地方の小さなB2B企業がウェブを使って成果を出す鍵とは?

問い合わせの9割がトップ営業経由。岐阜の小さな会社がWebから大型受注できるようになった理由

岐阜県にある従業員35人の小さなWeb支援会社が、BtoBマーケティングに本腰を入れて取り組んだところ、東京の上場企業から大型注文を受けるまでに成長。「予算も少ない、人も少ない」という地方の企業のBtoBマーケティング担当者向けの新連載スタートです。

突然ですが、あなたはこういったお悩みを感じたことはないでしょうか。

社長からWeb集客をするように言われたが、何から手をつけてよいかわからない…

とりあえず思いつくWeb施策をやっているが、思ったような成果を得られていない…

Web集客について勉強はしているが、うまく業務で活かせていない…


これら全てのお悩みは、私がかつて同じように感じた課題でした。

申し遅れました。私は、株式会社アクシスの瀬川 義人と申します。現在、岐阜県にあるスタッフ35名ほどの小さなWebマーケティングの支援会社で、自社のWeb集客を行っています。

Web支援の会社なんだから、Web集客して当たり前でしょ

と思われる方も多いかと思いますが、かつての私たちはWeb集客ができていませんでした。2年前の2020年からWeb集客を強化した結果、2019年と比較して見込み顧客数(リード)は5倍、Webからのお問い合わせは2.4倍となりました。さらには売上1兆円を超える東京の上場企業からも、仕事をいただくようになりました。

そこで本連載では、私たちが取り組んだリアルなWeb集客の現場をお伝えしながら、地方の中小企業がWeb集客に取り組むコツやポイントについて紹介していきます。地方の企業で奮闘されているWeb担当者さまにとって、きっと実務で役立つこともあるはず。ぜひこの連載を通して、Web集客が少しでも前に進むことを願っています。

さて、第1回の今回は、私たちがWeb集客に取り組むようになった理由、そしてWeb集客に取り組んだ過程についてお話ししていきます。

Webマーケ支援の会社なのに、問い合わせの9割がトップ営業
Web集客できていなかった

時は遡ること約2年前。当時の私たちは、Web支援の会社でありながら、Webで集客していませんでした。

商談のおよそ9割がトップ営業と紹介によるもの。地方では経営者同士の結びつきが強く、「あの会社はWeb支援の技術が高いらしい」との話が回れば、クチコミである程度の引き合いをいただけてしまうのです。

一方で、社内の体制を見てみると、営業スタッフは1名のみ。そのスタッフが営業からマーケティングまで全てを担っていました。当然、目の前の商談をこなすことが精一杯で、数年後のお客様のためにマーケティングをする余裕はとてもありません。

弊社にはWeb支援のコンサルタントはいるものの、クライアントの支援で手一杯。自社の集客まで手が回らない状態でした。それゆえ、自社のWeb集客は片手間になり、Webからのお問い合わせは増えない。お問い合わせが増えないので、さらにトップ営業に依存していく。会社としては十分な問い合わせを獲得していましたが、ほとんどWebで集客できていない状況になっていました。

地方では多くの場合、営業や総務といった部署の方が兼任で、Web集客を担われており、Web集客だけ専任でできる方は多くないでしょう。それゆえ他業に追われてしまい、Web集客まで手が回らないなんてといったお悩みを感じている方も、少なくないかもしれません。

「Webで集客してくれ」と言われたけれど、何をしてよいかわからない

ある時、トップ営業に依存する現状に危機感を感じていた代表は、大きな決断をします。
自社のWeb集客の専任者を入れて、立て直そう」と。

そこで雇われたのが、私でした。今でも、代表に会議室に呼ばれた時のことはよく覚えています。席に着くと、代表は静かにひとこと言いました。

Webからお問い合わせが来る仕組みを作ってくれ

代表からこう言われた私は、正直なところ緊張と不安でいっぱいでした。当時の私は、転職してきたばかり。前職でブログ記事などは書いていましたが、Web集客の実務経験はなく、もちろんB2BのWeb集客やマーケティングに関しては無知でした。

とはいえ、自分の仕事はまさにそれだけ。なんとか実現するほかありません。そこから私のWeb担当者としての格闘が始まりました。

いきなり我流でやらず、まずはきちんと基礎を学ぶ

いざWeb集客を進めようとしても、何から始めたら良いかわかりません。ここで思い出したのは、かつて英語を勉強した時の経験でした。英語を学ぶ時は、まず単語や文法から学びます。単語や文法を知らないと、なぜそうなるか理解できないので、応用が効きません。

Web集客も全く同じです。基礎を疎かにして、いきなり我流でやってみても、たいていの場合、うまく行きません。必要最低限の知識はきちんと身につけておくほうが、結果的に早くゴールにたどり着けます。

さらに、B2BのWeb集客は、既にやっておくべき勝ちパターン(型)が存在します。であれば、その勝ちパターンを真似るほうが絶対に早いですよね。幸いなことに、書店に行けば、Web集客に関する書籍は多くあります。またオンラインが当たり前になり、無料や安価でWeb集客のセミナーを受講できます。

実際、私も書籍や無料セミナーを活用して、B2BのWebマーケティングの基礎を2か月程度で学びました。

  • B2Bは、B2Cに比べて購買のプロセスが長く、利害関係者も多いこと。
  • 衝動買いはなく、事業課題に対して合理的な判断の上で購買が決まること。
  • それゆえ点の施策だけでは不十分で、施策同士をきちんと線で繋ぐ必要があること。

こういった基礎知識は、のちにWeb戦略や施策を考える上で非常に役立ちました。

「とりあえず」の施策は、たいてい上手くいきません

私がこれまで見てきた中で、Web集客に失敗してしまう原因は「とりあえず思いつく施策をやってしまう」ことがあります。

  • Instagramが流行っていて儲かると聞いて、とりあえず社員にやらせてみる。
  • ホームページのデザインが悪いからと、とりあえずリニューアルしてみる。
  • 営業されたから、とりあえずWeb広告を出してみる。

こういった「とりあえず」でやってみた施策が、うまく行った話をあまり聞いたことがありません。お恥ずかしい話ですが、私たちもかつて「とりあえず」施策をやってみて、苦い思いをしました。

ある商材のお問い合わせを獲得しようと、とにかくLP(ランディング・ページ)をつくり、リスティング広告をかけてみました。結果は惨敗。もちろんあれこれLPを工夫したり、広告の出し方を変えてみても、結果は変わりません。

結局、お問い合わせの獲得コスト(CPA)は40万円超、成約はゼロという苦い経験だけが残りました。

失敗を避けるには「戦略」が必要

では失敗を可能な限り避けるためには、どうしたら良いのでしょうか。

その答えは、一度立ち止まり、自分たちのWeb集客戦略を見直すことです。戦略について、USJをV字回復に導いた、刀の森岡 毅氏は著書でこのように説明しています。

目的を達成するために資源(リソース)を配分するための選択のこと

戦略が間違っていると、どれだけ施策にエネルギーを注いでも思うような結果が得られないばかりか、大切なお金や時間も無駄にしてしまうことになってしまうのです。

きちんとWeb集客戦略をつくり、資料化されている企業はほんの一部です。Web集客に関わる人たちの間で共通言語がないため、思いつきの施策やどこかちぐはぐな施策をしてしまい、結果として成果に結びつかないのです。

Web集客を進める上で大切なのは「何をして、何をしないかを決めること」だと考えています。みなさまもご存知の通り、Web集客では本当に数多くの施策があります。SEO、Webサイト制作、SNS運用、リスティング広告、インフルエンサー、アフィリエイト……。

東京の上場企業のように資本力があれば別ですが、地方の会社はいわゆるヒト・モノ・カネが十分にあることはないはず。であれば、達成したい目的に対して、どこに有限の資源を配分するか(=戦略)が重要なのです。

実際、私たちもWeb集客を見直すタイミングで、Web戦略を一から見直すことにしました。

まずは現状分析です。営業スタッフにヒアリングして、商談ではどんなニーズをお客様が持っているのか、また受注/失注する理由は何なのかをリストアップしました。

ヒアリングを通じてわかったことは、「費用が合わない」「とりあえず相談した」が失注理由のほとんどでした。これは、

  • 私たちがお客様ではない人にアプローチをしてしまっている。
  • 正しくサービスの価値を伝えられていない。

が原因ではないか、ということが見えてきました。その上で、自社について改めて掘り下げることにしました。

  • 私たちのお客様はどんな人なのか。
  • またそのお客様にとってどんな存在で、どういった価値を提供しているのか。

こういった論点について、経営幹部や事業部のマネージャーたちを集め、2か月ほどかけて議論しました。

その結果、今までぼんやりとした自分たちの提供価値や強みが言語化され、その後の自社サイトのリニューアルやWeb集客施策を進める上で大きく役立ちました。具体的にどのように話し合いを進めていったかについては、次回の記事で詳しく紹介します。

Web集客を大きく伸ばすために取り組んだこと

ただ戦略を立てただけでは、Web集客は何も変わりません。話し合って作り上げた戦略をもとに、集客施策に取り組み始めました。

さまざまな施策の中で、特に力を入れたのが以下の施策です。

  • 自社サイトのリニューアル
  • お問い合わせ(コンバージョン)地点を増やす
  • オンラインセミナーの実施
  • セミナーコンテンツを活用したお役立ち資料の作成
  • MA(マーケティング・オートメーション)を活用したメルマガ配信

Web集客の知識がある方にとっては「特に目新しい施策もないし、普通のことしかしていないのだな」と思われるかと思います。ただWeb集客施策を進める上で感じたのは、当たり前の施策を徹底的にやり切ることの大切さです。

結果が出ない中、施策を粘り強く続けるのは本当に辛いことです。実際、私たちもWeb集客をはじめて最初の半年は成果も出ず、焦燥感に苛まれる日々を過ごしていました。とはいえB2BのWeb集客において、一発逆転できる魔法のような施策はありません。むしろ当たり前の施策を忍耐強く、きちんと積み上げていけば、きっと結果は付いてきます。

おわりに

本記事では、私たちがWeb集客に取り組むようになった理由、そしてWeb集客に取り組んだ過程についてお話ししてきました。次回からは、施策ごとに具体的にどのように考えて、進めていったかをお話しします。ぜひ合わせてお読みください。
 

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