INTERVIEW: [下編] DeGeyter氏の語るSEO、検索業界、そしてバイラルキャンペーンの仕掛け (と脅迫状)
このインタビューは上・中・下の3回に分けてお届けしている。
中編では、ドゥジェイテ氏のバック有料リンク問題、サイト単位で力が強くなりすぎているSEOの問題、そして、SEOで陥りがちな失敗パターンなど、SEOに関するさまざまなテーマに触れている。まだ読んでいなければ参考にしてほしい。
●ソーシャルメディア向けコンテンツとバイラルコンテンツについて、ものすごい才能をおもちですよね。仕事をいくつかを披露してもらえますか?
▼ドゥジェイテ氏 えっと、成功よりは失敗の方がずっと多いんだけど。というより、Brock Sampsonのキャンペーン以外には、自信を持って披露できるようなものはないなあ。この分野ではまだひよっこで、手探りでやっているところなんだ。
Brock Sampsonのキャンペーンとは、ドゥジェイテ氏がSEOmozに対してしかけたバイラルキャンペーン。
突然SEOmozのCEOであるRandのもとにメールが届き、「SEO、リンクベイト、コピーライティング、プログラミングに加えて、戦闘や殺人もできるスタッフ」として自分をSEOmoz雇うべきだというメッセージと、履歴書が添付されていた。メールの送り主は、米国の大人向けアニメ「The Venture Bros」に登場する屈強なエージェントBrock Sampsonで、履歴書には、各種諜報作戦や戦闘能力に加えて、もっているスキルとして、「レベル8クラスA殺人許可」と並べてHTMLやJavaScript、その他プログラミング言語やPhotoshopの技能と書かれていた。
●では、輝かしい業績であるBrock Sampsonのキャンペーンについて詳しく教えてください。だれが思いついて、どのように始まったのか。よくもあんなふうにからかってくれましたよね。雇ってよい人物かもと本当に思ったんですから!
▼ドゥジェイテ氏 えっと、話をするから、どうぞ座って。
エドと僕が君のところのセミナーに出席することになって、僕らを覚えてもらうために何かやりたいと思ったんだ。エドをその任務につけて、僕らはお互いにアイデアを出した。何かプレゼントを持っていこう、役に立つものがよいか、いやむしろまったく役に立たないけど逆に忘れられないものの方がいいな、と僕は考えた。エドは僕のアイデアを却下し続けた。1つ披露すると、僕らチームのメンバーの等身大の切り抜きを、オフィスの飾りにと持っていこうというものだった(エドの判断にあとでお礼を言っておかなきゃ)。
数日後、アクションフィギュアを持っていくというアイデアをエドが出した。Brockの手作りアクションフィギュアをエドが見つけてきたけど、僕はそのアイデアをあなどっていた。知るか! 僕はFamily Guyを観るんだ! ってね。ともかく、アクションフィギュアだけではまだ不十分だったから、エドにはもう少し考えてみるように言った。するとエドは、履歴書を作るというアイデアを持ってきた。
その頃、僕がSEOの必須事項を取り上げたクイズというアイデアを思いつき、エドもそれに取り組んでいた。最初は、シアトルに行く1か月前に君たちに案内して、確実に気づいてもらえるようにしたいと思っていた。セミナーの日が近付くにつれて、手遅れなんじゃないかと僕は不安になっていった。幸運なことに、君はメールをチェックしてくれたんだよね!
言うまでもないけど、君からの返事が来たときは有頂天になった。だれからのメールかわかっちゃうんじゃないかとちょっと不安だった。エドはプロキシサーバー経由でメールを送っていたから、IPアドレスをたどることはできなかったはずなんだけど、もしWord文書で作成者を見れば、そこにエドの名前があることにあとで気がついたんだ。その頃、エドはカンファレンスについてジリアン(SEOmozのスタッフ)とコンタクトを取っていたから、それでエドからのメールだとわかってしまうかもしれないと思った。
身代金要求の手紙というアイデアをだれが思いついたのかは今となっては思い出せないけど、何のためにやっているのかはちゃんと把握していた。見返りを期待して僕が何かをやるのことはほとんどないのだけど、そのうちの1つだね。僕らは君たちの目に触れて、つながりを得たかったんだ。だから、僕らは計画を練って、エドが、何というか、ちょっとやばいBrockの写真を撮影した。僕らは念のために写真を持っておいた(これはよかった!)。
次の課題は、シアトルでどうやってBrockを君たちにプレゼントするかだった。セミナーが終わったあとのパーティーがいいだろうとは思ったけど、絶好の機会を待たなきゃいけなかった。君たちがビリヤードの順番で席にいないときにテーブルにセットすることを考えたのだけど、そのチャンスはめぐってこなかった。
そしてとうとう、エドと僕は、レベッカ(SEOmozのスタッフ)の近くの席を見つけて、そこにあった空のジョッキにBrockをぶら下げた。本当のところ、レベッカに気が付いてもらうのに5分ほどかかった。彼女は見るからに酔っ払っていてろれつが回らず、よだれを垂らしてどこかをぼんやり眺めていた。まじめな話、僕は1.5mくらいしか離れていないところから、1km上空のボーイング747からもわかるような感じで両腕を振ったのだけど、それでも彼女は気づかなかった。
ようやく気がついてくれたので、こちらに呼んで座ってもらった。レベッカがいて、彼女の顔からすぐのところにBrockがいるのだけど、まだBrockには気がつかない。もしかするとレベッカはエドと僕のマッチョぶりに驚いていたのかもしれない。とにかく、僕は指さす方向を見るように言って、なんとか彼女の視線をBrockのところまで誘導した。しらふのチームの勝利だ!
こうして、僕らは1か月の苦労の末ようやく報われる。勝利を収めた僕らは満足して帰宅した、といえるかな。
次の金曜日、ロブがWhiteboard Friday(SEOmozが金曜日ごとにYouTubeにアップしているSEO関連の解説動画)を観て、君がBrockをポインタとして使っていると事務所のみんなに知らせてくれた。
そして、君は僕らが考えもしなかったことをやってのけた。Brockについて、後ですべて打ち明けると公言したんだ。
え? 後で? 打ち明けるの? 本当に?でも、それから1か月経っても、まだその「後で」はやって来なかった。
ここにきて写真が役に立った。そう、僕らはリンクベイトを行うそこそこのまともなSEO業者ならやるだろうことをやったのさ。僕らはきみに脅迫状を送ったんだ。「Brockのことを後で打ち明けるって言ってたのに、まだ何もしてないじゃないか。ちゃんとポール・ポジション・マーケティングとE-Marketing Performanceに言及してくれなきゃ、ぼくらがBrockだっていう写真を公開しちゃうぞ。あと、こんどのPubConでぼくらと一杯飲むことも要求する」ってね。
そしたらなんと、次の日には君から10数問、インタビューの質問が届いた。実におもしろいよね。君が考え直す前に、僕はこれがウェブに本当にアップされるか確認するからね。君のためだから、ほかの要望も無視しないようにしよう!
●近々参加するカンファレンスはありますか? 特に計画していることは?
▼ドゥジェイテ氏 PubConだ。君のチームと飲みにいく予定だよ。覚えてる?(油断してるときみが困るような写真を発表しちゃうから!)
3月のSEMpdxにも行く。あとは、発表されたばかりの(まだだっけ?)Small Business Marketing: Unleashedだね。
●仕事以外のこと、オンラインにいないときにやることについて教えてください。
▼ドゥジェイテ氏 「宇宙空母ギャラクティカ(Battlestar Galactica)」の新しいシリーズが始まるのを、辛抱強く待っている。
夜と週末はおもに家族サービスだな。たいてい子供たちのスポーツの行事があるから、週末に何もしないということはあまりない。
家族を別にすると映画やテレビが大好きだな。僕にとってテレビはスイッチを入れてほかのことをするものじゃない。テレビは観るに限る。観たいんだよ。TiVo(とSlinbox)は不可欠だね。子供たちがみんな寝たあとで、おしゃべりなしで僕の番組を観るのさ(インターネットにつなげられればどこでも観れるんだよ!)。
映画館にはほとんど行かなくて、巨額の予算をつぎこんだ映画だけだな。DVDをうちの55インチ大画面で観て満足している。好きなだけトイレに行けるしね。DVDコレクションはかなりのものだよ。あきらかに抜けているぞってものもあるけど(それを買ってくれた人には一生無料でSphinnをあげるよ! おっと、ただし内容がよい場合だけだった!)。
これでインタビューは終わりだ。僕はドゥジェイテ氏に、SEOブログ界に発表した記事から「ストニー自身が選ぶベスト」を選んでリストを作ってくれるように頼んでいたんだ。
以下がそのリストだ。
- 「人々が目指す場所」になるマーケティング:妥協しないSEM(Destination Marketing: SEM without Compromise)
- まったく役に立たないリンクベイト記事(A Completely Useless Linkbait Article)
- コンテンツは死んだ。コミュニティが王者になった(Content is Dead. Community is King Now)
- ペルソナにパーソナリティを与える(Giving Personality to Your Personas)
- 小規模企業におけるブランディングの威力:その1(The Power of Branding for Small Business: Part One)
- SESの講演者を見て 聴衆に自分を印象付ける方法(A Look at SES Speakers and How they Brand Themselves)
まだ物足りないという人に教えると、ストニーはeマーケティングに関する電子書籍を書いていて、またキーワード調査ガイド(PDF書類)も書いている。ストニー、たくさんの情報をありがとう。ポール・ポジション・マーケティングの成功を祈る。
ソーシャルもやってます!