
みなさん、こんにちは。瀬川です。
数年前のある夜。私はPCを開き、次のセミナーの企画を考えていました。ふと時計を見たら、もう日付も変わる頃。そのとき、ふと思ったのです。
自分はなぜこんなことをしているんだろう。そもそも自分の仕事には何の意味があるんだろうか……
それから数年経ち、マーケティングマネージャーになった今思うのは、私のように自分の成長に不安を感じる人はかなり多いのではないかということ。
実際、私がマネージャーとして現場メンバーと話す中でも、「自分の成長があまり感じられないんです」と話してくれることがあります。しかし客観的に見れば明らかに成長している、というケースは珍しくありません。
このギャップの背景を深掘りすると、「自身の成長=事業成果」と考えているからではないかと思うのです。確かに事業成果は大事ですが、その前段である認知や判断が変わらなければ、成果を出すことはできません。だからこそ、認知や判断の成長にもっと目を向けるべきではないでしょうか。
そこでこの記事では、BtoBマーケターが成長を感じづらい理由を考察し、日々の仕事の中で成長を感じやすくするための方法について考えたいと思います。
マネジメントに携わる方、自身の成長に不安を感じている現場マーケターの方は、ぜひお読みください。
BtoBマーケターを取り巻く環境の変化
BtoBマーケターを取り巻く環境は、ここ数年で大きく変わってきています。その中でも、もっともインパクトが大きい変化の一つが、生成AIの登場です。
生成AIはマーケティング現場でも浸透しつつあり、これまで時間がかかっていたキャッチコピーの作成や分析などが、瞬時に高いクオリティで実施できるようになってきました。
生成AIの登場によって、マーケターに求められる役割そのものも変化しつつあります。これまで担ってきた「作業者」としての業務の多くはAIに代替され、今後は、人にしかできない洞察や意思決定といった領域へと重心が移っていくでしょう。
こうした変化の中で、「自分はこれからどんな役割を担えばいいのか」「きちんと成長できているのか」と、不安を感じるマーケターが増えているのではないでしょうか。
一方で、BtoBマーケティングの現場に目を向けると、多くの企業では限られた人数で、数多くの施策を回しているのが実情ではないでしょうか。加えて、日々新しい技術や手法が登場し、それらを継続的にキャッチアップしていくことも求められています。
こうした状況は、日本に限った話ではありません。イギリスで行われた調査(下図)によると、半数以上のマーケターが「仕事に圧倒されている」「自分の仕事が十分に評価されていない」と感じていることがわかっています。さらに、「疲れ果てている」「以前ほど仕事にやりがいを感じられなくなった」と回答した人も、約半数にのぼっています。

(翻訳)
直近12か月間で、以下のような経験はありましたか?(※全回答者に占める割合)
- 仕事に圧倒されていると感じた:58.1%
- 自分の仕事が正当に評価されていないと感じた:56.1%
- 精神的に疲れ果てている(感情的消耗):50.8%
- 以前はやりがいを感じていた仕事に、楽しさを感じられなくなった:48.2%
- 仕事に対して距離を感じる/ネガティブな気持ちになる:47.6%
- 自分はあまり役に立てていないと感じる:40.3%
これらはイギリスでの調査結果ですが、BtoBマーケターが置かれている構造的なストレスを示しているという点では、日本の状況とも決して無関係ではありません。こうした環境そのものが、マーケターが成長を実感しづらくなる一因になっているのではないでしょうか。
懸命に取り組んでいるにもかかわらず、成果が見えにくく、気づかないうちに疲弊や消耗を感じてしまう——そんな状態に陥っている人も少なくないはずです。
では、なぜBtoBマーケターは成長を実感しづらいのでしょうか。
BtoBマーケターが成長を感じづらい理由
理由1地味で手数がかかる作業が多い
BtoBマーケティングは、単発の施策だけで事業成果を出すことは難しく、複数のチャネルを駆使して受注をつくっていく総力戦です。
リスティング広告、SNS広告、メールマガジン、展示会、イベント……。これらの施策を横断的に動かし、つなげていかなくては思ったような成果を上げられません。だからこそ、兼任する業務が増え、役割範囲が大きくなることで、工数が肥大化し、仕事に追われる状態が起きがちです。
マーケティングは、なんとなくきらびやかなイメージを持たれがちですが、実際はかなり地味で、面倒なことの集積でしかありません。たとえば、ウェビナーを1回実施するにしても、必要なタスクは多岐にわたります。
- ウェビナーのコンセプト設計
- 登壇者の選定・依頼
- 申し込みページの作成
- 集客施策の実施
- 投影資料・配布資料の準備
- 配信ツールの設定・テスト
- 当日の進行・運営
- アンケートの回収・整理
- 営業部門へのフォローアップ依頼
こういった作業をこなしていくだけで精一杯で、気づいたら今週が終わり、今月が終わり、今年が終わる。こういった状況だからこそ、「この1年作業に追われていたら終わってしまった……」と思いやすいのです。
理由2事業成果が出るまでの距離や時間が長い
BtoBでは、営業部門が最終的な受注を担うことが多く、マーケティング部署はその前段としての見込み顧客の創出や育成を担います。しかし、受注にいたるまでの期間は、数か月から場合によっては数年に及ぶこともあり、マーケティング施策と事業成果との間に、大きな時間的な隔たりが生まれます。
さらに成果は営業部門の実績として可視化されることが多く、マーケティングがどのように成果に貢献したかが見えにくい構造もあります。
直近では、CRMやSFAによりマーケティング成果の可視化に取り組む企業も増えていますが、すべての施策の価値を説明できるわけではありません。
それゆえ、作業に追われている人ほど「この仕事をやったことで、何の意味があるのだろう」と思いがちなのです。
理由3マーケターの成長が非線形である

私自身マーケティングに取り組む中で思うのは、マーケターとしての成長は直線的でなく、遅効性のある非線形の伸びをすることです。
マーケティングで成果を出すためには、知識やスキルだけでなく、顧客理解が不可欠です。そして、それらは両輪であり、一朝一夕では身につきません。最初のうちは、知識やスキルもなければ、顧客理解も不十分であるため、思うような成果は出せません。
仕事をする中で、少しずつ成長していきますが、それでもなかなかうまく成果を出すことができず、もがき苦しみます。そしてあるタイミングで、突如うまく回り出すのです。
しかしこのタイミングはわかりづらく、なかなか立ち上がらない。だからこそ、「頑張っているけど、全然成果につながらない」と思い込んでしまうことが多いのではないかと思うのです。
マーケターとしての成長を実感する方法
方法1日報や週報などの記録を残す
まず意識したいのは、自分が考えたことや感じたことを、定期的に記録として残すことです。日報や週報を活用し、「今週どんなことに取り組んだのか」「その中で何を感じ、何を学んだのか」を書き留めていくとよいでしょう。
多くの場合、成長は小さな変化の積み重ねで進んでいくため、日々の業務の中ではどうしても実感しづらいものです。だからこそ、時間を空けて振り返れる仕組みをあらかじめ用意しておくことが重要になります。
実際、私のチームでは、週次のマーケティング定例会議の中に「Try & Learn」というコーナーを設けています。そこでは、この1週間で挑戦したことと、その挑戦から得た学びを言語化して共有してもらっています。
あとから見返してみると、月日が経つにつれて、できることの幅が広がっていたり、より深い視点で仕事に向き合えていたりすることに気づきます。
このように、自身の思考や学びを言語化し、記録として残しておくことで、時間を経たときに確かな成長を実感できるはずです。
方法2定期的に自分のスキルや経験を棚卸しする
2つ目は、半年や1年といった節目で、自分のスキルや経験を棚卸ししてみることです。
その期間を振り返りながら、「新しくできるようになったこと」「初めて経験したこと」を箇条書きで書き出してみましょう。特別に大きな成果や目立つ実績を書く必要はありません。小さな変化でも言葉にしていくことで、過去の自分と今の自分がどのように変わったのかを客観的に捉えられるようになります。
さらに、書き出す作業を通じて、自分自身を一段引いたメタの視点で見つめ直すことができます。その結果、これまで意識できていなかった不足している経験や、今後伸ばしたいスキルにも自然と気づけるはずです。
方法3社外の人と話す機会を持つ
3つ目に、社外の人と話す機会を意識的につくることです。私の見ている範囲ですが、マーケターの中には、社内に閉じこもって、外との接点をあまり持たない人が多いように感じます。
しかし、自分自身の立ち位置や成長は、意外と自分ひとりでは見えにくいものです。少し緊張するかもしれませんが、マーケティングに関する勉強会や交流会があれば、ぜひ積極的に参加してみてください。
社外の人と話すことで、いろんな気づきがあります。「実はすでにできていること」や「まだ十分にできていないこと」が自然と浮かび上がってきます。そうした気づきを通じて、自分がどの程度成長してきたのかを、あらためて見つめ直すきっかけになるはずです。
おわりに
この記事では、BtoBマーケターが成長を感じづらい理由と、その解決法について考えてみました。
BtoBマーケティングにおける成長には、自分の認知や思考が変わることが重要です。そのためには、座学だけでは不十分で、どうしても試行錯誤を伴う現場経験が必要不可欠です。
膨大なタスクや見えないプレッシャーに、憂鬱な時間を過ごすことは誰にでもあります。しかし、目の前の仕事に一生懸命向き合い続けてみてください。その瞬間は苦しくても、後から振り返ってみると、そこにこそ自分が最も大きく成長していた時間があったと気づくはずです。
