクオリティを高めるかを考えながら進めました。
監督を務めたのは細野直也さん(通称バリスタ監督)。

会社員でありながら映画撮影・制作を趣味とし、コーヒーをこよなく愛する方です。彼のこだわりと創意工夫が、今回の作品にも存分に詰まっています。
観る側から撮る側へ ストーリーテリング
「映画って、ストーリーさえおもしろければ成立するんじゃない?」
「スマホなら誰でも映画を撮れるんだから、意外と簡単なのでは?」
そんな風に思っていた私ですが、実際に脚本を片手に撮影を始めると、その大変さにすぐに気づきました。
映画は、ただ脚本を用意してカメラを回すだけでは完成しません。監督やカメラマンは全体の起承転結を考えながら演出し、俳優は「歩き方」や「登場の仕方」まで細かく意図を意識して演技をします。
映画制作が成功するためには、ストーリーの構築、キャラクターの設定、そして演出の意図と、「こんな映画が作りたいという熱いパッション」を、制作に携わる全員が共有することが不可欠です。
逆に言えば、スタート時点でこれさえしっかりしておけば、映画は作れるんです。細かいことはみんなで考えよう!それが自主映画制作の楽しさでもあります。
撮影を始めるとわかる――予定どおりに進まない!
自主制作映画の撮影では、スケジュール調整が大きな課題でした。演者もカメラマンも、そして監督自身も本業があり、限られた時間の中で撮影を進めなければなりません。しかし、バリスタ監督はここで一つの工夫をしました。
全員が集まる日を待つのではなく、登場人物ごとに撮影日を分けるという方法です。

たとえば、Aさん、Bさんの対話シーンのみを撮る日、Cさん、Dさんのアクションシーンを撮る日、全員登場シーンを撮る日をつくりました。
この発想は、マーケティングのプロジェクト運営にも通じるものがあります。
完璧な環境が整うのを待つのではなく、何ヵ年のスパンでも計画を立てたうえで可能な部分から前に進めること。リソースが限られているからこそ、進めやすい部分から、アイデアと工夫で解決策を見出す。
この柔軟な対応力が、映画制作でもマーケティングでも成功のカギを握ります。

映像制作と時間管理
いざ撮影してみると、「思ったより尺が長すぎる」「逆に短すぎる」といった問題が発生することは珍しくありません。
たとえば、わずか5分の映像を作るだけでも、実際の撮影には30分から1時間、場合によってはそれ以上の時間がかかることもあります。

ストーリーボードを活用しよう!実際にぬいぐるみなどを使って、1シーンにどれぐらいの尺を要するのかを試算してみたら効果的でした!
ストーリーボードを取り入れ、実際に小道具やぬいぐるみを使いながら、各シーンの時間を試算することで、撮影時のズレを最小限に抑えることができました。
ただし、どれだけ綿密な計画を立てても、撮影は脚本どおりには進まないもの。
関係者のスケジュールに合わせてスタジオを確保し、限られた時間の中で必要なシーンを撮影していく必要があります。
オープニングを撮った直後にクライマックスを撮ることもあり、シーンの順番が前後するのは日常茶飯事です。
こうした状況の中で、監督に求められるのは「ブレない軸を持つこと」。

どんなに想定外の事態が起きても、全体のストーリーを見失わず、イメージを関係者と共有し続けることが重要です。
シミュレーションの考え方は、マーケティング施策にも応用できます。より先を見通して動いておくかという綿密なプランニングと柔軟な対応力が、成果を最大化する鍵となるのです。
撮影時にアレンジ! 演者のあじを活かした脚本
映画や動画コンテンツを制作する際、単にストーリーをなぞるだけでは視聴者の興味を引き続けることは難しいもの。
マーケティングと同じように、観客の気分はその時々によって変わります。視線を引き込み、心をつかんだら離さないことが重要です。
自主制作映画では、撮影現場での即興アレンジが大きな武器となります。
- メリハリを意識:楽しいシーンとシリアスなシーンのコントラストを意図的に作る
- 起承転結を徹底:情報が散漫にならないよう、物語の流れを明確に
- 伏線を仕込む:犯人や黒幕の存在をうまく“チラ見せ”し、視聴者の好奇心を刺激
- 違和感を利用する:何かが欠けている(人がいない、武器がないなど)状況を作り、緊張感を演出

日頃の人間観察が重要です。この人の目つき良い! ここで使いたい!
ベースの脚本やストーリーはあれど、それを単純にこなすだけでは能がありません。それぞれの持ち味をどう活かしていくかを常日頃考えてメモしています。

普段の人間観察を活かし、「この表情はこの場面で映える」といったポイントを事前にメモしておくと、より説得力のある映像が作れます。
演者の個性を活かすのも、マーケティングチームの構成として考えると非常に有効です。プロジェクトマネージャーがきっちり理想的な人物とスキル像を描いて人をあてはめるよりも、ざっとカテゴリレベルで役割を決めたらそのあとは個々人の能力やオリジナリティを発揮してもらい、本人に理想を描いてもらう方が進めやすいのです。
いざ撮影! 視聴者を没入させる演出テクニック
私たちが映画を観ているとき、カメラワークや演出を意識することは少ないですよね。
制作する側の立場になると、映画もマーケティング同様、「何を見せるか」より「どう見せるか」の方が重要だと痛感します。
視聴者にとって自然に感じられる映像も、実は細部にわたる演出の積み重ねで成り立っています。
① セリフよりも「間」が語る、ストーリー
セリフよりも「間」が語るストーリー作りは、演出の大きなポイントになります。
適度な会話の間を意識することでリアリティを演出し、視線や表情の変化を活かして言葉なしで感情を伝えることが可能です。脚本にない「沈黙」や「余白」こそが、演出の妙を生み出します。
マーケティングにおいても、情報を詰め込みすぎず、ユーザーに考えさせる余韻を作ることが大切です。
② カメラの位置が意味を持つ
カメラアングルの選び方も視聴者の印象に大きく影響します。
俳優を見上げるアングルでは威圧感や権力を強調し、見下ろすアングルでは弱さや不安を表現できます。近距離ショットは感情の揺れをダイレクトに伝え、遠距離ショットは孤独感や状況の広がりを演出します。
マーケティングでもビジュアル戦略が重要であり、視聴者がどのような印象を持つかを計算しながら最適なアングルを選ぶことが求められます。
③「観客の視線を誘導し、惹きつける」テクニック
緊迫感のあるシーンでは、物陰から覗くようなカメラワークを活用し、臨場感を出したい場面では、さまざまな角度から同じシーンを撮影することで、リアリティを強調できます。
ドラマチックな演出には、照明を計算して自然光だけでなく光と影を作り出し、心理描写を強めるためには、背景のボケや光の使い方を工夫することでキャラクターの心情を効果的に伝えることができます。

④ カメラマンと監督の撮影前後の綿密な打ち合わせ
撮影前にはイメージ共有のために何度も打ち合わせを重ね、撮影後にはカットするシーンと活かすシーンの選別を行います。
さらに、状況や雰囲気を補強するために風景や小道具の撮影を行うことで、編集時に多様な素材を活用できるようになります。
マーケターにとっても、素材の「取捨選択」は非常に重要なスキルであり、撮影した映像のどこを活かすのかを意図を持って判断することで、最終的な仕上がりが大きく左右されます。
みんなで映像にする楽しさと学び
最初は監督の頭の中だけで描いていたストーリーを、みんなで思い思いのイメージを載せ、実際の映像になって形に残していけるのは楽しいものです!
そして、自主映画制作のプロセスは、マーケティングにも応用できる貴重な学びに満ちています。
映画が単なるストーリーだけでなく、キャラクター設定や演出によって視聴者を惹きつけるように、マーケティングでも「どのように伝えるか」が重要です。
また、限られたリソースの中で工夫しながら最適解を探る柔軟性や、視聴者の視線を意図的に誘導する演出テクニックは、効果的なコンテンツ設計にも欠かせません。
みなさんもぜひ機会があれば、映画撮影に挑戦してみることで、マーケティング施策に新たな発想を取り入れてみてはいかがでしょうか?
それでは今回はここまで! また次回お会いしましょう。
ソーシャルもやってます!