誰に向けて、この施策をするんだっけ? 「お客様像」をWeb集客にかかわる全員で考えるべき理由
みなさん、こんにちは。アクシスの瀬川です。この連載「地方の小さなB2B企業がウェブを使って成果を出す鍵とは?」では、私たちの事例をもとに地方の中小企業がウェブで成果を出すためのヒントをお伝えしています。
前回の記事では、経営層を交えたディスカッションの中で、自社の本当の強みを見つけていったことを紹介しました。
第3回のテーマは「自分たちの強みを、誰にどのように伝えるか」です。どんなに良い戦略を描いても、どんなに良い施策を考えても、誰にどのように伝えるかを間違えてしまうと結果は出ません。
たとえば、業種的にSNSを見ない人が多いのに、SNSアカウントを作って、どれだけ情報発信しても、おそらく大きな成果にはつながりませんよね。
そうならないためには、自社の強みと特長にあったお客様像(ペルソナ)をつくり、その人が購買に至るまでの道のり(カスタマージャーニー)を整理することが重要です。そうすれば、大外れな施策を打ってしまい、お金も時間も無駄にするリスクは最小限にできます。
実際、私たちアクシスでも、自社にあったお客様とその行動について議論を重ねて言語化することで、迷いなくWeb集客に取り組めるようになりました。
この記事では、私たちがどのようにディスカッションして、ペルソナとカスタマージャーニーをまとめていったかを紹介していきます。ぜひご覧ください。
なぜペルソナやカスタマージャーニーマップが重要か
人によって「お客様」の認識は違う
この記事を読んでいる方の中には、このような方もいるかもしれません。
「自分たちはお客様のことをよくわかっているし、頭に入っているから、いまさら資料に落とす必要はあるの?」と。
しかし実際のところ、人が違えば思い浮かべるものも違うことは多いのです。ここで理解を深めるために、1つ例を考えてみましょう。
もしあなたが「赤くて甘い果物は何ですか?」と言われたら、何を想像するでしょうか。
ある人は「りんご」というかもしれません。もしくは「スイカ」という人もいるでしょう。もしかしたら「トマトも果物と言えるから含まれるのでは?」なんて人もいるかもしれません。
それぞれが思い浮かべるものが違ったまま、議論をすれば確実に合意形成は難しくなります。たとえば、りんごを思い浮かべている人が「焼いて食べると美味しいから、食べ方を提案しよう」と言ったとすれば、スイカを思い浮かべている人にとっては「焼いて食べるのはおかしい」と、言うに違いありません。
Web集客でも全く同じです。
事業には、経営者や営業、Web担当者、カスタマーサポートなど、さまざまな立場の方がかかわります。それぞれ視点や考え方が異なるため、思い浮かべるお客様像はどうしてもズレてきてしまいます。
このズレが大きくなれば、最終的に施策の一貫性がなくなったり、せっかくWeb集客を頑張ってお問い合わせを増やしても商談につながらなかったり、商談になっても受注できなかったり、という結果になってしまいます。
失敗を避けるには、ペルソナとカスタマージャーニーマップ
では、どうしたらお客様に対する認識のズレを最小限にできるのでしょうか。
その解決策の1つが、ペルソナとカスタマージャーニーマップをつくることだと考えています。
冒頭の果物の例で言うと、「赤くて甘い果物は何か」をより明確にすれば、認識のズレは減らせます。認識をそろえるには、果実の特徴をより詳細に書き出しても良いですし、写真があればすぐに伝わります。
これと同じように、事業に関わる人それぞれが思い浮かべるお客様像を言語化し、すり合わせることで、はじめて共通のお客様像を持てるようになるのです。またそのお客様と企業との接点を整理することで、一貫性のある施策を打てるようになっていきます。
ここからは私たちアクシスが、どのようにペルソナとカスタマージャーニーマップをつくっていったかを紹介します。なおペルソナやカスタマージャーニーマップの詳しい作り方は、書籍や有益な記事が多く出ているので、今回は特に私たちがどのように考えたかの部分に焦点をあてていきます。
どのようにペルソナを作ったか
ペルソナづくりで重要な2つのポイント
少しでもマーケティングを勉強したことがある方は、「ペルソナ」という言葉を聞いたことがあると思いますが、知らない方のために簡単に紹介します。
一般的にペルソナとは、理想の顧客を象徴する架空の人物像を指します。
ペルソナづくりで重要なポイントは、次の2つです。
- 半架空で、理想のお客様を表現したものであること
- マーケット調査や既存のお客様に関する実際のデータに基づいていること
すなわち、ペルソナは何となく「お客様ってこうだよね」と作るのではなく、きちんとデータを集めた上で、その特徴を踏まえてお客様像をつくっていくことが重要なのです。実際に私たちアクシスも、まずはデータを集めていくことにしました。
お問い合わせ分析から見えてきた2つのペルソナ
まずは営業担当に協力を得て、Webやトップ営業を問わず、過去のお問い合わせ履歴を調べていきます。すると、お問い合わせは「一般社員」と「経営者」という大きく2つのタイプに分類されていることがわかりました。
さらにこの2タイプが、「どこから問い合わせをしてきたのか」、「どういった人なのか」を深掘りして調べた結果、次のような共通点が見えてきたのです。
- 自然検索などで、アクシスのサービスを偶然見つけた事業会社のWeb担当者
- 代表とのつながりがあり、アクシスを知っている東海圏の経営者
そこでペルソナについても、2パターンをつくることにしました。
1つ目のペルソナは、Webで情報を集めている事業会社のWeb担当者です。今回のWeb集客でもこのペルソナを中心に戦略を考えていきました。
2つ目のペルソナは、東海圏の企業経営者です。このペルソナは、Web集客の施策には含めないことにしました。
調べたことを踏まえて、たたき台となる原案をつくる
次は実際のペルソナづくりに入っていきました。これまでヒアリングを通じて集めた情報を踏まえて、資料に落とし込んでいきます。
- 担当者はどんな人物なのか
- どういった職務や役割があるのか
- どういった企業に所属しているのか
- 業務上でどんな問題を抱えているのか
上記のような視点で、できるだけリアルに思い浮かべられるように、具体的に書くことを心がけてつくっていきました。実際につくったペルソナのタタキ案がこちらです。
関係者と内容をチューニングしていく
原案がある程度形になってきたら、お客様と普段から接している営業や現場マネージャーなどに見せて、内容をチューニングしていきました。
それぞれの方に「こんな人はウチのお客様になりそうですかね?」と聞いてきます。すると「確かにこういった悩みを持つ人は多いよね」とか「いや、こういう人はこう悩んでいないと思う」などさまざまな意見が出てきます。
出てきた意見を踏まえて、ペルソナの内容を加筆修正することで、より現実に即したものになっていきます。なお、議論する上で気をつけたのは、現実に存在する顧客に寄せすぎないことです。
ペルソナは、あくまで事実に即した理想の顧客像です。ある既存顧客をそのままペルソナにしてしまうと、お客様像が偏ってしまい、その後のWeb集客を検討する際に使いづらくなってしまいます。
冒頭のペルソナのポイントであったように、現実と架空の中間ぐらいを目指すことをおすすめします。
どのようにカスタマージャーニーマップを作ったか
次にカスタマージャーニーマップをつくっていきます。
カスタマージャーニーマップとは、認知から購買までのお客様の道のりを表したものです。
B2B取引では、気まぐれや衝動的に購買することはなく、合理的な意思決定の上で商品サービスは購入されます。それゆえお客様が歩む道のりを考え、適切なタイミングで適切なコミュニケーション(施策)をすることが重要です。そのタイミングとコミュニケーションを整理するのが、カスタマージャーニーマップです。
では、実際に私たちアクシスがどのようにカスタマージャーニーマップをつくったかを紹介していきます。
お客様のステージ分けをする
カスタマージャーニーマップ作成の最初のステップは、お客様が購買に至るまでのステージ分けです。
私たちアクシスは、これまでトップ営業による受注が多い状態でした。トップ営業であれば、すでに代表のことを知っていることが多く、相談からすぐ商談化するケースが多かったのです。
しかしWeb集客において接点を持つ方は、ほとんどアクシスのことを知りません。むしろ、そもそもサービスには興味がないけど、Web集客に関する情報収集をしている方が圧倒的に多い傾向がありました。
するとカスタマージャーニーを考える上でも、まずは何かをフックにして私たちアクシスを知ってもらうことが必要不可欠です。
そこで以下のようなステージ分けを行うことにしました。
- 認知(アクシスを知ってもらう)
- 興味/関心(サービスに興味を持ってもらう)
- 比較/検討(サービス導入するメリットを感じてもらう)
- 決定(社内稟議を通してもらう)
さらにこのステージごとにペルソナの行動をより具体的にしていきます。
ペルソナの行動を具体的に書く
次のステップは、ステージごとにペルソナの考えや悩み、情報ニーズなどをまとめていきました。
そこで実際につくったカスタマージャーニーマップ案がこちらです。
先ほど書き出したステージごとに、ペルソナがどういった状態にいて、どんな悩みや考えを持って、どのように行動するかを書き出していきます。書き出す際は、Web担当者が考える理想をただ書くのではなく、自分がペルソナになりきって、どのように考えそうかを深く考えることが重要です。
その上で、そのステージにいるペルソナに対してどういったコンテンツを届けるかをまとめていきました。特にまとめる上で悩んだのは、ペルソナが次のステージに移るために必要な情報です。
たとえば、認知ステージにいる方は、まだWeb集客に関する情報収集をしている段階で、直接商談に結びつくことはまずありません。そのペルソナがサービスに興味を持つためには、「Web集客の改善にはプロの力を借りるのも手である」との気づきや考えを持ってもらう必要があります。
そのためにはどういったコンテンツで届けるかを逆算して考えていかなければなりません。実際に考えると本当に頭が痛くなりますし大変な作業ですが、顧客の態度変容を加味したコンテンツ作りをしていくにはとても重要なポイントです。みなさまも作る時は、ぜひ時間をかけて考えてみてください。
関係者と内容をチューニングしていく
ペルソナと同様、カスタマージャーニーマップも原案ができたら関係者に共有して、意見をもらっていきます。
実際見てもらうと、「ここは飛躍しすぎじゃないかな?」「このステージなら、こういう悩みもあるんじゃないかな?」などのコメントをもらえるので、その意見を反映させていきます。
カスタマージャーニーマップづくりでは、最初から完璧を目指す必要はありません。まずは作ってみて、徐々にブラッシュアップしていくほうが結果的には理想に近づいていくはずです。
おわりに
この記事では、私たちがペルソナやカスタマージャーニーマップをどのように作ったかを紹介しました。
これらを作っていく過程で、思わぬ副産物もありました。さまざまなメンバーと議論をすることで、「みんなでこういったお客様を増やしていくんだ」と共通認識ができ、会社の一体感も生まれていったのです。
「まだ自社にペルソナやカスタマージャーニーマップがないよ」という方は、ぜひこの機会につくってみてください。きっと新たな気づきが多く見つかるはずです。
次回は、いよいよWeb集客改善として実際に取り組んだ施策を紹介していきます。ぜひ合わせてご覧ください。
【参考文献】
Make my persona|HubSpot
What Is the Buyer's Journey?|HubSpot
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