購読解除の嵐だった「メルマガ」を変えた考え方
みなさん、こんにちは。株式会社アクシスの瀬川です。
この連載「地方の小さなB2B企業がウェブを使って成果を出す鍵とは?」では、私たちの事例をもとに地方の中小企業がウェブで成果を出すためのヒントをお伝えしています。
第7回となる今回のテーマは、「成果を出すメルマガ(メールマガジン)のつくりかた」です。
さまざまなSNSが登場した現代においても、メルマガはいまだに有効的なマーケティングの手法です。実際に企業からのメルマガを受け取っている方も多いはず。
とはいえ、こういったお悩みもしばしばお伺いします。
「メルマガは出しているけど、あまり成果が感じられない…」
「何を書いてよいかわからず、挫折してしまった…」
実際、私もメルマガを書く担当になった当初はどう書いてよいかわからず、必死に書いても開封率は低空飛行。さらには購読解除が増え続け、まさに行き詰まっていました。
しかし、あることに気づいてからは劇的に成果も改善し、メルマガがきっかけでお問い合わせが来るほどになりました。
そこで今回は、私が試行錯誤する中で見つけた、成果を出すメルマガづくりの考え方とコツについて紹介します。メルマガづくりで悩むWeb担当者さんは、ぜひご覧ください。
売りが強いメルマガはうまくいかない
必死にメルマガを出すも、成果に行き詰まっていた苦い経験
遡ること約3年前。私は自社のWebマーケティング担当として、メルマガを書くことになりました。当時はともかく早く成果を出さないといけないとの焦りから、とにかくメルマガを送っていました。
しかし、送付したメルマガの開封率はほぼ横ばいか、若干右肩下がり。さらに購読解除は増える一方で、正直あまり良い状態とは言えませんでした。そしてある時、ふと思いました。「自分が受け取る立場だったら、このメルマガを読みたいかな」と。
お恥ずかしい話ですが、自分の答えは「No」でした。送っていた内容は、自社のセミナーの宣伝ばかり。もちろんセミナーの宣伝自体は悪いことではありませんが、自分ですら読みたいと思える内容ではなかったのです。
メルマガ施策でよくある失敗
私がこれまで見てきた中で、メルマガで失敗する多くの理由は「商品やサービスの宣伝をとにかく送ってしまう」からです。
たとえば、あなたの家のポストに興味がないサービスのチラシが毎週入っていたらどう思うでしょうか。おそらく多くの方は、「投函してくれて、ありがとう」とは思わないはず。むしろ企業に対してネガティブな思いを持ってしまう方のほうが多いでしょう。
同じように、メルマガを購読している人たちの多くは、残念ながら、あなたの商品やサービスにそこまで興味はありません。本当に興味があれば、既にお問い合わせや資料請求してくださっているはずです。だからこそ売りが強いメルマガはうまくいかないのです。
リアクションが減ると、開封すらされなくなる
売りが強いメルマガはうまくいかないとはいえ、「少しでも反応があれば良いのだから、数を打てばよいのでは」と思う方もいるかもしれません。実際、成果を上げるために送信数を増やすことを勧めている記事もあります。しかし、こういったメルマガ施策は逆効果だと考えています。
なぜなら、Gmailに代表されるメールサービスは、開封といったユーザーの行動を基準にエンゲージメントを測定しており、エンゲージメントが低いメールは迷惑メールフォルダに振り分けられるからです。このロジックに抵触した状態をグレーメールと呼びます。
当然、迷惑メールフォルダに振り分けられれば見落とされる可能性が高く、全体の開封率が下がっていきます。すると、本当に伝えたい情報がますます伝わらなくなってしまうのです。
では、どうしたらよいのでしょうか。その答えは、ユーザーが読みたい内容のメルマガをコツコツと送り、エンゲージメントを高く保つことです。
「いつも良い内容を送ってくれる」と思われれば、自然と開封されます。ユーザーが読みたいと思うメールを継続して送ることで、メルマガの成果も上がっていくのです。
成果を出すメルマガづくりで重要な考え方
ここからは成果を出すメルマガづくりで重要な考え方を紹介していきましょう。それは、以下の3つです。
- 自社が強みとする分野について、専門家であることを伝える
- 読者に有益と思われるコンテンツをつくる
- 継続して関係を保ち、ニーズが生まれた時に思い出してもらうこと
それぞれについて詳しく説明していきます。
① 自社が強みとする分野について、専門家であることを伝える
まず重要なのは、自分たちの専門性をメルマガを通して伝えることです。
B2Bの集客施策では、無料相談をフックに商談をつくっていく手法が鉄板です。しかし、メールを受け取る人からすれば、よくわからない会社に相談するのは、いくら無料でもハードルが高いはず。
もしあなたが道端で全く見知らぬ人に声をかけられても、重要な相談はしませんよね。だからこそメールを受け取った人に「この会社は業界に詳しく、自分たちの課題について何かしらの答えを持っている」と認識してもらうことが重要なのです。
たとえば、私たちアクシスの場合は、デジタルマーケティングを支援する会社です。そこでメルマガでは、デジタルマーケティングに関するニュースや小ネタを中心に取り上げています。
そういったコンテンツを継続して載せることで、専門家として認識されやすくなるのです。
② 読者に有益と思われるコンテンツをつくる
2つ目に、有益な情報をくれる会社だと思ってもらうことです。先述の通り、どれだけ専門分野に詳しい企業であっても、売りが強いメルマガばかり送られると、どうしても読まれなくなってしまいます。
そこでメルマガでは、購読することで「自分にとってメリットがある」と思われる内容をつくっていくことが重要なのです。
私の場合、メルマガを作る時に「ちょっぴり勉強になる内容」を意識してつくっています。
メルマガは1回の送付に対して、1トピックと決めて、トピックに関する内容を短くまとめます。イメージとしては、ちょっと長いSNS投稿くらいの文量です。最後に、そのトピックに関連したブログ記事を紹介することで、もっと詳しく知りたい方にも対応できる構成にしています。
このように有益だと思ってもらえるコンテンツをつくることが開封率を押し上げ、成果を伸ばしてくれるのです。
③ 継続して関係を保ち、ニーズが生まれた時に思い出してもらうこと
最後は、継続して関係をつくり、信頼を積み上げることです。
B2Bは、商談に至るまでの期間が比較的長いです。接点を持った当時はまったくニーズがなくても、市場環境の変化や会社方針の変更によって急に商談が発生することもあります。
だからこそメルマガを通して継続して関係を保っておき、ビジネスの種が生まれた時に「あの会社に相談してみよう」と想起してもらうことが重要なのです。
【筆者の実体験】
実際に、私もこんな経験をしました。
ある時、私に1通のお問い合わせメールが届きました。差出人は、とある企業の課長さん。3年前に名刺交換して以来、特に関わりはない方でした。まずは打ち合わせを設定して、相談の背景を伺ったところ、このように言われたのです。
「実は今年から部長になったんだ。ずっと前からメルマガを読んでいて、いつか集客の相談をしたいと思っていたので、昇進した今、ようやく相談したんだよ」と。
このように継続して関係を保つことが商談を生み出す上で重要なのです。
成果を出すメルマガ作りの5ステップ
ここからは実際にメルマガをつくる上で重要な5つのステップを紹介していきます。
- ステップ1. 配信先リストを整理する
- ステップ2. メルマガの目的とゴールを定める
- ステップ3. メール本文のタイプを決める
- ステップ4. 読みたくなるメールタイトルを付ける
- ステップ5. 必ずテスト送信して確認する
ステップ1. 配信先リストを整理する
ステップ1では、配信リストを整理して、鮮度を保ちましょう。
そのためには、ハードバウンス(宛先不明)やオプトアウト(配信解除)した人に対してはメールの配信をしないようにします(多くのメール配信システムでは、自動で送信除外する機能があります)。
また、グレーメールにならないように、比較的エンゲージメントが高い人を中心に送ることがオススメです。具体的には、「●●●日の間メールに反応(開封やリンククリック)していない人は送信対象から外しておく」などです。
こういったユーザー行動に応じたリストの管理は、MA(マーケティングオートメーション)が得意なので、MAを導入している方はぜひ活用してみてください。
ステップ2. メルマガの目的とゴールを定める
ステップ2では、メルマガの目的とゴールを定めます。このメルマガを通して、読者にどういった行動を期待するかを考えるのです。そして期待すべき行動から逆算して、文面を考えていきます。
たとえば、あなたが書いたブログ記事を紹介したい場合(目的)、ブログ記事へのリンクをクリックしてもらうことが期待する行動(ゴール)です。
この場合、メルマガでは、読者に「もっと詳しく知りたい」と思ってもらう必要があります。そこで、ブログ記事の内容に少し触れて、続きは記事で…といった構成が良さそうです。
このように、メルマガの目的とゴールをあらかじめ定めておくと首尾一貫した内容となり、反応も得やすくなります。また事前にゴールを定めておくと、のちの効果検証でも見るべき指標が明確になるためオススメです。
ステップ3. メール本文のタイプを決める
ステップ3では、いよいよメール本文をつくっていきます。世の中のメルマガを大きく分けると、以下の2タイプがあると考えています。
- お手紙型メルマガ
- 情報提供型メルマガ
それぞれのタイプについて説明します。
まず、1のお手紙型メルマガは、書き手が主役のメルマガです。メリットは、書き手の人となりが滲み出るため、共感を得てファンが付きやすいことです。たとえば、静岡のマーケティング支援会社サンロフトさんが発行されていた「今日は木曜日」は、多くのファンがいて毎回メルマガに返信をしてくれる方もいたそうです。一方で、かなり属人的になるため、再現性が高くないのがデメリットです。
2の情報提供型メルマガは、コンテンツが主役のメルマガです。コンテンツの内容で勝負するため、チームとして取り組みやすいのがメリットです。一方で、デメリットとしてはお手紙型メルマガに比べると共感が得にくいです。
どちらのタイプを取るかは企業ごとに変わりますが、個人的には情報提供型メルマガがオススメです。理由は、お手紙型メルマガのデメリットでも紹介したように、お手紙型メルマガは、センスが必要であり、属人的になってしまうからです。
具体的な構成については、のちほど参考文例で解説します。
ステップ4. 読みたくなるメールタイトルを付ける
ステップ4は、読みたくなるメールタイトルを付けることです。メールタイトルは、開封率を大きく左右するため、非常に重要なパートです。メールタイトルの付け方は、コピーライティングの書籍なども参考にするとよいでしょう。
僕が気をつけていることは、以下の内容です。
- キーワードはできるだけ左(文頭)に入れる
- できるだけコンパクト(20~30字程度)にする
- ターゲットを明確にする(「〇〇にお悩みの方へ」などの表現を使う)
メールのタイトル付けは、今でも本当に難しい仕事です。よく言われるテクニックも必ずしもすべての企業で成果が出るわけではないので、とにかく試行錯誤してみることが大切です。
なお開封率を上げたいからといって、煽り表現を使うのは個人的にオススメしません。なぜなら、メールタイトルと本文にギャップがあると、ネガティブな印象を与えてしまいかねないからです。地道でも正攻法で頑張ってみることをオススメします。
ステップ5. 必ずテスト送信して確認する
ステップ5は、必ずテスト送信して確認することです。このステップは、本当に、本当に重要です。メルマガの配信事故は、企業の信頼を失うことにも繋がりかねません。だからこそ配信前にはテスト送信をして、複数人で確認するオペレーションを組みましょう。
特に私がテスト送信でチェックしているポイントは、以下です。
- 配信先リストは間違っていないか
- 差出人や送信メールアドレスは間違っていないか
- リンクは貼り間違えていないか(リンク切れにならないか)
- 差し込み設定をしている場合、設定ミスがないか
- メールタイトルや本文に、誤字脱字などはないか
テスト送信して、実際にメーラーで確認してみると、細かいミスに気がつきます。修正が終わるまで、何回かテスト送信してみることをお忘れなく。
参考文例
ここでは参考文例として、「Googleアナリティクスでアクセス分析する方法」をテーマにメルマガをつくってみたいと思います。
- 【目的】自社のオウンドメディアにメルマガ読者を誘導したい
- 【期待する行動】Googleアナリティクスに関する記事を読んでもらう
Googleアナリティクスの分析に悩む方へ。分析に役立つ3ステップとは? |
〇〇様 いつもお世話になっております。 突然ですが、日頃の業務でGoogleアナリティクスを見ていますか。 Googleアナリティクスは、お客様のWeb上での行動を可視化してくれる便利なツールです。一方で「数字は見ているけど、どうやって分析したらよいか分からない…」なんて方も多いかもしれません。 そこで今回は、Googleアナリティクスでアクセス分析する方法について紹介します。 ▼詳しくは記事にて紹介しています
①どういったユーザーが訪れているのか(ユーザーの属性) (中略) より詳しくアクセス分析について知りたい方は、こちらの記事で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。 |
→Googleアナリティクスでアクセス分析する方法 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 |
構成づくりのポイントは、冒頭で「課題提起」と「共感」の部分を書くことです。
残念ながら、ほとんどのメルマガは流し読みされます。冒頭の部分で惹きつけないと、そのまま離脱されてしまうため、きちんと読むべき理由を伝えることが必要なのです。
また最後には、きちんとリンクを設置して、行動してもらう動線をつくりましょう。
メルマガ施策でより成果を出すために
最後にメルマガ施策を継続して改善していくために、以下の3つポイントを紹介します。
- 周りの人に読んでもらい、フィードバックを受ける
- 指標をきちんと測定して振り返る
- ABテストで勝ちパターンを探る
周りの人に読んでもらい、フィードバックを受ける
メルマガを自分ひとりで執筆していると、どうしても良し悪しが分からなくなってきます。そういった場合は、社内にいる他の方にも読んでもらい、フィードバックを受けるとよいでしょう。他の人に読んでもらうと、自分では気付きづらい修正点が見つかります。
- 文量は適切か
- 表現に分かりづらいところはないか
- 専門用語を使いすぎていないか
などです。
フィードバックをもとに改善していけば、徐々にクオリティも上がっていくはずです。最初は恥ずかしいとは思いますが、ぜひ周りの方に見てもらうことを心がけてみてください。
指標をきちんと測定して振り返る
メルマガを送ったあとは、指標を見ながら振り返ってみましょう。メルマガで見るべき指標は、以下の4つです。
- 送信数
- 開封率
- クリック率(クリック数/開封数)
- オプトアウト率
これらの指標をメール毎に記録してみると、改善すべきポイントが見えてきます。また全体の傾向として、どういったテーマに反応がよいかもわかってくるので、次のネタづくりにも活かせます。
ただメルマガを送って終わりにせず、振り返って検証するようにしてみてください。
A/Bテストで勝ちパターンを探る
先述の通り、メルマガは試行錯誤しながら改善していく必要があります。そのために役立つのが、A/Bテスト機能です。
メルマガにおけるA/Bテストとは、配信先のリストの一部に、それぞれ違うパターンのメルマガを送り、どちらの反応がよいかを比べてみる手法です。
たとえば私たちアクシスの場合、メールタイトル付けのコンテストを時々しています。1人1案、メールのタイトルを考えて、誰のアイデアのタイトルが一番読者の反応がよいかを実際にテストしてみることで、みんなでテクニックを学べるのです。
何が正解かわからないメルマガでは、とにかく検証してみることが重要です。ぜひA/Bテストを通して、あなた自身のノウハウを蓄積していってください。
おわりに
この記事では、私たちアクシスでの経験をもとに、成果を出すためのメルマガのつくりかたについて紹介しました。
メルマガで一番重要なことは、お客様が読みたいと思うコンテンツを継続して届けること。「この会社は有益な情報をいつも届けてくれる」と信頼されるためには、おそらく数年単位の時間がかかるでしょう。しかし、そこまで信頼を積み上げれば、きっと商談や売上といった成果にもつながるはずです。
メルマガづくりに悩むWeb担当者さまにとって、なにか参考になれば嬉しいです。
次回の記事では、失敗しないためのWebサイトリニューアルのコツについて紹介していきます。ぜひご覧ください。
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